CHEMOTHERAPY
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39 巻, Supplement2 号
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  • 益吉 眞次, 三橋 進, 井上 松久, 平岡 聖樹, 松井 裕之
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 1-14
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (BMY-28142, CFPM) のin vitro, in vivoにおける抗菌力, β-lactamaseに対する安定性および親和性についてceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON), cefotaxime (CTX), cefmenoxime (CMX) を対照薬として比較検討した。CFPMは, Staphylococcus aureusを含むグラム陽性菌, Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対して強い抗菌力を示した。すなわちS. aureusに対してCAZより4倍優れており, CTXやCMXと同等であったが, CZONより若干劣っていた。一方グラム陰性菌に対する抗菌力は強く, 特にCitrobacter freundii, Enterobacter cloacaeのようなβ-lactamase産生菌に対してそれぞれ対照薬より32~128, 32~64倍優れていた。またCFPMのP. aeruginosaに対する抗菌力はCAZと同等であった。CFPMは, penicillinase, cephalosporinaseを産生するグラム陰性菌に対して強い抗菌力を示し, これらの抗菌力に及ぼす接種菌量の影響も小さかった。CFPMは, 各種のβ-lactamaseに対して高い安定性を示し, さらにβ-lactamaseとの親和性も低くCAZより1/7~1/50以下のKi値を示した。CFPMのin vitroにおける広域スペクトルおよび強い抗菌力が, 実験的マウス全身感染症に対しても良好な感染防御効果にも反映した。
  • 平岡 聖樹, 三橋 進, 益吉 眞次, 井上 松久
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 15-19
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (BMY-28142, CFPM) のEnterobacter cloacaeおよびCitrobacter freundiiに対する抗菌力とこれらの菌が産生するセファロスポリナーゼ (CSase) との相互作用について, cefotaxime (CTX) とceftazidime (CAZ) を対照として比較検討した。CFPMは1.56μg/mlでCTX耐性 (MIC 25μg/ml以上) のE. cloacaeおよびC. freundiiの臨床分離株 (それぞれ25株) の90%以上の株を生育阻止した。また, 両菌種の感受性株についてcefoxitinによりCSaseを誘導して感受性を測定したところ, CFPMはCTXやCAZと比較しCSase誘導によるMICの上昇が小さかった。一方, CSase誘導能を比較すると, CFPMはCTXと同程度かやや低く, CAZはさらに誘導能が低かった。E. cloacaeGN 7471およびC. freundii GN 7391の精製CSaseを用いて加水分解反応および阻害反応を検討した結果, CFPMの両酵素に対するKmおよびKiは200μM以上で, CTXやCAZと比較し顕著に大きく, 親和性が低いことが明らかであった。このCSaseに対する低親和性のため, CFPMは菌体内で標的酵素と反応するような低い濃度条件では, CSaseにより加水分解されにくく, CSase産生による抗菌力への影響を受けにくいと考えられた。
  • 横田 健, 神 智恵子, 新井 京子
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 20-27
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (BMY-28142, CFPM) は, ブドウ球菌を含むグラム陽性菌と, 緑膿菌を含むグラム陰性菌に幅広い抗菌スペクトルを持つ注射用セフェム系抗生物質である。本剤のメチシリン感受性Staphylococcus aureus (MSSA), メチシリン耐性S. aureus (MRSA), coagulase negative staphylococci, Streptococcus pyogenes, それ以外のβ-streptococci, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecium, Enterococcus faecalis, Escherichia coil, Klebsiellaspp., Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia stuartii, Providencia rettgeri, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas cepacia, Acinetobacter calcoaceticus, ampicillin耐性Haemophilus influenzae, およびBacteroides fragilisの15~51臨床分離株に対するMIC90は, それぞれ6.25,>100, 50, 0.025, 0.1, 0.05,>100,>100, 0.1, 0.2, 0.1, 0.2, 0.05, 0.05, 0.05, 0.39, 0.78, 0.39, 6.25, 6.25, 25, 0.2, および>100μg/mlであった。CFPMはS. aureusのPBPs1および2, E. coliのPBPs1Bsおよび2, S. marcescensのPBPs1Bおよび1Cに対しceftazidime (CAZ) より高い親和性を示した。P. aeruginosaのPBPsに対してはCAZと同程度の結合親和性であった。E. coliに対する血清補体との協力的殺菌作用は明らかであり, マウス培養マクロファージ (Mφ) との協力的食菌殺菌作用は1/4MICまで認められ, その程度はCAZと同じであった。
  • 神 智恵子, 宮崎 修一, 金子 康子, 辻 明良, 五島 瑳智子
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 28-42
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セファロスポリンcefepime (CFPM) のin vitroおよびin vivo抗菌力についてceftazidime (CAZ) とcefoperazone (CPZ) を比較薬剤として基礎的検討を行い次の結果を得た。CFPMのin vitro抗菌力はグラム陽性球菌Staphylococcus aureus (methicillin-sensitiveS. aureus; MSSA) に対しCPZと同等であり, CAZより強かったが, MRSA (methicillin-resistantS. aureus) に対しては3剤とも弱い抗菌力を示した。Coagulase (-) staphylococci (CNS) およびStreptococcus pyogenesに対しCFPMはCAZおよびCPZよりも強い抗菌力を示した。Streptococcus pneumoniaeに対しては, CPZとほぼ同等であり, CAZより強い抗菌力を示した。グラム陰性桿菌, 特に腸内細菌科の菌種に対し, CFPMはCAZおよびCPZより強い抗菌力を示した。Pseudomonas aeruiginosaおよびAcinetobacter calcoaceticusに対し, CFPMとCAZの抗菌力はほぼ同等であり, Haemophilus influenzaeおよびBordetelh pertussisに対し, CFPMはCPZとほぼ同じ, CAZより強い抗菌力を示した。Neissera gonorrhoeae (non-penicillinase producingN. gonorrhoeae; non-PPNG) およびN. gonorrhoeae (PPNG) に対しては, 3剤とも強い抗菌力を示した。マウスにおける全身感染治療実験においてCFPMは感染菌のS. aureus, Eschenchia coli, Klebsielh pneumoniaeおよびP. aeruginosaに対してCAZおよびCPZより強い治療効果を示した。K. pneumoniaeおよびS. pneumoniaeを感染菌とした呼吸器感染治療実験, E. coliおよびP. aeruginosaを感染菌としたマウス尿路感染治療実験においてCFPM投与マウス群はCAZを投与したマウス群に比較して良好な治療効果を示した。
  • 加藤 直樹, 板東 香お里, 武藤 吉徳, 渡辺 邦友, 上野 一恵
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 43-51
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新セファロスポリン系抗生剤cefepime (BMY-28142, CFPM) の各種嫌気菌力を検討した。CFPMはBacteroides fragilisgroupを除くBacteroides属, Fusobacterium variumを除くFusobacterium属, グラム陽性球菌, Clostridium difficileClostridium septicumを除くClostridium属には抗菌力が比較的強かった。これらの抗菌力 (CAZ) とほぼ同等であった。B. fragilisの産生するβ-lactamaseに対してはCAZ安定であったが, cefpiramide, cefotiam, cefotaximeおよびcefazolinより安定であった。CFPMの投与によるマウス盲腸内のC. difficileの異常増殖は, 投与中止1日後められたが, 投与中止7日目にはC. difficileはまったく検出されなかった。
  • 加藤 直樹, 板東 香お里, 武藤 吉徳, 渡辺 邦友, 上野 一恵
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 52-58
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規セファロスポリン系抗生剤cefepime (CFPM) 19を1日2回投与された6名健康男子の糞便内フローラの変化を検討した。本剤の投与はEscherichia coliLactobacillusspp. の顕著な減少もしくは消失を除けば, 糞便内フローラにほとんど変化をもたらさなかった。減少もしくは消失したこれらの細菌は, CFPMの投与終了後には正常化した。Candidaspp. やPseudomonasspp. の異常増殖はすべての症例で認められなかった。少量のClostridium difficileが6名中1名において一過性に検出されたが, この症例に軟便や下痢はみられなかった。
  • 西野 武志, 大槻 雅子, 益吉 眞次, 光野 尚子, 平岡 博美
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 59-67
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく合成された注射用セフェム抗生物質cefepime (CFPM, BMY-28142) のin vitroおよびin vivo抗菌力について, cefoperazone (CPZ), cefmenoxime (CMX), ceftazidime (CAZ) およびcefuzonam (CZON) を比較薬として検討し, 以下の成績を得た。CFPMはグラム陽性菌および陰性菌群に対して幅広い抗菌スペクトラムを有しており, グラム陽性のStaphylococcus aureusStaphylococcus epidermidisに対してはCPZやCMXと同様の, またStreptococcusspp. に対してはCMXとほぼ同様の抗菌力を示した。しかしEntercoccus faecalisに対しては他のセフェム剤と同様無効であった。一方, グラム陰性菌に対するCFPMの抗菌力はCMXやCZON同様非常に優れており, Pseudomonas aeruginosaに対してもCAZと同様の良好な抗菌力を示した。臨床分離のS. aureus, S. epidermidis, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Enterobacter aerogenes, Serratia marcescens, Haemophilus influenzae, Branhamella catarrhalis, Acinetobacter calcoaceticus, P. aeruginosaに対するCFPMのMIC50はそれぞれ1.56, 0.78, 0.025,<0.006, 0.05, 0.05, 0.05, 0.025, 0.10, 0.39, 0.10, 0.39, 3.13, 1.56μg/mlであった。E. coli, A. calcoaceticusおよびP. aeruginosaに対してCFPMは薬剤濃度に応じた殺菌作用を示した。E. coli, S. marcescens, P. aeruginosaにCFPMを作用させた時の形態変化を位相差顕微鏡により観察したところ, いずれの菌種においてもfilament像やspheroplastそして溶菌像を認めた。マウス実験的腹腔内感染症に対するCFPMの治療効果は, S. aureusではCPZやCZONと同様の効果を示し, S. pneumoniaeではCPZには劣るもののCAZやCMXよりも優れた効果を示した。一方, E. coli, K. pneumoniae, S. marcescensに対しては, CFPMは他のセフェム剤よりも優れた治療効果を示し, P. aeruginosaに対しては, CAZと同等か若干劣り, CPZやpiperacillinよりも良好な治療効果を示した。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次, 田中 節子, 佐藤 久美子
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 68-74
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1988年後半に検出した新鮮臨床分離株に対するcefepime (CFPM) と対照薬剤の抗菌活性 (MIC) を測定し, 以下の結論を得た。
    1. coagulase-negative staphylococci (CNS), Streptococcus pneumoniaeに対するCFPMの抗菌活性は, ceftazidime (CAZ) には勝るがcefotaxime (CTX) とほぼ同等である。
    2. CTXに耐性のCitrobacter freundii, Enterobacterspp.に対するCFPMの抗菌活性は強く, これらはCFPMのβ-ラクタマーゼに対する結合親和性の低いことが, 主な要因であることを示唆していた。
    3. Norfloxacin耐性のSerratia marcescens, Pseudomonas aeruginosalこ対するCFPMのMIC50値は高く, これらはニューキノロン高度耐性株の外膜蛋白質の変異による透過性の低下をもたらす性質が, 影響していることを示唆していた。
    4. CFPMは, 近年増加しているオキシム型セフェム耐性のいわゆる非分解的耐性菌にも強い抗菌力を発揮しうる性質, すなわちβ-ラクタマーゼに対する結合親和性が低いことに, 新しい特徴があるものと考えられる。
  • 益吉 眞次, 平野 実, 藤村 裕子, 篠田 美恵子, 太田 暁美, 沖 俊一, 出口 浩一
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 75-83
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (CFPM) はグラム陽性菌, グラム陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを有し, 特にStaphylococcus aureusに対してcefmenoxime (CMX), cefoperazone (CPZ) と同等の抗菌力を示し, ceftazidime (CAZ) より優れた抗菌力を示した。一方グラム陰性菌に対するCFPMの抗菌力は, これら対照薬剤とほぼ同等であったが, 特にMorganella morganii, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacaeに対してより優れていた。Pseudomonas aeruginosaに対するMIC50値は, 3.13μg/mlでCAZと同等であり, CMX, CPZのそれらより4~8倍優れていた。CFPMは, penicillinase, cephalosporinase産生株に対して強い抗菌力を示し, M. morgmii, C. freundii, E. cloacaeのような大量のcephalosporinaseを産生する菌株に対しても強い抗菌力を示した。一方, CAZ, CMX, CPZの抗菌力は, これらのcephalosporinase高度産生株のβ-lactamaseに強く影響を受けた。CFPMの抗菌力に対する血清の添加, 培地pH, 各種の培地による影響は, 小さかった。マウスを用いたCFPMの感染防御能 (PD50) は, in vitroの抗菌力を反映し, CAZに比較してS. aureus, penicillinase産生S. aureus, Streptococcus pyogenes感染に対して3~12倍, Eschenchia coli, Klebsiella pneumoniae, M. morganii, E. cloacaeおよびcephalosporinase産生株の感染に対して2~167倍以上優れていた。また, MIC値が同等なP. aeruginosaに対しても若干優れた感染防御効果を示した。
  • 益吉 眞次, 平野 実, 藤村 裕子, 山中 美由紀, 篠田 美恵子, 沖 俊一
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 84-91
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (BMY-28142, CFPM) のStaphylococcus aureusSmith, Escherichia coliJuhl, Pseudomonas aeruginosaA9843Aを用いた実験的感染症に対する感染防御効果 (protective dose 50%) と薬剤の投与スケジュールについて, ceftazidime (CAZ) のそれと比較検討した。さらに, CFPMの良好な感染防御効果の解析のため, in vitroにおいてCFPMのマウス血中濃度推移にsimulateした薬剤濃度での殺菌作用についてCAZのそれらと比較検討した。CFPMのS. aureusSmith, E. coliJuhl, P. aeruginosaA9843Aに対する単回投与時のPD50は, それぞれ1.1, 0.09, 6.8mg/kgであり, また3回投与時のPD50はそれぞれ0.6, 0.06, 2.04mg/kgであり, 単回投与よりも30分間隔で3回投与する方が約2~3倍以上良好であることを認めた。しかしながら, CAZに分割投与の効果は認められなかった。CFPMとCAZのin vitroでの単回および分割投与時の血中濃度にsimulateしたモデルにおける3菌種に対する殺菌作用は, 強い作用を示し, S. aureusSmith, E. coliJuhlに対してCAZより強かったがP. aeruginosaA9843Aでは両薬剤間に差が認められなかった。マウス血中でのP. aeruginosaA9843Aの消長を検討した結果, CFPM, CAZ共に頻回投与することで血中の感染菌の増殖を長時間阻止した。
  • 中名生 宏, 城殿 正博, 清水 孝容, 高橋 紀光
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 92-96
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新注射用セフェム剤cefepime (CFPM) の体液内濃度測定法について検討した。本剤の体液中濃度は, Morganella morganii IFO 3848を検定菌とする微生物学的定量法により, 低濃度まで感度良く定量することができた。血清中のCFPMはカップ法およびAgarwell法で0.02μg/ml, ディスク法で0.16μg/mlまで測定可能であった。血清中濃度の測定にはプール血清を標準液に用いることが望ましかった。CFPMは高速液体クロマトグラフィー (HPLC) によっても定量でき, ヒトにCFPMを静脈内投与したときの血清および尿試料をbioassayとHPLC法によって同時に測定した結果は, 高い相関性を示した。ヒトにCFPMを静脈内投与したときの尿試料をTLC-Bioautographyで検討した結果, CFPM以外の抗菌活性をもつスポットは検出されなかった。CFPMは弱酸性の溶液中で安定であり, 血清中では尿中よりやや不安定であったが,-20℃以下に保存すれば30日間安定であった。
  • 血中濃度, 臓器内分布, 代謝, 尿中・胆汁排泄
    平野 実, 益吉 眞次, 近藤 昇一郎, 朝井 保美, 沖 俊一
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 97-103
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (BMY-28142, CFPM) をラットに20mg/kg尾静脈内投与し, 血清中濃度, 胆汁中および尿中排泄の推移を測定し, ceftazidime (CAZ) のそれらと比較検討をした。CFPMの最高血清中濃度 (Cmax), 生物学的半減期 (T1/2) および血中薬物濃度下面積 (AUC) は, それぞれ51μg/ml, 18min, 23.8μg・h/mlを示し, CAZのそれらとほぼ同様な値を示した。CFPMの主要臓器への移行は速やかで, 腎臓, 肺, 筋肉, 皮膚, 胃, 小腸, 盲腸, 眼球等への移行濃度はCAZより若干高い値を示した。CFPMは主として尿中に排泄され, 投与後24時間以内に尿中より未変化体として82.6%回収され, この値は, CAZの63.3%よりも高率であった。一方, 両薬剤とも胆汁移行は低かった。CFPMの各種血清タンパク質に対する結合率は低く, ヒト, イヌ, ラット, マウスでそれぞれ16, 18, 22, 29%であり, CAZより若干高い結合率を示した。
  • 中島 光好, 植松 俊彦, 金丸 光隆, 中名生 宏, 城殿 正博, 清水 孝容, 石川 清康
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 104-116
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新注射用セフェム系抗生物質cefepime (BMY-28142, CFPM) の臨床第一相試験として, 健常成人男子21名を対象に単回および連続静脈内点滴投与を行い.その安全性および体内動態について検討し以下の成績を得た。
    1.安全性に関しては1g単回投与群において投与後6時間目まて排尿かなかった例が1例あったが, 本例の腎機能に関する臨床検査値に異常変動はみられなかった。また, 連続投与試験において1例に自覚症状として5日目の第9回目投与後6時間に-過性の頭痛が認められたが, 何ら処置することなく症状は消失した。
    2.CFPM 0.5, 1, 2gを30分間静脈内点滴投与による単回投与試験の最高血中濃度はそれぞれ39.6, 83.2,141μg/mlであり, 用量依存的に増加し, 血中半減期 (T1/2β) は用量に関係なくそれぞれ1.75, 1, 76, 1.94時間であった。尿中へは0~24時間で79.8~89.0%か表変化体として回収された。
    3.連統投与試験におけるT1/2βは投与後1.90時間で, 12時間まての尿申排泄は73.7~83.5%であった。CFPMは血中, 尿中濃度推移から体内蓄積傾向を認めなかはた。
  • 齋藤 玲, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 佐藤 清
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 117-126
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいcephem系注射剤cefepime (CFPM) について体内動態, 抗菌力, 臨床効果の検討を行った。
    1.体内動態: CFPMを6名の健康成人男子を対象として250mg, 500mgおよび1,000mg (力価) の単回静脈内投与を行い, クロスオーバー法で検討した。CFPM250mg, 500mg, 1,000mgの血中濃度は投与5分後で, それぞれ36.8, 68.5,119, 2μg/mlであり, 血中半減期T1/2βはそれぞれ1.60, 1.59, 1.66時間, area under the curve (AUC) はそれぞれ46.6, 89.0,178.5μg・h/mlであった。尿中排泄率は8時間までで, それぞれ73.5, 74.5, 75.2%であった。
    2.抗菌力: 臨床分離の7菌種180株について106cells/ml接種でMICを測定した。対照薬としてcefotaxime (CTX), ceftazidime (CAZ) を用いた。Escherickia coli, Klebsiella sp, Protms mirabilis, Morganella morganiiに対してはMIC90値が0.1μg/mlと良好な抗菌力を示し, CTX, CAZより優れた抗菌力を示した。
    3.臨床効果: 呼吸器感染症3例, 尿路感染症8例の計11例について検討を行った。著効5例, 有効6例で有効率は100%であった。副作用, 臨床検査値異常変動は認められなかった。
  • 佐藤 るり子, 西岡 きよ, 荻原 央子, 佐藤 裕子, 三浦 康子, 丹野 恭夫, 滝島 任
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 127-131
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新たに開発された注射用セフェム剤を, 10名の呼吸器感染症患者に投与し, その臨床的有用性, 安全性を検討した。また, 3名の呼吸器感染症患者における喀痰中移行と血中濃度を調べた。対象疾患は急性気管支炎2例, 慢性肺気腫2例, 閉塞性肺疾患 (COLD), 慢性気管支炎, 肺炎, 肺線維症, 気管支拡張症, 気管支喘息各1例であり, 本剤を生理食塩水100mlに溶解し, 1回1gを1日2回点滴静注した。投与期間は4~17.5日間で, その臨床的効果は著効3例, 有効5例, やや有効1例, 無効1例で, 有効率は80%であった。分離された起炎菌は, Haemophilus influenzae4株, Branhamella catarrhalis2株, Streptococcus pneumoniae 3株およびPseudomonas aeruginosa, Serratia marcescens, Acinetobacter calcoaceticus, Flavobacteriumsp.が各1株で, いずれの菌も本剤投与により消失した。本剤の血中濃度は最高値が56.9~84.4μg/mlで, 半減期は1.5~2時間であった。喀痰中移行濃度は最高値0.79~3.33μg/mlで, 1~2時間目にpeakに達した。自他覚的副作用は出現せず, 臨床検査値で, 2例にGOT, GPTの軽度上昇がみられた。
  • 渡辺 彰, 青沼 清一, 大泉 耕太郎, 本田 芳宏, 徳江 豊, 北村 直人, 庄司 聡, 本宮 雅吉
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 132-137
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新セフェム系抗生物質cefepime (CFPM) の呼吸器分離株6菌種に対する抗菌力をceftazidime (CAZ) およびlatamoxef (LMOX) と比較検討すると共に, 呼吸器感染症12例に本剤を投与して, その臨床効果, 細菌学的効果ならびに安全性について検討した。Pmdomonas aemginosaに対する本剤の抗菌力はCAZより1段階劣るが, Staphylococcus aureusと腸内細菌科の各菌種に対してはCAZとLMOXより1~3段階強かった。急性肺炎7, 肺化膿症1, 陳旧性肺結核二次感染1, 肺癌二次感染3の計12例に本剤を1日2g, 4~15日間投与し, マイコプラズマ肺炎の2例を除く10例中有効6, 無効4であった。Streptococcus pneumoniae2株, Haemophilus influenzae3株を分離し, 全株の消失を得た。発疹と好酸球数増多を各1例認めたが, いずれも本剤投与終了後に消失.正常化した。S.aurmsに対する抗菌力が改善され, P.aemginosaに対しても強い抗菌力を有するCFPMは呼吸器感染症に対する第一次選択薬剤の一つと考えられる。
  • 久賀 圭祐, 井上 亨, 仲村 秀俊, 石井 昌俊, 天貝 理恵子, 勝 正孝, 細野 治, 安倍 達
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 138-146
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用セフェム系抗生剤であるcefepimeについて基礎的・臨床的検討を行った。当院の臨床分離保存株, 22菌種 (Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Branhamella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia rettgeri, Pseudomonas aeruginosa, ceftazidime (CAZ) 耐性Pseudomonas aeruginosa, cefoperazone (CPZ) 耐性Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas cepacia, Xanthomonas maltophilia, Acinetobacter calcoaceticus, Bacteroides fragilis) についてのMICを他 の抗生剤, cefuzonam (CZON), latamoxef (LMOX), cefmenoxime (CMX), CPZ, CAZ, imipenem/cilastatin sodium (IPM/CS), sulbactam/CPZ (SBT/CPZ) と比較検討した。グラム陽性菌に対するMIC90はS. aureus で3.13μg/mlとCPZ, SBT/CPZと同等でIPM/CS, CZON, CMXに次ぐ成績であり, S. pneumoniae では0.05μg/mlでCZON, CMX, IPM/CSに次ぐ成績であった。グラム陰性菌に対するMIC90はE. cloacae, M. morganii で, それぞれ0.39, 0.10μg/mlと本剤が最も優れ, E. coli, P. mirabilis では, それぞれ0.10, 0.05μg/mlでCAZ, CMX, IPM/CSと同等あるいは優れた成績を示した。また, P. aeruginosa のMIC90は6.25μg/mlとCAZ, IPM/CS, SBT/CPZと並び最も優れていた。臨床的検討では, 呼吸器感染症患者13例に本剤1回1.0gを1日2回, 10~15日間点滴静注した。症例の内訳は肺炎11例, 気管支拡張症2例であった。効果判定は, 著効3例, 有効8例で有効率84.6%であったo副作用は全く認められず, 臨床検査値異常変動としてはGOTとGPTの軽度上昇が各1例にのみ認められた。
  • 柴 孝也, 嶋田 甚五郎, 加地 正伸, 吉田 正樹, 斎藤 篤, 酒井 紀
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 147-153
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいcephem剤のcefepime (以下CFPMと略) について臨床的検討を行った。健康成人男子志願者を対象にし, CFPM1.0g単回投与時の薬物動態とprobenecid併用時の薬物動態をcross over法により比較検討した。単独投与時とprobenecid併用時のAUC, CmaxおよびT1/2βの平均値 (±SD) は, それぞれ127.0 (±18.4) および118.6 (±14.5) μg.h/ml, 68.5 (±12.6) および67.3 (±14.0) μg/ml, 1.75 (±0.15) および1.75 (±0.15) hで両群間に有意差は認められなかった。また, 他のパラメーター (K12, Ke1, K21, Vdss, CLT) にも有意差はみられなかった。24時間までの尿中排泄率 (UR) の平均値 (±SD) は単独投与時が86.0 (±3.1)%, 併用時が82.4 (±6.1)%でprobenecid併用時の方が3.6%低い値であったがURおよびCLRはともに有意差が認められなかった。従って, 本剤の薬物動態に対するprobenecidによる影響はほとんど認められなかった。また, 志願者にCFPM投与による副作用の発現および臨床検査値の異常変動はみられなかった。慢性気管支炎1例に本剤を投与した結果, 臨床効果は有効であった。副作用, 臨床検査値の異常変動は認めちれなかった。
  • 小林 芳夫, 内田 博, 小川 哲平
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 154-156
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセファロスポリン系抗生剤であるcefepime (CFPM) の1987年から1988年にかけての血中由来主要グラム陰性桿菌に対する最小発育阻止濃度を測定した.比較対照薬剤としてceftazidime (CAZ) およびimipenem (IPM) を使用した.その結果Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeの各々29株および19株に対する本剤の抗菌力はCAZおよびIPMより優れていた。Enterobacter cloacae, Pseudomonas aeruginosaの各々10株および17株に対する抗菌力はCAZより優れていてIPMとはほぼ同等であった。以上の結果より, 各種β-ラクタム系抗生剤が汎用されている現況の中ではCFPMは特にEcoliおよびK.pneumoniiaeを起因菌とする敗血症の第一選択薬剤のひとつに加えられる可能性が示唆された。
  • 松本 文夫, 桜井 磐, 今井 健郎, 高橋 孝行, 森田 雅之
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 157-163
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セファロスポリン系抗生剤cefepimeの抗菌力, 吸収・排泄ならびに臨床効果を検討したところ, 以下のごとき成績を得た。
    1) 抗菌力: 臨床分離Slephylococcus aureus, Escherichiacoli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Pseudomonas aeruginosaおよびmethicillin-resistant S.aureus (MRSA) に対する本剤の抗菌力を測定したところ, MIC50値はそれぞれ1.56, 0.025, 0.025, 0.025, 3.13, 12.5μg/mlであった。
    2) 吸収.排泄: 健康成人2例に1.0g, 30分点滴静注した際の血中および尿中濃度を測定した。各最高血中濃度は, 点滴終了時に79.6, 86.2μg/mlの値を示したのち12時間後はそれぞれ0.52, 0.42μg/mlであった。また, 12時間までに測定した尿中回収率は72.4, 76.5%であった。
    3) 臨床成績: 急性気管支炎5例, 細菌性肺炎2例, 急性腎盂腎炎1例, 急性膀胱炎1例, 急性胆嚢炎2例計11例について本剤を1回1.0g, 1日1~2回点滴静注したところ, 急性気管支炎5例中4例, 細菌性肺炎, 急性腎盂腎炎, 急性膀胱炎, 急性胆嚢炎の全例で有効の結果を得た。本剤による副作用は認められなかった。
  • 日野 二郎, 木村 雅司, 多田羅 治, 角 優, 沖本 二郎, 矢木 晋, 二木 芳人, 副島 林造
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 164-168
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セフェム系抗生物質cefepimeについて基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1. 抗菌力: 臨床分離の10菌種に対する抗菌力を測定しceftazidime (CAZ), piperacillin (PIPC), cefoperazone (CPZ) と比較検討した。その結果methicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) に対してはPIPC, CPZとほぼ同等であり, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescensに対して本剤が最も優れていた。Pseudomonas aeruginosaに対してはCAZとほぼ同等であった。
    2. 臨床的検討: 本剤の投与を受けた8例の臨床効果は, 著効3例, 有効3例, やや有効2例であった。副作用は特に認められなかったが, 臨床検査値異常変動として, GOT, GPT上昇が2例, LDH上昇, 好中球減少, 単核球増多が各1例に認められた。
  • 澤江 義郎, 岡田 薫, 石丸 敏之, 高木 宏治, 下野 信行, 三角 博康, 仁保 喜之
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 169-174
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用セファロスポリン系抗生物質であるcefepimeについて基礎的, 臨床的検討を行った。Cefepimeの臨床分離菌に対する抗菌力をMIC80でみると, Staphylococcus aureus 3.13, Enterococcus faecalis 25, Escherichia coli ≦0.05, Klebsiella pneumoniae 0.20, Enterobacter spp., Serratia marcescens 0.39, Proteus spp. 0.10, Citrobacter freundii 0.78, Acinetobacter calcoaceticus 6.25, Pseudomonas aeruginosa 12.5μg/ml であり, グラム陽性菌ではcefuzonam, cefmenoximeに劣るものの, グラム陰性菌ではceftazidime, cefotaxime, cefmenoxime, cefuzonamよりも優れた抗菌力であった。肺炎1例, 化膿性髄膜炎2例, 敗血症1例, 肛門周囲膿瘍1例, 強直性脊椎炎1例の計6例にcefepimeを1日2.0~4.0g, 3~17日間使用したところ, 著効, 有効, やや有効が1例, 無効2例, 判定不能1例であった。起炎菌のS. aureus, E. faecalis, Streptococcus milleri, Streptococcus mitis は消失した。Cefepime使用による副作用, 臨床検査値異常変動は全く認められなかった。
  • 後藤 陽一郎, 山崎 透, 永井 寛之, 重野 秀明, 後藤 純, 田代 隆良, 那須 勝
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 175-179
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用セフェム系抗生剤cefepime (以下CFPMと略す) について, 臨床分離菌に対する抗菌力および喀痰内移行濃度を測定し, 以下の結果を得た。
    1. 抗菌力: 臨床材料から分離した17菌種766株 (グラム陽性球菌241株, Branhamella catarrhalis 34株, 腸内細菌361株, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌130株) について, 日本化学療法学会規定の方法に従って最小発育阻止濃度を測定し, ceftazidime (CAZ), cefotaxime (CTX), imipenem (IPM), aztreonam (AZT) の抗菌力と比較した。CFPMは Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa を含むグラム陽性菌, グラム陰性菌に対して幅広い抗菌活性をもち, CAZ, CTX, IPM, AZTと同等かより強い抗菌力を示した。
    2. 喀痰内移行濃度: 3例にCFPM 1gを点滴静注し, 喀痰内移行濃度を測定した。喀痰移行濃度はいずれの症例も点滴終了後1~2時間目に最高値を示し, それぞれ0.56μg/ml, 2.0μg/ml, 2.7μg/mlの値であった。
  • 光武 耕太郎他
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 180-187
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    セファロスポリン系抗菌剤cefepimeについて, 基礎的ならびに臨床的検討を行い, 次の結果を得た。
    1. 抗菌力: 臨床分離株7菌種210株に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 他の5薬剤 [CAZ, CPZ, CTX, PIPC, GM] と比較検討した。その結果, 本剤はMRSAを除くグラム陽性球菌, 陰性菌に良好な抗菌活性を示し, 他の第3世代セフェム剤と同等あるいはそれ以上の成績であった。緑膿菌に対してもCAZに1管劣るものの, PIPCやGMと同等の抗菌力が認められた。
    2. 体液内濃度: びまん性汎細気管支炎患者1例において, 本剤を点滴静注した時の血中および喀痰中濃度を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) にて測定した。本剤1g点滴静注直後に最高血中濃度30μg/mlを認め, 最高喀痰中濃度は3~4時間後に2.0μg/mlに達し, 本剤の速やかな肺内移行性が示唆された。
    3. 臨床的検討: 呼吸器感染症21例に対して本剤を投与し, 臨床効果および副作用について検討した。21例中, 著効3例, 有効13例, やや有効1例, 無効2例, 判定不能2例で, 臨床的有効率は84.2%と良好な成績を示した。副作用は, 発疹, 気分不良, 腹痛・軟便が各1例にみられ, 臨床検査値異常変動はGPTおよびγ-GTPの上昇が1例, GPTの上昇が1例, LDHの上昇が1例, 白血球, 単球, 血小板減少, GOT, LDH, 総ビリルビンおよびウロビリノーゲン上昇が1例, 直接クームス試験の陽性化が1例に認められた。
  • 大石 和徳, 松本 慶蔵, 力富 直人, 苑田 文成, 坂本 翊, 渡辺 貴和雄, 永武 毅, 田口 幹雄, 隆杉 正和
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 188-197
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepimeの呼吸器病原性株に対するMIC50Streptococcus pneumoniae 0.05μg/ml, Haemophilus influenzae 0.2μg/ml, Branhamella catarrhalis 0.39μg/ml, Staphylococcus aureus 6.25μg/ml, Pseudomonas aeruginosa 6.25μg/ml であった。肺炎2例, 慢性気管支炎1例において, 本剤1g点滴静注時の体内動態について検討した結果, 血中ピーク値は74.3~85.2μg/mlで, 血中半減期は2.3~2.9時間であった。喀痰中濃度は0.25~1,48μg/mlに分布し, 1症例における喀痰中移行率は1.74%であった。また, 1症例における局所痰中濃度は4.30μg/mlであった。肺炎7例を含む19症例の呼吸器感染症患者にcefepime1日1gないし2g, 1日2回の点滴静注を試み, 84.2%(16/19) と高い有効率を得た。細菌学的検討では, S.pneumoniae (8株), H. influenzae (3株), B. catarrhalis (1株), Klebsiella 属 (2株), Escherichia coli (1株) はすべて除菌され, S. aureus (1株) が減少, P. aeruginosa (2株), Xanthomonas maltophilia (1株) は不変であった。全体の除菌率は78.9%(15/19) と良好な結果であった。副作用, 臨床検査値の異常変動は1例も認められなかった。Cefepimeは細菌性呼吸器感染症において, 臨床的有用性の高いセフェム系抗生剤の一つと結論される。
  • 伊良部 勇栄, 普久原 浩, 重野 芳輝, 斎藤 厚, 草野 展周
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 198-205
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セフェム系抗生物質cefepime (CFPM) について基礎的・臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1) CFPMを6名の健康成人男子に1回2g, 1日2回, 5日間点滴静脈内投与し, 安全性および体内動態について検討した。その結果, 自他覚所見, 理学的検査および臨床検査において, 本剤に起因すると思われる変化は認められなかった。1日目と5日目の血清中濃度は同様の推移を示し, 蓄積傾向は認められなかった。
    2) 本剤の当院保存臨床分離菌株14菌種に対する抗菌力はグラム陽性菌に対してはceftazidime (CAZ) より1~2管優れていた。グラム陰性菌ではPseudomonas aeruginosa, Branhamella catarrhalisに対してややCAZより劣るものの, 他の菌種に対してはCAZと同程度か約1~4管ほど優れていた。
    3) 臨床的に種々の合併症に慢性呼吸器感染を伴った6例, 肺気腫二次感染2例, 肺化膿症1例に本剤1回1~2g, 1日2回, 6~13日間投与した。成績は著効1例, 有効4例, やや有効1例, 無効3例であった。副作用としての自他覚所見の異常は認められず, 臨床検査では好酸球の上昇を1例に, 肝機能検査の異常変動を1例に認めた。
  • 三熊 直人, 広瀬 崇興, 熊本 悦明, 島村 昭吾, 酒井 茂
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 206-213
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セフェム系抗生剤であるcefepime (BMY-28142, CFPM) について基礎的・臨床的検討を行った。
    1. 抗菌力: 教室保存の尿路感染症分離菌 (11菌種, 各47~50株) に対するCFPM, ceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON), cefmetazole (CMZ), latamoxef (LMOX) のMICをMIC 2000システムを用いて測定した (105CFU/ml: 接種菌量)。CFPMのMIC90は, グラム陰性桿菌に対しては, Escherichia coli, Klchsiella pneumoniae では0.05μg/ml以下でありCAZより優れ, Proteus mirabilisでは0.1μg/ml, indole (+) Proteus spp.では0.78μg/mlであった。また, Serratia marcescensでは625μg/mlでありCAZより一段劣る抗菌力を示した。また, Enterobacter spp.では625μg/mlと他剤より優れた抗菌力を示した.
    2. 臨床的検討二CFPMを複雑性尿路感染症12例に投与し, 臨床効果および副作用の検討を行った,投与量は1回0.5gを1日朝・夕2回, 原則として10日間投与した。12例中UTI薬効評価基準に合致した症例は11例であった.投与5日目のUTI薬効評価基準による総合臨床効果は, 著効4例, 有効3例, 無効4例で総合有効率は63.6%であった。細菌学的効果に関しては, グラム陰性桿菌においては81.8%, グラム陽性球菌に対しては75.0%の消失率であった。
    副作用に関しては12例中本剤によると思われる自他覚所見の異常は1例もなかった。臨床検査値異常変動ではGPTの上昇を1例8.3%に認めた。
  • 田中 元章, 稲土 博右, 松下 一男, 河村 信夫, 大越 正秋, 中野間 隆, 山本 泰秀, 池田 直昭
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 214-220
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セファロスポリン剤であるcefepime (CFPM) を基礎的・臨床的に検討した。実験的に脱水, 溢水状態のウサギを作製し, CFPMを50mg one-shot静注し, 血清内濃度を経時的に測定した。その結果, 溢水ウサギでは脱水ウサギよりも速やかに血清内濃度が低下することが認められた。臨床的には, 慢性複雑性尿路感染症19例, 急性腎孟腎炎3例および急性前立腺炎1例の計23例に本薬剤を投与した。UTI薬効評価基準では16例が判定可能であり, 著効7例, 有効4例, 無効5例で有効率は69%であった。急性腎孟腎炎および急性前立腺炎では, 主治医判定のみであったが, 全例著効であった。自他覚的副作用は認められず, 臨床検査値の変動についても1例にGOT, GPTの軽度上昇が認められたのみであった。
  • 長谷 行洋, 原田 吉將, 兼松 稔, 坂 義人, 河田 幸道, 米田 尚生, 堀江 正宣, 磯貝 和俊
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 221-226
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セフェム系抗生物質であるcefepime (CFPM) について, 尿路感染症に対する有用性を基礎的, 臨床的に検討し, 以下の結論を得た。
    1. 基礎的検討: 教室保存の標準株および臨床分離株に対する本剤の抗菌力をceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON), ceftizoxime (CZX) の3薬剤を対照として検討した。グラム陽性菌に対しては, 対照薬と同等かそれ以上の抗菌力を示した。グラム陰性菌に対しては, Pseudomonas aeruginosa に対する抗菌力はCAZにやや劣り, Klebsiella PneumoniaeではCZXに若干劣っていた。しかし, 他の菌種においてはいずれも本剤の抗菌力が対照薬より優れており, とくにCitrobacter freundiiならびにEnterobacter cloacaeに対するMIC90値はそれぞれ1.56μg/ml, 12.5μg/mlと他剤より4管以上優っていた。
    2. 臨床的検討: 1例の単純性腎孟腎炎と15例の複雑性尿路感染症に対し, 本剤を1回1g, 1日2回, 連続5日間点滴静注を行った。UTI薬効評価基準 (第3版) により評価可能であった12例中著効4例, 有効5例で, 総合有効率は75%であった。本剤使用による自他覚的副作用は1例も認めなかった。臨床検査値の異常変動として好酸球増多およびLDH値の上昇を各1例に認めたが, いずれも軽度であった。
    以上よりCFPMは尿路感染症に対し, 有効かつ安全に使用できる薬剤と考えられた。
  • 水谷 修太郎, 亀岡 博, 三好 進, 岩尾 典夫, 東本 順三, 塩田 憲三
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 227-231
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    20例の複雑性尿路感染症に対して, 1日に2回, それぞれ1.0gのcefepimeを5日間点滴静注した。単独菌感染症の6例および複数菌感染症の14例のうち, 6例に著効, 10例に有効, 4例に無効の判定を得て, 総合有効率は80%を示した。膿尿に対する効果は, 消失が55%, 改善が20%, そして不変が25%であった。細菌尿に対しては, 消失が50%, 交代が35%, そして不変が15%であった。合計42菌株中38株が消失し, 4株が残存し, 投与後に出現した菌株は9株を数えた。合計20例における副作用は皆無であったが, 1例にGOTの上昇を認めた。
  • 山下 真寿男他
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 232-241
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新セファロスポリン系抗生物質cefepime (CFPM) の抗菌力, 体内動態および臨床的有用性を検討した。
    1.抗菌力: 教室保存株に対する本剤とceftazidime (CAZ), cefoperazone (CPZ) およびampicillin (ABPC) とのMIC分布を比較した。Staphylococcus epidermidisに対してはMIC500.78μg/mlとCAZより優れておりCPZとほぼ同等の抗菌力を示した。Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacaeでは他の3剤より優れており, Pseudomonas aeruginosaではCAZとほぼ同等の優れた抗菌力を示した。
    2.体内動態: 健常成人男子6名に本剤0.5g, 1.0gおよびCAZ1.0gをクロスオーバー法で単回点滴静注し, 血中および尿中濃度推移を比較検討した。Cmaxは3群とも1時間後にみられCFPM0.5g, 1.0gおよびCAZ1.0g投与のそれぞれの平均値は35.9μg/ml, 79.7μg/ml, 74.0μg/mlであった。T1/2 (β) はCFPM1.0gおよびCAZ1.0g投与ではそれぞれ1.92時間, 154時間とCFPMが有意に (P<0.01) 長かったがCmax, AUCには有意差を認めなかった。尿中回収率は12時間後まで各平均82.9%, 89.6%および82.5%であった。
    3. 臨床的検討: 複雑性尿路感染症44例, 急性前立腺炎1例に対し本剤1回0.5gまたは1.0gを1日1回または2回, 5日間点滴静注しその臨床効果と安全性を検討した。UTI薬効評価基準に合致した37例中, 著効10例, 有効14例, 無効13例で有効率64.9%であった。細菌学的効果は全体で82.4%の菌消失率であった。自他覚的副作用は認められなかったが, 臨床検査値異常変動 (GOT, GPT上昇など) を計6例に認めた。
  • 西谷 嘉夫, 宇埜 智, 山田 大介, 早田 俊司, 津川 昌也, 公文 裕巳, 大森 弘之, 難波 克一, 近藤 捷嘉, 片山 泰弘, 赤 ...
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 242-252
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用セファロスポリン系抗生物質cefepimeの抗菌力, 体内動態ならびに尿路感染症に対する有用性について検討を行った。
    1) 尿路感染症分離株14菌種209株に対する本剤のMICを測定し, ceftazidime (CAZ), latamoxef (LMOX), cefoperazone (CPZ) と比較した。全菌株では, 本剤はいずれの対照薬剤よりも優れた抗菌力を有していた。菌種別ではEnterococcus faecalis 10株では本剤の抗菌力は弱いものの対照薬剤と同程度であった。Serratia marcescens 19株では, 本剤は対照薬剤に比し最も優れた抗菌力を示した。Pseudomonas aeruginosa 23株では, 本剤はCAZとほぼ同等であり, LMOX, CPZより優れた抗菌力を示した。
    2) 健常成人4名, 腎機能障害患者7名に本剤1.0gを点滴投与し薬動力学的検討を加えた。腎機能低下に伴い血中濃度の遷延, T1/2およびAUCの増大ならびに尿中回収率の低下傾向を認めた。
    3) 急性単純性腎孟腎炎 (AUP) 2例ならびに複雑性尿路感染症30例を対象に, 本剤0.5gないし, 1.0gを1日2回連続5日間点滴投与し, 臨床効果を検討した。AUPの2例は著効1例, 有効1例であった。UTI薬効評価基準合致の複雑性尿路感染症26例における総合臨床効果は著効5例, 有効14例, 無効7例で, 有効率は73.1%であった。細菌学的効果では32株中30株, 93.8%と高い除菌率を示した。なお, 自・他覚的副作用は1例も認めなかった。7例において臨床検査値の異常変動を認めたが, いずれも軽度かつ一過性であった。
  • 今川 章夫, 筒井 信博, 古川 敦子, 沼田 明, 上間 健造, 香川 征, 中名生 宏
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 253-258
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    血液浄化症例を含むさまざまな腎機能低下症例を対象にcefepime (CFPM) の体内動態について検討した。対象はcreatinine clearance (Ccr) によって5群に分類した (正常群:>50ml/min, 軽度低下群: 30~50ml/min, 中等度低下群: 10~30ml/min, 高度低下群:<10ml/min, 血液浄化群)。CFPMは血液浄化群を除いてP.M.1:00に, 血液浄化群には治療前に0.5gを1回静脈内投与した。各群の血清中濃度半減期 (T1/2β) は正常群では1.82±0.06時間, 軽度低下群では5.50±0.80時間, 中等度低下群では10.01±1.58時間, 高度低下群では15.63±5.56時間であった。血液浄化群の治療中のT1/2βは血液透析 (hemodialysis: HD) 2.17±0.39時間, 血液濾過 (hemofiltration: HF) 1.74±0.13時間, 持続的腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: CAPD) 15.25±2.76時間であった。以上の結果より本剤の投与法を検討すると, Ccr 10~50ml/minの患者には1日2回0.5gの投与, Ccr 10ml/min以下の患者には1日1回0.5gの投与で有効な血清中濃度が得られると考えられた。また, HD, HF患者には治療前後と非透析日にそれぞれ0.5gの投与, CAPD患者には1日1回0.5gの投与が望ましいと考えられた。
  • 川原 元司, 後藤 俊弘, 川原 和也, 牧之瀬 信一, 水間 良裕, 小濱 康彦, 山内 大司, 坂本 日朗, 大井 好忠
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 259-264
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    尿路感染症患者尿由来の臨床分離株10菌種計300株に対するcefepime (以下本剤) の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, ceftazidime (CAZ), imipenem (IPM) の抗菌力と比較検討した。Staphylococci, Enterococcus faecalisに対してはIPMに劣り, CAZとほぼ同等の抗菌力であった。検討したグラム陰性桿菌群に対しては極めて強い抗菌活性を示し, 対照としたCAZ, IPMと同等以上の抗菌力を示したが, Pseudomonas aeruginosaに対してはCAZより1段階, IPMより3段階劣る成績であった。複雑性尿路感染症7例を対象に1回1.0gを1日2回5日間点滴投与し有用性を検討した。全例がUTI薬効評価基準に合致し, その総合臨床効果は著効2例, 有効5例であり, 総合有効率は100%であった。自他覚的副作用として軽度の発疹と嘔気を各1例に認めたが, 投与継続可能であった。臨床検査値の異常変動は全例で検討され, 血色素量の低下と尿素窒素 (BUN) の上昇を各々1例に認めたが本剤投与とは関係ないらしいと判定された。
  • 古畑 久他
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 265-275
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新セファロスポリン系注射用抗生物質cefepimeについて基礎的臨床的検討を行った。
    1) 外科系臨床分離菌に対するMICの測定は, 原液および100倍希釈菌液接種で行ったが, 以下原液接種について述べる。Escherichia coli (20株) では総て0.2μg/ml以下で阻止された。Klebsiella pneumoniae (25株) では0.05以下から12.5μg/mlに分布し, peak値は0.1μg/mlであった。Enterobacter cloacae (23株) では0.05以下から100μg/ml以上に広く分布した。Pseudomonas aeruginosa (25株) では3.13から50μg/mlに分布し, peak値は3.13μg/mlであった。Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)(26株) では100から100μg/ml以上に分布し, ほとんど抗菌力を示さなかった。
    2) 消化器外科領域患者6例に本剤1.0gをone shot静注し, 血清中, 胆汁中および膵液中濃度を測定 (bioassay法) した。血清中濃度 (n=2) は5分後にpeak値58.35±8.56μg/mlを示し, 1時間後25.40±0.28μg/ml, 2時間後16.50±0.85μg/mlおよび6時間後は4.50±0.45μg/mlを示した。胆汁中濃度 (n=5) は30分後16.59±14.34μg/ml, 1時間後にpeak値16.74±16.26μg/mlを示し, その後2時間後12.51±10.69μg/ml, 6時間後2.12±1.97μg/mlを示した。膵液中濃度は1例で測定し, 30分後1.29μg/ml, 1時間後1.24μg/ml, 2時間後0.87μg/mlおよび6時間後0.18μg/mlを示した。
    3) 外科領域の感染症11例 (腹膜炎5例, 術後創感染3例, 急性虫垂炎2例, 術後肺炎1例) に本剤を1回1.0g, 1日2回投与を行った。11症例全例に有効であった。本剤に起因すると思われる自他覚的副作用は認めなかった。臨床検査値では1例で肝機能の軽度の悪化を認めたが, 本剤との関連はないと思われた。
  • 中山 一誠, 山地 恵美子, 川村 弘志, 川口 広, 秋枝 洋三, 渡辺 哲弥, 鈴木 俊明, 糸川 冠治
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 276-288
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新注射用セファロスポリン系抗生物質cefepimeについて, 外科感染症, 特に腹腔内感染症および皮膚軟部組織感染症に対して臨床検討を行った。対象疾患は汎発性腹膜炎, 限局性腹膜炎, 腹腔内膿瘍胆嚢炎, 術後創感染, 腹壁膿瘍, 肛門周囲膿瘍, 皮下膿瘍, 毛髪洞感染および蜂巣炎の25例である。感染症の重症度は, 重症3例 (12.0%), 中等症13例 (52.0%), 軽症9例 (36.0%) であった。主治医判定による臨床効果は, 25例中著効2例, 有効17例, やや有効3例, 無効2例, 判定不能1例であり, 有効率79.2%であった。細菌学的検討ではグラム陽性菌9株中著効1例, 有効5例, やや有効2例, 無効1例であった。グラム陰性菌19株では, 有効12例, やや有効3例, 無効4例であり, 有効率63.2%であった。嫌気性菌14株では, 有効8例, やや有効3例, 無効3例であり, 有効率57.1%であった。分離菌別細菌学的効果は, 42株中消失33株, 不変2株, および菌交代7株であり, 消失率95.2%であった。前投薬に対し無効症例に対する本剤の臨床効果は10例中8例に有効以上の成績を示し, 80.0%の有効率を示した。副作用に関しては, 本剤投与による自他覚的副作用は一例も認めちれなかった。臨床検査値異常変動に関しては25例中2例 (8.0%) に肝機能の異常が認められた。臨床材料より分離された19種38株についてMICを検討した結果, 38株中26株 (68.4%) は本剤の12.5μg/ml以下に分布した。
  • 由良 二郎, 品川 長夫, 石川 周, 水野 章, 真下 啓二
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 289-300
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用セフェム系抗生物質cefepimeについて外科領域における基礎的・臨床的検討を行い, 以下の結果が得られた。
    (1) 抗菌力: 外科病巣分離のStaphylococcus aureus, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaに対するMIC50/MIC90 (μg/ml) はそれぞれ6.3/100, ≦0.05/0.2, ≦0.05/0.1, 6.3/50であり, E. coli, K. pneumoniaeに対してはceftizoxime (CZX) と同等あるいはそれ以上の極めて良好な抗菌力を示した。S.aureus, P. aeruginosaに対する抗菌力はpiperacillin (PIPC) よりやや優れていた。
    (2) 組織および体液中移行: 胆汁中移行は1g静注後2時間で約10ないし20μg/mlのピークに達すると考えられるが, 血漿中濃度との比較では低値である。胆嚢壁, 腹水, 筋肉, 皮下脂肪への移行はいずれも本剤の抗菌活性が期待し得る濃度に達していた。
    (3) 臨床使用成績: 外科的感染症36例に使用し, 著効12例, 有効19例, やや有効3例, 無効1例, 脱落1例で, 有効率は88.6%であった。また, 細菌学的には消失16例, 部分消失2例, 不変3例, 菌交代5例で除菌率は80.8%であった。副作用は下痢と発疹が1例ずつ, 臨床検査値の異常変動は4例に認められたが, いずれも重篤なものではなく, 臨床的に問題となることはなかった。
  • 笠野 泰生他
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 301-305
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セフェム系抗生物質cefepime (CFPM) はグラム陰性桿歯に優れた抗菌力を有し, 各種感染症における治療効果が期待されている。今回, 我々はCFPMの体内動態を検討するとともに胆道感染症と腹膜炎に対する臨床効果を検討した。
    1) CFPM 1g投与後の血中濃度は投与1時間後44.4μg/mlであり, 2時間後は22.7μg/ml, 6時間でも8.7μg/mlであった。半減期は1.8時間であった。
    2) Tチューブ挿入例におけるCFPM 1g投与後の最高胆汁中濃度は17.5μg/mlであり, 腹腔内ドレーン挿入例における最高腹水中濃度は127μg/mlであった。
    3) 臨床効果は7例中, 著効2例, 有効4例であった。胆道感染症の検出菌はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Citrobacter freundiiで, 腹膜炎症例からは好気性菌のほかBacteroidesClostridiumなどの嫌気性菌も検出されたが, すべてCFPMに感受性があり, その細菌学的効果は消失2例, 一部消失2例であった。
    なお, CFPM投与の全例において, 本剤の影響と思われる副作用や臨床検査値の異常変動は認めなかった。
  • 淵本 定儀, 折田 薫三, 上田 祐造, 桑田 康典, 木村 秀幸, 片岡 和男, 間野 清志, 小林 直哉, 笠原 潤治, 小長 英二
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 306-311
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいcephem系注射用抗生物質cefepimeの外科領域における有用性を臨床効果および体液内移行の面から検討した。15例の外科的感染症に対し, 本剤を1回0.5~2.0g, 1日2回で静注または点滴静注した。その結果, 腹膜炎7例では著効2例, 有効3例, やや有効1例, 無効1例であった。術後の手術創感染症6例では有効5例, やや有効1例で術後の腹腔内感染症1例, 回盲部膿瘍の1例は共に有効であった。したがって, 有効率は80.0%であった。細菌学的にはEnterococcus faecalis, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), Enterococcus faeciumなどに高いMIC値を示したが臨床効果とは必ずしも相関しなかった。15例のいずれも自他覚的副作用は認めず, 1例にのみ臨床検査値異常変動 (GOT, GPTの上昇) が認められた。血清中および胆汁中濃度はT-チューブが挿入された3例において検討した。本剤1.0gを30分かけて点滴静注したところ血清中濃度は30分後37.4μg/ml, 1時間後28.77μg/mlを示し, その後漸減し4時間後に9.48μg/mlとなった。しかし, 胆汁中濃度は症例によるばらつきがみられ, 30分後のピーク値がそれぞれ28.3μg/ml, 17.8μg/ml, 5.25μg/mlとなった。
  • 横山 隆, 檜山 英三, 児玉 節, 竹末 芳生, 沖田 光昭, 中光 篤志, 瀬分 均, 今村 祐司, 村上 義昭, 宮本 勝也, 津村 ...
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 312-318
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用cephem系抗生物質であるcefepimeについて外科領域における基礎的・臨床的検討を行い, 次のような結果を得た。
    1. 抗菌力: 消化器外科患者から臨床分離したStaphylococcus aureusでmethlcillinのMICが12.5μg/ml以上の菌株 (methicillin resistant Staphytococcus aureus) では高いMICを示したが, 12.5μg/ml未満の菌株 (methicillin sensitive S.aureus) では良好な抗菌力を示した。Coagulase negative staphylococciでは12.5μg/ml以下に91%の株か分布し比較的良好な抗菌力を示した。Enterococcus spでは耐性菌が多く認められた。Escherichia coli, Klebsiella pneumonh, Klebsiella axltoca, Citrobacter freundii, Morganella morganiiでは0.1μg/ml以下, Entmbacter sp.では0.2μg/mlのMICのピーク値を示し, 優れた抗菌力を示した, Pseudomonas aeruginosaではMICのピーク値が3.13μg/mlと良好な抗菌力を示した, Sermtia marcescens, Acinetobacter calcoaceticus, Peudomonas cepaciaではいずれも一部に耐性菌が認められた。
    2. 臨床的検討: Cefepimeを腹膜炎4例, 術後腹腔内感染4例, 術後創感染2例, 胆管炎1例の消化器外科感染症11例に使用した, その結果, 有効8例, やや有効2例, 判定不能1例で有効率80%の成績であった。投与中の自他覚的所見では異常を認めず, 投与前後の臨床検査植の異常は3例に認められた。
    以上のことからcefepimeは外科領域, ことに消化器外科においてはしばしば認められるグラム陰性桿菌感染症に対して有効な薬剤と考えられた。
  • 原田 康夫, 夜陣 紘治, 鈴木 衛, 平川 勝洋, 多田 渉, 中田 将風, 小村 良, 竹林 脩文, 串田 伸一, 野田 益弘, 管田 ...
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 319-325
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セフェム系抗生物質であるcefepimeの耳鼻咽喉科領域感染症に対する有用性を評価する目的で, 基礎的・臨床的検討を行った。
    1. 組織移行
    Cefepime1回1.0gを静注し, 90分後の中耳粘膜内濃度, 60・120分後の上顎洞粘膜内濃度およびその時の血清中濃度を測定した。90分後の中耳粘膜内濃度は, 25, 7μg/g, 60・120分後の上顎洞粘膜内濃度は11.2-26.2μg/g, その時の血清中濃度はそれぞれ47.5μg/ml, 18.5-48.6μg/mlであった。
    2. 臨床検討
    中耳炎3例, 副鼻腔炎7例, 扁桃炎6例, 急性咽喉頭炎1例の計17例に本剤を投与したが, 臨床効果判定に採用した例は16例, 安全性については17例全例につき検討した。臨床効果は著効8例, 有効6例, やや有効1例, 無効1例で有効率は87.5%であった。疾患別にみると, 中耳炎では著効1例, 有効1例, 無効1例, 副鼻腔炎では有効5例, やや有効1例, 扁桃炎では著効6例, 急性咽喉頭炎では著効1例であった。また, 細菌学的効果は菌が分離された12例中, 消失7例, 菌交代1例, 不明4例であった。安全性の検討では, 自他覚的な副作用ならびに臨床検査値異常変動の発現は全例に認められなかった。
    以上より, 本剤は耳鼻咽喉科領域感染症の治療に有用な薬剤であると考えられた。
  • 鶴丸 浩士, 矢野 博美, 清田 隆二, 内薗 明裕, 松崎 勉, 今村 洋子, 花田 武浩, 森山 一郎, 松崎 信行, 徳重 栄一郎, ...
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 326-331
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域の感染症に対するcefepime (BMY-28142; CFPM) の基礎的, 臨床的検討を行った。その結果, 以下の成績が得られた。
    1. 薬剤組織移行に関する検討
    上顎洞粘膜, 口蓋扁桃へのCFPM1.0g投与後の組織移行について検討した。上顎洞粘膜への移行率 (組織/血清) は7例について検討され平均80.6%と良好な移行を示し, 口蓋扁桃への移行については5例が検討され, 移行率 (口蓋扁桃/血清) は平均33.9%であった。
    2. 臨床的, 細菌学的効果に関する検討
    耳鼻咽喉科領域感染症25症例についてCFPM1.0g, 原則として1日2回投与で臨床効果に関する検討を行った。臨床効果は23例中著効10例, 有効8例で78.3%の有効率を示した。細菌学的効果では, 臨床分離菌21株に対し菌消失18株で, 菌消失率は85.7%に達し, また全臨床分離菌25株のMIC50値は0.2μg/mlであり, グラム陽性菌から陰性菌に至るまで幅広く優れた抗菌力を示した。25症例中本剤に起因する副作用は特に認めなかった。
  • 秋山 尚範他
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 332-337
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用セファロスポリン系の新しい合成抗菌剤であるcefepime (CFPM) を皮膚科的に検討した。
    1) 皮膚感染病巣より分離した黄色ブドウ球菌に対するCFPM, cephaloridine (CER), cefmetazole (CMZ) のMICを106cfu/mlにて測定した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 30株に対し12.5μg/ml以上のMICを示す株数は, CFPMでは14株, CERでは27株, CMZでは27株見られた。
    2) ラットにCFPMを20mg/kg静脈内投与した場合の5, 15, 30, 60,120分後の血清内, 皮膚内濃度は平均で各々74.33, 18.75, 13.35, 4.86, 0.61μg/ml, 18.76, 14.02, 11.78, 3.26, 0.84μg/g (湿重量) であった。
    3) ヒトにCFPMを0.5gまたは1.0g静脈内投与した場合の血清に対する皮膚内濃度の比は0.60 (n=5) であった。
    4) 皮膚感染症26例に使用し, 著効8例, 有効12例, やや有効4例, 無効2例で有効以上の有効率は76.9%であった。副作用は1例に悪心, 頭痛を認めた。また, 1例にAl-P, γ-GTPの上昇が見られた。
  • 池田 政身, 山本 康生, 小玉 肇
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 338-341
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セファロスポリン系抗生物質であるcefepime (CFPM) を皮膚科領域にて検討した
    1. 皮膚感染病巣より分離したStaphylococcus aureus 118株に対するMICを106cells/ml接種で測定した。対照としてcefuzonam (CZON), ceftazidime (CAZ), cefotaxime (CTX) を用いた。MIC50はCFPMは3.13μg/ml, CZONは0.78μg/ml, CAZは6.25μg/ml, CTXは3.13μg/mlであった.
    2. 雄ラットにCFPM 20mg/kg静脈内投与した時の15, 30分, 1, 2時間後の血清内濃度, 皮膚内濃度はそれぞれ41.4, 24.5, 10.5, 0.74μg/ml, 25.0, 15.1, 6.17, 1.09μg/g (n=4) であった。
    3. 手術施行患者3名にCFPM1g静脈内投与した時の血清内, 皮膚内濃度はそれぞれ81.5μg/ml, 38.2μg/g (10分後)(n=1), 59.4μg/ml, 17.6μg/g (25分後)(n=3) であった.
    4. 皮膚感染症患者5例にCFPM1gを1日2回5~8日間点滴静注した。著効4例, 有効1例であった。起炎菌としてはSaureus 4株, Peptostreptococcus prevotii 1株を検出し, 全例除菌された。副作用は1例で下痢がみられた。
  • 長 南薫, 福永 完吾, 國井 勝昭, 出口 浩一
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 342-349
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セファロスポリン系抗生物質cefepimeにつき, 産婦人科領域で検討を行い, 以下の結果を得た。
    1. 抗菌力: 産婦人科臨床分離株17菌種340株のMIC90はグラム陽性球菌3.13->100μg/ml, グラム陰性桿菌0.025-50μg/ml, 嫌気性球菌0.39-0.78μg/ml, 嫌気性桿菌>100μg/mlに分布した。
    2. 組織移行: 本剤1.0g静注後の肘静脈血および子宮動脈血の血清中濃度はほぼ一致し, 子宮卵管等各組織中に最高22.4-36.4μg/gが認められた。骨盤死腔滲出液中には2時間後に最高値27.3μg/mlが認められ, 12時間後に1.05μg/mlが認められた。
    3. 臨床成績: 子宮内感染10例, 子宮労結合織炎2例, 骨盤腹膜炎2例, 骨盤死腔炎1例, バルトリン腺膿瘍2例, 腹壁術創化膿1例, 腎孟腎炎1例, 計19例に対し, 本剤1回1.0g, 1日2回3-10日間静脈内投与し, 疾患別臨床効果100%, 疾患別細菌学的効果81.3%, 分離菌別細菌学的効果, 消失率86.4%の結果を得, 副作用はなかった。
    4. 以上の諸成績から産婦人科領域の感染症に対するcefepimeの有用性が認められた。
  • 松田 静治, 鈴木 正明, 王 欣暉
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 350-353
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新注射用セフェム系抗生物質cefepime (CFPM) について女性性器組織移行の検討および臨床応用を行い, 以下の結果を得た。CFPM 1g単回点滴静注後の性器組織への移行性は良好であった。すなわち投与後の肘静脈および子宮動脈の最高血清中濃度はいずれも20.8μg/mlを示し, 子宮および子宮内性器各組織へは2.02-20.2μg/gの移行が認められた。臨床応用として骨盤内感染症11例に対し本剤1回1.0g (点滴静注) 1日2回, 4-8日間投与し判定不能の1例を除き, 全例有効以上であった。細菌学的効果は菌消失7例, 不変1例, 菌交代1例, 不明1例であった。なお副作用は1例に軟便を認めた
  • 伊藤 邦彦, 玉舎 輝彦, 山田 新尚, 早崎 源基, 太田 俊治
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 354-365
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用セフェム系抗生物質であるcefepime (CFPM) の女性性器組織骨盤死腔液および乳汁への移行濃度の測定と産婦人科領域感染症への臨床応用を行った。CFPM1.0gを60分で点滴静注した時の各性器組織では, いずれも25μg/gを越える濃度の移行が認められた。骨盤死腔滲出液でも25μg/mlを越える濃度の移行が認められた。また, 乳汁では, 最高値でも1.2μg/ml程度の移行であった。臨床例9例では子宮溜膿腫3例中2例が無効, 1例が判定不能であったが, 子宮内膜炎, 子宮傍結合織炎, 骨盤死腔炎, 骨盤腹膜炎, ダグラス窩膿瘍および膣壁膿瘍の各1例ではすべて有効であった。また, 副作用, 臨床検査値の異常変動は認められなかった。これらのことから, CFPMは産婦人科領域感染症に対し, 有用な薬剤となると考えられる。
  • 山元 貴雄, 保田 仁介, 岩破 一博, 金尾 昌明, 岡田 弘二
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 366-372
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセフェム系抗生物質であるcefepimeに関する基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。基礎的検討として, cefepime 1.0g one shot静注時における血清中濃度, 性器組織内濃度および骨盤死腔液中濃度を測定した。本剤の末梢静脈血清中濃度は投与後1時間18分で29.2μg/ml, 3時間10分で11.7μg/mlを示した。性器組織内濃度は投与後1時間18分で11.7-25.8μg/g, 約1時間30分で13.4-25.8μg/g, 約2時間で9.28-20.3μg/g, 3時間10分で7.01-10.3μg/gの濃度が認められた。骨盤死腔液中濃度は, 投与後30分, 1, 2, 4, 6時間でそれぞれ45.8±15.3μg/ml (mean±SD), 40.3±10.8μg/ml, 29.3±8.98μg/ml, 17.3±4.90μg/ml, 8.82±4.03μg/mlであった。臨床例に対する検討では, 子宮内膜炎2例, 子宮溜膿腫1例, 骨盤死腔炎4例, 計7例の産婦人科性器感染症に本剤投与を行った結果, 著効2例, 有効4例, 無効1例であった。細菌学的効果は11株中, 消失7株, 存続4株で, 63.6%を示した。本剤投与を行った全例に自他覚的な副作用は認められなかった。しかし, 臨床検査値異常として好酸球増多が1例に, GOT, GPT, LDHの一過性の上昇が他の1例に認められた。
  • 中桐 善康, 大村 裕一, 廣瀬 徹, 本郷 淳司, 近藤 恒正, 佐能 孝, 光井 行輝, 秋本 晄久, 江口 勝人, 関場 香, 井上 ...
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 373-379
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新セファロスポリン系抗生物質cefepime (CFPM) について基礎的, 臨床的検討を行い以下の結果を得た.
    1. 子宮筋腫および子宮内膜症で腹式単純子宮全摘術適応患者5例に対して, CFPM1.0g点滴静注を行い, 投与後1時間30分後の子宮組織および子宮付属器への移行濃度を測定した。その結果, 卵巣で最も高く25.3μg/g (子宮動脈血中濃度の83.7%) であった。子宮膣部, 子宮頸部, 卵管, 子宮内膜がそれに次ぎ, 子宮体部筋層で最も低く15.3μg/g (子宮動脈血中濃度の50.2%) であった。
    2. 子宮頸癌広汎子宮全摘術術後患者8例に対して, CFPM1.0g点滴静注を行い, 骨盤死腔液への移行濃度を測定した。その結果, 投与後3時間目において25.0μg/mlのピーク濃度を示し, 投与後6時間目でも16.3μg/mlであり, 静脈血中濃度よりも高値を示した。
    以上, 子宮組織および子宮付属器ならびに骨盤死腔液への移行濃度は大部分のグラム陰性菌, グラム陽性菌に対するMICを上回るものであり, 充分な治療効果が期待される。
    3. 産婦人科感染症10例に対して, 総量4.0~22.0gのCFPMを使用し, 有効9例, 無効1例を得た。また, 7例から9菌種の菌が分離された。
    4. 本剤投与によると考えられる1例のカンジダ外陰膣炎の副作用と1例のS-GOT, S-GPTの上昇が基礎的ならびに臨床的検討において認められた。
    以上のことから, 本剤は有用でかつ, 安全な薬剤と考えられる。
  • 大道 光秀, 平賀 洋明, 伊藤 寧, 平澤 路生
    1991 年 39 巻 Supplement2 号 p. 380-384
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用セファロスポリン剤であるcefepimeを呼吸器感染症に投与し, 臨床効果および安全性と有用性を検討した。急性肺炎7例, 気管支拡張症感染時3例, 慢性気管支炎6例, 急性肺炎+胸膜炎1例, 慢性呼吸器疾患の二次感染3例の計20例に, 1回1g, 1日2回, 7~14日間点滴静注した。臨床効果は20例中18例有効で, 有効率は90%であった。細菌学的効果は起炎菌と思われる細菌を分離した15株について14株の菌は消失した。副作用は発疹が2例, 発熱が1例に認められた。投与前後に検査した臨床検査値の異常変動はGPT上昇1例, BUN上昇1例であった。
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