茶業研究報告
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1999 巻, 87 号
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  • 森山 新三郎, 渕 通則
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 1-6
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    一番茶の安定多収や茶品質向上のため,三番茶摘採の有無が翌年の一番茶に及ぼす影響と秋枝の形状の違いによる茶芽の再生力を調査し,茶樹の枝条の違いによる管理技術を検討した。
    (1)中切り更新処理した茶樹で,三番茶摘採と不摘採の翌年一番茶の生葉収量は,更新3年目までは三番茶摘採が多く,4~5年目から三番茶不摘採が多くなり,6年目以降になるとさらに三番茶不摘採が多収となった。
    (2)二番茶後に浅刈り・深刈り更新処理した茶樹において三番茶の摘採を中止したところ,秋芽が伸びすぎ,三番茶を摘採した方が翌年一番茶の生葉収量が多かった。
    (3)更新直後の茶樹と数年経過した茶樹での秋枝の形状は,更新直後が大きく,一番茶の新芽を除去しても,再生した芽の生育は良好であった。このことから,更新直後の茶樹は枝条活力があると判断される。しかし,更新後数年経過すると枝条活力は年々低下すると思われた。
    (4)以上のことから,更新の経歴によって枝条活力が異なるため,三番茶摘採の可否は,更新後の経過年での枝条活力によって判断する必要がある。
  • 河合 章, 向井 俊博, 堀江 秀樹, 木幡 勝則
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 7-12
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶種子から調製したサポニンの鱗翅目害虫に対する殺虫効果及びハダニ類に対する殺ダニ効果を室内試験で検討した。チャノコカクモンハマキ及びミノウスバに対する殺虫効果は認められなかった。ハダニ類に対しては密度抑制効果があり,産卵抑制と殺幼若虫効果がその主体と考えられた。しかし,顕著な効果が得られたのは高濃度(100倍)区のみであった。また,カンザワハダニに比べナミハダニに対する効果が高かった。
  • 木幡 勝則, 山下 陽市, 山内 雄二, 堀江 秀樹
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 13-19
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    Chl及びその誘導体の含有量から見た市販緑茶の品質と特質について検討したところ,以下の結果が得られた。
    (1)茶種別に見ると,蒸熱時間の短い,覆い下茶である抹茶,玉露ではChl(a+a')及び(b+b')の含有量は多く,反対にPhy(a+a')及び(b+b')の含有量は少なかった。また,ChlのPhyへの変化率は少なく,さらには,Chl(a+a')に対するChl(b+b')の存在比も小さかった。これに対し,深蒸し煎茶では全く逆の結果を示した。煎茶はそれらの中間に属し,上級なもの程抹茶,玉露に近く,下級なもの程深蒸し煎茶に近かった(図1参照)。
    (2)級別に見ると,(a)Chl(a+a')及び(b+b')の含有量は,抹茶,玉露,煎茶では上級なもの程多く,反対に深蒸し煎茶では少ない傾向にあった。(b)Phy(a+a')及び(b+b')の含有量は,全ての茶種において上級なもの程少ない傾向にあり,その差も顕著であったことから品質評価の指標になりうることが示唆された。(c)ChlのPhyへの変化率は,深蒸し煎茶を除く茶種,特に玉露と煎茶において上級なもの程小さい傾向にあり,その差も顕著であったことから品質評価の指標となりうることが示唆された。(d)Chl(a+a')及び(b+b')の含有量の存在比は,深蒸し煎茶を除く茶種において上級なもの程小さい傾向にあった。特に,煎茶ではこの差が顕著であったことから品質評価の指標になりうることが示唆された。
    各色素類の含有量をもとに市販緑茶の品質評価を行う際は,上述の結果を併用することでより精度を高めることができるものと思われる。ただし,深蒸し煎茶では各色素類の含有量から品質評価を行うことは難しいと思われる。
  • 近藤 貞昭, 池田 奈実子, 田中 淳一, 武田 善行, 武弓 利雄, 渡邉 明, 安間 舜, 勝尾 清, 増田 清志, 簗瀬 好充, 山口 ...
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 21-38
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    'りょうふう'は,1972年に茶業試験場(金谷,現野菜・茶業試験場)において'ほうりょく'を種子親に,'やぶきた'を花粉親として交配した実生集団から選抜された。金谷17号の系統名で1989年から1996年まで全国の主要な茶産県で系統適応性検定試験及び特性検定試験を実施した結果,優れた品種であることが認められたため,1997年7月に'りょうふう'として命名,茶農林45号として農林登録された。
    挿し木発根性,苗床での生育は良好で育苗は容易である。幼木期の樹高,株張りとも'やぶきた'より優れ,生育は良好である。樹姿はやや直立型で仕立ては容易である。耐寒性,裂傷型凍害抵抗性,炭そ病に対する抵抗性はやや強である。
    萌芽期は'やぶきた'より2~4日遅く,'かなやみどり'と同程度の中晩生である。一番茶収量は,'やぶきた'より多収である。一番茶品質は'やぶきた'と同程度かやや優れる。色沢は明るい緑で,水色は透明感があり良好である。滋味は強く,すっきりとしている。
    'やぶきた'と組み合わせて栽培することによって摘採期の集中による弊害を回避できる。
  • 鳥屋尾 忠之, 武田 善行
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 39-57
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    野菜茶試(枕崎)で保存している,チャの種内の各品種群に属する栄養系品種・系統(試験と茶樹集団(試験2)の花器形態を調査して,その変異を明らかにし,このデータを用いて数値分類を行い,種内分類と花器形態との関係を検討した。
    試験1:来歴を異にする品種・系統103(日本在来種44,中国導入種14,アッサム種14,アッサム雑種20,その他の系統11)を供試して,花径の大小・花弁数・雄ずいと雌ずいの形質・子房の毛等の13形質を選んでそれぞれの変異を明らかにし,これらの形質の中から11形質を取り上げて主成分分析と判別分析を行った。品種・系統によって顕著な差異が認められたのは,雌ずい抽出度,分岐点の深さ,花柱のくびれの有無,雄ずい数,子房の毛の有無と多少であった。日本在来種の品種・系統の多くは雌ずい抽出度が中位のM型かあるいは低いS型で,これと対照的に中国導入種のほとんどが雌ずいが雄ずいよりも高いL型で花柱のくびれが明瞭に認められた。アッサム種の多くはL型であるが一部にM型もみられ,また,子房に無毛あるいは毛の少ない系統が確かめられた。主成分分析では,第1成分は雌ずいの形態と,第2成分は花の大きさに関係する成分と考えられた。判別分析で,日本在来種・中国導入種・アッサム種の3品種群の分類距離は,それぞれ大きく,一方アッサム雑種品種群と中国導入種あるいはアッサム種との間の分類学的距離は近いことが示された。
    試験2:42の茶樹集団(日本在来種;17,中国導入種;10,アッサム種;11,その他;4)の1,356個体について花器形態6形質を調査し,集団内,日本在来種・中国導入種・アッサム種等のグループ内の形質の変異を確かめた。その結果,試験1の栄養系品種で認められたのと同様に,雌ずい抽出度と花柱のくびれの有無について,日本在来種と中国導入種およびアッサム種との間には顕著な差異のあることがわかった。L型で同時に花柱のくびれの明瞭な雌ずいを持つ個体が,中国導入種とアッサム種に多く,日本在来種には少なかった。また,子房無毛ないしは少ない個体がアッサム種に多く,日本在来種にはみられなかった。ここで取り上げたいずれの形質も,アッサム種のグループ内の変異の方が中国導入種や日本在来種の変異よりも大きかった。この事実は,チャの原産地がここで取り上げたアッサム種の分布域により近いことを示唆するものと考えた。この6形質の集団平均値に基づいた主成分分析の結果,第1成分は試験1と同様の傾向を示した。次いで,クラスター分析を行い,分類距離による加重変量法が最も明瞭に,日本在来種・中国導入種およびアッサム種を分けることを確かめた。従来からの分類で中国導入種としていた韓国の2集団の内の1種は日本在来種のグループに入ること,タイワンヤマチャはアッサム種に,ベトナム産のシャンはアッサム雑種に分類されやや特異な位置にあること等が明らかにされた。
    以上の結果から,チャの花器形態は種内分類にきわめて有用で,また花器形態を対象とした数値分類法は,今後の類縁関係の解明に新しい知見を与えるものと考えられる。
  • 堀江 秀樹, 山崎 祐作, 山内 雄二, 木幡 勝則
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 59-65
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    キャピラリー電気泳動法により4種の主要カテキン類,カフェイン,テアニン,アスコルビン酸を同時定量できる条件を開発した。電気泳動液として,50mMホウ酸,10mMリン酸水素ニナトリウム,50mMドデシル硫酸ナトリウム,10%メタノールを混合液しpH8.2に調節したものを用い,キャピラリー温度は20℃で,印加電圧は25kVとした。本法の特長は,茶の主要品質成分であるカテキン類,カフェインとテアニン,アスコルビン酸の同時定量が,1試料20分以内で行える点である。茶浸出液及び茶葉成分について,この方法で分析した値と,従来法による分析値とを比較した結果,茶葉中のアスコルビン酸含量の分析結果を除き,差はみられず,本法の有効性が示された。
  • 古野 鶴吉, 吉留 浩, 間曽 龍一, 佐藤 邦彦, 上野 貞一, 平川 今夫, 安部 二生
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 67-76
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    'さきみどり'は1979年に宮崎県総合農業試験場茶業支場(農林水産省茶育種指定試験地)において,'茶本F1NN27'を種子親,'ME52'を花粉親に交配した中から選抜した品種である。1988年から1996年まで'宮崎15号'の系統名で15カ所で栄養系適応性検定試験及び2カ所で特性検定試験(もち病,裂傷型凍害)が実施された。
    その結果'やぶきた'よりやや早生の煎茶用品種として普及に移し得ると判断し,1997年8月に茶農林47号'さきみどり'として命名登録された。
    'さきみどり'の特性の概要は次のとおりである。
    1) 樹姿は中間型で樹勢はやや強く,初期生育は旺盛である。成葉は楕円形で大きさはやや大,葉色は淡緑で光沢はやや多である。新葉の色は鮮やかな緑である。
    2) 一番茶の萌芽期及び摘採期は'やぶきた'より2~3日早いやや早生種である。
    3) 生葉収量は'やぶきだよりやや多収で,摘芽はやや芽重型である。
    4) 厳寒期の寒害,裂傷型凍害ともにやや強である。炭疸病及びもち病抵抗性は中,輪斑病抵抗性はやや強である。
    5) 煎茶品質は良好で色沢は鮮やかな緑,さわやかな香気で滋味は温和である。荒茶に含まれる成分は,対照品種の'やぶきた,ゆたかみどり,かなやみどりに比較して,全窒素,アミノ酸が多く,カテキン類が少ない特徴を持っている。
  • 中村 順行
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 77-79
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
  • 堀江 秀樹, 山内 雄二, 木幡 勝則
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 81-84
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    A new method to determine sodium ion and ammonium ion using capillary electrophoresis was developed. The concentrations of these ions in tea extracts were measured by this method and the results agreed with those measured by ion chromatography.
  • 原 利男
    1999 年 1999 巻 87 号 p. 85-92
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
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