CHEMOTHERAPY
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38 巻, 5 号
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  • 岩田 和夫, 山下 貴子, 上原 広子, 野澤 義則
    1990 年 38 巻 5 号 p. 435-443
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Trichophyton mentagrophytesのチオカーバメート系新抗皮膚糸状菌剤piritetrate (M-732) に対する試験管内耐性について同族体tolnaftateと比較研究し, 両薬剤ともに本菌種に対し耐性を著しく与えにくいことを認めた。すなわち, 被験菌株6株は, 薬剤含有サプロー・ブドウ糖液体ならびに寒天培地の継代培養により両薬剤に対し耐性の上昇をみなかった。ただし, 1株のみは両培地ともに比較的長期継代培養においてtolnaftateに対してのみ高度の耐性を獲得した。これらtolnaftate両耐性株は形態学的ならびに生化学的に著しい変化を起こしたのみでなく, 病原性の消失をきたした。また, 両株ともにpiritetrateに対し部分的交差耐性を示した。
  • 舘田 一博, 山口 恵三, 石井 良和, 下口 和矩, 草野 展周, 菅原 和行, 臼井 敏明, 河野 茂, 原 耕平
    1990 年 38 巻 5 号 p. 444-449
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Vibrio cholerae non-01は, いわゆるコレラ菌 (V.cholerae 01) と血清型においてのみ区別される菌種であり, 本邦の河川, 海洋に広く分布している。本菌のヒトにおける病原性は, コレラ菌感染症にみられる食中毒や感染性下痢症に加えて, 肝疾患等を有する患者においては敗血症の起炎菌としても重要であることが知られている。今風臨床分離株 (10株) および環境分離株 (80株) のV.cholerae non-01の薬剤感受性試験を行うとともに, 本菌の産生するβ-lactamaseの基質特異性について検討を加えた。今回検討した抗菌剤の中でceftizoximeとofloxacinの抗菌活性が最も優れており, すべての株が0.025μg/ml以下のMIC値を示した。また, 臨床分離株の中にはampicillin (ABPC) に対する耐性株は認めちれなかったものの, 環境分離株においては80株中30株 (37.5%) がABPCに対してMIC値12.5μg/ml以上の耐性を示した。そして, これらABPCに対して耐性を示した株のすべてがβ-lactamase産生株であった。そこで, β-lactamaseの基質特異性を測定したところ, V.cholerae non-01の産生するβ-lactamaseは構成型penicillinaseであることが明らかになった。今後, 環境におけるV. cholerae non-01の薬剤耐性株の推移に目を向けるとともに, これち耐性株の臨床への蔓延に注意していく必要があると考えられた。
  • 鈴木 泉, 中野 清一, 柳川 真, 川村 寿一, 山本 逸夫
    1990 年 38 巻 5 号 p. 450-452
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    今回我々はβ-lactamaseに極めて安定した, 新しい抗生物質であるazthreonam (以下AZTと略す) を臨床例に使用し, その血中濃度と膀胱壁組織内濃度を測定した。対象症例は前立腺肥大症患者11例で, 全例, 恥骨後式前立腺摘出術を施行した。執刀直後, 生食100mlにAZT 2gを溶解し10分で点滴瞭注, 60分後に膀胱壁を全層, 約1g採取し, 同時に, 2mlの採血を行いAZTの濃度を測定した。血中濃度は65.4±13.6μg/ml (mean±S. D.), 膀胱壁組織内濃度は38.8±25.3μg/g (mean±S. D.) で, すでに報告のあった既存のセフェム系抗生物質とほぼ同等の血中濃度および膀胱壁内移行を示すことが認められた。
  • 投与溶媒と食餌の違いによる血中濃度と治療効果の変動
    宮崎 修一, 石田 佳久, 勝田 光大, 金子 康子, 五島 瑳智子
    1990 年 38 巻 5 号 p. 453-460
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口抗菌薬の投与法と食餌がマウスの血中濃度および全身感染モデルにどのような影響を与えるかについて実験した。セフェム系3剤 [cefpodoxime-proxetil (CPDX-PR), cefixime (CFIX), cefaclor (CCL)], ピリドンカルボン酸系3剤 [ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), enoxacin (ENX)] について, Klebsiella pneumomiaeの全身感染マウスモデルを用いて検討した結果, CCLを除く薬剤の血中濃度は経口投与時に用いた薬剤の溶媒による差は認められなかったが, 食餌摂取の有無による違いが認められ, 治療効果にも影響がみられた。
    CFIX, OFLXおよびENXでは絶食時投与が高い血中濃度を示したが, CPDX-PRおよびCPFXでは摂食条件下投与群の方が高い血中濃度であった。投与時の溶媒に水を用いた群では, CCLの血中濃度は摂食群が高く, ミルクを用いた群では絶食群の方が高い濃度を示した。マウス全身感染に対する治療効果はこれらの薬剤の血中濃度をほぼ反映し, その中Cmax (μg/ml) が最もED50との相関性が高かった。しかしセフェム系薬剤では水よりもミルクと共に投与した群にED50 (治療効果) が小さくなる成績が認められた。
  • 川原 和也
    1990 年 38 巻 5 号 p. 461-476
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニュー・キノロン剤の中枢神経系副作用の発現機序を解明する一端として, 同剤の髄液中移行について検討した。腰椎麻酔を必要とした手術症例でCNS感染のない193例を対象とし, norfloxacin (NFLX), enoxacin (ENX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), fleroxacin (AM-833) を投与した後, 髄液と血清を採取しbioassayで測定した。各薬剤200mgを単回投与後3時間目の髄液中濃度は, AM-833 (0.412±0.082μg/ml) が最も高く, OFLX, ENX, CPFX, NFLXの順であり, 髄液・血清濃度比も同様の傾向であった。DUNCANの多重比較検定により, ENXとOFLX, ENXとAM-833の髄液中濃度には有意差が認められた (p<0.01)。
    連続投与群ではOFLX (0.935±0.156μg/ml), AM-833, ENX, CPFX, NFLXの順に高値であり, 髄液・血清濃度比も同様の傾向を示した。連続投与群ではNFLXを除いて有意に上昇した (p<0.05, p<0.01)。AM-833 200mg, 300mgを単回, 連続投与して検討した結果, 髄液中濃度, 髄液・血清濃度比は投与量に依存して有意に高値を示した (p<0.01)。
    OFLX200mgを25例に, AM-833 300mgを28例に単回投与し薬動力学的に解析した結果, 血清濃度の消失半減期は健常成人とほぼ一致し, 髄液中濃度のピークはOFLXで約6時間, AM-833で約7時間であり, 減衰は緩徐であった。
    中枢神経系疾患の無い場合でもニュー・キノロン剤は髄液中に移行することが判明した。
  • 松山 豪泰, 山本 恵男, 吉弘 悟, 酒徳 治三郎, 藤田 俊生, 中島 嘉助
    1990 年 38 巻 5 号 p. 477-483
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    浸潤性膀胱癌10例に対し内腸骨動脈よりCDDPを含む抗癌剤注入療法を行い,(1) CDDPの静注法と動注法の薬物動態の差 (2) 動注時の薬物動態上のパラメーターと治療効果との関連 (3) 腫瘍内プラチナ濃度と治療効果との関連について検討した。
    方法はCDDP50~120mg, ADM30mg, アンギオテンシン II 20μgを10~15分で患側内腸骨動脈より注入し, これを症例により1~3クール行った。同時にライナック治療 (総量30Gy) を行った。
    全身的抗腫瘍効果を最も良く反映するパラメーターといわれるfree Pt AUCを動注法と静注法で検討したが, 動注法ではCDDP量 (mg/m2)/クレアチニンクリアランス (L/day) とfree Pt AUCの間にr=0.728の相関が認められ, この関係は静注法のときとほぼ差がなく, 単位CDDP量あたりのfree Pt AUCは動注法と静注法ではほぼ同じであることが示唆された。しかし動注時の局所治療効果と薬物動態との関連はみられず, 動注時のターゲッティング効果が前面にでているものと思われた。また腫瘍内Pt濃度は組織学的効果 (大星, 下里の分類) Grade IIb以上の有効群ではIIa以下の無効群に比べ高値を示し, 2μg/g以上の症例が多かった。
    局所療法と評価されている動注療法もCDDPのfree Pt AUCからみると静注法と同程度の全身的効果が期待でき, 腫瘍内Pt濃度をあげうるという点で浸潤性膀胱癌の併用療法として期待できると思われた。
  • 黒木 春郎, 中村 明
    1990 年 38 巻 5 号 p. 484-488
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    無脾症を合併したチアノーゼ型複雑心奇形の6歳, 女児の脳膿瘍を経験した。膿瘍の部位は右側頭部で, 開頭穿刺排膿とimipenem/cilastatin sodium 100mg/kg/dayの5週間投与により順調に治癒した。手術時の膿より分離された原因菌は微好気性連鎖球菌であり, 微量液体希釈法による抗菌力ではimipenem/cilastatin sodiumがMIC 0.01μg/mlと最も優れていた。
    連鎖球菌属の中でpenicillin Gに対する感受性の低下した菌株の増加が懸念される今日, 中枢神経系感染症に際してのimipenem/cilastatin sodiumの使用は検討に値すると思われた。また, 脳膿瘍の治療指針に関して若干の文献的考察を加えて報告した。
  • 大崎 能伸, 長内 忍, 秋葉 裕二, 石田 栄, 松本 博之, 藤兼 俊明, 小野寺 壮吉, 清水 哲雄, 中野 均, 赤石 直之
    1990 年 38 巻 5 号 p. 489-498
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口で用いるセフェム剤として開発された, cefixime (CFIX) の呼吸器感染症に対する効果と安全性を検討した。検討した症例は, 急性呼吸器感染症は気管支炎27例, 肺炎23例の50例, 慢性呼吸器感染症は慢性気管支炎4例, 気管支拡張症の感染4例, ぴまん性汎細気管支炎1例, 慢性呼吸器疾患の二次感染例6例の計65例であった。CFIXは原則的に1日量200mgを2回にわけて経口投与し, 7日から14日間使用したが, 病態や基礎疾患に応じて適宜増量した。その結果, 有効率は急性呼吸器感染症では80.0%, 慢性呼吸器感染症では60.0%の有効率を得た。急性呼吸器感染症では, CFIX 200mg/dayの使用で満足すべき効果が得られた。慢性呼吸器感染症では使用量の増加で効果が上昇することが示唆された。副作用, 検査値の異常は6.1%にみられたが, いずれも軽微なものであった。以上より, CFIXは, その抗菌スペクトルや抗菌力より, 呼吸器感染症に有用な薬剤と考えられる。
  • 1990 年 38 巻 5 号 p. 499-526
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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