茶業研究報告
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2015 巻, 120 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
報文
  • 吉留 浩, 宮前 稔, 長友 博文, 水田 隆史, 佐藤 健一郎, 古野 鶴吉
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 1-15
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    ‘きらり31’は,1994年に宮崎県総合農業試験場茶業支場において,‘さきみどり’を種子親,‘さえみどり’を花粉親として交配した実生群から選抜された早生の緑茶用品種である。
    2004年から2012年まで‘宮崎31号’の系統名で15場所で系適試験及び県単等による地域適応性試験,2場所で特性検定試験 (もち病,裂傷型凍害) が実施された。その結果,‘きらり31’は煎茶,かぶせ茶や玉露のいずれにおいても品質が優れ,早生でありながら耐寒性が優れ,輪斑病にも抵抗性を有し,収量も多いことから普及に移し得ると判断され,2013年12月に種苗法に基づく品種登録出願を行い,2014年5月に品種登録出願公表された。
    ‘きらり31’の特性の概要は次のとおりである。
    1) 一番茶の萌芽期は,‘やぶきた’より4日程度,摘採期は3日程度早い早生品種である。
    2) 樹姿は中間型,樹勢は強,株張りは‘やぶきた’より大きい。
    3) 耐寒性は,裂傷型凍害には‘強’で,越冬芽の凍害率は‘やぶきた,さえみどり’より低く,赤枯れや青枯れにも‘やぶきた’より強い。
    4) 耐病性は,輪斑病にはやや強,炭疽病,もち病には‘弱’,赤焼病には‘やや弱’である。
    5) クワシロカイガラムシに対する抵抗性は‘極弱’である。
    6) 収量は‘やぶきた,さえみどり’より多く,一番茶の新芽は萌芽後21日目の早い時期から27日目まで‘さえみどり’より葉色が濃い。
    7) 製茶品質は,煎茶,かぶせ茶や玉露ともに‘やぶきた,さえみどり’と同等以上に優れ,特に色沢,香気,水色が優れる。
  • 豊島 真吾, 萬屋 宏, 佐藤 安志
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 17-23
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    茶園におけるカブリダニ群集の網羅的な調査方法を提案するため,調査うね数とファイトトラップ設置方法を検討した。ブラッシングマシンの利用を前提に,1うねあたり50葉を採取し,10うねで調査すれば,ハダニ類に依存するカブリダニ類の季節変動とピーク時の種構成を把握できる。また,捕獲ピーク時には,調査うね数を2うねまで減らすことができる。一方,ハダニ類に依存しないカブリダニ類の調査では,30個から50個のトラップをチャ株の低い位置にある枝に7日間設置する。トラップを回収する時間帯は,朝と夕方のいずれでも構わない。すべてのトラップを丁寧に調査しなくとも,設置したトラップにカブリダニ類が捕獲されたか否かを確認すると,カブリダニ類の増減を把握できる。設置したトラップの7割以上でカブリダニ類が確認される場合には,すべてのカブリダニ類を回収して種を特定することで種構成を把握できる。
短報
技術レポート
  • 鈴木 利和, 大石 哲也
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 29-36
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    静岡県奨励4品種について,一番茶新芽の生育,硬化,成分に関する特性を‘やぶきた’と比較した。開葉速度は,速い順に‘つゆひかり>おくひかり>やぶきた≒山の息吹>香駿’となる傾向が示された。硬化パターンおよび葉位別硬化度には明瞭な品種間差異がみられ,同一葉期で比較すると,摘採適期前後 (4〜5葉期) の硬化度は低い順に,‘つゆひかり<香駿<やぶきた<山の息吹<おくひかり’となった。生育ステージの進展や摘芽重の増加に伴う新芽の全窒素含有率の低下程度および同一摘芽重または生育ステージでの全窒素含有率には品種間差異がみられた。‘やぶきた’と比較すると‘つゆひかり’は摘採期の全窒素含有率が高く低下速度が緩慢であった。
  • 鹿子木 聡, 德田 明彦, 上室 剛
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 37-45
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    著者らは松元機工株式会社と共同で,10a当たり200Lの農薬散布が必要とされてきた茶病害虫防除をより少ない散布量で行うことができる装置「かごしま式防除装置MCS-KAGO1-1 (以下,本装置) 」を平成25年度に開発し,平成26年度に初年度実証試験を行った。本装置によって農薬散布量を慣行よりも削減したかごしま式・40L区とかごしま式・68L区を慣行乗用・200L区 (200L/10a) と比較したところ,チャノナガサビダニ (甚発生) およびチャノミドリヒメヨコバイ (甚~多発生) に対する防除効果はほぼ同等となった。輪斑病 (中発生) に対する現地での防除率はかごしま式・72L区で87.8%,慣行乗用・200L区は82.3%となり,また,炭そ病 (少発生) の防除率はかごしま式・43L区およびかごしま式・62L区,慣行乗用・200L区が同等だった。しかし,炭そ病の多発生下では,農薬散布量が少なくなるほど防除効果が下がる傾向があった。本装置による少量農薬散布技術には不明な点が多く残されているが,実用化の可能性があると思われた。今後は実証試験を重ねるとともに,全国各地の茶園に対応できるように本装置の改良も進めたい。
  • 石島 力, 豊島 真吾, 佐藤 安志
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 47-52
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    チャのハマキガ類の寄生性天敵であるキイロタマゴバチ類の発生状況調査における黄色粘着トラップの利用可能性を検討するため,茶園の摘採面上とうね間を設置場所として吸引粘着トラップでの捕獲数との比較を行った。
    その結果,調査期間中におけるキイロタマゴバチ類のトラップ1台あたりの合計捕獲数は,吸引粘着トラップが1184.5 (設置トラップ数2;トラップの粘着面積400cm2) に対し,黄色粘着トラップでは243.8 (設置トラップ数12;トラップの粘着面積200cm2) であった。また,黄色粘着トラップによるキイロタマゴバチ類の単位面積あたりの捕獲数は,吸引粘着トラップの41%であった。黄色粘着トラップによるキイロタマゴバチ類の捕獲消長は,摘採面,うね間および両者の平均値において吸引粘着トラップによる捕獲消長とよく一致した。以上のことから, 吸引粘着トラップの代わりに黄色粘着トラップを用いてキイロタマゴバチ類の発生状況を調査できることが示唆された。
資料
  • 木幡 勝則, 水上 裕造, 氏原 ともみ, 手島 暢彦, 小田嶋 次勝
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 53-60
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    Method for the determination of the geographic origin of green teas was developed using sencha (most popular green tea in Japan) samples produced in Japan, China and Australia. Similarly, the method was also developed among Shizuoka, Mie and Kagoshima prefectures which accounted for about 75% of sencha production in Japan. Ten elements (Al, Ba, Cu, Fe, Mg, Mn, Ni, Rb, Sr, Zn) were analyzed in sencha samples originated in three countries or in three prefectures described above. Based on CDA (canonical discriminant analysis), 6 elements (Ba, Mg, Mn, Ni, Rb, Sr) were found to be effective in the determination of the geographic origin among three countries. After examining the samples not using for the modeling to elucidate the reliability of the got CDA model, it was classified 97% correctly. Similarly, based on CDA, 7 elements (Al, Cu, Fe, Mg, Ni, Rb, Zn) were found to be effective in the determination of the geographic origin among three prefectures. It was classified 95% correctly. Those results suggested that it could be possible to determine the geographic origin of sencha using the metal-element composition.
  • 坂本 孝義
    2015 年 2015 巻 120 号 p. 61-65
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
    明治20年頃の鹿児島では,日干製を改めるために茶焙炉という竹製の道具を用いる釜炒り茶の製法の普及がなされた。それは揉捻葉を茶焙炉で効率的に乾燥させて仕上げる製法で,同様の製法はそのまま自家用の釜炒り茶やハンズ茶の製法に受け継がれている。同じ頃に宮崎でも茶焙炉の導入がなされているが,今日に伝わる宮崎の製法は鹿児島のそれとは異なり,揉捻葉の表面を乾かす程度に用いられている。長崎や佐賀においても茶焙炉の導入がなされているが,熊本については明らかにできなかった。また,茶焙炉は蒸し製にも用いられていた。
  • 2015 年 2015 巻 120 号 p. 67-71
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー
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