最近6年間における当大学病院の抗生剤使用の現況と最近10年間における臨床材料からの菌検出頻度を我国の抗生剤使用の動向と比較して述ベた。1973年当院では検出菌の70%以上をグラム陰性桿菌が占め、使用抗生剤ではPenioillin系抗生剤 (PCs), Cephalosporin系抗生剤 (CEPs) が主流を占めてそれぞれ100.9kg, 76.6kgと最も多く, 次いでChloramphenicol (CP
1 20.3kg), Lincomycin (LCM), Clindamycin (CLDM) を含めたマクロライド系抗生剤 (MLs, 14.1kg), アミノ配糖体系抗生剤 (AGs, 10.8kg), テトラサイクリン系抗生剤 (TCs, 3.2g) の順であった。
PCs, CEPsの使用量は年々増加し, 1978年極めて僅か減少したものの上記6系統の主要抗生剤のなかで, これらが占める割合は88.2%であった。我国における成績ではこの比率は74.9%であり, 帝京大学では92% (1976) と報告藤井, 1979のされているので, 当院はこの中間的値をとっていた。
CP, TCsは我国の動向と同様の曲線を描き, 年々減少の一途をたどりCPでは1973年の20.3kgから1978年0.5kgへ, TCsでは3.2kgから1.5kgへと減少した。MLsとAGsはやや異なった態度をとり, 前者は1973年14.1kgから1975年8.4kgへと減少したのち, 再び増加し1978年は21.1kg使用されていた。主としてLCMとErythromycim (EM) とで形作られるMLsの動きは, 1973年にはじまったLCMによ偽膜性腸炎の報告や1975年の厚生省による抗生剤再評価によるCPの使用制限および嫌気性菌感染症に対する認識の向上などの要因によって変化しているものと考えられる。AGsの動きもMLsと類似したパターンをとり, 1973年10.8kgから1975, 1976年5.9kgと一時減少したが, 以降漸増し, 1978年は7.3kgの使用であった。この変化はKanamnycin (KM), Streptomycin (SM) の使用量の減少と緑膿菌を抗生領域に含むGentamicin (GM), Dibekacin (DKB), Amikacin (AMK) などの使用量の増加により形作られ, KM, SMの1回使用量に比し, GMなどのそれは1/10~1/5程度と少ないためやFlatoridinの使用中止とそれに代るとみられるKM錠剤の使用量の増加が影響しているものと思われた。
その他, Nalidixic acidをはじめとする抗菌製剤やPenicillin Gの使用量は, 年々減少の一途をたどっていた。
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