さきに著者らは
Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, Proteus vulgaris, Escherichia coliなどのグラム陰性桿株菌のケロールヘキシジンに対する耐性化およびその安定性について報告した1)が, このうち. セラチアはクロールヘキシジンに対する耐性獲得が箸しく, 試験管内で原株のMIC 15.6μg/mlに対し, 最終的にMIC 10,000μg/ml (最高生育濃度5,000μg/ml) のクロールヘキシジン耐性株が得られ, また緑膿菌や変形菌もセラチアと同様の耐性獲得の傾向を示したが, 大腸菌はきわめて耐性化しにくかった。
一方, セラチアが獲得した本耐性は, クロールヘキシジンを含値しない培地に継代培しても比較的安定てあった。(F
20てMIC 1,000μg/ml)。
さらに, 上記の耐性菌に対し塩化ペンザルコニウムや塩化ベンゼトーウムなどの第四級アシモニウム系消毒剤が有効であり, したがって院内での常用消毒剤を1種頬に限定せず, 異なる種類の消毒剤で少なくとも二度消毒するか, あるいは一定期間ごとに消毒剤の交互使用を実施することにより, 消毒剤に起因する院内感染は防止しうると考えられた。
今後, 院内感染においてこのセラチアがますます注目されるのではないかと思われるが, 著者らはセラチアのクロールヘキシジン耐性はクロールヘキシジンの分解に起因するのではないかと考えて実験を進めているが, 現在までのところ, この分解は耐性化に直接関与していないように思われる。すなわち, セラチアとクロールヘキシジンを接触させたのち, 培養炉液を薄層クロマトグラフ法で検したところ, 耐性に起因すると考えられるクロールヘキシジンの分解産物のスポットは見い出されていない。
このことから, セラチアの本耐性には菌体の膜構造の変化に基づく膜透過性の減少が関与しているのではないかと考えて実験を進めた。
本報では, セラチアによるプロテアーゼの産生を比較したのち, セラチア菌体に及ぼすクロールヘキシジンの影響を調べ。さらに菌体由来の脂質含量, およびその脂肪酸組成を調ぺ, セラチアのクロールヘキシジン耐性株の特徴を明らかにしようとした。
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