CHEMOTHERAPY
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39 巻, 11 号
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  • 生方 公子, 杉浦 睦, 紺野 昌俊
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1001-1013
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン薬に耐性を示すStaphylococcus epidermidisからnorfloxacin (NFLX) 耐性遺伝子を含む2.2kbのHind III染色体DNA断片をクローニングした。Staphylococcus aureus SA 113に対するNFLX, enoxacin (ENX), ciprofloxacin, ofloxacin, tosufloxacinおよびsparnoxacin (SPFX) のMICは, それぞれ0.39, 0.39, 0.1, 0.2, 0.01, および0.02μg/mlであったが, このクローン化DNA断片の導入によりそれぞれ25, 12.5, 3.13, 1.56, 0.2および0.1μg/mlとMICは明らかに上昇した。MIC上昇の程度は, 比較的疎水性のSPFXが最も小さかった。クローン化DNA断片中にはNFLX耐性遺伝子と思われる1, 161塩基からなるオープンリーディングフレームが認められ, 387個のアミノ酸残基よりなる分子量42, 118のポリペプチドをコードしていた。このポリペプチドは疎水性アミノ酸に富む膜蛋白であると推定され, S.aureusnorA遺伝子より作られるNorAポリペプチドより1アミノ酸残基少なく, 両ポリペプチドのアミノ酸一致率は79%であった。また, クローン化DNA断片を鋳型としてin vitro翻訳系により作られたポリペプチドの分子量は42,000であり, 塩基配列から推定された分子量と近似していた。したがって, S.epidermidisよりクローニングしたNFLX耐性遺伝子は, S.aureusnorA遺伝子に相当するものと考えられた。標識されニューキノロン薬を用いたブドウ球菌の菌体内への薬剤取り込み実験において, S.epidermidis由来のnorA遺伝子を保持する形質転換株は, 非形質転換株よりENXの取り込みが少なく, carbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazoneを添加することにより取り込みは明らかに回復した。これらの成績より, S.epidermidis由来norA遺伝子にコードされたNorAポリペプチドは, 細胞膜上に存在していて, エネルギー依存的なニューキノロン薬の汲みだし機構に関与している可能性が示唆された。
  • 1. Imipenem耐性と他の抗緑膿菌β-lactam剤耐性の関係について
    渡邊 正人, 三橋 進
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1014-1019
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    臨床分離imipenem (IPM) 耐性Pseudomonas aeruginosa 70株のceftazidime (CAZ), cefsulodin (CFS), cefotaxime (CTX), lactamoxef (LMOX), piperacillin (PIPC), aztreonam (AZT) に対する感受性を検討した。20株 (29%) はβ-lactamase産生量は低く, 他の抗緑膿菌β-lactam剤 (CAZ, CFS, PIPC, AZT) に感受性であり, これらの株をA群とした。A群の株のβ-actamase誘導産生はIPMを除いて誘導がかかりにくかったことから, これらの菌株がIPM耐性にのみ耐性を示すのは薬剤透過性の低下によることが推論された。50株 (71%) は他の抗緑膿菌β-lactam剤に交叉耐性を示し, これらの株をB群とした。B群の株は誘導によってβ-lactamaseを高度産生するか, あるいはdereppressedの状態でβ-lactamaseを高度に産生した。B群の株のIPMおよび抗緑膿菌β-lactam剤に対する耐性には, IPMの薬剤透過性の低下とともにβ-lactamaseの高度産生の関与が推論された。
  • 佐藤 吉壮, 岩田 敏, 秋田 博伸, 新田 靖子, 野々山 勝人, 横田 隆夫, 砂川 慶介
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1020-1028
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    小児科領域での感染症由来の臨床分離株に対するcefpiromeの抗菌力を検討し以下の結果を得た。
    1.グラム陽性球菌ではStreptococciに対しては従来のセフェム系薬剤 (cephems) 同様あるいはそれを上回る抗菌力を持ち, methicillin感性Staphylococcus aureus, coagulase negativestaphylococciに対してもcephemsの中では第1世代と同等, またmethicillin耐性S.aureusに対しては第3世代と同等あるいはそれ以上の抗菌力を示した。Enterococcusに対してはpenicillin系薬剤にはおよぼないがcephemsの中では比較的良好な抗菌力を示した。
    2.グラム陰性桿菌では従来の第3世代cephemsと同様あるいはそれ以上の抗菌力を示し, またPseudomonas aeruginosaに対してもceftazidime, aztreonam, imipenemにはおよばないもののpiperacillinとほぼ同様の成績であった。
  • 田村 淳, 斉藤 早紀子, 井田 孝志, 原 哲郎, 河原條 勝己, 藤田 欣一, 鈴木 隆男, 井上 松久
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1029-1033
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Bioassay法により, arbekacinおよび他の各種抗菌剤の抗菌力におよぼすNaClの影響を検討した。Arbekacinおよび他のアミノ配糖体薬はmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) およびmethicillin-resistant S.aureus (MRSA) にかかわらず, 培地に4%NaClを添加した時, 著しく抗菌力が低下した。一方, β-ラクタム系薬は培地に4%NaClを添加した時, MSSA ATCC 25923株では抗菌力の低下はわずかであったが, MRSA M-12株では抗菌力の低下が認められた。さらにM-12株では, fosfomycinの抗菌力の低下も認められた。しかし, vancomycin, minocycline, ofloxacin, ST合剤などの抗菌薬では, MSSA, MRSAにかかわらず4%NaCl添加による抗菌力の変化はほとんど認められなかった。また培地にNaClを1%, 3%, 5%, 7%添加し, それぞれのMIC値におよぼす影響をarbekacin, netilmicinについて検討した。Arbekacinおよびnetilmicinは, S.aureusだけでなくEscherichia coliはじめグラム陰性菌でもNaCl添加で抗菌力が低下した。以上の結果より, NaClの抗菌力におよぼす影響は薬剤の種類により大きく異なり, arbekacinはじめアミノ配糖体薬はNaClにより著しく抗菌力が低下することが明らかとなった。
  • 藤沢 道夫, 岡部 哲郎, 四元 秀毅, 矢崎 義雄, 米田 修一
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1034-1039
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対する, cefodizime (CDZM), recombinant granulocyte colony stimulating factor (rG-CSF), γglobulinの併用効果を, Cycylophosphamide処理による白血球減少マウスについて検討した。
    1.CDZM, γ-globulin (50mg/kg) 併用マウスでは生存率0%であった。
    2.CDZM, rG-CSF (30μg/kg) 併用群ではCDZM 250mg/kg投与群で0%, 500mgで17%, 1,500mgで17%の生存率であった。
    3. CDZM, rG-CSF, γ-globulinを併用した場合にCDZM 250mg/kgで17%, 500mgで33%, 1, 500mgで67%と生存率は投与量に比例し増加した。
    以上により, 免疫低下状態におけるMRSA感染に対して, MRSA耐性CDZMとrG-CSF, γ-globulinの併用療法が効果があることが示唆された。
  • 宇野 勝次, 八木 元広, 関根 理, 山作 房之輔
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1040-1045
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗結核剤過敏症疑診患名を対象に, 白血球遊走阻止試験 (LMIT) による原因薬剤の検出同定を試み, 抗結核剤過敏症におけるLMITの有用性, ならびに遅延型過敏反応 (DTH) の関与について検討した。過敏症疑診患者は, 男性11例, 女性6例の計17例で, 全例50歳以上であり, 過敏症状は, 皮膚症状9例, 肝機能障害5例, 発熱5例, 肺臓炎1例, PIE症候群1例, 血小板減少1例 (各症状は重複) であった。LMITは, アガロース平板法の間接法を用い, 各薬剤の抗原濃度はisoniazide (INH) とethambutol (EB) が50μg/ml, rifampicin (RFP) が10μg/mlに調製した。LMITは, 88%の高い陽性率を得, 白血球遊走促進因子 (LMAF) を71%, 白血球遊走阻止因子 (LMIF) を29%検出し, LMIFに比べLMAFを有意 (P<0.01) に高く検出した。各薬剤のLMIT陽性率は, INHが12%, RFPが65%, EBが31%で, RFPが他の2剤に比べて有意に高い陽性率を示した。また, RFPはLMIF6%に対してLMAFを59%検出し, LMAFを有意 (P<0.0005) に高く検出した。以上の結果から, 抗結核剤過敏症の原因薬剤検出にLMITは有用であり, その発現にDTHが主要な役割を演じていると考えられる。また, 抗結核剤の中でRFPが最もアレルギー原性が高く, RFPによるDTHにLMAFの関与が高いことが示された。
  • Probenecid併用の影響
    上田 泰, 松本 文夫, 今井 健郎, 桜井 磐, 高橋 孝行, 森田 雅之, 斉藤 厚, 重野 芳輝, 伊良部 勇栄
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1046-1051
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Zidovudine (AZT) の体内動態に対するprobenecidの影響をビーグル犬およびHIV-1抗体陽性者で検討したところ, つぎの結果をえた。
    1. ビーグル犬ではprebenecidの併用により, Cmax, AUCはAZTにおいて増大し, glucuronide conlugated AZT (GAZT) において減少した。
    2. ヒトではprobenecidの併用によりAUCはAZT, GAZTとも増大し, その傾向はGAZTにおいて著しかった。
    3. 尿中回収率はprobenecidの併用によりビーグル犬ではAZTは著減, GAZTはやや減少し, ヒトではAZTは微増, GAZTは減少した。
    4. ProbenecidはAZTに対して肝でのグルクロン酸抱合を阻害し, AZT特にGAZTの尿細管での分泌を抑制することが示された。
    5. ヒトではAZTのHIV-1 replication阻害発現濃度 (0.3~0.5μg/ml) をこえる時間はprobenecidの併用により約2倍に延長した。
    以上の成績からAZTの抗HIV効果が有効血中濃度持続時間と関連があるとすれば, probenecidの併用はHIVの増殖阻止効果をさらに向上する可能性を示唆するものであり, また使用量減量による副作用軽減の可能性も示唆された。
  • 1日1回投与の有用性について
    鈴木 幹三, 足立 暁, 松浦 徹, 山本 俊幸
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1052-1064
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Ofloxacin (OFLX) の高齢者における1目1回投与法に関する基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1) 高齢者4名におけるOFLX200mg投与後の血清中濃度のビークは1時間後にみられ, 平均5.8μg/mlで, 血中半減期は平均10.3時間であった。
    2) 尿中濃度のピークは2~4時間で平均282μg/ml, 投与後24時間までの尿中回収率は平均52.1%であった。
    3) 臨床的検討は45例 (腎盂腎炎36例, 肺炎5例, 胆道感染症, 敗血症各2例) にOFLXを100mgまたは200mg1日1回投与し, 著効2例, 有効34例, やや有効3例, 無効6例で, 有効率は80%であった。
    4) 細菌学的効果では42株中35株 (83.3%) が菌消失し, Escherichia coli, Citrobacter fremdii, Protms mirabilisなどに有効であった。
    5) 副作用は発熱1例, 臨床検査値異常は好中球減少, 好酸球増多, 肝機能異常などが9例 (20%) にみられたが, いずれも投与終了後に軽快した。
    以上の成績より, 高齢者の尿路感染症を主とした内科感染症に対し, OFLX1日1回療法は有効な投与法と考えられた。
  • 花谷 勇治, 浅越 辰男, 高見 博, 蓮見 直彦, 根本 明久, 大塚 美幸, 四方 淳一
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1065-1070
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    術後創内滲出液中へのcefpiramide (CPM) の移行を臨床的に検討した。根治的乳房切断術後の13例の女性を対象に, CPMを1g静注 (n=5), 2g静注 (n=4) および2g60分間点滴静注 (n=4) 投与した。薬剤濃度はアガーウエル法によるbioassayで測定した。滲出液中におけるCPMのピーク濃度および投与後24時間までの濃度曲線下面積は1g静注群13.8μg/ml, 184μg・h/ml, 2g静注群32.0μg/ml, 422μg・h/ml, 2g点滴静注群29.2μg/ml, 363μg・h/mlであった。すなわち, 薬剤投与量と滲出液中濃度との問にはdose responseの関係を認めた。また, 2g静注群の成績と2g点滴静注群の成績には差を認めなかった。滲出液中におけるCPMの時間-濃度曲線はきわめて緩徐な変動を示した。すなわち, ピークに達するまでに5~6時間を要し, ピーク以後の消失半減期は約9時間であった。薬剤投与後24時間の時点においてもピークの30%の濃度を維持していた。2g静注群および2g点滴静注群では12.5μg/ml以上, 1g静注群では6.25μg/ml以上のCPM濃度を18時間にわたって維持していた。
  • 伊藤 康久, 山田 伸一郎, 米田 尚生, 斉藤 昭弘, 兼松 稔, 坂 義人, 河田 幸道, 玉木 正義, 前田 真一, 永井 司, 武田 ...
    1991 年 39 巻 11 号 p. 1071-1085
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバペネム系抗生剤であるimipenem/cilastatin sodium筋注用について尿路感染症に対する有用性を基礎的, 臨床的に検討し以下の結論を得た。
    1. 複雑性尿路感染症由来のStaphylococcus aureus, Staphlococcus epidermidis, Enterococcus faecalis, Escherichia coli, Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Pseudomonas aeruginosaの8菌種に対するimipenemの抗菌力を, piperacillin, cefmetazole, ceftazidime (CAZ), gentamicin, ofloxacinを対照薬として比較した。ImipenemはE.coliに対してCAZと同等であった以外は, 対照薬より優れていた。
    2. 複雑性尿路感染症を対象に本剤250mg/250mgまたは500mg/500mgを1日2回, 5日間投与しその有効性と安全性を検討した。UTI薬効評価基準に合致する25例の総合臨床効果は, 著効6例, 有効13例, 無効6例で有効率は76%であった。自他覚的副作用はみられなかったが, 臨床検査値の異常はGOTおよびGPTの上昇が2例に, 好中球の減少およびリンパ球の増加が1例に認められた。
    Imipenem/cilastatin sodium筋注用は複雑性尿路感染症の治療に有用かつ安全な薬剤と考えられた。
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