春整枝後の刈り落とされた枝葉から茶株へのカンザワハダニ(Tetranychus kanzawai Kishida)の移動実態を明らかにするため,春整枝4日前,春整枝3日後,10日後に,ハダニ密度をすそ部と摘採面にわけて調査した。
発育ステージは,すそ部および摘採面とも雌成虫と卵で占められ,幼若虫はごく少なかった。摘採面において,春整枝前の雌成虫数に対する整枝10日後の雌成虫数の比率(以下,成虫増加比率)は1.6であり,雌成虫数は整枝3日後からはほとんど増加しなかった。一方,すそ部における雌成虫数は,整枝3日後から10日後にかけて急激に増加し,整枝10日後の成虫増加比率は5.8となり,すそ部における整枝10日後の雌成虫数は,摘採面におけるそれとほぼ同程度になったことから,雌成虫が地面に落ちた枝葉からすそ部に移動したと考えられた。また,茶園における春整枝前後の殺ダこ剤散布の効果がその後のカンザワハダニの密度に及ぼす影響について調査した。春整枝前散布区(A区)と春整枝後散布区(B区),無散布区(C区)を設け,各区のすそ部および摘採面におけるハダニ密度を調査した。薬剤散布後のB区では,摘採面における雌成虫数は低下したが,すそ部における整枝10日後および24日後の雌成虫数と卵数,摘採面おける整枝24日後および31日後の卵数と幼若虫数がA区に比べて有意に多くなり,B区の防除効率(雌成虫・幼若虫)は低下した。A区のすそ部における防除効率(雌成虫・幼若虫)は整枝10日後から,また,摘採面においては整枝24日後から80%以上と高く推移し,殺ダニ剤によるハダニ密度抑制効果が認められた。これらのことから,殺ダニ剤は春整枝前に散布する方が,春整枝後に散布するよりも効果的であると考えられた。
抄録全体を表示