CHEMOTHERAPY
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33 巻, Supplement1 号
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  • 三橋 進, 井上 松久
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 1-13
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいmono-cyclicβ-lactam環を主体とする初のモノパクタム系抗生物質Azthreonamの抗菌力をCefotaxime (CTX) およびGentamicin (GM) を対照薬として比較検討した。グラム陰性菌に対しAzthreonamは優れた抗菌スペクトラムを有した。しかし, グラム陽性菌に対しAzthreonamはCTX, GMに比べその抗菌力は著しく劣った。Azthreonamはグラム陰性菌, 特にSerratia marcescens, Proteus spp. に対して対照薬剤より優れた抗菌力を有し, Psuedomnas aeruginosaではGMと, P. cepaciaではCTXとほぼ同程度の抗菌力を有した。β-lactamaseに対する安全性を検討した結果, 本剤はPlasmid支配のpenicillinase (PCase) および菌種特有の酵素であるcephalosporinase (CSase) に対し安定であった。またP. vulgarisをはじめP. cepacia, Bacteroides fragilis由来のoxyiminocephalosporinase (CXase) によってわずかに分解された。CSase, CXaseは誘導酵素であるがAzthreonamの酵素誘導能は著しく低かった。
    殺菌力の検討では, 対数増殖期のEscherichia coli, P. aeruginosa, S. marcescens に対しAzthreonamは2MIC前後で殺菌的に作用した。
    豚およびヒト腎臓より抽出・精製したデヒドロペプチダーゼ1に対しAzthreonamは全く安定であった。
  • 横田 健, 吉田 玲子, 鈴木 映子
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 14-23
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonamは, 全合成された初のmonobactam系抗生物質である。グラム陽性菌に対する抗菌力は弱いが, E. coli, K. pneumoniae, Proteus属各菌種, C. fremdii, S. marcescens, およびH. influenzaeには, oxim型第3世代cephem系抗生物質に優るとも劣らぬ力を示すことが実験的に明らかにされた。P. aeruginosaには, CFSと同程度の強い抗菌力を示すが, P. cepaciaP. maltophiliaには中等度の力を示すにすぎない。
    Azthreonamは, E. coliなどのPBP3と1Aに親和性が強いので, sub MICでは菌がfilament化するが, 生体内では補体や白血球との協力的殺菌作用が著明なので, 生体内での良好な効果が期待された。グラム陽性菌との混合感染の場合には, Azthreonamとの間で明らかな協力作用を示す。半合成狭域ペニシリンすなわちMCIPCやMFIPCとの併用が有用であろう。
  • 小栗 豊子, 林 康之
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 24-38
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    私どもは1982年より1983年に各種臨床材料より分離したStaphylococcus aureus, β-haemolytic streptococci (Group A, C, G), Group D streptococci (Streptococcus faecalis, Streptococcus faecium, Streptococcus avium), Haemophilus influenzae, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Morganella morganii, Providencia (P. rettgerでおよびその他), Pseudomonas, Flavobacterium, Acinetobacter, Bacteroides合計921株を用いてAzthreonamの抗菌力を測定し, 各種のcephem剤のそれと比較した。成積を総括すると以下のとおりである。
    1. S. aureus, Group D streptococci は Azthreonamに 200μg/ml以上のMIC値を示し, 耐性であった。
    2. β-haemolytic streptococciではAzthreonamのMIC値は6.25μg/ml以上に分布し, 抗菌力は弱かった。
    3. ProteusグループではAzthreonamの抗菌力は優れており, 特にM. morganiiにおいては第3世代cephemよりも優れていた。
    4. H. influenzae (β-ラクタマーゼ産生株を含む), S. marcescens, P. aeruginosaにおいても, Azthreonamは優れた抗菌力を示した。
    5. C. freundii, E. cloacae, P. maltophilia, Acinetobacter, Flavobacterium, BacteroidesではAzthreonamの抗菌力は弱かった。
  • 五島 瑳智子, 小川 正俊, 宮崎 修一, 辻 明良, 金子 康子, 桑原 章吾
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 39-53
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい単環性β-lactam, Azthreonamのin vitro, in vivo抗菌作用を検討した結果,
    1. グラム陽性菌には抗菌作用がないが, 多くのグラム陰性菌種に抗菌力を有し, 特にE. coli, K. pneumoniae, ProteusS. maroesoens, P. aeruginosaに対し強い抗菌力を示した。
    2. グラム陰性菌の産生する各種のβ-Lactamaseに安定であり10菌種15菌株から得たいずれの酵素 (penicillinase, cephalosporinase) によっても全く分解されなかった。
    3. 各種グラム陰性桿菌によるマウス実験感染に対して治療効果があり, そのED50値はin vitro抗菌力とよく相関した。
  • 大槻 雅子, 後藤 季美, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 54-74
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたβ-ラクタム抗生物質でモノバクタムに属するAzthreonamの細菌学的評価をLatamoxef (LMOX), Cefmenoxime (CMX) およびCefoperazone (CPZ) を比較薬として検討し, 以下の成績を得た。
    1. Azthreonamは, グラム陰性菌群に対し, LMOX, CPZより優れ, CMXとほぼ同等の抗菌スペクトラムを有していたが, グラム陽性菌群, 嫌気性菌群に対しては, ほとんど抗菌力を示さなかった。
    2. 臨床分離株に対する感受性分布においてAzthreonamは, Haemophilus属でCMX, CPZに劣るものの, Pseudomonas属を含む他のグラム陰性菌に対しては最も優れた抗菌力を示した。
    3. 接種菌量によるMIC, MBCの変動は, 4剤とも, ほとんどみられなかった。接種菌量と殺菌効果について検討したところ, 4剤とも菌量の増加により殺菌力の低下が認められた。
    マウス実験的感染症に対する治療効果への菌量の影響は, Azthreonamが最も受けにくく, 次いでCMX, LMOX, CPZの順であった。
    4. Azthreonamは, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaに対して作用濃度に応じた殺菌作用を示した。
    5. いずれの薬剤もMIC値と20時間MLC値はほとんど同じであったが, 3時間あるいは6時間MLC値との間には大きな差が認められた。
    6. マウス実験的感染症に対するAzthreonamの治療効果は, E. coli, Serratia marcescens, P. aerugiosaで4剤中, 最も優れていたが, K. pneumoniaeに対しては, CMX, CPZに, Proteus morganiiに対してはCMX, LMOXに劣っていた。
    7. AzthreonamをE. coli, P. aeruginosaに作用させた場合の形態変化を観察したところ, 菌体は著しく伸長化し溶菌も認められた。また, E. coliのペニシリン結合蛋白質に対しAzthreonamはPBP3に強い親和性を示した。
  • 沢 赫代, 青木 誠, 武内 美登利, 賀川 和宣, 渡辺 邦友, 上野 一恵
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 75-86
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    嫌気性菌に対するAzthreonamの抗菌作用について検討し, 次のような結果を得た。
    Bacteroides fragilis groupに対するAzthreonam抗菌力はほとんどの菌株が50μg/ml以上であった。C. difficileに対してはすべて200μg/ml以上であった。しかし, B. ureolytious, B. melaninogenicus group, B. biuius, P. acnes, E. nucleatumおよびグラム陽性球菌に対してAzthreonamは比較的優れた抗菌力を示した。
    Azthreonamは, B. fragilis, B. biviusのβ-lactamaseに対してCEZより安定であった。
    AzthreonamによってB. fragilis, B. biviusの形態変化はフィラメント化を主体とした。
    E. fragilis, B. biviusの増殖曲線に及ぼすAzthreonamの影響は, 2及び, 4MICの添加により殺菌的効果を認めた。
    B. fragilis, B. thetaiotaomicronに対しTIPCとAzthreonamとの若干の併用効果がみられた。Azthreonamは, E. coliとβ-Lactamase産生のB. fragilisの混合感染マウスに対し優れた感染防御効果を示した。
    Azthreonam投与のマウスは, CTXおよびCPZ投与群の場合と異なり, 盲腸内にC. difficileの異常増殖は認められなかった。
  • 紀藤 恭輔, 勝 鎌政, 佐藤 勝, 杉原 芳樹, 渡辺 直彰, 豊沢 逸生, 森山 めぐみ
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 87-114
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonam (AZT) は, グラム陰性菌に強い抗菌力を示す全合成された単環性β-lactam抗生物質である。AZTは, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeおよびProteus mirabilisをはじめとする腸内細菌群やHaemopmus influemae, Psmdommas aeruginosaなど, グラム陰性桿菌に強い抗菌力を示し, グラム陽性菌, 嫌気性菌には弱いかほとんど抗菌力を示さなかった。
    AZTの臨床分離株に対する106CFU/ml菌液接種時のMIC50は, Proteus mirabilis, Proteus morgmii, Proteus vulgaris, Protms rettgeri, Proteus incoknstansでは0.005~0.015μg/ml, E. coli, K. pneumoniaeではそれぞれ0.04, 0.03μg/mlを示した。また, Klebsnlla oxytocaには0.07μg/ml, Citrobacter freundii 0.12μg/ml, Enterobacter cloacae 0.11μg/ml, Serratia marcescensに0.31μg/mlを示した。P.aeruginosaに対しては4.88μg/mlを示しCefsulodinとほぼ同等であった。H. influenzaeに対してはLatamoxefと同等で, 0.043μg/mlであった。
    AZTの抗菌力は培地種類, 培地pH, 血清添加では影響を受けなかったが, 接種菌量を上げると若干低下した。また他剤との併用では相乗効果や抗菌スペクトラム的に相補的な作用は認められたが, 拮抗作用は認められなかった。
    AZTは各種β-lactamaseに対して極めて安定であったが, II型 (OXA1) penicillinase, K. oxytocaおよびPsmdomonas cepaciaの産生するβ-lactamaseによって僅かに加水分解された。
    P. aeruginosa腹腔内感染マウスにおけるAZTの防禦効果はCAZより劣ったが, CPZより優れていた。またK. pneumoniae気道感染マウス, P. mirabilis尿路感染マウス, およびラットのP. aeruginosaグラニュローマポーチ内感染においても優れた治療効果を示した。
  • 出口 浩一, 深山 成美, 西村 由紀子, 西家 綾子
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 115-117
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    単環系β-ラクタム抗生物質Azthreonam (AZT, SQ26, 776) の組織内濃度および, いくつかの組織ホモジネート中での安定性を, 円筒平板法により検討した。検定菌はEsoherichia coli ATCC 27166, 培地はMueller Hinton Agar Modified (Eiken) を用い, AZT標準希釈液は1/10Mリン酸緩衝液 (pH 7.0) で希釈して調製した。検体は5倍量の1110Mリン酸緩衝液を加えてホモジナイズした後, 既知量のAZTを加えて室温または5℃に保存し, 経時的に力価を測定した。ラット組織 (肺, 肝, 腎, 脾) とヒト扁桃は20℃で24時間は安定であったが, ヒト胆のうでは2時間でやや力価の低下がみられた。ラット組織とヒト扁桃は, 5℃で3~7日間安定であった。また, ヒト胆のうホモジネートをpH6.0, 7.0, 8.0, 9.0のリン酸緩衝液中に懸濁して, 室温で2時間放置した場合, pH値が高いほどAZTの回収率, および安定性に低下がみられた。これらの事実は, AZTの組織中の安定性が温度とpH (特にアルカリ側) により影響を受けることを示している。
  • 小山 泰昭, 並木 規子, 尾碕 千晴
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 118-125
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    単一β-lactam抗生物質Azthreonam (AZT, SQ26, 776) の体液内濃度の測定を微生物学的方法としてカップ法, および高速液体クロマトグラフィーにより検討した。カップ法では検定菌としてEscherichia coli ATCC 27166と日抗基i培地を用いて測定するとき, 鮮明な阻止円が得られ, AZT標準希釈液の測定感度は0.078μg/mlであった。血清中AZTの測定は標準希釈液にヒトプール血清を5%添加して行なったが, ConseraとMoni-Trol Iで血清の代用をすることができた。血清中の低濃度のAZTを測定する場合は, 試料をメタノールで除タンパクし, 遠心して得られた上清部を1% phosphate bufferで希釈することにより0.625μg/mlまで測定できた。尿中AZTの測定は標準希釈液を10%尿で調製して行なった。胆汁試料は, 1% phosphate bufferで1:20に希釈するとき, 緩衝液で調製した標準希釈液を用いて測定できた。血清および胆汁試料は-20℃で保存するとき3日間, 尿試料は-20℃で30日間活性の低下は認められなかった。健常成人から得られた101検体の血清試料と70検体の尿試料のBioassay値とHPLC値の相関性は血清試料ではy=0.9957 x+3.2441 (r=0.9605), 尿試料ではy=0.8656 x+89.5609 (r=0.9780) であった (x: bioassay値, y: HPLC値, r=相関係数) 。
  • 水野 全裕, 古川 正隆, 沖宗 正明, 宮田 和豊, 赤澤 信幸, 公文 裕巳, 大森 弘之, 難波 克一
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 126-131
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用monobactam系抗生物質Azthreonam (SQ26, 776) を健康成人および種々の程度の腎機能障害を有する患者, 計14例に投与, 血清中濃度および尿中排泄を検討し, 薬動力学的解析を加えた。
    濃度測定はHPLC法を用いて行ない, 腎機能の指標は24時間内因性クレアチニン・クリアランス (Ccr) を用い, 薬動力学的解析はtwo-compartment open modelに従った。
    本剤投与後の血中濃度は, Ccrの程度に応じて遷延し, 同様に尿中排泄もCcrの程度に応じて減少した。薬動力学的解析では, 消失速度定数 (ke1) とCcrの間に有意の直線関係が認められ, t1/2β, AUCとCcrの間には, ゆるやかな双曲線的相関関係がうかがわれた。なお, 血液透析患者の透析時3例と非透析時2例の比較では, t1/2βは非透析時の平均9.15時間に対し, 4時間の血液透析で平均4.2時間と約5時間の短縮が認められた。
    以上の結果より, 本剤を腎機能低下例に使用する場合には, 投与量, 投与間隔を充分に考慮する必要があると考えられた。
  • 藤田 公生, 原 徹, 村山 猛男, 新島 端夫
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 132-133
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    アズスレオナム1gを静注し, 手術中に得られた血清と前立腺組織中の濃度を測定した。血清値は正常人集団についての値より高値の傾向がみられた。前立腺組織内濃度の下降は血中濃度とほぼ平行した。その比は0.282±0.156であった。
  • 春田 恒和, 大倉 完悦, 黒木 茂一, 小林 裕
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 134-138
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新monobactam系抗生剤Azthreonam (SQ 26, 776) について基礎的研究を行なった。本剤の各種臨床分離株に対するMICをCefaaolin, Latamoxef, Cefotaximeと比較した。S. aureusに対してはすべて>100μg/mlで, 他の3剤に及ばなかったが, Serratia, P. aeruginosaでは, 本剤が最も優れていた。E. coli, K. pnmmoniaeでは, Cefotaximeと比べて, 前者でほぼ同等, 後者では約1段階高いMICであったが, 他の2剤よりは優れていた。
    S. aureus髄膜炎家兎4羽に対する本剤100mg/kg静注後の血中濃度のピークは, 全例投与後15分にあり, 平均269±44.3μg/ml, 髄液中濃度のピークは全例45分にあり, 平均10.0±2.16μg/ml, 髄液血清比百分率は3.7%, 血中濃度半減期は平均35.9分, 髄液中濃度のそれは88.5分で, その髄液血清比は2.47, 曲線下面積髄液血清比百分率は, 15~60分4.28%, 15~120分6.53%, 15~180分7.81%で, 本剤の髄液中への移行効率は, β-lactam剤のうち中位と考えられた。本剤を単独で化膿性髄膜炎に使用するとすれば, その抗菌域から起炎菌判明後の第二次選択剤と位置ずけるほかはないが, Ampicillinとの併用によって相互の欠点を補えれば, 第一次選択として使用できると考えられるので, その適否を検討する価値があるであろう。
  • 富井 隆夫, 福田 正道, 佐々木 一之
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 139-142
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたmonobactam系抗生剤Azthreonam (以下AZTと略) の家兎眼および人眼における移行動態を検討した。50mg/kg静注した家兎眼では, 房水内移行のピークは30分で1.9±1.0μg/mlを示し, 以後比較的速やかに低下し4時間で0.2±0.1μg/mlを示した。硝子体内への移行のピークも30分で0.6±0.2μg/mlであったが, 静注後15分から4時間までの各時点で, 0.4μg/ml前後のほぼ一定した移行を示した。ヒト房水内への移行については, 白内障手術患者を対象に術前1g静注した後, 術中房水を採取し房水内移行をみた。移行濃度のピークは投与後30分で, 対象とした25眼のうち20眼で静注後10分から80分までは1.0μg/ml以上, その後120分までは0.5μg/ml以上の移行を認めた。家兎眼と人眼でのAZTの房水内移行は, ほぼ同様のパターンを示し, 移行濃度に関しては家兎眼に比べ, 人眼の房水内への移行は良好であった。
    AZTはグラム陰性菌による眼内炎, あるいは硝子体手術をはじめとする内眼手術の感染予防に有効な薬剤であると考えられた。
  • マウスおよびラットにおける急性毒性試験
    根田 公一, 奥田 香織, 仲吉 洋
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 143-148
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質であるAzthreonamのマウスおよびラットにおける急性毒性試験を行なった。
    LD50値は経口投与ではマウスおよびラットの雌雄とも10,000mg/kg以上, 皮下投与ではマウスの雄で3,906mg/kg, 雌で5,368mg/kg, ラットの雄で3,578mg/kg, 雌で3,154mg/kg, 腹腔内投与ではマウスの雄で2,897mg/kg, 雌で3,722mg/kg, ラットの雄で2,549mg/kg, 雌で2,964mg/kg, 静脈内投与ではマウスの雄で1,963mg/kg, 雌で2,068mg/kg, ラットの雄で2,882mg/kg, 雌で3, 149mg/kgであった。
    症状および剖検において, 経口投与ではマウスおよびラットとも下痢, 軟便あるいは黄色軟便, 剖検でマウスに盲腸の拡張がみられた。皮下投与および腹腔内投与ではマウスおよびラットとも自発運動の低下, 体温低下, 脱力および被毛粗剛, さらにラットでは黄色軟便および削痩がみられ, 剖検では死亡例でマウスおよびラットとも肝臓の退色, 盲腸の拡張および胃の出血生存例ではラットで腎臓の肥大および退色がみられた。静脈内投与ではマウスおよびラットとも痙攣, 呼吸困難および鎮静さらにラットでは四肢, 尾, 耳介の発赤および四肢の腫脹がみられ, 剖検では死亡例でマウスおよびラットとも肺の欝血, 生存例ではラットで腎臓の肥大および退色がみられた。
  • ラットにおける静脈内投与による亜急性毒性試験
    川崎 一, 三好 幸二, 宇田 文昭, 野村 章, 平尾 地恵見, 仲吉 洋
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 149-168
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質であるAzthreonam (以下AZT) の35日間静脈内投与による亜急性毒性試験をSDラットを用いて行なった。AZT投与により100mg/kg以上で盲腸, 肝臓重量の増加, 血清GOT活性の低下, 270mg/kg以上で一過性の軟便および黄色便, 750mg/kg以上て血清GPT活性の低下, 脾臓相対重量の増加が認められた。2,000mg/kgではこれらの他に投与直後一過性の四肢および顔面の腫脹, 四肢および耳介の発赤, 鎮静あるいは腹臥などが観察され, 摂水量の増加, 赤血球数および血色素量の低下が認められた。
    病理組織学的検査では270mg/kg以上で肝細胞の肥大, 750mg/kg以上で腎近位尿細管上皮細胞の空胞化, 赤脾髄での髄外造血の活性化, 白脾髄の増生および反応中心の活性化が認められた。2,000mg/kg群の微細形態学的検査では肝細胞で脂肪滴とライソゾーム様顆粒の増加, 腎近位尿細管細胞にライソゾーム様顆粒の増加と細胞質内の空胞が認められた。なお, 750mg/kg群では雄20例中1例, 2,000mg/kg群では雄20例中8例, 雌20例中9例が途中死亡したが, いずれも大量の検体の静注投与による循環不全が原因であった。投与試験群で認められた検体の影響は5週間の休薬により回復ないしは回復傾向を示した。また, 270mg/kg以下では検体の毒性作用に起因すると考えられる所見は認められず, 本実験条件下における毒性作用のない無影響量は270mg/kgと推定された。
  • ラットにおける皮下投与による亜急性毒性試
    川崎 一, 三好 幸二, 野村 章, 宇田 文昭, 丹羽 卓朗, 平尾 地恵見, 仲吉 洋
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 169-189
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質であるAzthreonam (以下AZT) の35日間皮下投与による亜急性毒性試験をSDラットを用いて行った。AZT投与により150mg/kg以上で摂水量の軽度な増加, 300mg/kg以上で赤血球数などの血色素系の減少, 肝臓, 盲腸重量の増加, カーカス重量の減少, 600mg/kg以上で投与部位皮下の浮腫, 血清Al-P活性の低下, 腎臓重量の増加, 1,200mg/kg以上で投与部位皮下の出血, 血清GPT活性, 血糖値, 総蛋白量, 血清アルブミン値, Ca値の低下, 脾臓重量の増加が認められた。2,400mg/kgではこれらの他に体重増加の抑制, 胸腺重量の減少がみられ, 雌雄ともに10例中2例が途中死亡した。病理組織学的検査では600mg/kg以上で腎近位尿細管上皮細胞の空胞化と投与部皮下の出血と炎症性所見, 1, 200mg/kg以上で肝細胞の肥大, 赤脾髄での髄外造血の亢進, 2,400mg/kgでは骨髄での赤芽球系の軽度な増生が認められた。なお, 死亡例では肝細胞の空胞化, 腎近位尿細管直部の壊死が認められた。以上の所見はいずれもAZTの局所刺激作用に基づく変化と他のβ-ラクタム系抗生物質に共通する変化であり, また, 休薬による回復性も高かった。また, 300mg/kg以下では検体の毒性作用に起因すると考えられる所見は認められず, 本実験条件下における毒性作用のない無影響量は300mg/kgと推定された。
  • ラットにおける妊娠前および妊娠初期投与試験
    古橋 忠和, 加藤 育雄, 五十嵐 祐子, 仲吉 洋
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 190-202
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質であるAzthreonam (以下AZT) の100mg/kg, 270mg/kgおよび750mg/kgを雌雄ラットに交配前および交配中, さらに雌ラットには妊娠初期にも静脈内投与し, 雌雄ラットの生殖能力および胎仔に対する影響について検討した。
    雄については, 死亡例が100mg/kg投与群で1例, 270mg/kg投与群で1例, 750mg/kg投与群で3例みられた。体重および摂餌量に検体投与の影響は認められなかった。摂水量については, 270mg/kg投与群および750mg/kg投与群で投与初期に増加がみられた。
    血液学的検査の結果, 750mg/kg投与群で血色素量および白血球数の減少が認められた。血清生化学的検査の結果, 100mg/kg以上の投与群でAl-P値の減少, アルブミン値の増加, 270mg/kg以上の検体投与各群でクレアチニン値の減少, Cl-値の増加, 750mg/kg投与群でGPT値の減少が認められた。臓器重量では, 100mg/kg以上の検体投与各群で盲腸 (+) および盲腸 (-) の重量増加が, また, 270mg/kg投与群および750mg/kg投与群で肝臓腎臓および脾臓の重量増加が認められた。
    雌については, 100mg/kg以上の検体投与各群で盲腸重量の増加が, 750mg/kg投与群で投与初期に摂餌量の減少が認められたが, 一般症状および摂水量に検体投与の影響はみられなかった。
    性周期, 交尾率, 授精率, 受胎率では対照群と検体投与各群との間に統計学的有意差は認められず, AZTは雌雄の交尾能雄の授精能および雌の受胎能に影響を与えないと考えられた。
    妊娠20日の胎仔の観察の結果, 平均黄体数, 非着床率, 平均着床数, 死胚率およびその死亡時期, 平均生存胎仔数, 性比および生存胎仔の発育 (体長, 尾長, 体重, 胎盤重量, 骨化程度) についても検体投与の影響はみられなかった。また, 外形・内臓・骨格の異常および骨格の変異についても検体投与の影響と考えられる異常はみられなかった。
    以上, 本実験条件下においては, 雌雄ラットの生殖能力およびその胎仔に対するAZTの無影響量は750mg/kg, 親動物に対するAzTの無影響量は盲腸重量の増加および血清生化学的検査のいくつかの項目に軽度な変化がみられたが100mg/kgと結論された。
  • ラットにおける胎仔の器官形成期投与試験
    古橋 忠和, 牛田 和夫, 佐藤 久美子, 仲吉 洋
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 203-218
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質であるAzthreonam (以下AZT) の100mg/kg, 270mg/kgおよび750mg/kgをラットの器官形成期に静脈内投与し, 胎仔ならびに新生仔に対する影響を検討した。
    母動物においては270mg/kg投与群および750mg/kg投与群で, 投与開始後に摂餌量の一過性の減少, 出産後に一過性の増加が, 750mg/kg投与群で投与開始時より分娩直後まで摂水量の増加がそれぞれみられた。また, 妊娠20日および分娩21日後の剖検では, ほぼ全検体投与群において盲腸の重量増加が認められた。
    胎仔の観察では, 着床数, 生存および死胚率, 体重, 体長, 尾長, 外形, 内部臓器, 骨格の異常, 骨格変異, 骨化程度に検体投与の影響はみられなかった。
    新生仔に関しては出生率, 生存率, 離乳率, 性比, 体重, 生後分化状態, 外形, 内部臓器, 骨格, 臓器重量, 機能, 行動, 学習, 生殖能力などに検体投与によると考えられる変動は認められなかった。
    以上の結果より, 本実験条件下におけるラット胎仔の器官形成期投与試験では, AZTの無影響量は, 母動物では一過性の摂餌量の減少および盲腸重量の増加がみられたが270mg/kg, 次世代では750mg/kgと結論された。
  • ラットにおける周産期および授乳期投与試験
    古橋 忠和, 牛田 和夫, 武井 あき子, 仲吉 洋
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 219-231
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質であるAzthreonam (以下AZT) の100mg/kg, 270mg/kgおよび750mg/kgをラットの周産期および授乳期に静脈内投与し, 自然分娩後の新生仔 (F1) および胎仔 (F2) ならびに新生仔 (F2) に対する影響を検討した。
    母動物において, 平均体重の増加が270mg/kg投与群および750mg/kg投与群で分娩14日後から離乳時までみられた。また, 摂餌量に関しては100mg/kg以上の検体投与各群で投与開始後に一過性の減少, 750mg/kg投与群で出産後に増加がみられ, 摂水量では270mg/kg投与群および750mg/kg投与群で投与開始後に増加がみられた。750mg/kg投与群の1例で分娩遅延がみられ, 妊娠23日に死亡した。この動物で肝細胞と腎尿細管上皮細胞の空胞化が認められた。分娩21日後の剖検では, 検体投与各群で盲腸の重量増加が認められた。
    新生仔に関しては, 出生率生存率, 離乳率, 性比, 体重, 生後分化状態, 外形, 内部臓器骨格出生21日後および出生84日後の臓器重量, 機能, 行動, 情動性, 学習, 生殖能力などに検体投与によると考えられる変動は認められなかった。
    以上の結果より, 本実験条件下におけるラット周産期および授乳期投与試験では, AZTの無影響量は, 母動物では一過性の摂餌量の減少および盲腸重量の増加がみられたが100mg/kg, 次世代では750mg/kgと結論された。
  • 斎藤 玲, 加藤 康道, 石川 清文, 小田柿 栄之輔, 篠原 正英, 福原 育夫, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 森田 香代子, 佐藤 清
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 232-246
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonamはmonobactam系の新抗生物質である。臨床分離株に対する抗菌力は, Escherichia coli, Klebsiella spp., Proteus mirabilis, Proteus morganiiでMICのピークは0.1μg/mlにあり, Serratia marcescens は0.8μg/ml, Pseudomonas aeruginosa は1.56μg/mlとよい成績であった。
    6名の健康成人男子に19筋注および静注を行ない体内動態をみた。血中濃度は筋注では1時間にピークを示し55μg/mlであった。静注では5分後157.5μg/mlの最高濃度を示した。血中半減時間は約2時間, Aucは筋注で216μg・hr/ml, 静注で229μg・hr/mlと, ほぼ同じであった。尿中排泄は良好で高い尿中濃度を示し, 8時間までの排泄率は筋注で70.1%, 静注で728%であった。本剤投与による被検者の血液生化学的検査に異常は認められなかった。
    内科的感染症27例に本剤を主に1日192回の点滴静注で, 5~14日間投与し, 臨床効果の検討を行なった。著効15例, 有効8例, やや有効2例, 無効2例で, 有効率は85.2%であった。臨床的に副作用は認められず, 検査値異常として, 好酸球増多, GOT, GPT上昇, RBC, Hb, Ht減少が各1例あったがいずれも軽度であった。
  • 佐々木 信博, 大崎 能伸, 藤兼 俊明, 川村 祐一郎, 中野 均, 松本 博之, 坂井 英一, 小野寺 壮吉
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 247-249
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年開発されたモノバクタム系抗生物質のAzthreonamを, 11例の呼吸器感染症患者に投与し, その臨床的効果を検討した。
    肺炎8例, びまん性汎細気管支炎2例, 肺膿瘍1例に対してAzthreonamを1日2~6g, 総量18~72g点滴静注を行なった。臨床効果は, 著効1例, 有効7例, やや有効1例, 無効2例であった。副作用として, 3例に軽度のGOT, GPT上昇を認めた。
  • 長浜 文雄, 佐々木 雄一, 中林 武仁, 小六 哲司, 黒田 練介, 久世 彰彦, 三橋 修, 池田 裕次, 今 寛
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 250-256
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    我々は道内6施設協同でAzthreonamの臨床効果と安全性について検討し, 次の結果を得た。対象は過半数が60歳以上で, 76.7%に合併症を有する概ね難治性呼吸器感染症29例 (肺炎13, 気管支拡張症7, 慢性気管支炎5, 肺膿瘍2, 膿胸およびDPB各1) およびUTI1例の30症例であった。
    1) 本剤1回1.0g, 1日2回D. I. の12例は3~20日間で有効率66.7%。
    2) 本剤1回2.0g, 1日2回D. I. の2例は5~8日間で有効例なし。
    3) 本剤1回1.0g, 1日2回I. V. の6例は13~23日間で有効率100%。
    4) 本剤1回2.0g, 1日2回I. V. の5例は11~17日間で有効率100%。
    5) 本剤1回1.0g, 1日2回I. M. の4例は13~19日間で有効率50.0%。
    6) 喀痰中細菌20株中本治療により消失10株 (55.0%), 減少4株 (20.0%), 内訳はP. aeruginosa 13株中消失4 (30.8%), 減少4 (30.8%), 菌交代1 (7.7%) K. pneumoniae 3株中2株消失, 1株菌交代, その他E. coli, E. cloacae, K. ozaenae, S. aureus各1株宛はいずれも菌消失をみた。
    7) 副作用は本剤1.0g, 1日2回, 6日間使用の66歳男子のUTI例で一過性軽度のGOT, GPT上昇例をみたが, 1回3.0g, 1日2回30日間総使用量180gの82歳女子のD. I. 例で全く副作用は認められなかった。
    以上より本剤は呼吸器感染症患者に使用して有効かつ安全な薬剤であると考えられた。
  • 平賀 洋明, 菊地 弘毅, 山本 朝子
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 257-263
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    L-threonineから全化学合成されたβ-ラクタム単環を有する新しいタイプの抗生物質 (モノバクタム) であるAzthreonamを呼吸器感染症16例 (急性肺炎6例, 慢性気管支炎10例) に使用し有効性, 安全性を検討してみた。
    使用法は1回19, 1日2回法10例, 1回29, 1日2回法6例で, 総投与量では最低149から最高84gであった。
    1. 臨床効果判定では著効2例, 有効9例, 無効5例で, 有効以上の有効率は68.8%であった。
    2. 有用性では非常にあり1例, あり10例, なし5例で, 有用性あり以上は68.8%であった。
    3. 副作用は2例に発熱が認められた。臨床検査値異常はGOT, GPT, Al-Pの上昇が3例に, うち1例はBUN, 血清クレアチニンの上昇を伴っていた。
    4. 起炎菌がグラム陰性桿菌の9例中陰性化3例, 減少5例, 不変1例で, これらの呼吸器感染症に有効で安全性のある薬剤といえる。
  • 武部 和夫, 小沼 富男, 熊坂 義裕, 落合 滋, 岡本 勝博, 近江 忠尚, 高橋 修一, 吉田 秀一郎, 高橋 英子, 川村 加寿子, ...
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 264-271
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonam (SQ 26, 776) の臨床効果を咽頭炎1例, 急性気管支炎1例, 慢性気管支炎およびその急性増悪5例, 肺炎3例, 気管支拡張症の二次感染1例, 肺癌に伴う感染症1例, 急性膀胱炎2例, 慢性膀胱炎6例急性腎孟炎2例急性腎周囲炎1例敗血症および皮下膿瘍1例を含む24例で検討した。
    結果は著効4例, 有効13例, やや有効1例, 無効6例で, 全体の有効率は70.8%であった。
    呼吸器感染症の有効率は58.3%, 尿路感染症の有効率は90.9%であった。起炎菌と推定されたものは16株が見出されたが, 8株が消失, 1株が持続7株が菌交代した。
    副作用は1例もみられなかった。臨床検査値においては1例にGOT, GPTの軽度上昇が認められたのみである。
    上記の結果よりAzthreonamは呼吸器感染症にはやや劣るが, 尿路感染症に対して優れた薬剤であり, 副作用, 臨床検査値異常を殆ど認めず, 有用な抗生剤である。
  • 田村 昌士, 村上 剛久, 板倉 康太郎, 松井 美紀夫, 小室 淳, 伊藤 隆司, 佐藤 信久, 緒方 良二, 倉光 宏, 守屋 克良, ...
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 272-279
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいβ-lactam系抗生物質Azthreonamを, 呼吸器感染症24例 (細菌性肺炎13例, 肺化膿症3例, びまん性汎細気管支炎6例, 気管支拡張症2例) に, 1回1gないし2g, 1日2回点滴静注し, 以下の結果を得た。
    1) 臨床効果の判定では, 著効7例, 有効13例, やや有効2例, 無効2例で, 有効率は83.4%であった。
    2) 起炎菌の同定された16例中, 15例がグラム陰性菌感染であった。菌消失は9例 (56.3%) であった。P. aeruglnosaおよびAcmetobacterには, 細菌学的効果はみられなかった。
    3) 6例の症例で, GOT, GPT, A1-Pの上昇がみられたが, 5例は使用中止によって前値に復した。1例に消化器症状 (悪心) がみられたが, 継続投与可能であった。全般改善度および概括安全度より, 本剤は呼吸器感染症に対し, 優れた有用性が認められた。
  • 井田 士朗, 滝島 任
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 280-284
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいmonobactam系抗生物質, Azthreonam (SQ 26, 776) を何らかの基礎疾患を持った中等度~重症細菌性呼吸器感染症の患者の治療に使用した。11例全例に喀疫定量培養により有意な起炎菌が証明されたが, 本剤1回1~29, 1日2回の点滴静注による治療後, 6例 (54%) で完全な除菌に成功したが, 一部除菌できた1例を含む5例 (うち2例は菌交代) は除菌不能であった。これらの細菌学的効果に加えて, 症状の軽快, 炎症所見の改善などの臨床効果を総合判定した結果, 11例中7例 (64%) に有効であるという結論を得た。
  • 大沼 菊夫, 青沼 清一, 渡辺 彰, 佐々木 昌子, 大泉 耕太郎, 今野 淳
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 285-288
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    患者の喀痰から分離された各種グラム陰性桿菌に対するAzthreonam (SQ 26, 776) のMICを他の薬剤と比較して測定するとともに, 本剤を他剤無効の肺炎患者2例に投与し臨床効果と副作用を検討した。
    E.coli, Klebsiella sp., Enterobacter sp.およびSerratia sp.に対する本剤のin vitro抗菌力はCZXとほぼ同等で優れたものであり, LMOXにまさっていた。P.aeruginosaに対しては, 本剤はCFSよりやや劣るもののPIPCよりは優れていた。
    CTM・AMPC・MINO・SISO無効の肺炎1例と, CEPR・DKB無効の肺炎1例にAzthreonamを投与した結果, いずれにも有効であった。このうちの1例で薬剤による発熱が生じたが, 中止とともに平熱にもどった。他には副作用は認められなかった。
  • 林 泉, 阿部 達也
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 289-295
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonamはmonobactam剤として初めて開発されたGNRに対する抗菌剤である。
    4例のRTIで検討した結果, 本剤の気道内移行は良好で, 1g60分点滴静注でみると血中最高濃度は106.3μg/mlで, 喀痰内濃度のピーク値は1.79μg/mlを示した。喀痰内ピーク値を血中ピーク値で除した喀痰内移行率は1.68%であり, これはcephem系で最も高い喀痰内濃度を示すCPZや, 最も高い喀痰内移行率を示すLMOXを凌ぐ高濃度, 高移行率である。その喀痰内濃度は投与開始後6時間にピーク値を示し, 1日2回 (午前9時と午後6時) の投与で24時間1μg/ml以上を保った。
    また14例のRTIに対する臨床的成績では著効8例, 有効5例, やや有効1例 (有効率92.8%) と良好であった。細菌学的効果はS.aureus 1株のみがPC系との併用で除菌されたが, 他の8株はすべて本剤で除菌された。副作用はみられず, GOT, GPTの軽度上昇, GOT, GPT, Al-Pの軽度上昇好酸球数の軽度上昇がみられたものがあったが, いずれも一過性であった。
  • 武田 元, 岩永 守登, 和田 光一, 森本 隆夫, 荒川 正昭
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 296-299
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用抗生物質であるAzthreonamは化学構造上monobactam系抗生物質に属する。その抗菌スペクトルはグラム陰性菌に限定される。
    私どもは呼吸器感染症5例, 尿路感染症2例, 不明熱1例を対象にAzthreonamを使用した。細菌学的な効果では, 起炎菌の明らかな7例中1例に消失, 4例に減少をみた。自他覚所見よりみた臨床効果では, 有効4例, やや有効2例, 無効2例であった。全例にアレルギー反応などの副作用やAzthreonamによると思われる臨床検査値の異常を認めなかった。
  • 青木 信樹, 関根 理, 薄田 芳丸, 湯浅 保子, 清水 武昭, 若林 伸人, 林 静一, 新田 功, 田中 富美子, 渡辺 京子
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 300-304
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症8例, 尿路感染症4例, 計12例の感染症例にAzthreonamを使用した。
    対象は18~83歳の男性6例, 女性6例で, 原則として0.5~2,0gを1日2回, 経静脈的に使用した。
    臨床効果は著効1, 有効8, やや有効2, 無効1であった。
    副作用は臨床的に発熱が1例にみられたのみで, 検査成績上, 明らかに本剤によると思われた異常は認めなかった。
  • 山作 房之輔, 鈴木 康稔, 宇野 勝次
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 305-314
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonamを23症例, 25感染症に用い, 効果判定不能1例を除く24感染症の成績を検討した。対象は膿胸1例 (無効), 表在性感染症2例 (S.aureus 1, S.faecalis 1, 2例とも無効), 胆道感染症4例, 尿路感染症17例である。胆道感染症は起炎菌不明で, 4例中3例が有効であった。無効の1例はCPZが著効を示し, 胆汁移行の違いによる効果の差と思われた。尿路感染症の起炎菌はE.coli7株, K.pneumoniae 4株, P.aeruginosa2株, P.inconstans, P.mirabilis各1株で, 4例は他の医師による抗生剤前投薬のため起炎菌不明であった。AzthreonamのMICはP.aeruginosaが12.5μg/mlと100μg/ml以上であったほかすべて0.1μg/ml以下であった。17例中13例は基礎疾患があり, この内6例に菌血症が証明, または推定されたが著効2, 有効12で有効率82%, やや有効3例の優れた成績で, 抗菌力の強さが発揮され尿路感染症に対する第一選択剤の一つと評価したが, S.faecalisへの菌交代が3例にみられた。
    Azthreonamによる副作用として発疹, 発熱の合併例が2例みられ, Leucocyte Migration Inhibition Testにより2例とも, うち1例では臨床的にも他のcephem剤との交叉が認められた。
  • 大山 馨, 鈴木 国功, 清水 隆作
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 315-323
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Monobactam系抗生物質であるAzthreonam (AZT) について, 臨床分離のグラム陰性桿菌に対する抗菌力の測定と, 17例の内科的感染症に本剤の投与を行なって次のような結果を得た。
    1, 抗菌力: 臨床材料から分離したE. coli, K.pneumoniae, E.Cloacae, Proteussp., S.marcescensおよびP.aeruginusa計132株について, AZTの抗菌力をCefoperazone (CPZ), Cefotaxime (CTX), Cefmetazole (CMZ), Cefazolin (CEZ) のそれと比較したところ, 本剤はProteus sp.およびE.cloacaeに対しては最も強い抗菌力を示した。E.coli, K.pneumniaeおよびS.marcescensに対してはCTXと殆ど同等の抗菌力であったが, P.aeruginosaに対してはCPZと同等の抗菌力が認められ, 他の3剤に比べて際だった抗菌力が認められた。
    2. 臨床成績: 本剤を14例の呼吸器感染症と3例の尿路感染症に投与したが, その結果, 呼吸器感染症では9例 (64.3%) に, 尿路感染症では3例全例に有効以上の成績が得られた。
    3. 副作用: 2例に軽度のGOT, GPTの上昇がみられたがいずれも本剤投与終了後1週間で正常値にもどっていた。
  • 中野 昌人, 村山 由美子, 岡野 玲子, 佐藤 実, 斉藤 礼子, 河合 美枝子, 岡山 謙一, 滝塚 久志, 勝 正孝
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 324-329
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonam (AZT) について基礎的・臨床的検討を行なった。
    臨床分離株S.aureus, S.pneumoniae, E.coli, K.pneumoniae, P.mirabilis, Indole (+) Proteus, H.infZuenzae, P.aeruginosa, S.marcescens, Enterobacter spp.に対して本剤の感受性を測定し, CMX, LMOX, CPZ, CMZ, CAZのそれと比較した。AZTはグラム陰性菌特にE.coli, Klebsiella, Indole (+) Proteus, Serratiaに対して強い抗菌力を示したが, グラム陽性菌であるS.aureus, S.pneumoniaeに対してはほとんど抗菌力を示さなかった。
    臨床成績では, 肺炎2例, 気管支炎1例, 肺化膿症1例, 肺のう胞腫 (2次感染) 1例, 尿路感染症1例, FUO 1例, 計7例にAZTを1日2g, 点滴静注, または静注にて5~16日間投与し, 著効2例, 有効3例, 無効2例の臨床効果を収めた。
    副作用として1例にTransaminase (GPT) の軽度上昇が認められたのみで, 自他覚所見および造血, 肝・腎などの検査値に異常はみられなかった。
  • 本島 新司, 福田 健, 牧野 荘平
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 330-333
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいmonobactam系抗生物質であるAzthreonamを, 4症例5回の緑膿菌気道感染症に対し使用し, その臨床効果を検討した。
    臨床的には, 有効2回, やや有効2回, 無効1回であった。細菌学的には減少1回, 菌交代2回, 不変2回であった。MICを測定した3株のうち, 2株は本薬剤に対し耐性を示しており, その菌を検出した2症例に対し, 本薬剤は有効性を示さなかった。本薬剤は, 緑膿菌気道感染症に対してかなり有用な薬剤になりうると考えられた。
  • 国井 乙彦, 西谷 肇, 斧 康雄, 三輪 史朗, 深谷 一太
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 334-341
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    単環構造を有する新しいβ-lactam系抗生物質Azthreonamについて検討した。臨床材料分離各種グラム陰性桿菌に対する抗菌力をCPZ, CTXと比較したところ, E.coli, KlebsiellaではCTXと同等の, またP.aerugimsaにはCPZに近い抗菌力を示した。臨床例では肺炎1例, 急性腎盂腎炎3例の計4例に本剤を1日2g, 点滴静注で投与した。臨床的には全例で有効であった。副作用は, 本剤投与との因果関係が不明の発疹の1例を除いて, 他には特に認められなかった。
  • 渡辺 一功, 池本 秀雄
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 342-345
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonam (SQ 26, 776) は, グラム陰性菌に高い抗菌活性を有する新しい単環系抗生物質である。しかしながら, Azthreonamは, グラム陽性菌や, 嫌気性菌には, より低い抗菌活性しか有しない。
    Azthreonamを, 緑膿菌による難治性の下気道感染症4例に使用した。びまん性汎細気管支炎3例, 慢性気管支炎1例である。年齢は37歳から74歳 (平均49歳) で, 男性2例, 女性2例であった。全例, 点滴静注した。1日用量は, 2.09で12時間ごとで, 投与日数は6日から18日 (平均12.3日) で, 総投与量は24gから72g (平均47.5g) であった。
    臨床効果は, やや有効1例, 無効2例, 効果判定不能1例で, 細菌学的効果は判定不能1例を除いて全例無効であった。検査値異常は1例で, GOT, A1-P, LAPとγ-GTPが, 一過性にわずかに上昇した。しかし, 重篤な副作用は1例もなかった。
  • 島田 馨, 浦山 京子, 稲松 孝思, 鈴木 宏男
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 346-349
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonam 1日29を呼吸器感染症4例, 尿路感染症4例に使用した。慢性閉塞性肺疾患に合併した肺炎2例には著効ないし有効の効果を認め, 肺炎からショックに陥った90歳の老人にもステロイドとの併用で著効を示した。緑膿菌感染が持続している慢性気管支炎には無効であった。慢性複雑性尿路感染症の3例は, いずれも複数菌の尿路感染症で, S. aureusEnterococcusのグラム陽性球菌も感染に加わっていたと考えられる例であり, このような症例にAzthreonamは無効かやや有効の効果しか挙げ得なかった。残りの尿路感染症の1例は, 併存した疾患のため効果判定が困難であった。副作用や検査値異常はみられなかった。
  • 中谷 龍王, 吉村 邦彦, 中森 祥隆, 蝶名林 直彦, 中田 紘一郎, 谷本 普一, 杉 裕子
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 350-355
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいモノバクタム系抗生物質Azthreonamを呼吸器感染症21例に1回1~2g, 1日2回点滴静注し, その臨床効果および副作用につき検討した。疾患の内訳は気道・中間領域感染症を含む下気道感染症16例, 肺炎3例, 肺化膿症2例であった。
    臨床効果は, 著効1例, 有効12例, やや有効3例, 無効5例で有効率は62%であった。
    起炎菌別では, Pseudomonas aeruginosa 8例では有効率50%, Humoppilus influenzae 3例では有効率100%, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌3例では有効率33%であった。
    副作用は1例に発熱がみられたが, 投与中止後解熱した。臨床検査値異常としてGOTの上昇を3例 (14.2%) に, GPTの上昇を2例 (9.5%) に, Al-Pの上昇を1例 (48%) に, 白血球減少, 好酸球増多を1例に認めたがいずれも軽度で継続投与が可能であり, 投与終了後改善した。
    以上よりAzthreonalnはP. aeruginosaを含めたグラム陰性桿菌呼吸器感染症に有用な抗生物質であると考えられる。
  • 石橋 弘義, 鈴木 勝, 渡辺 哲造, 可部 順三郎
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 356-359
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された単環系抗生物質Azthreonamを呼吸器感染症7例と尿路感染症1例に使用した。投与量は1日1~2gを1回または2回に分割し3~12日間投与した。
    対象とした呼吸器感染症の内訳は, びまん性汎細気管支炎3例, 慢性気管支炎2例, 肺炎2例 (1例は肺癌に合併), そして尿路感染症1例であった。
    起炎菌は, H. influenzae, K. pneumoniae, E. coli各1例とP. aeruginosa3例が検出された。細菌学的効果は, K. pneumoniaeE. coliは除菌され, H. influemaeS. pneumoniaeに菌交代し, P. aeruginosaの3例では, 1例が除菌, 1例が菌減少, 1例が不変という結果となった。臨床効果は, 呼吸器感染症で, 有効2例, やや有効2例, 無効3例であり, 尿路感染症1例は有効であった。副作用は, 発熱に好酸球増多を伴った1例とS-GOT, S-GPTの軽度上昇例が1例に認められた。
  • 嶋田 甚五郎, 斎藤 篤, 柴 孝也, 山路 武久, 井原 裕宣, 北條 敏夫, 加地 正伸, 奥田 新一郎, 三枝 幹文, 宮原 正, 上 ...
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 360-370
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Monobactam系抗生物質Azthreonam (SQ 26, 776, AZT) について抗菌力, 体内動態などの基礎的検討ならびに臨床的検討を行なった。
    1) 抗菌力E. coli, K. pneumoianeならびにP. aeruginosaの臨床分離株各50株に対するAZTのMICを測定し, Piperacillin (PIPC), Cefmetazole (CMZ), Cefoperazone (CPZ), Ceftazidime (CAZ) ならびにLatamoxef (LMOX) と比較した。E. coli, K. pneumoniaeに対する本都の抗, 菌力は他剤に比べ最も優れていた。一方, P. aeruginosaに対してはCAZより劣るもののPIPCやCPZとほぼ同等の抗菌力を示した。
    2) 体内動態
    (a) AzthreonamとProbenecidの併用: 健康志願者5名にAZT 1,000mgを1回静注した際の血中ならびに尿中濃度, 尿中回収率, 更にcrossovemにてProbenecidの本剤の吸収, 排泄に及ぼす影響についても検討した。本剤単独投与時の血中濃度は静注5分後に平均94.1±146μg/mlを示し, 以後1.36時間の血中半減期 (β-phase) をもって減少し, 8時間後の血中濃度は0.49± 0.16μg/mlであった。本剤の尿中濃度は静注後0~2時間で2, 408±610μg/mlであり, 6~8時間でも122.5±7.8μg/mlを示した。また, 静注後8時間までの本剤の尿中回収率は55.8±6.5%であった。一方, Probenecidを併用した際の血中濃度は静注5分後で平均93.3±226μg/ml, 8時間後では0.58±0.15μg/ml, 血中半減期 (β-phase) 1.59時間, ならびに静注後8時間までの尿中回収率は56.5±53%であった。すなわち, AZT単独投与群とProbenecid併用投与群との間に血中濃度の経時的推移, 血中半減期ならびに尿中回収率のいずれにおいても有意差はなく, 本剤の腎排泄機序は糸球体からの演過が主であることが示唆された。
    (b) AzthreonamとLMOXのcross over試験: 健康志願者5名にAZTおよびLMOXをそれぞれ1,000mgずつcross overにて静注した。血中濃度はすべての時点でLMOXの方が高い値を示した。また血中濃度半減期はAZTの1.36時間に対して, LMOXは1.13時間とやや短かった。0から8時間までのAUC値はAZTの68.8μg・hr/mlに対してLMOXは137μg・hr/mlと約2倍であった。一方, 尿中濃度もAZTに比較してLMOXはすべての時点で高い値を示した。静注後8時間までの尿中回収率はAZTの55.8±65%に対してLMOXは90.3±5.2%であった。
    3) 臨床成績
    肺炎1例・胆のう炎1例ならびに尿路感染症1例の計3例に対し, 本剤を1日29, 3~9日間使用し, 有効1例, 無効2例の臨床効果を得た。なお, 本剤に起因すると思われる副作用ならびに検査値異常は認められなかった。
  • 山口 一, 大井 聖至, 熊田 徹平, 戸塚 恭一, 清水 喜八郎
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 371-376
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonamを14例の尿路系, 糖尿病性壊疽, 呼吸器系の感染症に使用し, 臨床効果は急性膀胱炎で4例著効, 慢性膀胱炎で1例有効, 慢性腎孟腎炎で1例無効であった。糖尿病性壊疽に基づく膿瘍では1例無効であった。呼吸器系では急性肺炎で1例有効, 1例無効・慢性気管支炎で1例著効1例有効, 3例無効であった。尿路系の感染症の有効率は83.3%, 呼吸器感染症では42.8%, 全体では57.1%であった。
    E. coli, K. pneumoniae, E. aerogenes, S. marcescensおよびE. cloacaeは完全に除菌された。P. aeruginosaの除菌率は33.3%であった。
    臨床的副作用はみられなかった。検査値の異常は白血球数増加1例, 好酸球数増加1例, GOT, GPT上昇が1例にみられた。
  • 中川 圭一, 小山 優, 飯島 福生, 伊藤 勝仁, 中沢 浩亮, 秋吉 龍二, 渡辺 健太郎, 横沢 光博
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 377-388
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonamは, L-threonineから全化学合成されたβ-ラクタム単環を有する新しいタイプの抗生剤であり, in vitro試験において, グラム陰性菌に対し強い抗菌力を示すが, グラム陽性菌および嫌気性菌に対しては抗菌力がない。
    臨床由来の各種菌株に対するAzthreonamの抗菌力を測定しCefoperazone (CPZ), Ceftizoxime (CZX) のそれと比較検討した。AzthreonamのE. coli, P. vulgaris, P. mirabilisに対するMICは, CZXと同様, 優れた抗菌活性を示した。K. pneumoniaeに対しては, CZXが最も優れ, 本剤は3剤の中間のMIcであった。P. aeruginosaに対しては, 88%の株が3.13μg/mlから25.0μg/mlの間にみられ, ほとんどがCPZと同様のMICパターンを示し, 12%が耐性株であった。E. cloacaeおよび, S. marcescensに対しては, 本剤は他の2剤よりも多少強い結果であった。S. aureusに対しては, 本剤のMlCは, すべて25μg/ml以上の耐性株であり, CPZ, CZXよりも劣っていた。
    臨床治験例は11例であり, その内訳は肺炎5例, 嚢胞性気管支拡張症2例, 腎盂腎炎2例, 糖尿病性壊疸1例, 肺癌1例である。効果判定が行なえたのは, 肺癌の除外例1例を除いて10例であり, その臨床効果は, 有効以上が肺炎5例中4例嚢胞性気管支拡張症2例中2例, 腎盂腎炎2例中2例と, 10例中8例であり, 良好な臨床効果を示した。またこれらのうち. Pseudomonas感染症4例中3例に, 本剤の効果が認められた。
    副作用は1例に発熱がみられたが, 本剤との関連ははっきりせず, その他の自他覚症状, 臨床検査値の変動など認められなかった。
    以上の我々の成績では, Azthreonamは, グラム陰性菌に強いという特徴ある抗菌力を生かして使用すると, かなり効果の期待できる抗菌剤であるといえよう。
  • 小林 宏行, 高村 研二, 河野 浩太, 押谷 浩, 武田 博明
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 389-394
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症23例 (慢性気管支炎14例, 肺炎9例), 敗血症5例, 尿路感染症2例に対し, Azthreonam (AZT) の点滴静注による臨床効果および安全性を検討した。
    対象はグラム陰性菌が起炎菌と確定された例およびグラム陰性菌感染症が強く疑われた例であったが, 症例背景に前投与無効例, 遷延化した感染症例および高齢者などのいわゆる難治性要因を有する例が多かった。
    本剤投与により, 呼吸器感染症23例中有効以上16例, 有効率70%, 敗血症においては5例中有効5例, 尿路感染症2例中有効2例であった。また, 副作用はみられなかったが臨床検査値異常としてGOT・GPT上昇2例, BUN上昇1例がみられたがいずれも一過性であった。
    以上より, 本剤は, ある程度難治化した呼吸器グラム陰性菌感染症に対しても, また, グラム陰性菌敗血症などに対しても有用な抗生剤と考えられた。また特に呼吸器緑膿菌感染症に対しては, 投与量, 投与回数の増量などを試み, さらに検討するに充分価値ある抗生剤と考えられた。
  • 小花 光夫, 小林 芳夫, 藤森 一平
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 395-398
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された単環系β-ラクタム抗生剤であるAzthreonamに関して, その臨床的効果を検討した。対象は7人, 10例で, 男性2人, 3例, 女性5人, 7例, 年齢は60歳から85歳までで, 平均年齢は70.3歳であった。感染症の内訳は急性気管支炎2例, 急性膀胱炎1例, 慢性腎盂腎炎7例であった。
    臨床効果としては急性気管支炎2例無効, 急性膀胱炎1例無効, 慢性腎盂腎炎7例中4例有効, 3例やや有効であり, 計10例中4例が有効以上で有効率40.0%であった。分離菌はE. coli, P. aeruginosaが各3例, K. Pneumoniae, S. mamscens, P, putrefaciens, 腸内細菌以外のグラム陰性桿菌が各1例であり, 細菌学的効果としては菌消失5例, 菌不変2例, 菌交代3例であった。
    本剤によると思われた副作用ならびに臨床検査値の異常は認められなかった。
  • 松本 文夫, 山本 勝, 桜井 磐, 高橋 孝行, 杉浦 英五郎, 田浦 勇二, 平林 哲郎
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 399-406
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい単環系β-lactam剤Azthreonamについて抗菌力, 吸収排泄ならびに臨床効果を検討したところ, 以下のような成績を得た。
    1) CEZ耐性 (MIC≧100μg/ml) 臨床分離E. coli, K. pneumoniae, P. mirabilisに対する本剤のMIC80値は, それぞれ12.5, 0.78, 0.39μg/mlであった。
    2) 本剤を健康成人3名に1回1.0g筋注した際の血中濃度は, 注射後1~2時間後にpeak値が得られ, 3例平均では, 0.5, 1, 2, 4, 6時間値はそれぞれ26.7, 47.2, 52.9, 21.2, 12.6μg/mlであった。また尿中濃度は注射後4時間までが高値を示し, 1,616~3,840μg/mlの値を得, 6時間までの尿中回収率は平均53.4%であった。
    一方, 胆のう癌で敗血症を併発した腎機能正常患者に1.091時間点滴静注した際の血中濃度は点滴終了時, 87.6μg/mlの値を示した後1.60時間の血中半減期をもって推移し, 8時間後は2.1μg/mlであった。尿中濃度は, 0~2時間に2, 021μg/mlの最高値が得られ, 8時間までの尿中回収率は62.5%であった。また胆汁内濃度は分割採取した1.5~2時間, 2~4時間にそれぞれ20.4, 26.8μg/mlの高値が得られた。
    3) 内科系感染症のうち敗血症 (1), 細菌性肺炎 (2), 慢性気管支炎 (2), 急性腎盂腎炎 (1), 急性前立腺炎 (1), 急性膀胱炎 (2), 慢性膀胱炎 (3) 計12例に本剤を1回1.09, 1日2回静注使用したところ, 11例に有効以上の結果を得た。なお細菌性肺炎の1例についてはやや有効の結果を得た。副作用についてはみるべきものはなかった。
  • 山木 健市, 高木 健三, 山川 育夫, 横山 繁樹, 田野 正夫
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 407-413
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Azthreonam (SQ26, 776) は全化学合成品であるmonobactam系 (単環β-ラクタム系) 抗生物質である。本剤は特にPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性の桿菌および球菌に対して強い抗菌力を示すとともに, β-ラクタマーゼおよびデヒドロペプチダーゼに対し安定である。
    呼吸器感染症に対しAzthreonamを使用し, 細菌学的効果, 臨床的効果を判定し, 本剤の有用性および安全性について検討した。
    細菌学的効果は19症例にて判定し, 陰性化57.9%, 減少21.1%, 不変10.5%, 不明10.5%であり, 陰性化と減少を合わせた78.9%に有効性があると考えられた。一方, 臨床所見などから総合的に判定した臨床効果は20症例にて判定し, 著効10.0%, 有効60.0%, やや有効5.0%, 無効25.0%であり, 有効率は70.0%であった。副作用は全例に認められなかったが, 検査値の異常は4症例に認められた。これらの成績から考えて, Azthreonamの有用性が期待できるものと思われる。
  • 山本 俊幸, 鈴木 幹三, 岸本 明比古
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 414-417
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい単環系β-ラクタム抗生物質Azthreonamを高齢者における感染症14例に使用し, その臨床効果および副作用を検討した。疾患の内訳は, 急性肺炎7例, 下気道感染症1例, 尿路感染症3例, 敗血症2例, 胆管炎1例であった。その結果, 有効6例, やや有効3例, 無効5例で, 有効率42.8%, やや有効以上の有効率64.3%であった。細菌学的効果では, E. coli 3株, E. agglomerans1株は除菌されたが, P. mirabilisS. aureusに菌交代した。2例で使用後S. pneumoniaeが検出された。副作用は, GOT, GPT上昇1例, 好中球減少1例, 血小板減少1例, 好酸球増多1例がみられたが, いずれも本剤投与中止後軽快した。したがってAzthreonamは菌種を選択して使用すれば高齢者に対しても有用な抗生物質と考える。
  • 中西 通泰, 丸井 康子, 鈴木 克洋, 鈴木 雄二郎, 前川 暢夫, 辻野 博之, 稲葉 宣雄, 鍵岡 朗, 岩田 猛邦, 網谷 良一
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 418-424
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    入院中の呼吸器感染症の患者16例 (肺炎5例, びまん性汎細気管支炎3例, 気管支拡張症4例, 慢性気管支炎3例, 肺膿瘍1例) にAzthreonamを単独投与し, 著効1例, 有効6例, やや有効6例, 無効1例, 不明2例の臨床効果を得た。細菌学的効果では, 原因菌と思われるものが13例に分離され, これについてみると, 菌陰性化5例, 減少2例, 不変3例, 菌交代3例であった。
    副作用は全例において認めなかった。
    臨床検査値の異常変動は, GOT, GPT, A1-P, BUN値の軽度上昇が各々1例ずつに認められた。
  • 小林 敬司, 山田 義夫, 塩田 憲三
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 425-431
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい単環系β-ラクタム (monobactam) 抗生剤Azthreonam (SQ26, 776) を内科領域の感染症15例に使用し, その有効性と安全性を検討した。
    対象は, 呼吸器感染症7例, 消化器感染症6例, 尿路感染症2例の計15例で, 原因菌の種類はH. influenzae 1例, K. pneumoniae 3例, P. vulgaris 1例, E. coli 2例, S. epidermidis 1例, Acinetobacter 1例, Salmonella 1例で, その他Normal floraであった。
    臨床的効果では, 呼吸器感染症で7例中5例, 消化器感染症では6例中5例, 尿路感染症では2例中2例が有効以上の判定で, 全15例中12例80%の有効率であった.
    副作用は著明なものは認めなかった。
    以上の結果より, Azthreonamは, 内科領域の感染症に対して, 有効性, 安全性共に優れた, 有用な抗生剤と思われる。
  • 岡本 緩子, 前原 敬悟, 間瀬 勘史, 飯田 夕, 吉岡 宗, 安永 幸二郎, 大久保 滉, 上田 良弘
    1985 年 33 巻 Supplement1 号 p. 432-453
    発行日: 1985/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    米国のスクイブ社で新しく開発された単環系・β-ラクタム抗生剤であるAzthreonamにつき基礎的, 臨床的検討を行なった。
    抗菌力については臨床分離の諸種グラム陰性桿菌に対する本剤のMICを測定し, CTX, CPZ, CXM, LMOXおよびCMZのそれと比較検討した。E. coli, klebsiella sp. に対する本剤のMICはほとんどが0.05μg/ml以下で, CTXと同等で他剤より優れ, P. mirabilisでは他剤より優れる株と劣る株の二峰性が認められた。P.aeruginosaにはCPZとほぼ同等で, CTX, LMOXより2~3管優れていた。E. cloacaeにはLMOX, CTX, CPZ, 本剤, CMZの順であった。その他E, aerogenes, S. marcescms, P. vulgaris, P. rettgeriおよびP.morganiiにも本剤は他剤より優れていた。
    吸収・排泄について, 62歳の胆嚢炎患者 (女) にAzthreonam 1gを100mlの生食水に溶解し1時間かけて点滴静注した時の血清, 胆汁, 尿中濃度を経時的に帯培養法 (大久保法) で測定した。血中濃度は点滴終了時110μg/mlで, 6時間目にも10.5μg/mlと測定可能であった。本例の十二指腸ゾンデによる胆汁内濃度はA胆汁 (点滴終了後30分) 17μg/ml, B胆汁 (60分) 66μg/ml, C胆汁 (90分) 450μg/mlであった。なお投与開始後6時間までの尿中回収率は66, 4%であった。
    臨床症例計21例 (呼吸器感染8例, 尿路感染2例, 胆道感染8例, 敗血症2例, その他1例) に1日2~49本剤を投与 (2例筋注, それ以外は点滴静注) した。うち効果判定可能症例は17例で, 著効2・有効9, やや有効1, 無効5で有効率64.7%であった。副作用として筋注の1例に局所疼痛, 他の1例に発疹および好中球の軽度減少を認めたが, 他に重篤な副作用はなかった。
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