CHEMOTHERAPY
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34 巻, 2 号
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  • 木村 光子, 沢田 和江, 川原 薫, 菅野 理恵子, 池田 達夫, 木村 貞夫
    1986 年 34 巻 2 号 p. 115-124
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1980~1983年の4年間に5病院で分離されたSerratia marcescens 972株について, アミノ配糖体抗生物質 (AGs) 11剤に対する耐性とRplasmidの検出, および得られたtransconlugantの耐性型からAGs修飾酵素の推定を行なった。用いた株は尿由来株が最も多く572株 (58.8%), 次いで喀痰由来株199株 (20.5%), 膿由来株83株 (8.5%), その他の材料由来株118株 (12.1%) の順であった。11種のAGsのいずれか1剤以上に耐性を示す株の分離率は, 尿由来株が最も高く, 尿以外の材料由来株の間では差がなかった。薬剤別の耐性菌分離率はribostamycin (RSM) が最も高く4年間の平均で88.2%を示した。次いでkanamycin (KM), dibekacin (DKB), tobramycin (TOB) が56~58%, さらにbutirosin (BT), sisomicin (SISO) が48~50%, amikacin (AMK), gentamicin (GM) が33%, neomycin (NM), paromomycin (PRM), lividomycin (LVDM) は16~1996であった。KM, DKB, TOB, BT, SISO, GM, AMKに対する年次別耐性菌分離率は, ほぼ同じパターンで, 1981年は低いが, 1980年と1983年はほぼ同程度の率であった。NM, PRM, LVDMは年次が下がるほど分離率が低下した。
    これらの耐性菌からのR plasmidの検出率は, 尿由来株で最も高く29.5%, 次いで膿由来株18.3%, 喀痰由来株5.4%, その他の材料由来株7.1%であった。年次別には尿由来株で, 1982年, 1983年に検出率が顕著に減少した。DKB, KM, TOB, SISO耐性菌からのR plasmid検出率は, 1980年には46~58%であったが, 1983年には16~18%まで減少した。GMではこの傾向は一層顕著で, 1980~1981年では86~94%の検出率が1983年には22%にまで低下した。AMK耐性菌からのRplasmid検出率は1981~1983年を通じて3~6%と低率であった。
    AGs修飾酵素はAAD (2'') が最も多く, そのほかAPH (3') I, APH (3') IIもみられた。またAAC (6') IVも存在していることが推定された。
  • 平谷 民雄, 永田 淳子, 山口 英世
    1986 年 34 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    最近わが国で外用抗真菌剤として実用化されたイミダゾール誘導体tioconazole (TCZ) の抗菌作用メカニズムを究明することを企図し, 比較的高いイミグゾール感受性をもつCandida albicansTIMM 0144を主たる試験菌として用い, ステロール合成阻害作用および直接的細胞膜障害作用を中心に, 種々の細胞成分合成系に及ぼす影響も併せて検討した。TCZはTIMM 0144に対して次のような生化学的活性を示した。
    (1) 発育期細胞におけるタンパク質, RNA, DNA, 細胞壁多糖, 総脂質といった主要細胞構成成分の合成は, TCZの殺菌的濃度 (≧40μg/ml) 添加直後から完全に停止した。それより低い濃度域すなわち静菌的または不完全発育阻止効果を示す薬剤濃度を添加した場合には, その濃度に依存して細胞成分の合成が様々な程度に阻害された。そのなかで最も低い薬剤濃度まで有意な阻害が認められたのは総脂質成分の合成であった。
    (2) TCZはその濃度に依存して静止期細胞からのK+および無機リン酸 (Pi) の放出を促進した, K+およびPiの有意な量の放出は, それぞれ≧5μg/mlおよび≧40μg/mlの薬剤添加後10分間以内にひき起こされ, 80μg/mlの薬剤存在下では, 細胞内に存在するこれらの成分のほぼ全量が放出された。
    (3) ≧5μg/mlTCZの存在下で, 静止期細胞浮遊液の細胞外pHは有意に上昇した。いずれの場合もpH値の上昇は薬剤添加後極めて速やかに起こり, 20, 40, 80μg/mlの薬剤添加後1分間以内のΔpHは, それぞれ≧0.1, ≧0.5, ≧1.0の高値を示した。
    (4) 種々の濃度のTCZ存在下で培養した細胞から脂質を抽出し, ステロール組成の分析を行なった結果, 正常細胞にあってばステロールの大部分を占めるergosterolがほとんど消失し, 代わって24-methylene-dihydrolanosterolなどのergosterol生合成の前駆体となるメチル化ステロールの大量蓄積が認められた。このパターンのステロール組成の変化は,<0.08μg/mlという極めて低濃度の薬剤でも顕著にひき起こされ, TCZが真菌ステロール合成経路上のC-4, 14脱メチル化過程を特異的にしかも極めて鋭敏に阻害することが知られた。
    (5) TIMM 0144を親株とし, これより誘導変異によって分離したステロール合成系に障害をもつ変異株を用い, 親株との間でTCZ感受性を比較した。変異株に対するTCZのIC50値は親株のそれよりも数百倍上昇していたが, IC100 (MIC) 値は2~4倍の上昇をみるに過ぎなかった。高濃度 (≧40μg/ml) の薬剤によるK+放出促進効果ならびに殺菌的効果に対しては, 変異株は親株と同等以上の高い感受性を示した。
    以上の成績から, TCZはその作用濃度に応じてステロール合成阻害および直接的非代謝的細胞膜障害という二元的作用メカニズムを有し, 低濃度域においてはステロール合成阻害によって不完全発育阻止効果を, 中等度濃度域においてはこれに軽度の細胞膜障害が加わって完全発育阻止 (静菌的) 効果を, また高濃度域においては不可逆的な高度細胞膜障害による殺菌的効果を, それぞれ発揮するものと推察された。
  • 平谷 民雄, 永田 淳子, 山口 英世
    1986 年 34 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    感受性真菌Sporothrix schenckii酵母形細胞を用いてチオカルバミン酸系の新しい抗真菌剤tolciclateの抗菌活性に関与する作用機序を検討し, 次の成績を得た。
    1) Tolcidateは本菌に対し, 培養濁度, 乾燥重量, 生菌数のいずれの測定法においても1.25~80μg/mlの濃度で, 静菌的ないしは軽度ながら殺菌的に作用した。
    2) 本剤は本菌の主要な細胞構成成分すべての生合成に対して阻害効果を示したが, タンパク質やRNAの合成に比べて, DNAおよび2つの細胞壁多糖 (アルカリ不溶性多糖とラムノマンナン) の合成はより強く阻害された。また総脂質の合成阻害も同程度に強かった。
    3) 細胞膜および呼吸に対する阻害は全く認められなかった。
    4) 無細胞系において, 本剤はS. cerevisiaeから調製したDNAポリメラーゼおよびRNAポリメラービ各反応を阻害しなかった。S. schenckiiより調製した細胞壁多糖合成酵素反応のうち, キチン合成酵素反応は最も強く阻害され, マンナン合成酵素反応は中程度の阻害を受け, β(1, 3)-グルカン合成酵素反応はまったく阻害されなかった。キチン合成酵素反応の阻害様式は競合的阻害であり, Ki値は168μMと算出された。
    5) 本剤は脂質合成, 特にエルゴステロール合成に対して強い阻害効果を示し, スクアレンの高度蓄積が認められた。
    6) 以上の成績から, 感受性真菌細胞において, tolciclateはスクアレン・エポキシ化反応の特異的阻害によりエルゴステロール合成阻害をひき起こすことが本剤の抗菌活性を説明する最も可能性の高い一次的作用機序であると推論される。
  • 山口 英世, 平谷 民雄, 永田 淳子, 内田 勝久
    1986 年 34 巻 2 号 p. 146-156
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規イミダゾール系抗真菌剤tioconazole (TCZ) の外用剤は白癬その他の表在性皮膚真菌症に対して優れた治療効果を発揮することが知られている。この理由を説明するために, 本剤のin vitro抗菌活性, 特に殺菌的効果ならびにモルモットの白癬モデルにおけるクリーム剤の治療効果についてmiconazole nitrate (MCZ) およびclotrimazole (CTZ) と比較検討を行ない, 以下の成績を得た。
    (1) candida albicans2株の増殖期培養に添加した場合, TCZは20μg/ml以上の濃度で強力な殺菌効果を示し, その程度および発現の迅速さのいずれの点でも, MCZおよびCTZの効果を上回っていた。Trichophyton mentagrophytes 2株の分生子に対しては発芽およびそれに続く菌糸発育を起こさない条件下で, TCZはC. albicansにおける場合よりも低濃度で有意な殺菌的効果を示した。本菌においてもTCZはMCZおよびCTZに勝る強力な殺菌的効果を発現した。このようなTCZのin vitro抗菌活性および殺菌的効果は, MCZと比べて培地pHによる影響が軽微であった。
    (2) モルモットの白癬モデルにおいてTCZのクリーム剤は, 局所病変度, 培養陽性率, およびキチン含量のいずれを指標として判定した場合にも, 明らかな治療効果を示した。この効果はTCZ 0.2%クリーム剤よりも1%クリーム剤が有意に勝っていた。またTCZ1%クリーム剤を同一基剤を用いて調製したMCZおよびCTZの対応する濃度のクリーム剤と比較すると, 最終的な治療効果の点では3剤間で有意差は認められなかったが, 治療効果が発現する迅速さの点ではTCZが最も優れていた。
  • 天野 正道, 田中 啓幹
    1986 年 34 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗生物質が感染症の治療に果した役割は大きく高く評価されている。一方抗生物質の生体感染防御機構に対する影響を前もって把握しておくことは重要と考えるが, 文献上検討された薬剤の種類と濃度は限局されたものである。著者らは感染防御機構より感染初期に主役を演じ, 尿路感染症と密接な関係を有する好中球を選び検討した。
    抗生物質のヒト白血球貧食能と殺菌能に対する影響をin vitroで検討するために, 17種の抗生物質と2種の抗菌剤について, 濃度は200μg/mlから0.02μg/mlについて検討した。好中球は正常人と複雑性腎孟腎炎患者末梢血よりDextranで分離して使用した。感染症例の好中球で検討することは意義深いと考えた。貪食能は, 鏡検で好中球に取り込まれた細菌をカウントする方法と3H-Lysineで細菌を標識し, 取り込まれた細菌数を液体シンチレーションカウンターで求める二方法を使用し, 殺菌能はQUIEの方法で行なった。腎孟腎炎患者好中球貧食能と殺菌能は正常人に比べ亢進を示し感染を防御する方向に働いていた。抗生物質の貧食能と殺菌能への影響は使用した薬剤の種類と濃度で異なった。多数の抗生物質は常用量使用時の血中最高濃度以下の濃度で貧食能と殺菌能を低下させた。CPIZは貧食能と殺菌を著明に亢進せしめた。抗生物質の白血球機能に対する影響は正常人と腎孟腎炎白血球で異なった。抗生物質の白血球機能に対する影響のメカニズムは今後の課題である。
  • 吉田 哲憲, 大浦 武彦, 本間 賢一, 菅野 弘之, 野崎 敏彦, 黒川 えり, 原田 祐輔, 福島 政文, 本村 廣, 迫田 隆志
    1986 年 34 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (CTX) の皮膚への移行を知る目的で, 全身麻酔下に全層皮膚移植術を受けた患者を対象として, 手術中にCTX1gを静注し, 生物学的定量法 (Bioassay法) および高速液体クロマトグラフィー法 (HPLC法) により経時的に血清中濃度ならびに皮窟内濃度測定を行なった。
    CTXの平均血清中濃度は, 投与後30分でBioassay法では52.4μg/ml, HPLC法では44.4μg/mlを示した。その後, 時間の経過とともにいずれの測定方法でも同様の曲線を描いて低下し, 投与後4時間で, Bioassay法では5.1μg/ml, HPLC法では2.8μg/mlの値をとった。
    一方, HPLC法により測定したDesacetyl-cefotaxime (D-CTX) の平均血清中濃度は投与後30分で5.4μg/mlを示した。この濃度は同測定時点でのCTX濃度の12%に相当した。
    CTXの平均皮膚内濃度は投与後30分でBioassay法では7.8μg/g, HPLC法では4.7μg/gを示し, その後緩やかに低下して投与後4時間ではそれぞれ2.2μg/g, 1.2μg/gの値をとった。
    HPLC法によるD-CTXの平均皮膚内濃度は投与後1時間で11.1μg/gのピークを示し, その後緩やかに低下した。皮膚内ではD-CTX濃度がCTX濃度より高い値を示した。
    以上の結果, CTX, D-CTXとも皮膚内で長時間有効濃度を維持しており, 形成外科・皮膚科領域における感染症に対して充分治療効果を期待し得ると考える。
  • 本間 賢一, 大浦 武彦, 吉田 哲憲, 菅野 弘之, 大岩 彰, 井川 浩晴, 石川 隆夫, 松本 敏明
    1986 年 34 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    第3世代セフェム系抗生剤Cefpiramideを熱傷を中心とする形成外科領域の感染症24例に投与し, あわせて熱傷部位から分離した臨床分離株の各種抗生剤に対する抗菌力について比較検討した。
    熱傷18例, 褥瘡2例, レントゲン潰瘍2例, 術後潰瘍1例, 皮膚癌に伴う難治性潰瘍1例に本剤を5~58g (平均22.59) を投与した結果, 著効1例, 有効15例, やや有効6例, 無効1例, 不明1例で有効率は69.6%であった。
    このうち熱傷感染の18例では, 著効1例, 有効11例, やや有効4例, 無効1例, 不明1例で有効率は70.6%であった。
    熱傷創面から分離されたS. aureus23株, S. epidermidis 5株, S. faecalis 13株, K. oxytoca 5株, P. aeruginosa 27株, P. maltophilia 6株に対して日本化学療法学会標準法により, CPM, CPZ, CZX, CFSのMICを測定した.
    その結果, CPMはS. epidermidisに対してはCPZと同程度であり, S. faecalisに対してはCPZより優れていた。
    P. aeruginosaに対してはCPMはCFSと同程度であり, P. maltophiliaに対してはCPZより優れていた。
    S. aureusに対してはCPMはCPZよりやや優れていたが, 4剤中CFSが最も感受性が高く, K. oxytocaに対してはCPZ, CZXに比べやや劣っていた。
  • 酒井 克治他
    1986 年 34 巻 2 号 p. 180-204
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    術後感染症に対するCefpiramide (CPM) の有効性, 安全性ならびに有用性を客観的に評価するため, Cefotiam (CTM) を対照薬とし, 両薬剤1日2g点滴静注投与による二重盲検比較試験を行ない, 以下の成績を得た。
    1. 対象患者の背景因子において, 術後創感染症例 (以下A層) では両薬剤群間に偏りはみられず, 術後腹腔内感染および死腔感染症例 (以下B層) ではCPM群に単独感染例が多く偏りがみられ, 両群均等とはいえなかったが, その他の背景因子については有意差は認められなかった。
    2. 総合臨床効果は, A層ではCPM群87%(62/71), CTM群77%(55/71), B層ではCPM群85%(47/55), CTM群58%(31/53) の有効率を示し, A層では両薬剤群間に有意の差は認められなかったが, B層においてはx2およびU検定で有意の差が認められた.
    3. 全般的改善度 (最終) は, A層ではCPM群79%(56/71), CTM群72%(51/71), B層ではCPM群78%(43/55), CTM群58%(31/53) の改善率を示し, A層ては両薬剤群間に差がなく, B層ではx2検定でCPM群が有意に高い改善率を示した。
    4. 細菌学的効果は, 症例別の菌消失において, A層ではCPM群53%(28/53), CTM群46%(26/57) と両薬剤群間で有意の差はみられなかったが, B層ではCPM群59%(26/44), CTM群31%(10/32) とx2およびU検定でCPM群に有意に高い菌消失を示した。また, 菌種別の菌消失率ではA層, B層とも両薬剤群間で有意差はなかった。
    5.副作用はCPM群144例中5例 (3%), CTM群138例中3例 (2%), 臨床検査値異常はCPM群で5%, CTM群で12%の出現率であった。副作用および臨床検査値異常の発現率は両薬剤群間に差がなかった。
    6. 有用性判定においてはA層で両薬剤群間に差は認められなかったが, B層ではx2およびU検定においてCPM群が有意に優れていた。
    7. 対象患者の背景因子において偏りが認められたB層について単独感染および混合感染別に, 総合臨床効果, 全般的改善度, 細菌学的効果および有用性判定について層別解析した結果, 単独感染症例の菌消失率 (CPM群68%, CTM群33%) においてのみ, CPM群が有意に優れていた。
    以上の成績からCPMは術後感染症の治療薬として有用性の高い薬剤であると考えられた。
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