茶業研究報告
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1989 巻, 70 号
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  • 定植1,2年目における活着と生育程度の品種間差(第I群)
    鳥丸 萩夫, 渕之上 康元
    1989 年 1989 巻 70 号 p. 1-15
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1 わが国の緑茶用主要13品種を供試して,鹿児島県姶良郡溝辺町における品種特性ならびに地方適
    応性を知る目的で,1987年より試験(第I群)を開始した。本報では,まず定植1,2年目における活着と生育程度の品種間差について報告する。
    2 得られた成果の要約は下記のとおりであった。
    (1) 定植1,2年目の活着率は,すべての品種が90%以上で高く,品種間差もなかった。
    (2) 定植1~2年目の越冬率は,試験1の,凸あさつゆ'のみが'やぶきた'を除く他の3品種にわずかに劣った。
    (3) 定植2年目の補植率は,試験2,でのみ品種間差がみられ,'さやまかおり'のみは補植率0%で補植率の比較的高かった'あさひ'(22.2%),'さみどり'(16.6%),'やぶきた'(12.2%)などと顕著な差がみられ,また'おくみどり'(2.2%)も'あさび,'さみどり'と顕著な差(1.0%の危険率で有意に)がみられた。
    (4) 定植1,2年目の生育程度の品種間差では,試験1では'あさつゆ'のみが,一番茶期の芽立が不良で二番茶期の繁茂程度も悪く秋の生育程度も樹高,株張り,繁茂程度などすべて他の4品種に顕著に劣った。しかし残る4品種の生育はいずれも良好で二番茶期の繁茂程度では品種間差はなかったが秋には'かなやみどり'や'とよか'が'やぶきた'よりも勝った。なお秋の株張りでは'ゆたかみどり','かなやみどり'>'とよか'>'やぶきだの順に有意差がみられた。
    (5) 試験2では,一番茶期新芽立ちの良好であった'さやまかり'がその後もすべての形質で他の品種に顕著に勝り逆に新芽立ちの不良であった'さみどり'が最も劣ったが,この傾向は両品種ともとくに秋の株張りによく現われていた。なお秋の樹高の品種間差の検定の結果は'あさひ'を除き'さやまかおり'>'こまかげ'・'やぶきた'・'おくみどり'>'うじひかり'・'やまかい'・'さみどり'・'ここう'をほぼ群別できるように思われた。
    本研究の取りまとめに際し,関係府県より地方適否試験関係の文献をご紹介下さった三重県農業技術センター 茶業センター 池田敏久栽培研究室長,京都府立茶業研究所 植田和郎技師,宮崎県総合農試茶業支場 上野貞一場長並びに,鹿児島県茶業試験場 嶽崎亮栽培研究室長の各位に対し深甚の謝患を表する。
  • 定植2年目における分枝性の品種間差(第I群)
    渕之上 康元, 鳥丸 萩夫
    1989 年 1989 巻 70 号 p. 17-39
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    第1報に引続き,1群に供試された13品種の定植2年目における分枝性について調査を行い,品種別仕立法の基礎資料を得ようとした。試験方法のうち,供試品種,試験場所,試験区等は第1報と同様であるが,本報における調査項目や調査方法は下記のとおりであった。
    すなわち,調査部位を地面上0~20cmの高さの範囲内に限定して,まず最初に定植1年目の1株当たり主枝数と1・2次分枝数を調べ,次に定植2年目の一番茶期,二番茶期,秋の3回にわたって,さきの1・2次分枝数の推移(一番茶期は良芽,二番茶期は良新梢,秋は良硬化枝条のみを対象とした)と,私には樹高,株張りの他に樹形の指標となる株張り最広部位の高さ,1次分枝の着枝角度,頂・側枝長の比(1次分枝最長側枝長/樹高)についても調査を行ない,定植2年目での分枝性の品種間差を分散分析法により検討した。
    得られた結果の要約は下記のとおりりであった。
    (1)定植1年目の1株当たり主枝数については,試験1(2年生苗供試)の5品種間では平均値が1.30~1.72本に変異していたが,その品種間差はみられなかった。しかし,試験2(1年生苗供試)の9品種間では6品種が1.00~1.03本に変異し,地中での分枝がほとんどみられなかった(他の1品種'おくみどり'のみは1.1本)ので,地中分枝のみられた'やぶきた'(1.25本)及び'さやまかおり'(1.20本)との間に有意な差が認められた。
    (2)定植1~2年目の1株当たり1次分枝数の推移については,まず試験1の5品種では,定植1年目(秋)の古枝数では差を認めなかったが,2年目では対照品種'やぶきた'にくらべて,'かなやみどり'と'とよか'は一,二番茶期,秋ともに有意に多くなっており,一方'あさつゆ'は二番茶期以降少なくなっていた。次に試験2の9品種では,'さやまかおり'のみは定植1~2年目の各時期を通じて顕著に多く,'おくみどり'も2年目二番茶期以降有意に'やぶきた'よりも多くなっていた。しかし,反対に'やぶきた'よりも有意に少なくなっていた品種としては,2年目二番茶期以降の'さみどり'と1年目秋と2年目二番茶期での'やまかい','ここう','あさひ','こまかげ'などがみられた。
    (3)定植2年目二番茶期においてのみ,1次分枝数の調査部位である地面上0~20cmの高さの範囲を上位部(10~20cm)と下位部(地面上0~10cm)に二分して検討したところ,1次分枝数は試験1・2とも分枝位置(上位部と下位部)によっても差がみられ,また品種と分枝位置の交互作用にも有意性が認められた。
    (4)定植2年目秋に,樹高,株張り,株張り/樹高,株張り最広部位の高さ,その対樹高比,1次分枝の着枝角度,頂・側枝の長さの比などについて調査を行ない,これらの調査結果にさらにさきの1次分枝数や繁茂程度(第1報)のデータを加えて,主な品種の定植1~2年目現在での樹形や分枝特性について検討し,下記のことを明らかにした。
    。'かなやみどり'の樹形は開張型で株張り最広部位は低く,1次分枝の数も多く又その伸長も良いので,株張りや繁茂程度がすぐれていた。
    ・'ゆたかみどり'の樹形は中間型で株張りがすぐれ,とくにこの品種の特性として樹高に対する側枝の伸長の良好なことがあげられた。
    ・'やぶきた'は2年生苗定植の場合,地際部(地面上0~10cm)での1次分枝数(伸長が良い枝)が少なかった。
    ・'さやまかおり'は繁茂程度,1次分枝数(伸長の良い枝),株張りなどで'やぶきた'よりも顕著のに勝った。
    ・'おくみどり'の樹形や枝条の状態はよく'やぶきた'に似ていたが,地際部(地面上0~10cm)での1次分枝数(伸長の良い枝)は明らかに'やぶきた'よりも多くなっていた。
    本研究のとりまとめに際し,元国立遺伝学研究所応用遺伝部長,元鹿児島大学教授酒井寛一博士には,種々ご懇篤なご指導と,さらに本稿のこ校閲も頂いたことに対し深甚の謝意を表する。また関係府県より,地方適否試験関係の文献をご提供下さった三重県農技センター・茶業センター池田敏久栽培研究室長,京都府立茶業研究所植田和郎技師,宮崎県総合農業試験場茶業支場上野貞一場長並びに鹿児島県茶業試験場嶽崎亮栽培研究室長の各位に感謝申し上げる。
  • 中村 順行
    1989 年 1989 巻 70 号 p. 41-49
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    チャ'やぶきた'成木園の新芽から採取した茎切片をMS培地で培養し,それらからより簡便で高率に不定芽を分化させるため,植物生長調節物質の種類,アミノ酸や天然抽出物の添加効果等を検討した。さらに,23品種・系統を供試し,不定芽分化の品種間差異も検討した。
    不定芽の分化は,4種類のオーキシン添加培地ではIAA0.0l~0.1mg/l処理区で認められた。
    そこで,不定芽の分化率を高めるためIAAにBA,カイネチン,GA3等を添加したところ,GA3 1.0~5.0mg/lの組合せでのみ,分化率を6.7~11.1%程度に高めることが出来た。IAA+GA3にアミノ酸や天然抽出物を組合せた場合には,それらの添加効果は認められなかった。
    不定芽は茎の切断面に形成された小さなカルスから分化することが認められたので,輪切り切片をさらに縦断し切断面積を大きくすることにより21.2%まで分化率を高めることが可能であった。
    不定芽分化には品種・系統間差異が認められた。不定芽は'まきのはらわせ,するがわせ,やぶきた,さみどり,おくひかり,おくみどり,おくゆたか'で分化したが,紅茶系やウーロン茶系の品種・系統では認められなかった。
    本報告の作成に当たり,ご校閲を頂いた農林水産省野菜・茶業試験場高柳謙治博士に感謝の意を表します。
  • 田中 敏弘, 岩倉 勉, 山中 浩文, 嶽崎 亮, 松山 康甫
    1989 年 1989 巻 70 号 p. 51-65
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    一,二番茶各摘採後の1回目と2回目の整枝が次,の茶期の新芽生育と品質に及ぼす影響について検討した。
    1)一番茶後,二番茶後の1回目整枝を従来より早めることは次の茶期の萌芽期,ひいては摘採期を早めることにつながった。
    2)2回目整枝を実施することで収量はやや減少する場合があったが,硬葉・木化茎,場合によっては徒長芽を減少させた。
    3)次の茶期の摘採期が早まることは,外観だけでなく,内質の向上にも大いに役立った。また,1回目整枝でけの荒茶を色彩選別機や7号篩で選別しても,2回目実施の最もすぐれた区には内質では及ばかった。
    4)以上のことは,1回目整枝が早い2回目実施区は単に芽揃いの向上のみではなく,内質の向上にも影響しているものと考えられる。
    5)本試験結果から,夏茶の品質向上のためには,一番茶後は,1回目整枝を2~5日目,2回目整枝を17~22日目,二番茶後は1回目整枝を2~5日目,2回目整枝を概ね16日目に行えば良いと考えられる。
    この研究を遂行するに当たり,審査に御協力頂いた当加工研究室職員と整枝,製茶に献身的に御協力いただいた永野修技術補佐員に深く感謝申し上げます。
  • 後藤 正, 岩沢 秀晃, 柴田 隆夫
    1989 年 1989 巻 70 号 p. 67-80
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    近赤外法を用いた茶の品質評価法を確立する目的で,茶芽の熟度と関係のある総繊維を近赤外法によって評価する可能性について検討し,次の結果を得た。
    (1)茶の蒸葉乾燥試料について,1100~2500nmの波長範囲の近赤外スペクトルを,未粉砕及び粉砕状態で測定し,その原スペクトルについて比較すると,未粉砕試料の吸光度は,粉砕試料の場合に比べて調査した全波長領域で高かった。また,総繊維の含有率の異なる試料を比較すると,含有率が低いほど試料の原スペクトルの吸光度は大きくなる傾向を示した。
    (2)未粉砕試料の2次微分スペクトルから作成した24本の検量線のうち,1818,2330および2152nmの3波長からなる検量線が,82個の検証試料に対して最も精度の高い推定結果を示した。検証試料における従来のNDF法と近赤外法による推定値との単相関係数rおよび検量線の評価指数E.I.は,それぞれ0.921,18.12と良好であり,この検量線は総繊維の定量法として有効なものであることが確認された。
    (3)粉砕試料の2次微分スペクトルから作成した30本の検量線のうち,第一波長ヘセルロースに帰属する2270nmを組み入れた4波長(2270,1276,2368,2314nm)からなる検量線は,検証試料(試料数82)において最も高い推定精度を示した。この検量線は,未粉砕試料を基に作成した検量線より優れた相関係数(0.942)及びE.I.(15.49)を示した。しかし,危険率1%のt検定の結果,これらの2つの検量線の推定値に有意な差は認められなかった。
    (4)全窒素含有率の検量線と比較して推定精度は劣るが,これは今回用いた試料の従来法による分析精度が低かったことが原因と思われる。このため近赤外法の精度を向上するためには,従来法の分析精度の向上が不可欠である。しかし,近赤外法による茶の総繊維定量分析の可能性は確認できた。
    本研究のとりまとめにあたり,有益なご助言を賜った北海道大学応用電気研究所魚住純博士に深く感謝の意を表す。
  • 1989 年 1989 巻 70 号 p. 81-83
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
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