茶業研究報告
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2020 巻, 130 号
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総説
報文
  • 片井 秀幸, 鈴木 康孝, 小林 栄人, 西川 博, 齋藤 武範, 青野 (柴田) 真里子, 太田 知宏, 神谷 健太, 山本 佳奈恵, 青 ...
    2020 年 2020 巻 130 号 p. 17-32
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    ʻしずかおりʼは,静岡県茶業試験場 (現静岡県農林技術研究所茶業研究センター) において,1989年にʻおくひかりʼを種子親に,ʻくりたわせʼを花粉親として交配した実生群から選抜,育成された。系統名89-2-7として2005年から2013年まで生産力および特性検定試験,ならびに地域適応性試験を実施した。その結果,収量性,荒茶品質等が煎茶用品種として優秀であると認められたため,ʻしずかおりʼと命名され,2013年に品種登録出願,2015年に品種登録,同年に静岡県奨励品種として採用された。

    ʻしずかおりʼの特性の概要は次のとおりである。

    一番茶の萌芽期はʻやぶきたʼより8日程度早く,摘採期はʻやぶきたʼよりも2日程度早いやや早生品種である。樹姿は半直立型であり,幼木期の生育は緩慢であるが,成木化するにつれて生育は旺盛となり,樹勢はʻやぶきたʼと同程度にやや強い。一番茶新葉,成葉ともに楕円形で,厚さがやや厚い。成葉はʻやぶきたʼに比べて色が濃く,光沢が多い。耐寒性は,赤枯れにはʻやぶきたʼと比較して同程度あるいはやや弱く,抵抗性評価はʻやや強ʼである。耐病虫性は,ʻやぶきたʼと比較して,炭疽病の発生はやや少なく,抵抗性評価はʻ中ʼである。赤焼病は試験地により異なるものの発生が多い傾向にあり,抵抗性評価はʻやや弱ʼである。クワシロカイガラムシの寄生はʻやぶきたʼよりもやや少なく,抵抗性評価はʻ中ʼである。収量性はʻやぶきたʼに比べ幼木期は低いが,成木期には高くなる。摘芽はやや芽数型である。荒茶品質はʻやぶきたʼよりも総合的に優れ,特に一番茶の香気,滋味に「花香,さわやかな香り,そう快味」等の特徴があり優れている。また,地域適応性にも優れ,静岡県内全域での栽培に適する。品種組合せによる経営の効率化や規模拡大を目指す経営体,上質な味と香りを生かしてブランド化を目指す地域・経営体に適した品種である。

  • 福田 健
    2020 年 2020 巻 130 号 p. 33-38
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,茶で登録のある各種薬剤を用いて,マダラカサハラハムシ成虫に対する室内試験での殺虫効果と茶園での被害防止効果を検討した。室内試験では供試した13剤のうち,フルキサメタミド乳剤は処理1日後には死虫率が100%で,食害が全く認められなかった。チアメトキサム水溶剤,スピノサド水和剤,スピネトラム水和剤は処理2日後に,ジノテフラン水溶剤,クロチアニジン水溶剤は処理4日後に死虫率が100%となった。茶園で供試した10剤はいずれも被害芽率を低下させ,本種に対する被害防止効果が認められた。

  • 水上 裕造
    2020 年 2020 巻 130 号 p. 39-46
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    玉露は覆い下茶園の新芽で製造され,青海苔様の香りや干し草様の香り,甘い香りがある。今回,産地および価格が異なる玉露15点を入手し,SPMEにより香りを抽出し,GC-OとGC-MSを用いて玉露の香りに関与する成分を特定した。さらに,AEDAにより各香気寄与成分の元の香りへの影響度合いを示すFDファクターを求め,主成分分析により玉露のヘッドスペースの香りを明らかにした。その結果,(Z)-1,5-octadien-3-one,dimethyl sulfide,3-methylnonane-2,4-dione,4-mercapto-4-methyl-2-pentanone,furaneol,2-acetyl-1-pyrrolineの6成分は玉露の香りに重要であることがわかった。これらの成分は極微量に含まれ,今後安定同位体標識化合物を内標準とした定量分析により,栽培から加工において玉露の香りを活かす手法の開発に貢献する。

短報
  • 荒木 琢也, 山田 龍太郎, 水上 智道, 角川 修, 雪丸 誠一
    2020 年 2020 巻 130 号 p. 47-50
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    省力的で面積当たりの散布量が均一な精密散布を実現するため,乗用型茶園管理機に搭載できる速度連動肥料散布ユニットを開発した。作業速度に応じて肥料繰り出しスクリューの回転数を制御する速度連動機構を採用した。肥料繰り出し特性について,スクリュー回転数と肥料繰り出し量の間には正比例の関係を確認した。速度連動機構により,作業速度の変動係数が大きい試験条件においても肥料散布量は安定した。本ユニットの有効作業量は従来の歩行型施肥機に比べて作業能率が高く0.80~1.13ha/hであった。圃場作業量は0.24~0.29ha/hであった。散布量は目標散布量に対して89~109%の範囲で散布できた。

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