CHEMOTHERAPY
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30 巻, Supplement3 号
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  • 熊野 克彦, 三上 秀忠, 井上 松久, 三橋 進
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 1-19
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    セファマイシン系薬剤であるT-1982のin vitro, in vivoでの抗菌作用について検討を行なったので報告する。
    1) T-1982は幅広い抗菌スペクトラムを有し, P. aeruginosaを除いたグラム陰性菌に対してはCFX, CMZ, CTTなどのセファマイシン系薬剤と同等もしくはやや強い抗菌力を示し, とくにS. marcescms, E. oloacae, C. frmndiiなどに対しては対照薬剤に比べ, 数倍強い抗菌力を示した。
    2) グラム陽性菌のS. aurmsS. epidermidis, 嫌気性菌のB. fragilisなどに対する抗菌力はグラム陰性菌に対する抗菌力に比べ劣っていた。
    3) β-Lactamaseに対する安定性について検討した結果, 各種のβ-lactamaseに対して安定であることがわかった。
    4) 培地の種類およびpH変化, ヒト血清添加ならびに菌接種量増加による抗菌力への影響はほとんどみられなかった。
    5) T-1982の細菌の増殖におよぼす影響を生菌数測定法により検討した結果, T-1982は低濃度で殺菌効果を示し, 再増殖が認められなかった。
    6) マウス実験的感染症に対するT-1982の治療効果はCFX, CMZ, CTT, LMOXより優れた成績が得られた。
  • 横田 健, 関口 玲子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 20-28
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新Cephem系抗生物質, T-1982の良好な生体内効果を説明する目的で, この薬剤と血清・補体との協力的殺菌作用, MIC以下の量 (sub MIC) の存在下でのマクロファージ (Mφ) の食菌, 殺菌効果, T-1982の宿主生体に対する直接的感染防御力促進作用の有無などを検討した。
    それぞれ単独では殺菌が完全でないT-1982の50%増殖阻止濃度 (ID50) と20%ヒト非働化血清+2%モルモット補体を共存させると, Escherichia coli NIHJ JC-2の105個の生細胞は数時間以内に完全に殺菌され, その効力は既存の第一~第三世代Cephem系抗生剤より強かった。
    T-1982はPBP3, Ib, Iaの順に結合するので培養したマウスMφ にE. coli NIHJ JC-2を加え, 1/2MICのT-1982存在下で培養すると, 菌細胞はフィラメント化およびバルジ形成し, Mφによく食菌されるのみでなく, Mφ 内の菌体は容易に消化され, 薬剤無添加時にMφ内の大腸菌が再増殖し, Mφを破壊するのと, 明らかに対照的であった。
    Camdidaを攻撃菌として行なった感染防御実験では宿主に対する直接的な免疫促進効果は認められなかったので, T-1982の良好な生体内効果は, 菌表層を補体や白血球による殺菌作用を受けやすくなるように変化させるためと結論された。
  • 小酒井 望, 小栗 豊子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 29-43
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    私どもは1980, 1981年に各種臨床材料から分離したStaphylococcus, Streptococcus, Escherichia, Klebsiella, Citrobacter, Enterobacter, Serratia, Proteus, Pseudomonas, Flavobacterium, Acinetobacter, Achromobacter, Alcaligenes, Peptococcus, Clostridium, Bacteroides 計1,019株を用いて, T-1982の抗菌力を他のCephem剤と比較した。
    1) T-1982はグラム陽性球菌に対しては, 抗菌力は弱く, 他のCephem剤の多くに劣っていた。
    2) T-1982はE.coli, Klebsiellaに強い抗菌力を示し, CEZ, CPZ耐性株も本剤には感受性であった。また第1, 第2世代のCephem剤に大部分が耐性であるC.freundii, E.cloacaSerratiaの中に, 本剤が小さいMICを示す菌株がかなり認められた。Proteus5菌種に対しては, 本剤はCZXよりも抗菌力は劣るが, CEZよりは優れ, CPZと同程度か, 菌種により優れている場合もあった。
    3) 非発酵菌に対するT-1982の抗菌力は比較的弱かった。
    4) 検査した嫌気性菌のうちPeptococcus, C.perfringmsに本剤は強い抗菌力を示し, B. melaninogmicusにもかなり強い抗菌力を示した。B.fragilisを主とする他のBacteroidesに対しても, CZXとともに比較的強い抗菌力を示した。
  • 五島 瑳智子, 宮崎 修一, 小川 正俊, 金子 康子, 辻 明良, 武藤 弓子, 桑原 章吾
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 44-62
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cephamycin系抗生物質T-1982のin vitro抗菌作用を検討した結果・グラム陽性菌・グラム陰性菌の各菌種に対し広い抗菌スペクトラムを有し, 特にStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Proteus属 (Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Proteus rettgeri, Proteus inconstans), Enterobacter cloacaeに対し優れた抗菌力を確認した。Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Proteus morganii, Serratia marcescens, Citrobacter freundii, Pseudomonas cepacia, Flavobacterium meningosepticum, Acinetobacter calcoaceticus, Achromohacter xvlosoxidans. Bacteroides fragilis に対する抗菌力はやや劣るが, 従来のCephamycin系薬剤に比べれば良好であった。Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas maltophilia に対しては, 他のCephamycin系薬剤同様無効であった。
    β-lactamaseに対しては, RICHMONDの分類型すべてを含む各種菌株から得た酵素に対して他のCephamycin系 (Cefoxitin, Cefmetazole, Cefotetan) 同様安定であった。
    E.coliC-11株, K. pneumoniae 3K-25株, S. marcescensNo.2 株, C. freundii GN 346 株に対するin vivoマウス実験感染におけるT-1982の治療効果は, Cefoxitin, Cefmetazole, Cefazolin, Cefoperazoneより優れ, Cefotetanと同様, Latamoxefよりやや劣っていた。
  • 神永 陽一郎, 佐藤 芳美, 崎山 典子, 伊藤 章
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 63-68
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    臨床材料より分離したGNF-GNR226菌株の, T-1982とCPZ, CFX, CTM, CEZ, PIPC, CBPC, AMK, MINOに対するMICについて検討し, 次の結果をえた。
    GNF-GNRに対しては, 総体的にはPIPC, CPZ, AMKおよびMINOなどで良好な成績が認められた。T-1982はP.putrtrefaciens, A.faecalisなどで比較的良好な成績を示したものの, その他に対しては菌種, 菌株によって多少異なるが低感受性であった。
    したがって, T-1982はGNF-GNRに対してはあまり期待はよせられない。しかし, 一部の菌株では若干ではあるが12.5μg/ml以下を示した株もあり, 症例によっては効果が期待されるものがあろう。
  • 渡辺 邦友, 磯野 美登利, 青木 誠, 小林 とよ子, 上野 一恵
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 69-79
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の嫌気性菌に対する抗菌力について検討し, 次の結果を得た。
    1) T-1982の嫌気性菌に対する抗菌スペクトラムは, Cefmetazole, Cefotetanのそれとほぼ一致した。T-1982のB.fragilisに対する抗菌力は, Cefmetazole, Cefotetanよりもやや優れ, 1.56~6.25μg/mlのMICを有した。嫌気性球菌に対する抗菌力は, Cefazolin, Cefotaxime, Cefoperazoneより劣るもののCefmetazole, Cefotetanにほぼ匹敵する抗菌力を示した。T-1982のB.thetaiotaomicron, E.lentum, C.difficile, C.ramosumに対する抗菌力は弱かった。
    2) T-1982はB.fragilisの産生するβ-lactamaseに対しCefmetazole, Cefotetanと同様非常に安定であった。
    3) T-1982含有ブイヨン (MIC濃度) 中でB.fragilisは, ほぼ完全に溶菌しており, フィラメントはほとんど認められなかった。
    4) T-1982含有培地でB.fragilisを継代培養すると, 菌の耐性は徐々に上昇した。
    5) マウスにT-1982の2mgを7日間皮下注射することにより, 盲腸内のC.difficileの異常増殖率は80%であったが, 菌数は極めて少なかった。
    6) T-1982はマウス腹腔内に接種されたB.fragiliisに対し, in vivoで強い抗菌作用を示した。
  • 西野 武志, 大槻 雅子, 千田 尚人, 内藤 睦子, 南場 勲, 谷野 輝雄
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 80-95
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセファマイシン系抗生物質T-1982に関する細菌学的評価を既知抗生物質と比較検討し, 以下の結果を得た。
    T-1982の抗菌スペクトラムは比較薬として用いたCefmetazole, Cefotetanと同様, グラム陽性菌, 陰性菌に幅広く分布し, その抗菌力はCefotetanとほぼ同等であった。またBacteroides fragilisに対しても抗菌力を示したがPsmdomonas aeruginosaには抗菌力を示さなかった。T-1982はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Serratia marcescens に対して作用濃度に応じた殺菌作用を示した。しかしMICと3時間MLCの間には大きな差が認められた。マウス実験的感染症に対するT-1982の治療効果はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Serratia marcescensでCefotetanと同等かそれ以上であったが, Proteus morganiiに対してはCefmetazoleよりも劣っていた。T-1982をEscherichia coliに作用させた時の形態変化を観察したところ, 菌体は著しく伸長化した。Escherichia coliおよびPsmdomonas aeruginosaのペニシリン結合蛋白質に対する親和性について検討を行なったところ, T-1982はPBP3に対して強い親和性を示した。
  • 尿中MIC, MBC値について
    大井 好忠, 後藤 俊弘, 川畠 尚志, 小畠 道夫, 岡元 健一郎
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 96-106
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    尿中抗菌力の意義を解析するために, 今回T-1982, CMZ各19を6名の健康成人男子に投与し12時間まで採尿し, 尿中濃度を測定するとともに, 人工尿で倍数稀釈系列をつくり, 尿路感染に対する両剤のMICピーク値に近似したMIC値を示すE.coli, K.pneumoniae, E.cloacae, S.marcescens各1株に対する尿中抗菌力を測定した。
    尿中抗菌力測定成績から抗菌性抗生剤の尿路感染症治療に際してのin vivo効果の予測が可能であり, 尿中MIC, MBCを求めることにより実測MIC値と比較した結果, 尿中MIC値が実測MIC値より小になる薬剤は, 生体内動態, 代謝, 尿中細菌にたいする安定性, 抗菌力の総和として優れているといえる。た尿中MICの測定は最初の2時間尿でおこなえば臨床応用が可能なことが示唆された。
    今回の両剤の成績ではT-1982の方がCMZに比し, 尿中MIC値が実測MIC値より小さく, 時間小さな尿中MIC値を維持し得た。またT-1982, CMZともに尿中MICとMBCとの差は1段階以内であった。
  • 抗菌力と髄液中移行について
    小林 裕, 春田 恒和, 大倉 完悦, 黒木 茂一
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 107-111
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新Cephamycin系抗生剤T-1982について, 抗菌力および髄液中移行を検討した。
    本剤の各種臨床分離菌株205株に対するMICをLatamoxefと比較したところ, E.coli, S.typhi, Klebsiella, S.marcescensではほぼ同等, Salmonella B群, Enlerobacter sp., Citrobacter sp., S.aureusでは若干, Proteus sp.では明らかに, Latamoxefの方がすぐれていた。P.aeruginosaに対しては, 本剤はみるべき抗菌力を示さなかった。
    黄色ブドウ球菌性髄膜炎家兎4羽における本剤100mg/kg静注後の髄液中濃度平均値のピークは, 1時間にあり, 6.49±2.41μg/mlであった。最高濃度の髄液血清比百分率は3.9%, 2時間までのAUC髄液血清比百分率は9。21%, T1/2髄液血清比は3.50で, Cephamycin剤のうちではCefoxitin, Cefmetazoleと近似し, Cefotetanよりはるかにすぐれていた。
    以上の成績から, 限定された範囲内ではあるが, 本剤は化膿性髄膜炎の治療において有用なことを推測させるものであり, 臨床検討を行なっておくべきであると考えられた。
  • 才川 勇, 保田 隆, 福岡 義和, 高畑 正裕, 松原 信之, 四辻 彰, 岡本 直子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 112-126
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたCephamycin系抗生剤T-1982の細菌学的評価を行なった結果, 次の成績が得られた。
    1) T-1982はCephalosporin系抗生剤に耐性な菌を含むグラム陽性およびグラム陰性菌に幅広い抗菌スペクトラムを有していた。特にEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Serratia marcescensおよびProteus属に対して優れた抗菌力を有し, また嫌気性菌であるBacteroides fragilisに対しても優れた抗菌力を有していた。
    2) T-1982の抗菌力は培地の変動, 血清の共存, 接種菌量の多少などの影響を比較的受け難く, MIC付近で殺菌的に作用した.
    3) T-1982はpenicillinaseおよびcephalosporinaseに対して, 他のCephamycin系抗生剤同様, 非常に安定であった。
    4) E.coliのpenicillin binding Proteins (PBPs) に対する親和性は, PBP-3に対する親和性が最も強く, 次いでPBP-1B, PBP-1Aであった。
    5) 実験的マウス感染症に対しては, T-1982の治療効果が比較薬剤中最も優れていた。またCEZ耐性菌に対して優れた治療効果を示した。
  • 才川 勇, 保田 隆, 福岡 義和, 山城 芳子, 池田 靖, 永田 優子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 127-130
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982とアミノグリコシッド系抗生剤, マクロライド系抗生剤およびTetracyclineとの併用効果について, 臨床材料から分離されたSerratia marcescensを被検菌としてin vitroおよびin vivoで検討した。その結果, T-1982は, in vitro抗菌力においてアミノグリコシッド系抗生剤 (Gentamicin, Dibekacin) と強い協力作用を示したが, マクロライド系抗生剤 (Erythromyctn) およびTetracyclineとは弱い併用効果を示した。また, マウス実験的感染症に対する治療効果においても, T-1982はアミノグリコシッド系抗生剤と相乗効果を示した。
  • 才川 勇, 保田 隆, 四辻 彰, 福岡 義和, 高畑 正裕, 西田 亨子, 笹倉 かの子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 131-138
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    マウスおよびラットを用いて各種感染モデルを作製しこれらに対するT-1982の治療効果を, セフェム系抗生物質を対照として比較検討したので報告する。
    1) Escherichia coli TK-16またはSerratia marcescens IID 620 重症全身感染マウスにおいて, T-1982はcefoperazone (CPZ), latamoxef (LMOX) およびcefotetan (CTT) とほぼ同等, cefmetazole (CMZ), cefoxitin (CFX) およびcefazolin (CEZ) より優れた治療効果を示した。
    2) E. coli TK-16 またはS. marcescens IID 620 全身感染マウスにおいて, T-1982投与群のマウス腹腔内生菌数は顕著に減少しCTTと共に最も優れていた。
    3) Cyclophosphamide前投与による免疫低下マウスにE. coli TK-16またはK. pneummiae Y-41を全身感染させた時, T-1982は最も優れた治療効果を示した。
    4) E. coli TK-16足蹠感染マウスにおいて, T-1982, CPz>CMz>CEZの順で優れた治療効果を示した。
    5) E. coli TK-39, E. coli TK-117またはP. mirabilis KU-1感染腎孟腎炎ラットにおいて, T-1982, LMOX>CPZ, CFX≧CMZ, CEZの順で有効性が認められた。
    6) E. coli TK-143またはK. pneumoniae Y-41子宮内感染ラットにおいて, T-1982はCMZより優れた治療効果を示した。
    7) E. coli TK-16 granuloma pouch内感染ラットにおいて, 薬剤の低投与量および高投与量群でもT-1982, CPZ>CMZ, CEZの順に有効性が認められた。
  • 才川 勇, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 林 敏雄, 荒木 春美, 松永 清美, 中島 博美
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 139-144
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規セフェム系抗生剤T-1982の体液内濃度測定法について検討した。
    検定菌としてKlebsiella pneumoniae ATCC 10031, 測定培地として独自に調製したKA培地 (ポリペプトン6g, 肉エキス1.5g, 酵母エキス3g, グルコース1g, 寒天15g, 蒸留水1L, pH6.5~6.6) を用いた二層ペーパーディスク法が最適であり, 0.39μg/ml~100μg/mlの濃度範囲で測定が可能であった。
    ヒト血清中濃度測定には, プールヒト血清またはコンセーラを用いて作成した検量線を用いるのが望ましく, Moni-Trol Iは不適であった。また尿一胆汁およびその他の体液内濃度は1/15Mリン酸塩緩衝液 (pH6.0) で作成した検量線を用いるのが望ましい。
    Bioassay法で求めた血清中濃度は, HPLC法の結果とほぼ一致した。各種の体液試料は-20℃に凍結保存すれば少なくとも1ヵ月は安定であった。
  • 才川 勇, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 林 敏雄, 南 新三郎, 熊野 克彦, 荒木 春美, 松永 清美
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 145-157
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の吸収, 分布, 代謝および排泄について各種動物およびヒトで検討し, 以下の成績が得られた。
    1) T-1982の20mg/kgを各種動物に静脈内投与した場合, 血清中濃度はマウス, ラット, ウサギ, イヌ, サルの順に高くなる傾向を示した。生物学的半減期はサルが一番長く68.8分であった。また, ウサギ, サルではCefmetazole (CMZ) に比べて高濃度で持続的に推移した。
    2) T-1982のマウスおよびラットにおける組織内濃度を検討した結果, 腎, 肝をはじめ主要臓器に良好な移行性を示した。
    3) T-1982の尿中および胆汁中排泄には種差が認められ, ラットでは胆汁中排泄型, ウサギ, イヌ, サルでは尿中排泄型を示した。
    4) 肝あるいは腎排泄障害ラットでの吸収, 排泄を検討したところ, 肝あるいは腎障害ラットともに血清中濃度は正常ラットに比べて高濃度で推移したが, 蓄積性は認められずすべて排泄された。5) ヤギ乳汁中へはほとんど排泄されず24時間で0.0077%であった。
    6) Haemophilus influenzae性髄膜炎家兎における髄液中移行性は, 正常家兎に比べきわめて良好であった。
    7) T-1982の19をヒトに静脈内投与した場合, 血清中濃度は投与15分後に118μg/mlを示し, 以後生物学的半減期95分で推移した。また尿中回収率は9時間で76.8%であった。
    8) ラット, ウサギ, イヌ, サルおよびヒトにT-1982を静脈内投与した時の尿中には, T-1982の他にT-1982AおよびT-1982Bがわずかに認められた。
    9) 血清タンパク結合率には種差が認められCMZと同様サルが最も高く, イヌで最も低い結合率を示した。ヒト血清との結合率は54.9%であった。
  • 才川 勇, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 南 新三郎, 西田 亨子, 熊野 克彦, 荒木 春美, 松永 清美
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 158-162
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の吸収排泄に及ぼすprobenecidの影響を各種動物を用いて検討した。
    ラット, ウサギおよびイヌにおいて, T-1982の血中濃度および尿中排泄にはprobellecid併用による影響は認められず, T-1982は主に糸球体ろ過によって腎から排泄されるものと思われる。
    一方, サルにおいてprobenecid併用投与によって非併用投与よりもT-1982の血中濃度上昇および尿中排泄率の低下が認められ, 腎からの排泄には糸球体ろ過のほかに尿細管分泌が関与していることが示唆された。
  • 大山 馨, 中島 良文, 野口 雅志, 田井 賢, 杉本 由美子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 163-168
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    腎障害患者にT-1982を点滴静注した時, 腎機能が低下するにつれて, 血漿中T-1982濃度は高く, 持続性を示した。また, 尿中には未変化T-1982のほかに分解生成物であるT-1982AおよびT-1982Bが少量排泄された。
    腎障害患者を対象としてCompartment modelにより薬動力学的検討を行なった結果, T-1982 AおよびT-1982Bの生体内における分解速度定数は小さく, それぞれ0.0147hr-1および0-0297hr-1と推定され, また排泄速度定数はいずれもT-1982より大きかった。これらの結果からT-1982AならびにT-1982Bは蓄積性を示さないものと考えられる。
  • 舘野 政也, 舌野 徹, 舟坂 雅春
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 169-174
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の産婦人科領域での基礎的検討として, 19静脈内投与後の血清中濃度および婦人性器各組織内濃度を測定し, 薬動力学的解析を行なった。
    すなわちT-1982 1g静脈内投与した際の血清中濃度はtwo compartment model, 婦人性器各組織内濃度はthree compartment mode1により解析し, それぞれのsimulation curveを作成した。
    その結果T-1982の婦人性器各組織への移行は速やかであり, 各組織内濃度推移は血清中濃度推移と相関しており, 適度な時間, 充分な組織内濃度を維持していた。
  • T-1982の胆汁中移行と胆汁中における安定性
    谷村 弘, 小林 展章, 三木 毅一郎, 吉田 圭介, 斉藤 徹, 黄 文芳, 関谷 司, 日笠 頼則, 大谷 淑郎, 鈴木 和義
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 175-189
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいCephamycin系抗生物質であるT-1982の胆汁中移行と胆汁中における安定性について検討した。
    1) Balloon occludable T-tubeを挿入した6例について, T-198219静注後20~30分ごとに6時間にわたる胆汁中濃度および移行率を測定し, そのうち3例でCMZ19と, 1例でCFX19とのcrossover法による比較検討を行なった。本薬剤の最高胆汁中濃度は3, 300μg/ml, 2, 270μg/ml, 2, 200μg/ml, 1, 700μg/mlであり, 対照薬剤であるCMZ, CFXの10~20倍以上の高濃度であった。4例におけるT-1982の0~6時間回収率は16.0%, 5.3%, 13.1%, 4。6%であったが, それぞれの症例に対する対照薬剤の回収率はCMZ1.34%, 0.25%および2.2%, CFX0.17%であり, T-1982は対照薬剤の6~27倍と良好であった。これら肝機能障害のない4例に比べて肝機能障害を有する2例の最高胆汁中濃度は約10分の1であったが投与後1時間30分で192μg/ml, 240μg/mlとなお高値が得られた。
    2) 胆汁中移行および移行率のdose responseを検討した。T-1982 250mg, 500mg, 1,000mg投与後の30分あたりの最高排泄量は, 5.78mg, 12.55mg, 20.61mgときわめて良好なdose responseを認め, 0~6時間回収率は12.4%, 12.0%, 10.5%と, 1,000mgまでは一定の良好な胆汁中移行が認められた。
    3) T-1982の代謝体としてT-1982A体, T-1982B体があるので, HPLC法を用いてそれらを分離同定し, ヒト胆汁中への排泄および胆汁保存中におけるT-1982A体およびT-1982B体の産生について検討した。例えば, T-1982500mg静注1時間30分後の胆汁では, 採取後6時間室温放置により, 採取直後に比べ, T-1982A体, T-1982B体が急増し, また, 採取胆汁をそのまま-20℃に冷凍保存しても, T-1982A体, T-1982B体は25~30%も産生されることが判明した。しかし, 胆汁を-80℃に保存するか, 1/10Mリン酸緩衝液で希釈保存した検体では, T-1982A体, T-1982B体はT-1982の数%にすぎなかった。一方, T-1982500mg静注90分後と6時間後に採取し, ただちに測定した結果では, T-1982A体, T-1982B体は胆汁中にほとんど同じ濃度で検出された。
    4) 肝内胆管内の胆汁を直接採取し, ただちにHPLC法にて測定した結果, T-1982以外にもごく少量のT-1982A体およびT-1982B体が胆汁中に認められ, 単なるpHによる排泄後の変化でないことを確認した。
  • 才川 勇, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 林 敏雄, 北山 理恵子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 190-197
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の血清蛋白結合について検討を行ない次の結果を得た。
    T-1982の血清蛋白との結合は可逆的であった。
    T-1982の血清蛋白結合率は血清蛋白濃度や薬剤濃度によって影響を受け, 血清蛋白濃度の増加に伴って高くなり, 薬剤濃度の増加に伴って低下した。
    本剤の結合サイトは1種で, 結合定数と最大結合量はそれぞれ3.60×103, 0.58でありLatamoxefやCefmetazoleとは若午異なる結果であった。
    ピリルビンと血清蛋白との結合に対してT-1982は影響を及ぼさず, T-1982によるビリルビン遊離はほとんど認められなかった。
    T-1982の炎症部位への移行性は良好であり, ラットとウサギにおいて蛋白結合率は異なるが, 移行性には差は認められなかった。
  • 中谷 林太郎, 千田 俊雄, 柴岡 はるみ, 石塚 巌, 深谷 一太
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 198-205
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    正常人を用いてT-1982およびCMZを7日間の間隔をおいて交差投与 (静注) し, その腸内菌叢構成菌群がどのような変動を示すかを検討した。先に投与した場合は両薬剤共に偏性嫌気性菌群, 通性嫌気性菌群および好気性菌群ともに減少傾向を示したが, 8日後に投与した場合は先に投与した同系統の抗生剤の影響により必ずしも構成菌群が一様に減少するとは限らなかった。また, 両剤を比較するとT-1982の方がCMZより減少の程度が少なく, 腸内菌叢に与える影響が比較的小さいと考えられた。
  • 竹内 良夫, 木村 義民, 西村 葉子, 八木 和郎, 吉河 達祐, 石井 洋二
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 206-211
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の免疫原性ないし抗原性についてウサギ, モルモットおよびマウスを用いて検討し次の結論をえた。
    1) T-1982単独をadjuvant加感作したものでは, 免疫原性は認められなかった。
    2) T-1982をproteinとcouplingさせたものをCFAとemulsionにしてウサギを過免疫するとT-1982に対する特異抗体が産生されることが間接血球凝集, 同阻止反応, モルモットを用いての3hr.PCA反応によって認められた。
    3) T-1982とCET, CEZ, ABPC, PCGの間の交叉抗原性はほとんどみられないか, きわめて軽微であった。
    4) T-1982のマウスに対するIgE抗体の産生能について検討したが, 薬剤単独感作では抗体産生はまったく見出されなかった。
    5) モルモットに対するアナフィラキシー・ショックの発来性はまったく認められなかった。
    6) T-1982のクームス陽性化作用は, CET, PCGに比べ弱かった。
  • 第1報: 一般薬理作用
    山中 康光, 江頭 亨, 荒谷 春恵, 建石 英樹
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 212-221
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新Cephamycin系抗生物質T-1982の薬理作用を検討した。
    1) 中枢作用: ether麻酔, pentobarbital睡眠, pentetrazoleけいれん, 熱板法, sedativeataxic scoreに対しては1,000mg/kgまでほとんど影響なかった。1,000mg/kgで酢酸法たよるwrithing数は有意に減少した。ウサギ直腸温には変化はみられなかった。
    2) 循環器系に対する作用: 犬の血圧, 呼吸に対し, 200mg/kgまではほとんど影響を与えなかつたが, 500mg/kgでは一過性の軽度血圧下降がみられ, 血流量の増加がみられた。AchおよびAdに対する感受性に対してもほとんど影響なかった。摘出モルモット心房標本および摘出ウサギ耳殼血管潅流量に対し10-3g/mlまでの濃度でほとんど変化なかった。
    3) 平滑筋に対する作用: 摘出ウサギおよびモルモット腸管, 摘出モルモット気管筋, 摘出ラット子宮 (妊娠および非妊), 摘出ラット輸精管および摘出ラット胃底筋の自動運動あるいは筋緊張に対し, 10-3g/mlの濃度までほとんど影響を与えなかった。
    4) 摘出ラット横隔膜神経一筋標本: 10-3g/mlまでの濃度で直接および間接刺激による筋収縮に対し影響を与えなかった。
    5) ラット尿量および電解質排泄量に及ぼす影響: ラットに250, 500および1,000mg/kg投与した際, 1回投与群では著明な変化はみられなかった。7日投与群では尿量は250mg/kgでは増加し1,000mg/kgで減少した。Na排泄量は減少し特に1,000mg/kgで著明であった。K排泄量は500mg/kg以上の投与量で減少した。
    以上の結果より, T-1982の臨床応用に際しては, 安全性は高いと考えられる。
  • 第2報: 生体内動態
    荒谷 春恵, 建石 英樹, 祢宜田 純子, 山中 康光, 江頭 亨
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 222-231
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982の生体内動態をウサギ, ラットおよびマウスを使い, 血中濃度, 臓器内分布, 胆汁内排泄および尿中排泄などを検討した。
    1) 20mg/kgを投与した際の血中濃度での生物学的半減期は, ウサギ (静注) で37.06分, ラット (静注) で11.92分, ラット (筋注) で15.94分およびマウス (筋注) で12.97分であった。筋注部位での生物学的半減期はラットで11.63分およびマウスで10.31分であった。
    2) 臓器内分布は, ラットでは血中濃度がもっとも高く, 腎臓, 肝臓, 肺臓, 心臓, 脾臓, 筋肉および睾丸の順となり, マウスでは腎臓, 肝臓および十二指腸内濃度は血中濃度よりも高かった。
    3) 尿中排泄率 (0~6時間) は, ラットでは, 30.07~39.45%およびウサギでは35.33~39.66%であり, その過半量が0~1時間に排泄された。
    4) ウサギの胆汁内排泄率は7.51~11.57%であり, 胆汁内濃度は血中濃度の1.3~60倍であった。
    5) タンパク結合については動物による種差がみられたが, ヒト血漿では62.8%でその過半量が可逆性結合であった。アルブミンとの結合係数 (1/n) は0.9194であった。
  • マウス, ラットおよびイヌでの急性毒性試験
    正谷 博之, 中村 昌三, 河村 泰仁, 永井 章夫, 長沢 峰子, 高木 淑子, 和田 直子, 米田 豊昭, 高井 明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 232-241
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいCephamycin系抗生物質であるT-1982のマウス, ラットおよびビーグル犬における急性毒性を検討し, 次の結果を得た。
    1) T-1982のLD50値は6週齢のマウスに対しては, 経口, 皮下, 腹腔内および静脈内投与で10g/kg以上, 6週齢ラットに対しては, 経口, 皮下および腹腔内投与で10g/kg以上, 静脈内投与では9.55~10.19g/kg, 幼若ラットに対する皮下投与ではLD50値はおよそ10g/kgであった。またビーグル犬に対する静脈内投与では, LD50値はおよそ8g/kg以上と推定された。
    2) 6週齢マウス, ラットの毒性症状は皮下投与では投与部位の高度の炎症, 腹腔内投与ではwrithingが観察きれた。静脈内投与では高度の肺水腫とうっ血があり, 呼吸不全が死因であった。幼若ラットの毒性症状は成熟ラットの場合と類似していた。
    3) ビーグル犬での6g/kgおよび8g/kg静脈内投与では, GOT, GPT, LDH, 血糖値が軽度から中等度に一過性に上昇した。血清蛋白のセルロースアセテート膜電気泳動で, 陽極側に易動度の速いアルブミンが全例に出現した。
  • ラット3ヵ月間皮下投与亜急性毒性試験
    岩崎 信一, 柴田 哲夫, 佐藤 盛, 中川 重仁, 米田 豊昭, 高井 明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 242-261
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982のラット3ヵ月間皮下投与亜急性毒性試験を, 200, 500, 1,000, 2,000mg/kg/dayの投与群を設定して行ない, 以下の結果を得た。
    1) 高用量群では, T-1982注射中に泣鳴が観察きれ, 一部のラットでは投与局所の出血や硬結が認められた。また, 投与局所の肉眼的, 組織学的観察では, 各群に, ほぼ投与量に比例した皮下出血, 浮腫, 炎症性細胞浸潤があり, 高濃度の溶液の連続皮下注射による局所障害が認められた。
    2) 死亡例はなく, 発育, 摂餌量, 尿検査, 血液検査結果にも薬剤投与に起因すると思われる異常が認められなかった。
    3) 血清のセルロースアセテート膜電気泳動では, 陽極側に易動度の速いアルブミンが, 2,000mg/kg, 1,000mg/kg投与群に出現していたが, 回復試験ではこの変化が認められなかった。他の血液化学検査結果には著変がなかった。
    4) 盲腸腔の拡大が, 各群の雌雄に投与量に比例して認められたが, 拡張している盲腸粘膜には組織学的な異常がみられなかった。回復試験の盲腸には異常がなかった。
    5) 本試験におけるT-1982の最大無作用量は500mg/kgであった。
  • ビーグル犬3ヵ月間静脈内投与亜急性毒性試験
    米田 豊昭, 河村 泰仁, 柴田 哲夫, 佐藤 盛, 永井 章夫, 中川 重仁, 高井 明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 262-292
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982のビーグル犬3ヵ月間静脈内投与での亜急性毒性試験と回復試験を, 100, 200, 400mg/kg/dayの投与量群を設定して行ない, 次の結果を得た。
    1) 症状, 発育, 尿検査, 心電図, 眼底検査, 臓器重量, 剖検所見および組織学的検査結果には薬剤投与に起因すると思われる異常を認めなかった。
    2) 血液検査で, 400mg/kg投与群8例中4例に, 投与2カ月後検査での赤血球数, ヘモグロビン, ヘマトクリットの減少と網赤血球数の増加が軽度から中等度に認められた。しかし, 3カ月後検査ではこの変化が著しく軽減されており, また, 回復試験の血液検査値には異常がなかった。
    3) 血清総コレステロール値が, 投与1~2ヵ月後の検査で, ほぼ投与量に比例した増加を示していたが, 3ヵ月後の検査では正常値に復していた。この変化は雌に比較的明瞭に現われていた。
    4) 血清蛋白のセルロースアセテート膜電気泳動では, 陽極側に易動度の速いアルブミンの出現が投与量に比例して認められたが, 可逆的な変化であった。
    5) 本試験における最大無作用量は200mg/kgと判断された。
  • カニクイザル3ヵ月間筋肉内投与亜急性毒性試験
    河村 泰仁, 永井 章夫, 柴田 哲夫, 佐藤 盛, 中川 重仁, 稲場 淳子, 米田 豊昭, 高井 明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 293-318
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982のカニクイザル3ヵ月間筋肉内投与亜急性毒性試験と回復試験を, 20頭のサルを使用し, 100, 200, 400mg/kg/day投与群と生理食塩水投与対照群を設定して行ない, 次の結果を得た。
    1) 死亡例はなく, 発育, 尿検査, 血液検査結果に異常が認められなかった。
    2) 投与期間中に軟便の排泄が, ほぼ投与量に比例して断続的に観察されたが, 休薬と同時に回復した。
    3) 血液化学検査では, 血清のセルロースアセテート膜電気泳動で, 陽極側に易動度の速いアルブミン分画が投与量に比例して認められたが, 可逆的な変化であった。
    4) 400mg/kg/day投与群の注射部位筋肉に, 対照群よりも若干強い筋障害が認められた。
    5) 剖検所見, 組織学的検査では, 薬剤投与に起因すると思われる異常が認められなかった。
    6) 本試験における最大安全量は, 200mg/kg/dayと推定された。
  • ラットにおける生殖試験
    中田 弘子, 中村 昌三, 小前 憲久, 滝本 陽子, 高井 明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 319-344
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    セファマイシン系抗生物質であるT-1982を皮下あるいは静脈内に投与し, ラットでの生殖試験を行ない以下の結果を得た。
    1) 妊娠前および妊娠初期投与試験
    雌雄ともに投与期間中摂水量の増加が認められた。生殖ならびに胚・胎仔におよぼす影響は認められなかった。
    2) 器官形成期投与試験
    母体に対しては投与初期の摂餌量の減少および投与直後より分娩7日後まで摂水量の増加が認められた。胎仔の体重, 死亡率, 外形, 骨格および内臓にT-1982投与による影響は認められず, 出生仔の発育, 哺育率, 生存率, 生後分化の時期, 行動, 情動性, 学習および生殖能力にも異常は認められなかった。
    3) 周産期および授乳期投与試験
    母体の摂水量に有意な増加が認められたが, 妊娠期間, 出生率および哺育率には影響は認められなかった。出生仔の発育に軽度の抑制が認められたが, 6週後にはその差は認められなかった。また, 出生仔の行動, 情動性, 学習および生殖能力には異常は認められなかった。
    なお, 上記3試験ともに投与期間中の軟便が認められた。
  • フロセミド併用によるラット腎毒性試験
    中川 重仁, 柴田 哲夫, 佐藤 盛, 永井 章夫, 稲場 淳子, 米田 豊昭, 高井 明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 345-358
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規Cephamycin系抗生物質T-1982をGlycerol (G) とFurosemide (F) で前処理したラットに250mg/kg, 1,000mg/kg静注し, 24時間後の腎障害作用を, CET, CEZと比較検討した。同時にT-1982 1,000mg/kg単独投与, F併用投与した場合についても検討し以下のような結果を得た。
    1) T-1982 1,000mg/kg単独投与およびF併用投与群では腎障害は発現しなかった。
    2) G+Fで前処理したラットにT-1982を250mg/kg, 1,000mg/kg併用投与するとG+Fで起こる軽い腎障害が投与量に比例して増強された。
    3) このことは尿検査での尿蛋白の出現, 血液化学検査でのBUN, クレアチニン値の上昇, さらに腎の組織学的検査での皮質尿細管上皮壊死増強などの変化として現われていた。また, 電顕的観察によっても近位尿細管上皮の変性壊死像が確認された。
    4) 比較対照薬として使用したCET, CEZのG+F併用投与でも, T-1982の場合と同様の変化がみられた。三剤の1,000mg/kg+G+F併用群で腎障害増強作用を比較した場合, その強きはCET≒CEZ≧T-1982の順であった。
  • 加藤 康道, 斉藤 玲, 石川 清文, 篠原 正英, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 木下 与四男, 佐藤 清
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 359-372
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいCephem系抗菌剤T-1982の検討により以下の結論をえた。
    1) 臨床分離のGNRに対し, 化学療法学会標準法で本剤, CEZ, CMZの抗菌力を測定したところ, 106/mlの接種菌量ではE. coli, Klebsiella各27株の大部分の株は0.2μg/ml以下で阻止された。またSerratia 27株, Proteus morganii20株でも本剤がもっとも優れていたが, Protms mirabilisではCMZがすぐれていた。
    2) 健康人6名における1g one shot静注時本剤およびCTMの血中濃度は1時間値で61.0, 24.2μg/ml, 6時間値で6.5, 0.7μg/mlで, T1/2は95分および62分と約1.5倍長く, 血中濃度面積 (AUC) も2倍以上大きい。
    尿中排泄率も8時間までに72.8%および65.4%, 腎クリアランス値は各52.3, 102.6ml/minであり, また本剤の方が体内での代謝が少ないと思われる。
    臨床例6名における191時間点滴後の血中半減期および尿中排泄は腎機能に障害のない患者では健康人の場合1) と, ほぼ類似の結果を示し, 血中半減期T1/2は約2時間であったが, 腎機能低下と共にT1/2は延長し, また尿中排泄量も減少した。
    3) 24例の各種感染症 (肺炎7, 慢性気管支炎3, 腎盂腎炎5, 腎盂炎3, 慢性膀胱炎3, 胆のう炎2, 髄膜炎1) に対し本剤を大部分の症例で192回点滴で投与し効果を検討したところ, 細菌学的に19/19例に有効で, 総合的に18/22例に有効であった。投与中2例に発疹などのアレルギー症状をみとめた。また臨床検査値の異常として肝機能異常2, 赤血球, Hb値などの低下2がみられたが, 本剤との因果関係は明らかではなかった。
  • 長浜 文雄他
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 373-380
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    道内10施設共同で, 呼吸器感染症で入院中の20症例にT-1982を静注または点滴静注して, その臨床効果を検討した。20症例中, 性肺炎14例, 慢性気管支炎などの気道感染症6例, 性別では男性14, 女性6, 年齢別では30歳代3, 40歳代1, 50歳代7, 60歳代4, 70歳代5, 重症度別では軽症3, 中等症16, 重症1, 基礎疾患のある者12例であった。これらの臨床効果は, 肺炎で92.9%, 気道感染症で80%, 全体で89.5%であった。なお菌消失率70%, 副作用として臨床検査成績でGOT, GPTの一過性上昇3, 好酸球増多1がみられたが, 本剤使用中止例はなかった。
  • 武部 和夫他
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 381-391
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982を32例 (その他除外例6例) の呼吸器系, 胆道系, 尿路系の感染症に使用し, 臨床効果は, 急性気管支炎で1例著効, 2例有効, 細菌性肺炎で1例著効, 6例有効, 2例無効, 膿胸を伴った肺炎の1例は有効, 肺化膿症の1例も有効であった。尿路系感染症では急性膀胱炎で3例有効, 慢性膀胱炎で4例有効, 3例無効, 急性腎孟腎炎で1例著効, 3例有効, 慢性腎孟腎炎で1例著効, 1例有効であった。急性胆嚢炎の2例は有効であった。呼吸器系感染症の有効率は85.7%, 尿路系感染症では81.3%, 全体では84.4%であった。尿路系感染症での細菌の除菌率はE. coli, K. pneumoniae, P. mirabilts, S. marcescensで100%であった。P. aeruginosaの除菌率は33.3%であった。臨床的副作用はみられなかった。検査値の異常は本剤投与38例中白血球数減少1例, 好酸球数増加2例, GOT上昇1例, GOT, GPT上昇が1例にみられた。
  • 臨床分離インフルエンザ菌に対する抗菌力および呼吸器感染症例についての臨床的検討
    坂本 正寛, 西岡 きよ, 小西 一樹, 丹野 恭夫, 佐藤 清紀, 樋渡 奈奈子, 大野 勲, 井田 士郎, 滝島 任
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 392-395
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    臨床分離H. infiuenzae 77株に対するT-1982の抗菌力を測定した。
    46株 (60%) のMICが1.56μg/ml以下でABPCと同程度の抗菌力であったが, β-lactamase産生ABPC耐性株18株に対しては全例がABPCより低いMIC (0.39~6.25μg/ml) を示し, β-lactamase産生H. influenzaeに対するT-1982の有用性が認められた。
    臨床的には慢性呼吸器感染症, 急性肺炎の計5例にT-1982を投与し治療効果を検討した。その結果, 著効1例, 有効2例, やや有効2例であった。副作用および臨床検査値異常はいずれの例にも認められなかった。
  • 渡辺 彰, 大泉 耕太郎, 佐々木 昌子, 青沼 清一, 大沼 菊夫, 今野 淳
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 396-407
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいセファマイシン系抗生物質T-1982に関して各種病原細菌に対するin vitro抗菌力をCefazolin, Cefotiam, Cefoxitin, Cefmetazoleを対照として比較検討するとともに, 主として呼吸器感染症に対する臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討を加えた。
    黄色ブドウ球菌に対する抗菌力は対照のどの薬剤よりも劣るが, 大腸菌と肺炎桿菌に対しては最も優れ, MIC分布のピークはおのおの0.39μg/mlと0.2μg/mlにある。エンテロバクターとセラチアに対するMICは広汎に分布するが, 対照のどの薬剤よりも優れている。緑膿菌に対する抗菌力は弱い。また本剤はβ-lactamase産生株に対しても, β-lactamase非産生株に対してと同様に良好な抗菌力を示す。
    呼吸器感染症4例 (急性肺炎2例, 気管支拡張症二次感染1例, 肺癌二次感染1例) および尿路感染症1例 (急性腎盂腎炎) の計5例に対する本剤の臨床効果は, 著効2例, 有効3例であった。
    5例中4例において起炎菌としてインフルエンザ菌と大腸菌をおのおの2株ずつ分離し, 本剤の投与により全株の菌消失が得られた。本剤の投与に伴って1例においてGOTとGPTの軽度上昇がみられたが, 投与終了後に正常化した。
  • 林 泉
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 408-410
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    RTI7例に対するT-1982の治療成績を報告する。7例とも細菌性肺炎で, 成績は著効4例, 有効2例, 無効1例であった (有効率85.7%)。臨床分離株に対する細菌学的効果は3株すべてが消失したが1例に菌交代がみられた。
    副作用は臨床検査値にGOTのみ軽度上昇したもの1例と, 白血球の中等度減少をみたもの1例が認められたがいずれも重篤なものではなかった。
  • 武田 元, 庭山 昌俊, 岩永 守登, 田中 容, 和田 光一, 森本 隆夫, 荒川 正昭, 高頭 正長, 川島 士郎, 蒲沢 知子, 関根 ...
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 411-417
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982は富山化学工業 (株) と科研化学 (株) の2社で共同開発された新しい注射用Cephamycin系抗生剤である。私どもは尿路感染症8例, 気道感染症22例, 腹膜炎1例にT-1982を投与し, その臨床効果, 細菌学的効果, 副作用および臨床検査値の異常の出現について検討した。T-1982の1日投与量は0.5g×2, 1g×1, 1g×2, 2g×2の4通りで, 投与期間は5~44日間であった。尿路感染症は急性単純性膀胱炎3例, 急性腎盂腎炎5例で, いずれも良好な臨床効果が得られ, 有効率は100%であった。それらのうち起因菌の明らかな症例は.Proteus mirabilis, Klebsiella Pneumoniaeが各1例, Escherichia coliが3例で, T-1982の投与によりいずれも消失した。気道感染症は急性扁桃炎2例, 急性気管支炎1例, 感染を伴った気管支拡張症2例, び漫性汎細気管支炎1例, 肺炎16例で, 臨床効果は著効2例, 有効18例, やや有効1例, 無効1例で, 有効率は91%であった。原因と思われる分離菌はKlebsiella pneumoniae 3株, Haemophilus inftuenzae 3株, Aoinetobacter, Streptococous pneumoniae, Staphylococous aureus, Esoherichia coli各1株で, Klebsiella pneumoniaeを分離した1例に菌交代症を認めた他はすべて消失した。腹膜炎の1例は腹水よりSerratia marcescensを分離したが, 治療により菌は消失し, 臨床的にも有効であった。副作用として, 2例に軽い下痢を認めたのみであった。臨床検査値異常でT-1982との関係を疑われるのは好酸球増加2例, GOT.GPTの上昇1例, GOTの上昇1例, GPTの上昇1例であったがいずれもその程度は軽く, 投与終了後正常に戻った。
  • 山作 房之輔, 鈴木 康稔
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 418-421
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cephamycin系新抗生剤であるT-1982を9例の感染症患者に使用した。基礎疾患として僧帽弁閉鎖不全を有し, 尿路感染症由来と考えられるKlebsiellaによる心内膜炎は, CTM1日29療法では無効であったが, T-1982 1日39療法により順調に治癒し, 著効を奏した。呼吸器感染症の5例は全例有効, 胆管癌に合併したERCP後の胆道感染症は無効であった。脳卒中後遺症を有する慢性腎盂腎炎の急性増悪は1例 (大腸菌) 有効, 1例やや有効であった。副作用は全例に認めず, 検索し得た8例では臨床検査値異常も認めなかった。
  • 滝塚 久志, 村山 由美子, 神崎 玲子, 早川 正勝, 安達 正則, 河合 美枝子, 今高 国夫, 中野 昌人, 岡山 謙一, 勝 正孝, ...
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 422-425
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982について基礎的・臨床的検討を行なった。臨床分離株S.marcescens, E.coli, E.cloacae, C.freundiiに対して本剤の感受性を測定しCMX, LMOX, CMZ, CEZのそれと比較した。T-1982はCMZ, CEZより著しく強力に作用しCMX, LMOXとほとんど同等であった。
    臨床成績では呼吸器感染症8例の有効率は6/7 (86%) で, 尿路感染症9例では9/9 (100%) であり, その他子宮付属器炎, 廊症の各1例でも有効であった。全体として単純軽症例が多かったためか有効率は17/18 (94%) であった。菌種別にはE.coli 6株中全株消失, Klebsiella 2株消失, Proteus, S.marcescens, Enterococcusの各1株は消失した。Klebsiellaの1株はP.maltophiliaに菌交代した。
    副作用については1例に発疹がみられたが投薬を中止したところ消失した。臨床検査値の本剤によると考えられる変動は認めなかった。
  • 上田 泰, 斎藤 篤, 嶋田 甚五郎, 大森 雅久, 柴 孝也, 山路 武久, 井原 裕宣, 北條 敏夫, 加地 正伸, 三枝 幹文, 宮原 ...
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 426-442
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982のE.coli, K.pneumonia, E.cloacae, C.freundiiおよびS.marcescensに対する抗菌力はCefoxitin, Cefmetazole, Cefotetanより優れており, Proteus mirabilisおよびindole陽性Proteus属ではCefotetanと同等もしくは1段階程度劣った成績であった。
    本剤1,000mgを1回静注した際の健常成人における5分後の血中濃度は166.5±16.4μg/ml, 血中半減期は0.132±0.015時間 (α-phase), 1.344±0.074時間 (β-phase) であり, これはCefmetazoleと比較すると血中濃度は高く, かつ持続的に推移した。
    T-1982の尿中回収率は72.1±6.5%(8時間) でCefmetazole (82.1±3.5%) より低値であった。
    本剤静注30分前にProbenecid 1,000mgを併用した際の血中半減期は単独群に比して有意に延長し, 本剤の腎排泄機序には尿細管からの分泌作用のあることが示唆された。
    内科系尿路感染症8例にT-1982を使用した。臨床効果は判定不能の2例を除外した6例中著効1例, 有効3例, 無効2例, 細菌学的には効果判定可能の5例中2例に原因菌の消失を認めた。
    副作用, 臨床検査値異常として, 悪心および幅吐, 熱発および顔面紅潮, GOTおよびGPTの軽度上昇各1例が経験されたが, 本剤使用中止後比較的すみやかに改善が認められた。
  • 国井 乙彦, 小松 喬, 渡部 迪男, 西谷 肇, 江里口 正純, 本田 拓, 深谷 一太
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 443-452
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい国産のセファマイシン系抗生物質T-1982について検討した。
    臨床材料分離各種グラム陰性桿菌に対する抗菌力を, CPZ, CMZ, CEZと比較したところ, 4者の中で, P.aeruginosaなどブドウ糖非発酵菌を除いては, もっともすぐれた抗菌力を示した。
    Cross over法により, T-1982 0.59とCMZ 19を4人の健康男子に, One shot静注し, 血中濃度, 尿中排泄を測定した。血中濃度の持続はT-1982の方が長く, 尿申排泄率はCMZの方が高かった。
    臨床例5例にT-1982を主として点滴静注で使用した。4例有効, 1例無効であった。無効の1例は, 重篤な基礎疾患が存在したためと考えられた。副作用は全例にみとめられなかった。
  • 熊田 徹平, 大井 聖至, 玉城 巖
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 453-456
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセファマイシン系抗生剤であるT-1982について治療効果を検討した。
    対象とした症例は尿路感染症8例 (慢性腎盂腎炎2例, 慢性膀胱炎4例, 急性腎盂腎炎2例) である。
    治療効果は有効5例, やや有効1例, 無効1例で, 他の1例は副作用のため判定不能であった。
    病因菌ではE. coli, Klebsiella, Serratia, Enterobacter, P. mirabilis, P. aeruginosa が検出されたが, P.aeruginosa以外はすべて本剤により陰性化した。本剤投与中4症例においてS.faecalisが交代菌として認められた。
    副作用は1例に発疹, 発熱が認められた。臨床検査成績では異常は認められなかった。
  • 渡辺 一功, 森 健, 泉 昭, 椎名 和彦, 日比野 順子, 浜本 恒男, 池本 秀雄
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 457-460
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982はβ-lactamaseに安定な新しいCephamycin系抗生剤である。今回私どもは呼吸器感染症に対する本剤の臨床効果を検討した。
    1回1g, 1日2回の点滴静注 (1症例はone shot静注) を行ない, 10症例中著効3症例, 有効4症例, やや有効1症例, 判定不能2症例の結果を得た。
    副作用としては肝機能検査で1症例に一過性で軽度GOT上昇をみたのみで, その他の血液検査, 腎機能検査の各値にまったく異常は認められなかった。
    T-1982は今後呼吸器感染症に対して有用な抗生物質の一つであると考えられる。
  • 小林 宏行, 高村 研二, 河野 浩太, 高村 光子, 北本 治
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 461-466
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいCephamycin系抗生剤T-1982の肺炎5例と, 慢性気管支炎12例を含む難治性非肺炎症例15例に対する臨床効果を検討した。
    その結果, 肺炎5例中4例有効, 1例無効で有効率80%, 非肺炎症例15例中有効11例, 無効4例で有効率は73.3%であった。
    また, 本剤によると思われる副作用はGPT上昇2例, 好酸球増多1例がみられたが, いずれも薬剤投与継続に支障をきたさず, 投与終了とともにすみやかに正常化した。
    以上より, 本剤は呼吸器感染症, とくに慢性気道感染症の再燃などいわゆる難治性呼吸器感染症に対して有用性が示唆され, 今後十分検討されるに価する抗生剤であると考えられる。
  • 中川 圭一, 渡辺 健太郎, 中沢 浩亮, 小山 優, 伊藤 勝仁, 山本 敬, 飯島 福生, 横沢 光博
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 467-483
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982はわが国で開発されたCephamycin系抗生剤で抗菌スペクトルが広く, ことにグラム陰性桿菌に抗菌力がすぐれているが, P.aeruginosaに対する抗菌力はほとんどない。
    本剤500mgおよび1,000mgを静注した場合, 30分後の血中濃度はそれぞれ51.8μg/mlと92.5μg/mlであり, 8時間後でも1.2μg/mlと3.2μg/mlであった。
    また, 500mgおよび1,000mgを点滴静注した場合, 点滴終了時 (開始より1時間) に最高血中濃度を示し, それぞれ53.3μg/mlと105μg/ml, 8時間 (点滴開始より) 後でも2.0μg/mlと4.0μg/mlを示し, いずれも持続性は良好で, 静注のHalflifeは90分前後, 点滴静注のそれは100分前後であった。
    尿中排泄率はどの投与量の場合も, またI.V., D.I.いずれにおいても12時間までに約80%が尿中に回収された。
    臨床治験例は11例で, 肺炎6例, 肺膿瘍2例, FUO1例, 腎盂腎炎2例である。
    2例を除き1日投与量は2,000mgで投与期間は4~22日間である。RTI8例中有効以上5例, やや有効2例, 無効1例, FUO 1例著効, 腎盂腎炎1例有効, 1例やや有効であった。
    臨床的副作用は1例もなかったが, 臨床検査値についてはGOT, GPTの軽度上昇例が1例みとめられた。
    以上の結果からT-1982は有用性のあるCephem系抗生剤の一つであるといえる。
  • 山岡 澄夫, 山根 至二, 真下 啓明
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 484-487
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい国産のCephamycin系抗生物質T-1982を呼吸器感染症4例, 胆道感染症2例, 尿路感染症2例に投与し, 臨床的検討を行なった。投与は1日29を点滴静注で1日2回に分割して行なった。
    臨床効果は呼吸器感染症: 著効1例, 有効2例, 不明1例, 胆道感染症: 著効1例, 不明1例, 尿路感染症: 有効2例の好成績を収めた。
    臨床検査値異常として1例にGOT, GPTの上昇をみたが投与終了後回復をみた。
  • 福沢 恒利, 東 冬彦, 柏崎 一男, 有川 一美, 沼佐 創造, 船津 雄三
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 488-490
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセファマイシン系抗生物質であるT-1982を肺炎, 気管支炎, 急性腎盂腎炎に投与し臨床的検討を加えた。疾患の内訳は肺炎3例, 気管支炎1例, 急性腎盂腎炎5例, 計9例である。これらの症例に対するT-1982の投与法は点滴静注または筋注で1回0.5~2.0g, 1日2回投与した (1~4g/日)。投与期間は6~28日にわたっている。
    臨床効果は8例に有効。Staphylococcus aureusによる1例ではやや有効であった。
    本剤によると思われる副作用を認めず, 投与前後の末梢血, 腎機能, 肝機能検査の検討では異常を認めなかった。
  • 稲松 孝思, 島田 馨, 浦山 京子, 井熊 克仁
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 491-496
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいCephamycin系抗生剤であるT-1982について, 高齢者における薬行動態, 高齢者感染症に対する臨床効果の検討を行なった。
    血清クレアチニン値の正常な高齢者3名 (平均年齢77歳, 体重38kg, クレアチニンクリアランス40.8ml/min.) に対し本剤19を3分間かけて静注した時の血中濃度をHPLCにて測定した。1/12, 1/2, 1, 2, 4, 6, 12時間後の血中濃度はそれぞれ224.8, 129.1, 95.0, 66.2, 33.4, 16.5, 4.8μg/mlであった。β相半減期は2.5時間であった。6時間までの尿中回収率は50.8%であった。
    52歳~83歳の8症例に本剤0.25~1gを1日2~3回投与した。肺炎5例中, 著効1例, 有効3例, 効果判定不能1例であった。慢性膀胱炎2例に本剤0.25g 1日2回投与で2例とも有効であった。肝膿瘍例はやや有効であった。1例に発疹, 薬剤熱がみられた。
  • 立花 昭生, 蝶名林 直彦, 中森 祥隆, 中田 紘一郎, 岡野 弘, 谷本 普一, 松岡 ひろ子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 497-501
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいセファマイシン系抗生物質T-1982を呼吸器感染症11例に1回0.5~2g (1例4g), 1日2回点滴静注し, その臨床効果および副作用につき検討した。疾患の内訳は, 下気道感染症8例, 急性肺炎2例, 肺化膿症1例であった。
    その成績は, 著効5例, 有効4例, やや有効1例, 無効1例で, 有効以上の有効率は, 82%であった。起炎菌別にみると, H.influenzae 6例中5例に奏効したが, H. influenzae 1例とK. aerogenes例はP. aeruginosaへ菌交代を起こした。GOT・GPTの上昇を2例 (18%) に認めたが中止後正常化し, 他に重篤な副作用は認められず, T-1982は呼吸器感染症に有用な抗生物質と考えられた。
  • 関田 恒二郎, 竹田 義彦, 小林 芳夫, 藤森 一平
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 502-505
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    われわれは, 肺癌に合併した気管支肺炎2例, 細菌性肺炎3例, 急性腎孟腎炎2例, 慢性腎孟腎炎1例の計8例の感染症患者に, T-1982を1回1g, 1日2回, 静注または点滴静注し, 次の成績を得た。
    肺癌に合併した気管支肺炎2例はともにやや有効, 急性肺炎3例は2例に有効, 1例に無効であった。急性腎孟腎炎2例は1例著効, 1例有効, 慢性腎孟腎炎1例は有効であった。以上の合計8例のうち, 著効1例, 有例4例, やや有効2例, 無効1例で, 有効以上の有効率は62.5%であった。
    分離菌別除菌効果: 肺癌に合併した急性気管支肺炎1例で喀痰よりS.epidermidis, 急性腎孟腎炎2例で尿よりK.pneumoniae, 慢性腎盂腎炎1例で尿よりE.coliEnterobacterがそれぞれ分離されたが, いずれも本剤により除菌された。
    副作用: 特記すべき副作用は認められなかった。投与前後において, 検尿, 末梢血, 肝機能, 腎機能を検査したが, 本剤によると思われる検査値異常は認められなかった。
  • 伊藤 章, 進藤 邦彦, 福嶋 孝吉, 神永 陽一郎, 佐藤 芳美, 崎山 典子
    1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 506-512
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    T-1982を臨床的に用い, 以下の結果が得られた。
    1) 臨床分離のE.coli, K.pneumoniae, S.marcescensに対しては, CEZ, CFX, CTMより優れた抗菌力を示した。
    2) ブドウ糖非醗酵菌に対しては, 感受性はよくなかった。
    3) 臨床的には, 9例中6例に有効であった。
    4) GOT, Al-Pの一過性上昇が1例で認められた以外には, 特に本剤によると考えられる検査値異常やその他の副作用は認められなかった。
    5) 前投薬無効例7例中5例で有効であった。
    6) 症例をえらんで用いれば, 有用な抗生剤となるであろう。
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