CHEMOTHERAPY
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35 巻, 8 号
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  • 太田 美智男, 伊藤 秀郎, 荒川 宜親, 森 正司, 小松 章行, 木藤 伸夫, 山本 秀子, 加藤 延夫
    1987 年 35 巻 8 号 p. 607-612
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Klebsiella属細菌のうちインドール陽性株であるK. oxytocaK. planticolaのβ-lactam系抗生物質, Ampicillin (ABPC), Piperacillin (PIPC), Cephaloridine (CER), Cefoperazone (CPZ), Latamoxef (LMOX), Aztreonam (AZT) に対する感受性を検討し, 以下の成績を得た。
    1. 11総合病院の臨床検査材料より分離されたインドール陽性Klebsiglla 246株のうち48株がK. planticolaと同定された。
    2. K. planticolaのβ-lactam系抗生物質に対する感受性分布は同じインドール陽性株であるK. oxytocaよりもむしろK. pneumoniaeと類似していた。
    3. K. planticolaのβ-lactamaseは基質特異性からpenicillinase型であった。
    4. モノバクタムのAZTはK. pneumoniaeおよびK. planticolaに対してLMOXと同等かそれ以上の良好な抗菌力を示した。またK. oxytocaに対しても良好な抗菌活性を示した。
    5. AZTはK. planticolaおよびK. oxytocaのβ-lactamaseによって全く加水分解されなかった。
    6. K. oxytocaのβ-lactamaseはcephalosporinase型に近い基質特異性を示した。
    今回の結果から, K. planticolaは臨床検査室では独立の菌種として取り扱うべきであると考えられる。
  • CephalexinとAmoxicillinの比較
    小林 寅哲, 手塚 孝一, 草野 朱美, 佐藤 弓枝, 鈴木 美幸, 内野 卯津樹, 菅沢 勝治, 高橋 かおる, 西田 実, 五島 瑳智子
    1987 年 35 巻 8 号 p. 613-625
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    現在, 最も広く臨床的に利用されている経口抗菌剤, CEXおよびAMPCの腸内細菌業に及ぼす影響を検討した。健康志願者それぞれ3名に両薬を250mg, 1目3回, 3日間連続投与し, 糞便中の好気性菌および嫌気性菌数の変化を観察した。
    CEXの投与によって好気性菌の総数は著明に変化しなかった。また各症例においても特定の菌群の菌数が極端に減少することはなかった。一方, 嫌気性菌の総菌数はCEXを投与した3例中1例において減少した。CEXを投与した3例のうち1例の糞便中のBifidobacterium, Eubacterium, Peptococcaceae, およびB. fragilis groupが中等度に減少した。また他の1例ではBifidobacterium, Eubacterium. Peptococcaceaeが著明に減少したが, いずれも薬剤の投与の中止にともなって回復した。これらの3例中2例では薬剤の投与中または投与後にC. difficile D-1toxinが糞便中より検出された。
    AMPCの投与により, 好気性菌の総菌数は, 3例中2例で薬剤の投与直後に一過性に増加した。増加する菌群としてはEnterobacteriaceae, グラム陽性桿菌群 (以下, GPR) であった。嫌気性菌の総菌数は薬剤の投与により3例中1例では中等度に減少したが, 他の2例では増加傾向を示した。AMPCの投与後の各症例における菌群の変化はCEXの場合より激しかった。すなわち3例中1例はほとんどの菌群が大きく増加したのに他の2例ではBifidobacterium, Eubacterium, Peptococcaoeae, lecithinase (-) Clostridiumなどが激減した。またC. difficileのD-1toxinは3例中2例の糞便中にも長期にわたり検出された。
  • 谷 佳都, 春日 修, 石井 信男, 芝田 和夫, 山口 東太郎
    1987 年 35 巻 8 号 p. 626-634
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    皮下炎症pouch内にS. aureusまたはE. coliを接種して感染pouchを作製したラッワトにAspoxicillin (ASPC), Ampicillin (ABPC), Piperacillin (PIPC) およびSulbenicillin (SBPC) を静脈内投与し, これらのpouch内浸出液中濃度を非感染対照pouchのそれらと比較した。S. aureus感染pouch (細菌接種5日後) では, 各ペニシリン剤の浸出液中濃度のTmax値およびT1/2値はいずれも非感染pouchのそれより大きく, しかもPIPCを除くペニシリン剤のCmax値およびAUC値はいずれも非感染pouchのそれより小さく, これらのペニシリン剤の浸出液中移行はS. aureus感染によって著しく影響を受けた。また, 薬剤投与をS. aureus接種7日後に遅らせると, 各ペニシリン剤の浸出液中濃度は5日後よりも低くなり, 浸出液からの薬剤消失も5日後より緩慢になる傾向を示した。一方, E. coli感染pouch (細菌接種5日後) における各ペニシリン剤の浸出液中移行はS. aureus感染pouchの場合とほぼ同様の影響を受けたが, いずれのパラメーターでも非感染pouchとの差はS. aureus感染に比べて小さかった。
    次にS. aureusおよびE. coliの両感染pouchにおける各ペニシリン剤の抗菌作用を薬剤投与後の浸出液中 生菌数によって比較したところ, 各ペニシリン剤の抗菌作用の強さは浸出液中濃度のAUC値の大きさに相関した。試験したペニシリン剤のうちでASPCは両感染pouchの浸出液中に最も高い濃度に移行して最も大きい AUC値を示し, 両感染pouchにおいて最も優れた抗菌作用を示した。
  • 杉山 博子, 青山 久, 高 富彦, 小宮 泉
    1987 年 35 巻 8 号 p. 635-640
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    体重kg当り50mgのFOMをone shotで静脈内に投与し, 3種類の皮膚滲出液 (吸引水疱液, 熱傷水疱液, 皮膚剥離創滲出液) への移行を調べ, 薬動力学的解析を行なった。FOM濃度の測定はProteus sp (MB-837) を測定菌とする生物学的方法によった。
    血清中のFOM濃度は投与後15分で246±54.6μg/mlに達し, 8時間後では13.3±10.0μg/mlであった。吸引水疱液, 熱傷水疱液, 皮膚剥離創滲出液内FOM濃度が最高濃度に達するのは大体1時間前後であった。
    測定結果をもとに薬動力学的解析を行ないTmax, Cmax, AUC0-8h, K1, K2, K1/K2を求めたところ, 吸引水疱液では順に, 1.5hr, 79.8μg/ml, 391.8μg.hr/ml, 0.631hr-1, 0.839br-1, 0.752であった。熱傷水疱液では1.3hr, 80.9μg/ml, 358.7μg, hr/ml, 0.612hr-1, 1.10hr-1, 0.556であり, 剥離創滲出液ではそれぞれ0.7hr, 73.4μg/ml, 229.2μg, hr/ml, 0.986hr-1, 2.27hr-1, 0.434という結果を得た。
  • 大橋 裕二, 安東 直彦, 本島 新司, 牧野 荘平
    1987 年 35 巻 8 号 p. 641-648
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    結核患者10例を対象に, 大田原赤十字病院で従来より行なわれてきた体重, 年齢, 腎機能に基づいたストレプトマイシン (SM) の投与方法について検討した。SMを1か月間投与した前後で, 点滴静注時の血中濃度を測定し, 同時に腎・聴器毒性に関して検討した。患者は, SM 1g連日投与群5例, SM 0.75g連日投与群4例, SM 0.75g隔日投与群1例であった。SMの血中濃度は, 1か月投与前後で, 有意な差を示さなかった。血中半減期, 分布容量も, 有意な差は示さなかったが, 半減期の延長を認めた症例も存在した。軽度の平衡機能障害を3例に認めた。平衡機能障害を生じた症例は, SM 1g・0.75g連日投与群にそれぞれ存在したが, いずれも1か月投与後の最低血中濃度は高値で, 半減期も延長し, 尿中β2-microgiobulin (β2-MG), N-acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG) の高値の症例に生じた。今回の結果より, 尿中β2-MG, NAGは, SMによる腎・聴器毒性の発現を予測する手段になる可能性が示唆された。軽度腎機能低下例には, 投与量をより少なくするなど, 従来の投与法を変更する必要があると思われた。
  • I. 基礎的検討
    飯田 夕
    1987 年 35 巻 8 号 p. 649-658
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗生物質の血小板凝集能の抑制は古くから報告されており, 血小板の膜への影響が推定されていた。抗生物質の血小板凝集能, 血小板表面陰性荷電, 血小板粘着能に及ぼす影響をin vitroおよびin vivoにおいて検討した。
    in vitroではヒト血小板におけるLatamoxef (LMOX) (終濃度200~1,000μg/ml), Tobramycin (TOB) (終濃度5~50μg/ml) およびこれらの併用の血小板凝集能, 血小板表面陰性荷電に及ぼす影響を測定した。LMOXは1,000μg/mlではじめてadenosine-diphosphate (ADP) 凝集を抑制し, 特に一次凝集の抑制が強く認められた。collagen凝集にはすべての濃度において影響を認めなかった。LMOX (1,000μg/ml) は血小板表面陰性荷電を増大させADP凝集の抑制と相関した。BAUMGARTNER法による血小板粘着能の測定では, LMOX (1,000μg/ml) +TOB (50μg/ml) でわずかに“Thrombus”(血栓形成) の抑制を認めた。in vivoにおいては雄の家兎にLMOXあるいはTicarcillin (TIPC) 400mg/kg/dayを1日1回7日間連続投与した。いずれもADP凝集の有意な抑制とcollagen凝集にわずかな抑制を認め, 血小板表面陰性荷電は有意に増大した。β-ラクタム剤は血小板の膜表面に非特異的に結合して, 特にADP凝集を抑制すると考えられた。
  • II. 臨床的検討
    飯田 夕
    1987 年 35 巻 8 号 p. 659-668
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年抗生物重投与時に出血傾向を生ずることが報告されている。特に3位にN-methyltetrazolethiol (NMTT) をもつ抗生物質によるビタミンK欠乏が間題とされている。抗生物質の血小板および血液凝固に及ぼす影響を臨床例において検討した。抗生物質投与前後の血小板数, 血小板凝集能, prothrombia time (PT), activated partial thromboplastin time (APTT), hepaplastin test (HPT), thrombotest (TT), protein induced by vitamin K absence or antagonist (PIVKAII) を測定した。一部の症例においてはhigh-performance Hquid chromatographic (HPLC) methodにてビタミンKも測定した。セフェム剤の常用量 (2g~4g/day) を投与した15例中7例では抗生物質投与前に血小板凝集能はすでに感染症のために低下しており, 抗生物質を投与し感染症の軽快とともに, 血小板凝集能の回復がみられた。PIVKA-II陽性例はNMTTをもたない抗生物質では30例中0例, NMTTをもつ抗生物質では28例中6例 (Latamoxef (LMOX) 3例, Cefmenoxime (CMX) 3例) であったが, いずれも経口摂取不良の症例であった。このうち一例でピタミソK投与後にepoxideの上昇がみられ, NMTTはepoxide reductaseを阻害すると考えられた。以上より経口摂取不良の患者に抗生物質を投与する際にはビタミンKの予防投与が必要と思われた。
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