最近, 抗生物質投与中の出血傾向が注目されている。そこで我々は, 新しく開発されたオキサセフェム系抗生物質flomoxef sodium (以下FMOXと略す) の血小板機能・血液凝固機能に対する影響について検討したので報告する。
対象は12例の呼吸器感染症例である.FMOX投与前と投与後7日目において血小板魏出血時間, 血小板粘着能, 血小板凝集能, 血小板ATP放出能, プロトロンピン時間, 活性部分トロンボプラスチン時間, 血漿フィプリノーゲン, フィプリン分解産物, トロンポテスト, ヘパプラスチンテスト.第II・VII・IX・X凝固因子, PIVKA-IIを測定した。
FMOXは原則的に1日29を朝夕の2回, 生理食塩水100mlに溶解し60分かけて点滴薄注した。
その結果, FMOX投与後で検査成績が悪化した症例は認められず全例安全に使用しえた。
しかし, 2例に投与後でPIVKA-IIが陽性となった.この2例における他の検査結果からはFMOXがビタミンK代謝に何らかの影響を及ぼした可能性は明確にしえず, PIVKA-IIについては測定法などを含め今後検討の余地があると考えられた.
今回の検討でFMOXは1日297日間程度の投与では出血傾向をきたすことのない, 安全な抗生物質であることが証明された。
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