難治性尿路感染症の原因の一つである耐性菌の頻度と病態との関係を明確にする目的で, 薬剤耐性プラスミド (R-plasmid) の検出を行ない, 病態との関係を検討した。
1982年から1985年までの4年間に分離された
Escherichia coli 366株について, ampicillin (ABPC), tetracycline (TC), chloramphenicol (CP), streptomycin (SM), kanamycin (KM), sulfanilamide (SA), nalidixic acid (NA), rifampicin (RFP) のMICを化学療法学会標準法により測定し, 得られた耐性菌株を供与菌とし, RFPとNA耐性株を受容菌として一次および二次の接合伝達実験を行ない, R-plasmid支配株を確認した。
耐性菌の頻度はABPCとSMが41%, SAが40%, TCが35%, CPが18%, KMとNAが9%であり, RFP耐性菌は1株も分離されなかった。これらの耐性菌からのR-plasmidの検出率は単剤耐性菌よりも多剤耐性菌において高かった。多剤耐性菌の中では, 単純性尿路感染症よりも複雑性尿路感染症においてR-Plasmidの検出率が高かった。複雑性尿路感染症では, カテーテル留置症例と非留置症例の耐性菌分離頻度はほぼ同等であったが, R-plasmidの検出率はカテーテル非留置症例において高かった。これらのことから, 耐性菌の頻度, R-plasmidの検出率は尿路感染症の病態によって異なることが明らかとなった。
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