ニュー・キノロン剤の中枢神経系副作用の発現機序を解明する一端として, 同剤の髄液中移行について検討した。腰椎麻酔を必要とした手術症例でCNS感染のない193例を対象とし, norfloxacin (NFLX), enoxacin (ENX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), fleroxacin (AM-833) を投与した後, 髄液と血清を採取しbioassayで測定した。各薬剤200mgを単回投与後3時間目の髄液中濃度は, AM-833 (0.412±0.082μg/ml) が最も高く, OFLX, ENX, CPFX, NFLXの順であり, 髄液・血清濃度比も同様の傾向であった。DUNCANの多重比較検定により, ENXとOFLX, ENXとAM-833の髄液中濃度には有意差が認められた (p<0.01)。
連続投与群ではOFLX (0.935±0.156μg/ml), AM-833, ENX, CPFX, NFLXの順に高値であり, 髄液・血清濃度比も同様の傾向を示した。連続投与群ではNFLXを除いて有意に上昇した (p<0.05, p<0.01)。AM-833 200mg, 300mgを単回, 連続投与して検討した結果, 髄液中濃度, 髄液・血清濃度比は投与量に依存して有意に高値を示した (p<0.01)。
OFLX200mgを25例に, AM-833 300mgを28例に単回投与し薬動力学的に解析した結果, 血清濃度の消失半減期は健常成人とほぼ一致し, 髄液中濃度のピークはOFLXで約6時間, AM-833で約7時間であり, 減衰は緩徐であった。
中枢神経系疾患の無い場合でもニュー・キノロン剤は髄液中に移行することが判明した。
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