新しい持続性Cephalexin錠剤であるHI-89について, 基礎的, 臨床的検討を行ない, 以下のような成績が得られた。
1) 健常成人6名にHI-89 500mgを経口投与し, 血中Cephalexin濃度を測定した。3名での血中濃度平均値は, 投与1時間後1.69μg/ml, 4時間後4.56μg/ml (最高値), 8時間後3.06μg/ml, 10時間後1.37μg/mlと高濃度が長時間持続した。他の2例では, 1時間後3.63μg/ml, 4時間後5.21μg/ml (最高値), 8時間後0.45μg/ml, 10時間後0μg/mlと内服後早期から高濃度となるが持続時間がやや短縮していた。残りの1名では, 1時間後3.29μg/ml (最高値), 6時間後0μg/mlであった。
これらの12時間でのCephalexin尿中回収率は。血中濃度の持続がみられなかった1例が28%であったが, そのほかは60~90%であった。
2) 肺炎1例, 気管支炎5例, 扁桃炎3例, 咽頭炎2例, 皮膚化膿症1例の計12例にHI-89を1日1g, 4~17日間使用した。臨床効果は著効4例, 有効3例, やや有効3例, 無効2例であった。細菌学的には
S. aureus, S. pyogenesに良好な効果を示し,
H. influenzaeに比較的良好であった。副作用としては, 下痢, 腹痛, 食欲不振, 嘔気, 便秘などの消化器症状が3例にみられた。臨床検査値には何ら変化は認められなかった。
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