CHEMOTHERAPY
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37 巻, 6 号
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  • 微量液体希釈法を用いた成績
    出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 深山 成美, 西村 由紀子, 小田 清次
    1989 年 37 巻 6 号 p. 717-722
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1987年7月以降に分離したStapmylococcus aureus 300株に対する, 各種抗菌性物質の MICを測定した。300株のうちわけは, methicillin-susceptible Staphycoccus aureus (MSSA) 149株, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 151株である。これら300株に対するβ-ラクタム系8剤, その他7剤, 合計15薬剤のMICを微量液体希釈法にて測定し, 次の結論を得た。
    1. 微量液体希釈法によつて得られたMIC値は, いずれの薬剤においても, 寒天平板希釈法と比較して2~4倍高い値を示した。これら両測定法によつて生ずるMIC値の差は, 使用培地・細菌の発育状態の観察方法などの違いから生ずる必然的な差であることを指摘し, 両測定法の活用の仕方を論じた。
    2. MSSAはQLs耐性が増加する傾向を示した。
    3. MRSAに対するCEPs 7剤のMICを, 薬剤感受性バターンとして捉える手法で分析すると, CEPsの7剤は各々特有のMIC分布を示した。
    4. MRSAに対するCEPsの抗菌力の評価にはMSSAも含む抗菌力の強弱, penicillin bindingprotein 2'を誘導する性状の見極めが大切な基準のひとつであることを述べた。
  • 三上 襄, 宇野 潤, 矢沢 勝清, 新井 正
    1989 年 37 巻 6 号 p. 723-730
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Monobactam系抗生物質. aztreonamのin vitroでの活性を自動増殖解析システムを用いて検討した。その結果, Pseudomonas aeruginosaを用いた場合, aztreonamの存在下での増殖パターンが, 対照として用いたamikacin, ofloxacinおよびminocyclineとは明らかに異なり, β-ラクタム系薬剤に共通の特徴的な2段階増殖阻害曲線を示した。また, Elscherichia coliを用いた場合には, aztreonamは, β-ラクタム系薬剤の中でも, 特にlatamoxefに近い特異な増殖曲線を示し, aztreonamは菌の伸長化と引き続いて起こす強い溶菌作用を持つことが確認された。これらの溶菌作用はaztreonam添加後, 2~3時間で起こり, また, これらの現象は, 菌量がかなり多い場合でも観察された。他の薬剤との併用, 特にキノロン系の薬剤との相乗効果もこの増殖解析システムを用いることにより, 確認することができた。
  • 品川 長夫他
    1989 年 37 巻 6 号 p. 731-743
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1982年より1986年までの5年間に穿孔性腹膜炎で手術を施行した183症例を対象とし, 腹水より分離した細菌とその薬剤感受性 (MIC) を集中検索, 測定した。183症例中138例 (75.4%) より278株の細菌が分離された。好気性菌ではグラム陽性球菌が47株, グラム陰性桿菌が129株であり, 嫌気性菌ではグラム陽性菌が50株, グラム陰性菌が52株であった。最も頻度の高い菌種はE. coliであり, 次いでB. fragilis group, Peptostreptococcus spp., Klebsiella spp., E. faecalis, anaerobicstreptococci, Enterobacter spp., P. aeruginosaの順であった。E. coliに対するMIC80はCTXが最も低値であり以下CZX, CMX, CTMの順であり, B. fragilis groupに対してはLMOX, CMZ, PIPC, CTX, CZX, CMXの順であった。E. foecalisに対してはPIPCが最も低いMIC80 (3.13μg/ml) であり, その他の薬剤は12.5μg/ml以上であった。Klebsiella spp.はE. coliとほぼ同様なMIC分布を示していた。Peptostreptococcus spp.に対してはCET, CEZ, PIPCに加えCMX, CZXなどの第3世代セフェム系が優れた抗菌活性を示した。P. aeruginosaに対してはGMが最も優れたMIC分布を示し, AMK, PIPC, CPZがこれに続いた。分離菌と薬剤感受性分布の点からみると, 検討した薬剤では穿孔性腹膜炎に対してセフェム系ではCTX, CZX, CMX, CTMが, ベニシリン系ではPIPCが有利であり, アミノ配糖体系を使用するとぎは嫌気性菌も考慮し薬剤を選択する必要があると考えられた。
  • 微量液体希釈法を応用した成績
    出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 深山 成美, 西村 由紀子, 小田 清次
    1989 年 37 巻 6 号 p. 744-749
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Methicilrin-resistant Staphylococcus eureus (MRSA) は, 多剤耐性菌としての性状をもつため, 有効な抗菌剤を選択するのが難しい。そこで, 中程度のMRSAに比較的強い抗菌力を示すcefuzonamと, 高度のMRSAにも抗菌力を示すarbekacinを選び, 両剤の試験管内における抗菌併用作用を微量液体希釈法を用いて検討した。
    1) MRSAに対する両剤の併用効果は, FIC index≦0.5の成績がHBKの添加濃度0.5μg/mlで38.5%, 1.0μg/mlでは76.9%であることから, MRSAに対する両剤の抗菌併用作用は, HBK0.5~1.0μg/mlすなわちHBKのMICもしくはsub MIC存在下で, 相乗効果が期待できることを示唆した。
    2) 微量液体希釈法は, 抗菌併用作用のような実験系にも応用が可能であることを確認した。
  • 真菌菌系の生育におよぼすarnphotericin Bとtetracyclineとの併用効果について
    大塚 正道, 難波 宏彰, 黒田 久寅
    1989 年 37 巻 6 号 p. 750-757
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗細菌剤として臨床で使用されているtetracyclin (TC) は, 抗真菌作用を示さないことが知られている。しかし, TCは無細胞系では真核細胞のタンパク合成を阻害することが明らかにされている。そこで, TCの真菌増殖抑制作用を, ascomycetesに属するCochliobolus miptabeanusを用いて検討し, つぎの結果を得た。
    1) Amphotericin B (AMPHB) は0.08μg/mlの濃度で, 菌糸の生育を50%抑制したが, TCは137μg/mlを要した。
    2) AMPH B0.04μg/mlとTC45μg/mlの両薬物を併用しても菌糸生育抑制は, AMPHB単独0.04μg/ml添加の場合と同じであった。すなわち, TCをAMPHBと共存させた培地で菌糸を培養させた時には, TCの抗菌性はまったく認められず, AMPHBのみの抑制効果しか得られなかった。
    3) AMPH B0.04μg/ml存在下で菌糸をまず前培養させたのち, つぎにTC 10μg/ml存在培地で生育させた場合は, 2) に比べ生育抑制は約2倍であった。
    4) AMPHBおよびTC共存下での菌体内への14C-アミノ酸のとりこみは, AMPHB単独添加およびTCとの併用添加画分では, 薬物無添加の画分と比べても差は認められなかった。しかし, AMPHB存在下で生育させたのち, TC添加培地でさらに増殖させた画分では, とりこみ量の増加は認められた。
    5) 本菌の培養ろ液から分子量3,000以上, およびそれ以下の2種のタンパク画分を精製したところ, 高分子タンパクの添加によりCTの活性は失なわれた。以上の結果, AMPHBにより, まず菌糸に傷害を与えたのちTCを添加すると, 真菌の生育抑制がみられた。しかし, 菌糸から分泌される分子量3,000以上のタンパクによりTCは不活化することが認められた。
  • 大上 史朗, 榊 三郎, 久門 良明, 茶木 隆寛
    1989 年 37 巻 6 号 p. 758-767
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    セファロスポリン系抗生物質cefpiramide (CPM) の髄液移行性について, 薬動力学的検討を行なった。頭蓋内疾患の治療前後に髄液ドレナージを行なった29例を対象に, CPM2g one-shot静注後, 血清中および髄液中濃度を同時に測定し, その結果を2コンパートメントモデルにより解析した。
    1) 初回投与後の血清中濃度は, 6時間後91.45μg/ml, 12時間後52.29μg/ml, 24時間後19.60μg/mlであり, β相における血中半減期は8, 5時間であった。連続投与後もほぼ同様の結果が得られ, 本剤の血清中濃度の持続性が確認された。
    2) 初回投与後の髄液中濃度は, 1時間で1.28μg/mlとすみやかに上昇し, 6時間値で2, 48μg/ml, 12時間値でも1.74μg/mlと持続的に推移した。連続投与後の結果でもほぼ同様の結果を示した。
    3) 標準株でのMICと髄液中のCPM濃度とを比較検討すると, CPM濃度は脳神経外科領域の術後感染の起炎菌のMICをほとんど上回っていた。しかし, 臨床分離株のMIC80と比較, 検討すると, E. coli, S. aureus, S. epidermidis, K. pneumoniaeによる術後感染に対してはある程度予防し得るものと考えられた。
    以上より, CPMは脳神経外科領域の感染予防に有用ではあるが, その効果は起炎菌の種類と個体差があるため, 厳重な注意が必要である。
  • 田口 康正
    1989 年 37 巻 6 号 p. 768-775
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Compromised hostを想定した実験的白血球減少および気道障害家兎を作製した。Klebsiellapneumoniaeによるこれらの家兎の肺感染モデルにおいて, 右下葉限局性肺炎からび慢性肺炎への感染の拡大は気道を介して起こることが示唆された。
    このモデルを用い, amikacinおよびcefuzonamの気道内注入投与法の細菌学的治療効果を静脈内投与法と比較した。
    菌接種部位である右下葉のみならず他の肺葉および肝臓, 脾臓, 腎臓, 血中などにおける菌の減少程度は1日1回の同用量の投与では静脈内投与法よりも気道内注入投与法の方が著明であった。
    同一感染家兎における薬剤の体内動態をamikacinで検討した結果, 血清中濃度の持続 性は気道内注入投与法の方が良好であった。また注入投与法では薬剤注入部位である右下葉, およびそのBAL液から長時間にわたり薬剤が検出され, 緩徐な減少傾向を示し, さらに右上葉とBAL液, 右中葉においても相当量の薬剤が長時間にわたり検出された。静脈内投与法ではこのような現象は認められなかった。
    一方, 腎内濃度は静脈内投与法より気道内注入投与法の方が低かった。すなわちアミノ配糖体系抗菌剤では, 気道内注入投与法は静脈内投与法に比べ腎への移行, 残留性が少ないことが確認された。このような事実が人においても同様に認められるならば, 腎障害など宿主における副作用の軽減に役立つものと推察される。
  • 副島 林造他
    1989 年 37 巻 6 号 p. 776-795
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌剤lomefloxacin (NY-198, LFLX) の呼吸器感染症に対する至適用量を検討する目的で, 二重盲検比較試験を実施した。対象疾患は慢性気道感染症ならびに細菌性肺炎とした。投与量はLFLX 1日量400mg (分2) および600mg (分3) とし, 原則として14日間投与し, 以下の成績を得た。集積症例は102例であり, そのうち臨床効果解析対象症例は94例 (400mg群48例, 600mg群46例), 副作用解析対象症例は97例 (400mg群49例, 600mg群48例) であった。両群間の背景因子では, 全体で600mg群に喀痰性状ならびに胸部ラ音の重度例が, 慢性気道感染群で600mg群に複数菌感染例が, それぞれ有意に多かったが, その他の背景因子の分布には両群間に有意な偏りは認められなかった。
    1) 臨床効果: 全症例では400mg群72.9%(35/48), 600mg群69.6%(32/46), 慢性気道感染群では400mg群63.6%(21/33). 600mg群65.7%(23/35), 肺炎群では400mg群93.3%(14/15), 600m9群81.8%(9/11) の有効率であったが, いずれも両群間に有意差は認められなかった。
    2) 細菌学的効果1全症例では400mg群80.0%(24/30), 600mg群67.9%(19/28) の菌消失率であったが, 両群間に有意差は認められなかった。
    3) 安全性: 副作用は400mg群に4.1%(2/49), 600mg群に6.3%(3/48), また, 臨床検査値異常変動は400mg群に12.2%(6/49), 600mg群に15, 9%(7/44), それぞれ認められたが, 両群を通じて重篤な例はなく, またその発現率に有意差は認められなかった。
    4) 有用性: 全症例では400mg群72.9%(35/48), 600mg群66.0%(31/47), 慢性気道感染群では400mg群63.6%(21/33), 600mg群61.7%(22/36), 肺炎群では400mg群93.3%(14/15), 600mg群81.8%(9/11) の満足率が得られ, いずれも両群間に有意差は認められなかった。以上の成績から, 400mg (分2) と600mg (分3) 投与ではほぼ同程度の安全性が示されており, 難治性要素の強い慢性気道感染症を主とする呼吸器感染症に対しては1日量600mg (分3) の方が適当であろうと考えられた。
  • 高橋 久他
    1989 年 37 巻 6 号 p. 796-837
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    浅在性化膿性疾患に対するピリドンカルボン酸系合成抗菌剤T-3262 (tosufloxacin tosilate) の有効性. 安全性ならびに有用性を客観的に評価するために, ofloxacin (OFLX) を対照薬として二重盲検法により比較検討した。1日投与量はT.3262群450mg, OFLX群600mgとし, 両薬剤とも1日3回毎食後投与とした。投与期間は第1~IV群およびVI群は7日間, 第V群は10日間連続経口投与とした。総投与症例数は274例 (T-3262群138例, OFLX群136例) で, 有効性は247例 (T-3262群125例, OFLX群122例), 概括安全度は268例 (T-3262群134例, OFLX群134例), 有用性は254例 (T.3262群128例, OFLX群126例) を解析対象とし, 以下の成績を得た。
    1. 最終全般改善度は, T-3262群88.0%(110/125), OFLX群82.8%(101/122) の有効率 (有効以上) を示し, 両群間に有意差は認められなかった。
    2. 細菌学的効果は, T-3262群87.1%(54/62), OFLX群90.9%(60/66) の菌陰性化率を示し, 両群間に有意差は認められなかった。
    3. 概括安全度は, T-3262群95.5%(128/134), OFLX群94.0%(126/134) の安全率 (安全以上) を示し, 両群間に有意差は認められなかった。
    副作用発現率は, T-3262群3.7%(5/134), OFLX群6.0%(8/134) で両群間に有意差は認められなかった。
    臨床検査値異常は, T-3262群73例中2例にGPTの上昇が認められた。
    4. 有用性は. T-3262群85.2%(109/128), OFLX群78.6%(99/126) の有用率 (有用以上) を示し, 両群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績より, T-3262は浅在性化膿性疾患に対しOFLXと同様に, 有用性の高い薬剤と考えられた。
  • 山崎 清仁, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 広瀬 崇興
    1989 年 37 巻 6 号 p. 838-847
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    固形癌化学療法中の白血球減少時における発熱に関して臨床的に検討する目的で, 泌尿器科領域において代表的な化学療法である睾丸腫瘍のPVB療法と尿路上皮腫瘍のM-VAC療法を施行した患者を対象に, 発熱の頻度と感染症の予防という点につき検討した。その結果は以下の通りであった。
    1. PVB110コース, M-VAC13コースにおける白血球減少の起こる頻度は. PVB群では2,000/mm3以下58.2%, 1,000/mm3以下21.8%であり, M-VAC群では2,000/mm3以下30.8%, 1,000/mm3以下15.4%であった。また顆粒球減少の起こる頻度は, PVB91コース, およびM-VAC11コースにおいて. PVB群では500/mm3以下62.6%, 100/mm3以下28.6%であり, VAC群では500/mm3以下45.5%, 100/mm3以下0%であった。
    2. 白血球減少の持続期間について, PVB群では4,000/mm3以下の期間は平均13.4日間, 2,000/mm3以下の期間は6.2日間, 1,000/mm3以下の期間は3.7日間であった。これに対しMVAC群では各々7日, 4.3日, 2.5日間と, PVB群よりも短くなっていた。また, 最低白血球数, 顆粒球数と年齢との関係については明らかな差を認めなかった。
    3. 発熱の解熱過程において, 白血球数の増加に伴い体温が下降する現象が認められた。
    4. 38℃ 以上の発熱の頻度は, PVB群で110コース中17コース (15.4%), M-VAC群で13コース中2コース (15.4%) であった。
    5. 38℃ 以上の発熱のみられた各コースにおける最低白血球数, 顆粒球数は, ともに非発熱時に比較し有意に低下していた。
    6. 発熱時の細菌学的検査により, 敗血症はPVB群で11コース中1コース9.1%にのみ, また尿路感染症はM-VAC群で2コース中1コース50%に認められ, PVB群での尿路感染症は14コース中1コースも認められなかった。また口腔粘膜内のサイトメガロウィルスの検出も5例に試み, 陽性例は認められなかった。
    7. 各治療コースの最低白血球数1,000/mm3, 最低顆粒球数100/mm3以下の場合, 抗菌剤の投与, 特に腸内常在菌抑制のための非吸収性抗菌剤投与が発熱を抑えるのに有効である傾向が認められ, 白血球減少時の発熱に際しては腸管からの内因性感染症の存在がうかがわれた。
    8. 癌化学療法中の白血球減少時における発熱は, 年齢や輪血の影響といった要因とは無関係であった。
  • 1989 年 37 巻 6 号 p. 848-863
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2011/08/04
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