CHEMOTHERAPY
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34 巻, 7 号
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  • 蛍光試薬にo-フタルアルデヒド/β-メルカプトプロピオン酸を用いた分析
    大月 秀夫, 上 洋司, 村川 英雄, 藤本 尚
    1986 年 34 巻 7 号 p. 571-576
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体系抗生物質の一種であるネチルマイシン (NTL) の高速液体クロマトグラフィー (HPLC) ポストラベル法による高感度かつ安定な定量を目的として, 蛍光試薬にo-フタルアルデヒド (OPA)/β-メルカブトプロピオン酸 (MP) を用いる方法について検討した。
    OPA/MPを用いた場合, 従来より繁用されているOPA/2-メルカブトエタノール (ME) に比べ, 蛍光試薬および蛍光試薬-NTL反応生成体の安定性が優れていた。更にOPA/MEに比べ, 反応温度, 時間などの測定条件や蛍光試薬の使用可能期間に関し精密な設定を必要とせず, オートサンブラーによる長時間にわたる分析においても扱いやすいという利点があった。また, 蛍光強度はOPA/MEの約2倍であるため, 血漿中NTLの検出限界の増大を認めた (OPA/MP;0.2μg/ml, OPA/ME;0.5μg/ml)。更に, SLFIA法 (検出限界1μg/ml) と比較すると, やや長い分析時間を要するが, 低濃度域での正確な分析が可能となった。
    また, NTLを健常人7名に筋注し, 血清中のNTL濃度をOPA/MPまたはOPA/MEを蛍光試薬とするHPLCポストラベル法およびSLFIA法で測定した。HPLCポストラベル法による測定値はSLFIA法に比べやや低値であったが, OPA/MPおよびOPA/MEを用いたHPLCポストラベル法間の測定値は良く一致した。
  • 藤田 公生, 村山 猛男, 亀山 周二, 川村 実, 佐山 孝
    1986 年 34 巻 7 号 p. 577-581
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    急性膀胱炎患者から分離された234株の細菌を, 同時期の複雑性尿路感染症患老から分離された細菌と比較し, また治療効果との関係を検討した。
    複雑性感染症ではE.coliの頻度が少なくなり, その代りにKlebsiella, Pseudomonas, Proteus, Serratia属の細菌が増加した。
    急性膀胱炎ではCinoxacin 800mg7日間投与ですべての細菌が消失し, 有効な臨床効果が得られた。検出菌に対するMICと治療効果の間には相関がみられなかった。
  • 藤田 公生, 村山 猛男, 亀山 周二, 川村 実, 佐山 孝
    1986 年 34 巻 7 号 p. 582-587
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    急性膀胱炎症例516例を検討した。薬剤としてはCinoxacin800mgを7日間経口投与した。UTI研究会の単純性尿路感染症の基準を満たし, 効果を判定できた女性の急性膀胱炎症例233例においては98.7%の有効率が得られた。その基準からはずれる症例は有効率がやや低く, 再発率が高かった。原因菌別の検討ではS.epidermidisに対する治療効果が低かった。
  • 藤田 公生, 佐山 孝, 川村 実, 亀山 周二, 村山 猛男
    1986 年 34 巻 7 号 p. 588-591
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    術前感染例を含む経尿道的前立腺切除術予定の52例について手術前後の尿路感染を検討した。使用抗菌剤はCefotetanとし1gを手術当日と翌日は2回, 次の2日間は1回点滴投与した。尿中細菌数104/ml以上を尿路感染とした。術前感染のみられた22例中19例 (86.4%) の高率で術後に菌が消失した。術前感染のみられなかった30例についてみると, 26例 (86.7%) はそのまま感染を認めなかった。術後に検出された菌は1例を除いてE.faecalisないしP.aeruginosaであったのが特徴的であった。全例において敗血症, 副睾丸炎, あるいは顕症の尿路感染症を起こすことなく順調な経過をとることができた。
  • 河合 健, 尾仲 章男, 味澤 篤, 加茂 隆
    1986 年 34 巻 7 号 p. 592-596
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症において抗生剤が効果を発揮するためには, その抗生剤が起炎菌に対して発育阻止効果があり, かつその抗生剤が気管支・肺胞腔へ充分に移行することが必要である。セブブペラゾン (CBPZ) の呼吸器感染症への効果を知るために, 実験動物を用いて, 同剤の気管支・肺胞への移行を検討した。
    CBPZを白色家兎に静注し, 気管支・肺胞洗滌を経時的に試みた。CBPZ 100mg/kg体重を静注後, 気管支・肺胞洗滌液中の同剤は, 30分から6時間まで検出され, その最高濃度は17μg/ml, 平均で1.0μg/mlであった。これは静脈血の最高濃度が216.5μg/ml, その平均が144.6μg/mlに比べ, それぞれ127分の1および145分の1で, CBPZの気管支・肺胞洗滌液への移行は低い成績を得た。
    CBPZの静注投与量に比例して気管支・肺胞洗滌液濃度は上昇した。
    CBPZ静注60分後に, 生食水で気管支.肺胞腔を充満して溺死させ, その気管.気管支・肺胞充満液のCBPZ濃度を測定し, さらに死後30分のそれと比較すると, CBPZ濃度は死後30分には4.5倍高くなっていた。このことから, 気管・気管支.肺胞壁のCBPZが, その30分間で腔内へ移行したことを示し, 気管支・肺胞洗滌液の濃度は, 組織濃度を反映するがそれよりはるかに低値をとることが推定された。
  • 鈴木 恵三他
    1986 年 34 巻 7 号 p. 597-608
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    グラム陰性桿菌 (GNB) に基づく細菌性前立腺炎15例に対してnorfloxacin (NFLX) を投与し, 有効性と安全性について検討した。
    基礎的検討として, 本剤のヒト前立腺液 (PF) への濃度移行の測定と, 前立腺圧出液 (EPS) から分離した細菌の感受性を検討した。
    1. PFへの移行: NFLX 200mgを慢性前立腺炎患者に投与した時の, 1時間後のPF内濃度は0.05~0.44μg/ml (平均0.16μg/ml, n=6) であった。血清濃度の平均は0.60μg/mlであるから, 血清との比は0.26, すなわち26%の移行比であった。
    2. EPSからの分離菌は, E.coli13株, K.pneumoniae1株, E.cloacae1株であった。E.coliに対するNFLXのMICは0.025~0.10μg/mlで, ピ-クは0.05μg/mlであった。K.pneumoniaeは0.20μg/ml, E.cloacaeは0.78μg/mlのMICを示した。
    3. 臨床的には, 急性10例, 慢性5例の15例の細菌性前立腺炎患者 (平均年齢43.5歳) にNFLXを1日600mg投与して, 4~10日 (I期), 11~19日 (II期), 20~29日 (III期) 後に効果をみた。細菌学的には15株中14株, 93.3%の除菌率を示した。この他に白血球, 症状の消長を総合的に評価すると, 著効7例, 有効6例, 無効2例で, 総合有効率は86.7%であった。
    4. 安全性: 全例に自他覚的副作用をみなかった。投与前後の末梢血, 肝, 腎機能検査でも, 全例本剤によると思われる異常をみなかった。
    5. NFLXはGNBによる細菌性前立腺炎の治療に有効で, かつ安全性に問題がなく, 有用性が高い抗菌剤であると評価できた。
  • 河田 幸道他
    1986 年 34 巻 7 号 p. 609-628
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用半合成セファロスポリン剤L-105の, 複雑性尿路感染症に対する有用性を客観的に評価する目的で, cefmenoximeを対照とした二重盲検比較を行なった。
    両剤ともに1回1gを1日2回, 点滴静注により5日間投与した後, UTI薬効評価基準に従って臨床効果を判定したが, 両群の背景因子には差を認めなかった。
    尿路分離菌231株に対する両剤のMICは, 全体としては差を認めないが, グラム陽性球菌に対してはL-105が優れていた。
    総合有効率はL-105投与群の93例で63.4%, cefmenoxime投与群の90例では56.7%であったが, 有意の差はなく, またUTI疾患病態群毎に比較した場合にも, ほとんどの群でL-105の方が有効率が高かったが, いずれも有意の差を認めなかった。細菌消失率もL-105投与群で149株中85.2%, cefmenoxime投与群で151株中84.1%と差を認めず, グラム陽性球菌, グラム陰性桿菌別にみてもほぼ同等であった。投与後出現細菌では, L-105投与群ではグラム陽性球菌の出現頻度がより低く, cefmenoxime投与群ではグラム陰性桿菌がより低かったが, 全体ではL-105投与群39.8%, cefmenoxime投与群40.0%と差を認めなかった。
    副作用は両群に各1例認められたが, その発現頻度に関して両群間に差を認めず, また臨床検査の異常値発現頻度にも差を認めなかったことから, L-105はcefmenoxime同様, 安全な薬剤であると思われた。薬効と副作用とを勘案して治療担当医が判定した有用性についても, 両群間に差は認められなかった。
    これらの成績から, L-105はcefmenoximeと同様に, 複雑性尿路感染症の治療において有用な薬剤であると考えられた。
  • 原 耕平他
    1986 年 34 巻 7 号 p. 629-653
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    BAY o 9867 (Cipnofloxacin, CPFX) の細菌性肺炎に対する有効性と安全性を客観的に評価する目的で, Bacampicillin (BAPC) を対照薬とし, 全国63施設の共同研究として二重盲検比較試験を実施した。
    感染症状の明確な18歳以上の患者を対象とし, CPFX1日600mg (分3) またはBAPC 1日1.0g (分4) を原則として14日間経口投与し, 以下の成績を得た。
    1) 小委員会判定による臨床効果については, 全症例ではCPFX群85.3%(58/68), BAPC群90.5%(57/63), 細菌性肺炎ではCPFX群83.3%(45/54), BAPC群88.9 (40/45) の有効率を示し, それぞれ両薬剤群間に有意の差を認めなかった。
    2) 主治医判定による臨床効果においても, 全症例でCPFX群87.7%(57/65), BAPC群86.9%(53/61), 細菌性肺炎でCPFX群86.8%(46/53), BAPC群87.2%(41/47) の有効率で, 両薬剤群間に有意差を認めなかった。
    3) 細菌学的効果については, 全症例ではCPFX群85.7%(18/21), BAPC群65.0%(13/20), 細菌性肺炎ではCPFX群83.3%(15/18), BAPC群56.3%(9/16) の菌消失率を示し, CPFX群の消失率が高かったが, 有意の差ではなかった。
    4) 副作用はCPFX群で8.4%(7/83), BAPC群で9.5%(8/84), 臨床検査値異常は各々15.0%(12/80) と23.4%(18/77) とに認められたが, 重篤なものではなく, その発現率において両薬剤群間に有意の差を認めなかった。
    5) 小委員会および主治医判定による有用性において, いずれも両薬剤群間に有意差を認めなかった。
    以上の成績より, 細菌性肺炎の治療において, CPFX1日600mgの投与は, BAPC1日1.0gの投与に匹敵する臨床的有用性を有するものと考えられた。
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