CHEMOTHERAPY
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35 巻, 6 号
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  • 最近5年間の観察
    渡辺 正治, 久保 勢津子, 石山 尚子, 畠山 靖子, 斉藤 知子, 高橋 公毅, 陳 瑞明, 菅野 治重
    1987 年 35 巻 6 号 p. 467-475
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    千葉大学医学部附属病院において1981年から1985年までの5年間におけるMethicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA) について検討したので, その成績を報告する。
    MRSAの分離は全体として, 1981年の51株 (16.6%) から1985年の144株 (33.2%) に増加した。入院患者由来株では, 1981年の29株 (17.8%) から1985年の106株 (40.6%) と急激な増加がみられた。一方, 外来患者由来株の分離率は20%前後と年度によって大きな変化はみられなかった。検体別では, 各年度とも膿, 耳漏が多かった.特に, 入院患者由来株では, 喀痰, 尿, 血液で増加傾向が認められた。診療科別では, 内科系よりも外科系でMRSAの分離が多かった。MRSAのCoagulase型は, 主にIV型, II型で, 外来患者由来株では, IV型が多く, 入院患者由来株では, 1984年以降II型が増加していた。各種薬剤に対する感受性では, MRSAはMethiciliin感性S. aureus (MSSA) に比べ, PCG, ABPC, MPIPC, CET, GM, EM, CLDM, MINOに対してもMICが高かった。Coagulase II型株は, MINOでMSSAと同程度のMICを示し, MCIPCにMICが高かった。IV型株は逆に, MINOでMSSAに比べMICが高い株が多く, MCIPCに比較的MICが低かった。RFP, VCMでは, RFPにのみ2株耐性株が認められた。培養温度と培養時間によるMICの変化については, MRSAは一夜培養で, DMPPCに対して37℃培養より30℃培養でMICが2倍から8倍上昇し, 37℃, 48時間培養ではその中間のMICを示した。
  • 出口 浩一他
    1987 年 35 巻 6 号 p. 476-481
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    敗血症, 呼吸器感染症由来のMethicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 50株を用いて, アミノ配糖体抗生物質 (AGs) 9剤 [Arbekacin (HBK), Dibekacin (DKB), Gentamicin (GM), Amikacin (AMK), Tobramycin (TOB), Netilmicin (NTL), Sisomicin (SISO), Micronomicin (MCR), Astromicin (ASTM)], β-lactam系抗生物質2剤 [Methicillin (DMPPC), Cefazolin (CEZ)] に対する感受性を検討した.
    1) MRSAに対するAGsの抗菌力は, HBK, NTLが優れていて, そのMIC80は, HBK O.78μg/ml, NTL1.56μg/mlだった.AMKは, >100μg/mlのMIC値を示す高度耐性株は少ないが, MIC80は, 25μg/mlを示していた.
    その他のAGsは, MIC50で, DKB, GM, SISOが各々100μg/ml, TOB, MCR, ASTMが各々>100μg/mlであり抗菌力が劣る.
    GM, SISO, MCR, ASTMのMIC値の分布は同一パターンを示し, TOBは高度耐性株が高率を占めるなど, MRSAに対するAGsの抗菌力は, 複雑かつ多様である.
    2) MRSAに対するDMPPC, CEZのMIC値分布はほぼ同様で, DMPPC耐性はCEZ耐性であることを確認した.
    DMPPCのMRSAに対するMIC値分布は, 32℃, 37℃によって多少異なり, 37℃では一部の株が感受性側のMIC値を示したが, 大部分の株は37℃でも高度耐性のMIC値を示した.これらのことからMRSAは温度条件によってβ-lactam系剤に対する感受性が変動しうる株と, 温度条件には感受性が依存しない.より頑固な多剤耐性菌としての性格をもつ株が併存することを示唆していた.
  • 高速液体クロマトグラフィーによるCefmetazoleとGentamicinの同時測定
    吉田 幸洋
    1987 年 35 巻 6 号 p. 482-488
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    逆相イオン対分配クロマトグラフィーによって, 併用投与されたCefmetazole (CMZ) とGentamicin (GM) の血清中濃度を迅速かつ簡便に同時定量する方法を開発した。
    移動相は1.2-エタンジスルホン酸ナトリウム0.1Mとオクタンスルホン酸ナトリウム0.005Mを酢酸でpH3.2-3.3に調製し, アセトニトリルは16%で用いた。カラムはZorbax ODSを用い, 測定は, CMZは紫外線吸収測定 (254nm), GMは蛍光測定 (EM 452nm, EX 357nm) で行なった。流速は, 移動相は1.2ml/min, 蛍光相 (蛍光試薬; o-フタルアルデヒド) は0.3ml/minとした。血清の前処理はメタノール除蛋白 (血清5μl, 内部標準20μlメタノール100μl) 後にイオン対溶液200μl (移動相の2倍濃度, pH2.5) を加え100μlを注入した。
    CMZのリテンションタイムは5分で, GMのC1a, C2, C1はそれぞれ15分, 18分, 22分であり, 1検体当り約25分で測定を終了した。同時再現性は, CVでCMZ2.2-4.6%。GM6.4-7.9%であった。日差再現性は, カラムにより差があったが, CVでCMZ 8.2-9.1%, GM2.2-13.3%であった。GMの測定限界は1μg/mlであった。腎機能正常な婦人科患者9名にCMZ 2g (点滴静注) とGM 40mg (筋注) を併用投与した際のCMZとGMの血中濃度を測定し, 臨床応用価値の高いことを確認しえた。
  • ラットにおける気管支肺胞洗浄法による検討
    加藤 政仁他
    1987 年 35 巻 6 号 p. 489-493
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    正常ラットおよび肺炎ラットに対し, Fosfomycin (FOM), 100mg/kg筋注し, 投与30分後, 1時間後, 2時間後に気管支肺胞洗浄Bronchoalveolar lavage (以下BALと略す) を行ない回収されたBAL液中のFOM濃度を測定した.
    1) 繰り返すBALによりBAL液中の濃度は急速に低下し, BAL7-8回目には測定不能となった.
    2) 10回のBALによるFOMの総回収量は投与30分後で正常群21.7±3.9μg, 肺炎群 (P. aeruginosa IFO 3445 109/mlを20ml噴霧) 46.4±14.6μg, 投与1時間後は正常群14.1±5.4μg, 肺炎群36.2±11.1μgであり, ともに肺炎群が高値を示した (P<0.01).しかし投与2時間後は正常群9.1±2.0μg, 肺炎群11.2±2.8μgであり両者間に差はみられなかった.
    3) 血清中濃度は投与後30分, 1時間, 2時間すべてにおいて正常群と肺炎群とに差はみられなかった.
    4) BALを施行していない別の群で測定した投与後30分の肺組織内総FOM量は正常群と肺炎群の間に差を認めなかった.
    5) 肺炎ラットでのBAL液中FOM濃度の上昇は, 炎症により毛細血管上皮および肺胞上皮の透過性が亢進したためと考えた.
  • 河田 幸道他
    1987 年 35 巻 6 号 p. 494-519
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたmonobactam系抗生物質Carumonam (CRMN) の, 複雑性尿路感染症に対する有用性を客観的に評価する目的で, グラム陰性桿菌 (GNR) 感染症を対象に, Cefoperazone (CPZ) を対照薬とした二重盲検法による群間比較検討を行なった。
    CRMN, CPZともに1回1gを1日2回, 点滴静注により5日間投与した後, UTI薬効評価基準により臨床効果を判定した。なお, 両群の背景因子には有意差を認めなかった。
    総合有効率はCRMN投与群の113例では70.8%であり, CPZ投与群の100例中61.0%との間に有意差を認めなかったが, UTI疾患病態群ごとの比較では, 第1群におけるCRMN・の効果が高い傾向を示した。また細菌尿に対する効果では, CRMN投与群における菌交代の頻度が有意に高かったが, その多くは単なる菌交代であり, 菌交代症として問題になる症例の頻度は両群ほぼ同率であった。
    細菌消失率はCRMN投与群で175株中90.3%と, CPZ投与群の151株中80.1%より有意に高かった。菌種別ではE. cloacaeの消失率でCRMN投与群100%, CPZ投与群57.1%と42.9%の差, S. marcescensの消失率でCRMN投与群100%, CPZ投与群60%と40.0%の差が認められ, 後者での差は有意であった。
    副作用はCRMN投与群に2例 (1.1%), CPZ投与群に1例 (0.5%) 認められた。臨床検査ではCRMN投与群におけるGOT, GPTの異常値発現頻度が有意に低率であったが, 概括安全度では両群間に差は認めなかった。
    これらの成績から, CRMNはGNRによる複雑性尿路感染症の治療に際して有用な薬剤であると考えられた。
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