29株のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA, MIC≧12.5μg/ml) と標準菌 (MSSA) 6株に対する10種類の抗生物質 [メチシリン, アンピシリン, セフォチアム, セブゾナム, ゲンタマイシン, ドキシサイクリン (DOXY), ミノサイクリン (MINO), ホスホマイシン (FOM), バンコマイシン (VCM) およびイミペネム] の最小発育阻止濃度 (MIC) および4種類の消毒剤 [塩化ペンザルコニウム液 (BAC), グルコン酸クロルヘキシジン液 (CHG), 塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液 (TG) およびポビドンヨード液 (PVP-1)] の殺菌力を検討した.
MSSAに対する10種抗生物質のMICは, FOMを除いて0.006~1.56μg/mlの範囲にあった. MRSAに対する各抗生物質のMIC
50で表される抗菌活性はMINO (0.39μg/ml)>DOXY=VCM (0.78μg/ml) の順に強く, 他の7種抗生物質では25μg/ml以上であった. 一方, これら抗生物質のMIC
80とMIC
20の2段階希釈率の差で表される抗菌効果のばらつきは, MINO, DOXYでは3段階あったが, VCMのMIC
80とMIC
20は一致しており, VCMの作用が最も非特異的であった. したがって, 上記の3抗生物質については総合的な効力面で, 有効であることが示唆された.
4種消毒剤のMSSAに対する殺菌力試験の結果, BACとPVP-1に同様の有効性が認められ, CHGとTGは10分以内には殺菌作用を示さなかった. MRSAに対する殺菌力試験の結果, 創傷部位の消毒用に汎用されるPVP-1が, 最も強い殺菌効果を示した. 主として手指等の消毒に汎用される消毒剤のうち, BACがCHGおよびTGに比べ強い殺菌力を示した. BACにエタノール (10~20%) または炭酸ナトリウム (0.01%) を添加することにより, 殺菌力が増強することが判明し, 特にMRSAに対してはエタノールの添加が, MSSAに対しては炭酸ナトリウムの添加が有効と推察された.
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