茶業研究報告
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2019 巻, 127 号
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報文
  • 竹本 哲行, 林 健
    2019 年 2019 巻 127 号 p. 1-10
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

    被覆期間が茶芽の生育に及ぼす影響について5年間継続して調べた。直がけ被覆では,2年目より,棚がけ被覆では,3年目より,被覆日数が多いほど,翌年の生育量が減少し,盛夏期の樹冠面温度も高かった。これらのことから,被覆程度の違いが経年的に茶樹生育に影響することを明らかにし,夏期の茶樹冠面温度計測により影響程度を検出できる可能性が示唆された。

  • 須藤 正彬, 笠井 敦, 佐藤 安志, 萬屋 宏
    2019 年 2019 巻 127 号 p. 11-18
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

    ナガチャコガネの効率的な防除には成虫に効果のある剤の探索が欠かせないため,先行研究で評価が十分でなかった複数の薬剤について,とりわけジアミド系のシクラニリプロールおよびネオニコチノイド系のチアメトキサムを中心に,複数の剤型および施用法による成虫への殺虫活性を比較し,効果的な施用法および試験方法について検討した。虫体浸漬法,および薬液処理されたダイズ植物体上での飼育試験により,チアメトキサムおよびクロチアニジンの高い殺虫活性が明らかになり,種子処理ダイズ等の餌植物を通じた成虫防除の可能性が示された。ジノテフラン等,その他のネオニコチノイド剤の活性は低かった。後発ジアミド剤のシクラニリプロールおよびシアントラニリプロールについて,すでに適用のあるMEP乳剤に匹敵する殺虫活性が示唆されたが,接触毒性の強さは不明であり,成虫への効果的な施用手段を引き続き検討する必要がある。

  • 水上 裕造
    2019 年 2019 巻 127 号 p. 19-25
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

    本研究は熟度の進行による香りの変化を明らかにすることを目的として行った。生葉に含まれる香気成分は製茶工程を経ると著しく変化することが予想されたため,生葉から直接香りを抽出し,分析に用いた。生葉から抽出した香気エキスを解析したところ,hexanal,(Z)-3-hexenal,(Z)-1,5-octadien-3-one,(Z)-3-hexenol,2-isopropyl-3-methoxypyrazine,2-isobutyl-3-methoxypyrazineの6成分は熟度の進行により増加し,高いFDファクターで検出された。従って,これらの成分はこわ葉臭等の香りに関与することが考えられた。一方,熟度の進行によりcoumarinとvanillinは減少し,これらは甘い香りがあることから,若芽の持つ甘い香りに関与していることが考えられた。

技術レポート
  • 園田 敬太郎, 和田 義彦, 今村 嘉博, 山中 成元
    2019 年 2019 巻 127 号 p. 27-36
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

    近年,滋賀県ではニホンジカの生息数が増えており,県内主要茶産地である甲賀市では,野生シカが茶園に侵入して生育,収量への影響があると言われていたが,十分な状況把握ができていなかった。

    筆者らは,2016年7月に生産者にアンケート調査を行ったが,幼木園において被害を認める生産者は約7割,成木園において被害を認める生産者は約9割であることが分かった。同年9月から行ったトレイルカメラを使った実地調査では,侵入は夜間に多く,シカが自生する雑草を摂食する様子が認められた。しかし,10月下旬以降はチャ樹冠面の成葉を摂食する様子も観察されるようになった。

    また肥料として施用する「菜種油かす」がシカを誘引しているとの生産者の声があることから,数種類の有機質肥料に対するシカの行動を調査した。その結果,一般草地に出没するシカは「菜種油かす」は摂食しないが,茶園に出没するシカは摂食することを認めた。さらに数種類の有機質肥料に対する行動を調査したが,「魚かす」は摂食の対象になり,「ひまし油かす」は摂食されにくいと考えられた。

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