臨床分離
S. aureus, S. epidermidis, P. aeruginosa, E. coli, K. pneumoniae, K. oxytoca, S. liquefaciens7菌種の新鮮株と保存株に対する常用抗生物質 (ABPC, SBPC, PIPC, GM, DKB, AMK, CEZ, CMZ, CTM, CZX, CPZ, LMOX, CFS) の最小発育阻止濃度 (MIC) を, 市販Mueller Hiaton (MH) 培地, heart infusion (HI) 培地を用いて, 液体希釈法と寒天平板法 (化療標凖法) で測定し, それぞれの測定値を比較した。なお, 液体希釈法はDynatech MIC 2000systemを, 寒天平板法はmicroplanterを用い, 接種菌量はそれぞれ10倍希釈1夜培養菌の0.0015mlおよび100倍希釈1夜培養菌の0.005mlとした。
(1) MH培地対HI培地: 新鮮株を用いMHBとHIBでのMIC, および保存株を用いMHAとHIAでのMICを比較した。結果はいずれの菌に対しても, いずれの薬剤に対しても, MHとHI培地でのMICの間に有意差は認められなかった。
(2) 液体希釈法対寒天平板法: MH培地を用い, 液体希釈法と, 寒天平板法によるMIC値を比較した。緑膿菌を除く6菌種では, 両MIC間に有意差は認められなかった。緑膿菌に対しては, 液体希釈法で測定したAG剤のMICが寒天平板法でのMICに比べ有意に低い値を示した。
(3) 新鮮株MIC対保存株MIC: 液体希釈法 (MHB) で測定した新鮮株MICと保存株MICを比較した。
S. aureusにおいては, ABPC, PIPC, GM, DKB, AMKの保存株MICが, 新鮮株MICより有意に低い値を示した。同じく
S. epidermidisにおいてはABPC, PIPC, DKB, CZXが,
P. aerugiosaにおいては, GM, AMK, CPZ, LMOXが,
E. coliでは, AMKが,
K. pneumoiaeでは, LMOXが,
S. lliquefaciensは, CZXとCPZが, 保存後有意のMIGの低下を示した。
以上の結果, 今回検討した7菌種のうち, 緑膿菌に対するAG剤を除き, MH培地とHI培地により測定したMICは, 寒天培地, 液体培地を問わず, 有意の差は認められず, Dynatech MIC 2000 systemでのデータと化療標準法でのデータとの比較は可能と認められる。これに対し, 縁膿菌に対するAG荊MICを, 液体希釈法で測定する際は, 二価陽イオンの調整が必要である。また, 新鮮株MICと保存株MICの間には有意の格差が認められ, 保存株でのデータと新鮮株でのデータは単一に論ずることができず, 明確に区別すべきものと考える。
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