CHEMOTHERAPY
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39 巻, Supplement3 号
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  • 井上 邦雄, 浜名 洋子, 三橋 進
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 1-13
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生剤panipenem/betamipron (PAPM/BP) の主薬panipenem (PAPM) について, 抗菌活性を対照薬剤と比較検討した。
    1) PAPMはグラム陽性菌, グラム陰性菌に幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌力を示した。 その抗菌力はimipenem (IPM) とほぼ同等で, グラム陰性菌の一部を除き, cefotaxime (CTX), ceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON), flomoxef (FMOX>を上回る優れたものであった。
    2) PAPMはセフェム系抗生剤に比べ, 短時間に強い殺菌作用を示した。
    3) PAPMはcefuroximaseの一部を除く各種β-lactamaseに高い安定性を示し, β-lactamase産生菌に対してもIPMと同等以上の強い抗菌力を有していた。
    4) PAPMはマウス全身感染に対し, CTX, CAZを上回る治療効果を示した。
  • 横田 健, 神田 佳代子, 鈴木 映子
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 14-23
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) の活性原体, panipenem (PAPM) のStaphylococcus aureus, methicillin-resistant S. aureus (MRSA), coagulase-negative staphylococci (CNS), Streptococcus pyogenes,β-streptococci, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium, Escherichia coil, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia rettgeri, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas cepacia, Acinetobacter calcoaceticus, Xanthomonas maltophilia, ampicillin-resistant Haemophilus influenzae およびBacteroides fragilis の15~50臨床分離株に対するMIC50はそれぞれ, 0.05, 6.25, 0.2, ≦0.013, ≦0.013, ≦0.013, 1.56,>100, 0.2, 0.1, 0.39, 0.78, 1.56, 1.56, 0.2, 0.39, 0.2, 6.25, 12.5, 0.2,>100, 0.39および0.78μg/mlであった。
    PAPMはS.aureusのpenicillin-binding protein (PBP) 1および3に親和性が強く, E. coliのPBP2, S.marcescensのPBP 2, P. aeruginosaのPBP2等ムレイン合成開始指令酵素と考えられる画分にimipenem (IPM) 同様結合親和性が高かった。
    PAPMはIc, IIb, V型β-lactamaseはIPMと同程度に不活化したが, その他の型にはIPMより不活化力が弱かった。
    PAPMの補体との協力的殺菌作用は明らかではなかったが, マウス培養マクロファージ (Mφ) との協力は顕著で, E. coli NIHJ JC-2の生細胞は1/8MIC以上のPAPM共存下でよく食菌消化された。PAPMはブタおよびヒトのdehydropeptidase-I (DHP-1) にIPMより安定であった。
  • 五島 瑳智子, 勝田 光大, 宮崎 修一, 辻 明良, 金子 康子, 桑原 章吾
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 24-45
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生物質であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP)(panipenem (PAPM)) のin vitroおよびin vivoにおける抗菌作用をimipenem/cilastatin (IPM/CS)(imipenem (IPM)), 1atamoxef (LMOX), cefuzonam (CZON) およびceftazidime (CAZ) と比較検討した。
    PAPMはグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対し, 幅広い抗菌スペクトラムを有し, 特にmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) を含むStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus spp.Enterococcus faecalisに対し, IPMと同等に, 第3世代のセフェム剤より強い抗菌力を示した。
    PAPMは各種β-lactamaseに対し, 対照薬剤と同様に安定であった。
    マウスの実験的全身感染に対するPAPM/BPの治療効果は単独感染および混合感染ともに, いずれの菌種に対してもIPM/CSとほぼ同等かやや優れていた。
    局所感染モデルとしてマウス経鼻肺感染およびマウス上行性尿路感染に対するPAPM/BPの治療効果はIPM/CSおよびCAZとほぼ同等であった。
  • 渡辺 邦友, 武藤 吉徳, 加藤 直樹, 板東 香お里, 田中 保知, 上野 一恵
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 46-54
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系薬剤であるpanipenem (PAPM) の嫌気性菌 (411株以上) に対する抗菌作用を寒天平板希釈法により検討した。また, Bacteroides fragilis由来のβ-lactamaseに対する本薬剤の安定性を検討した。さらにPAPMとN-benzoyl-β-alanineの配合剤 (panipenem/betamipron (PAPM/BP)) 投与のマウス盲腸内Clostridium difficile異常増殖誘起能をも検討した。
    PAPMは, 寒天平板希釈法で測定した場合, 106CFU/mlの接種菌量でC.difficileを除くすべての菌種を0.78μg<mlで発育阻止した。Cdifficileの発育阻止には6.25μg<mlを必要とした。本薬剤は, 特にBacteroides, Prevotellaのβ-lactamase産生株に強い抗菌作用を示した。
    PAPMはβ-lactam薬剤に耐性傾向が強く, 薬剤感受性パターンが異なるB.fragilis (GAI-10150, 0558および7955) 由来のβ-lactamaseに対し, すこぶる安定で全く加水分解を受けなかった。しかし, imipenem高度耐性株であるGAI-30144の産生するmetallo-β-lactamaseに対しては容易に分解された。
    PAPM/BPの1日1回5日間の100mg/100mg皮下投与は, 投薬中止7日目の盲腸内容物中に約102~103 CFU/gの軽度のC. difficileの増殖を引き起こした。
  • 西野 武志, 福岡 隆, 本村 琢哉, 西口 由美子, 大槻 雅子
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 55-74
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) とその腎毒性軽減剤betamipron (BP) の合剤であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) の細菌学的評価をimipenem (IPM), ceftazidime (CAZ), flomoxef (FMOX), cefuzonam (CZON), cefotiam (CTM), gentamicin (GM) およびpiperacillin (PIPC) を比較薬として検討した。
    PAPMはグラム陽性菌, 陰性菌および嫌気性菌に対して幅広い抗菌スペクトラムを示した。各種臨床分離株に対する抗菌力はIPMとほぼ同等で, メチシリン感受性Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Escherichia coli, Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Haemophilus influenzae, Acinetobacter calcoaceticusおよびBranhamella catarrhalisに対するMIC90は1.56μg/ml以下であった。メチシリン耐性S.aureusに対するMIC50は1.56μg/mlで比較薬中最も優れていた。Pseudomonas aeruginosaに対するMIC50およびMIC90はそれぞれ6.25およぴ12.5μg/mlでIPMに比べて約4倍劣っていた。
    PAPMの抗菌力は培地pH, 接種菌量, 血清またはBPの添加の影響をほとんど受けなかった。
    増殖曲線に及ぼす影響ではIPMとほぼ同様の薬剤濃度に応じた強い殺菌効果を示し, 定常期初期の菌に対しても殺菌的に作用した。E. coli のpenicillin-binding proteins (PBPs) に対してPAPMは, 2, 1A, 1Bs, の順に強い親和性を示した。薬剤作用時の菌の形態変化を微分干渉顕微鏡で観察したところ菌の膨化や球形化が見られ, 2~4MIC以上で溶菌像も多く認められた。
    マウス腹腔内感染症に対して, PAPM/BPはグラム陽性菌感染で使用薬剤中最も優れた治療効果を示し, P. aemigimsaを含むグラム陰性菌に対してもimipenem/cilastatin (IPM/CS) と同等の優れた治療効果を示した。
  • imipenemとの比較
    島田 馨, 岡 慎一, 後藤 美江子
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 75-77
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    In vitro pharmacokinetic modelを用いてpanipenem (PAPM) 500mg, 30分点滴静注時の血中濃度推移を再現させ, この際のStaphylococcus aureusPseudomonas aeruginosaの生菌数の変動をimipenem (IPM) と比較検討した。
    PAPMとIPMのMICが等しいS. aureusの上記条件下での生菌数曲線はほとんど一致した。P.aemginosaの場合, PAPMのMICがIPMより2管劣る2株で検討した。MICがPAPM; 25μg/ml, IPM; 6.25μg/mlのP. aeruginosaの生菌数の低下はPAPM投与で102CFU/ml, IPMで104CFU/mlであったが, 再増殖の結果12時間後の菌数は両者等しくなった。また, MICがPAPM; 12.5μg/ml, IPM; 3.13μg/mlのP. aemginosaの生菌数曲線は両者ほぼ同様であった。
  • 戸塚 恭一, 菊池 賢, 柴田 雄介, 長谷川 裕美, 片平 潤一, 清水 喜八郎
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 78-82
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem (PAPM) とアミノ酸誘導体との配合剤であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) のin vitroおよびin vivoのpostantibiotic effect (PAE) について検討した。2, 4MICで2時間接触させた場合のPAPMのin vitroのPAEはStaphylococcus aureusに対してはいずれの濃度でも2.1h, Escherichia coliではそれぞれ0.7h, 1.0h, Klebsiella pneumoniaeでは1.0h, 1.6hであった。Imipenem (IPM) のPAEは, S. aureusに対してはそれぞれの濃度で2.1h, 2.4h, E. coliにはいずれの濃度でも0.9h, K. pneumoniaeには1.0h, 1.7hであった。Pseudomonas aeruginosaに対しては4MICで1および2時間接触させた場合PAPMがそれぞれ1.45h, 1.7h, IPMが1.7h, 1.85h, ceftazidime (CAZ) が0.05h, 0hであった。
    白血球減少マウス大腿感染モデルを使用して50mg/kgを投与した場合のK. pneumoniaeに対するin vivoのPAEはPAPMで1.4h, PAPM/BPで1.1h, PAPM/cilastatin (CS) では2.0h, IPMで0.8h, IPM/CSで1.8hであった。P. aeruginosaに対して50mg/kgを投与した場合のPAEはPAPMで-0.9h, IPMで-1.1h, CAZで-1.2hであった。100mg/kg投与ではPAPMで-0.3h, PAPM/BPで0.1h, PAPM/CSで0.5h, IPMで0.3h, IPM/CSで1.0hでいずれも短い傾向を示した。
  • 宇津井 幸男, 大屋 哲, 土門 春樹, 勝田 光大, 竹之内 俊, 安食 洋子, 関根 奈穂子, 笠原 真由美, 成田 輝夫, 田島 政三 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 83-101
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) の主薬で, 新しいカルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) のin vitro抗菌活性を対無薬剤と比較検討した。
    1) PAPMはグラム陽性菌, グラム陰性菌に対して, 幅広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力とを有していた。
    2) PAPMは臨床分離菌に対してimipenem (IPM) とほぼ同等の強い抗菌力を示し, またグラム陰性菌の一部を除き, cefotaxime, latamoxef, ceftazidime, cefuzonam, flomoxef, piperacil-linなどよりも優れていた。
    3) PAPMはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌や, セフェム耐性グラム陰性桿菌に対してもIPMとほぼ同等の抗菌力を示し、他の対照薬剤より優れていた。
    4) PAPMはその抗菌力が, 培地種類, 培地pH, 馬血清添加, 接種菌量などの影響を受け難かった。
    5) PAPMはセフェム系抗生剤やpiperacillinよりも短時間に強い殺菌作用を示した。
    6) PAPM, IPMは増量継代培養による菌の耐性獲得を他の対照薬剤よりも起こし難かった。
  • 大屋 哲, 宇津井 幸男, 矢島 努, 土門 春樹, 竹之内 俊, 福岡 隆, 安食 洋子, 関根 奈穂子, 川田 晴美, 安田 紘, 桑原 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 102-110
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem (PAPM) の作用機作に関して以下の検討を行った。
    1) β-Lactamase安定性, 阻害作用, 誘導活性: PAPMはpenicillinase, cephalosporinase, cefuroximaseのいずれによってもほとんど加水分解を受けず, 高い安定性を示した。阻害作用はcefuroximase, cephalosporinaseに対して強く, グラム陰性菌のpenicillinaseに対しても阻害活性を示した。誘導活性はimipenem (IPM) と同等であった。
    2) Penicillin-bindingProteins (PBPs) に対する親和性: Staphylococcu S aureusではPBP-4, 1, 3, 2の順に高い親和性を示し, methicillin-resistant S. aureusのPBP-2'に対してもIPM, cefuzonam, flomoxefより高い親和性を示した。Escherichia coli, Pseudomonas aeruginosaではPBP-1A, 1Bのほか, 2に高く, 3に低いカルバペネムに特徴的な親和性を示した。
    3) 細菌形態に及ぼす影響: PAPMはE.coliおよびP. aeruginosaにおいて菌体中央部が膨化した特徴的な形態を誘発し, セフェム系薬剤に特徴的なフィラメント化は見られなかった。MIC以上の濃度では速やかな溶菌像が観察された。
    4) Postantibiotic effect (PAE): PAPMはS. aureusに対し120分以上, E. coli, Klebsiella pneumoniae, P. aeruginosaなどのグラム陰性菌に対しても60分程度のPAEを示した。
    5) ヒト血清, 白血球との協力的殺菌作用: 他のβ-ラクタム剤同様E. coli, P. aemginosaに対し協力的殺菌作用を示した。
  • 成田 輝夫, 勝田 光大, 竹之内 俊, 福岡 隆, 古賀 哲文, 安食 洋子, 笠原 真由美, 飯島 政子, 安田 紘, 桑原 章吾
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 111-123
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新注射用カルバペネム剤panipenem/betamipron (PAPM/BP) およびその主薬である新カルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) のin vivo抗菌力を, マウスまたはラットを用いた種々の実験的細菌感染症において, imipenem (IPM) またはimipenem/cilastatin (IPM/CS), cefazolin, cefotaxime, latamoxef等を対照薬剤として比較検討した。PAPM/BPまたはPAPM投与後のマウス, ラットにおけるPAPMの血中濃度推移および感染局所への移行をも併せて検討した。
    Betamipron (BP) はPAPMのin vivo抗菌力に影響を及ぼさなかった。
    Staphylococcus anreus, Enterococcus faecalis, Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陽性菌, 陰性菌の16菌種35株によるマウス腹腔内感染症に対し, PAPMは幅広く良好な治療成績を示した。特に, P. aemginosaに対するin vivo抗菌力は強く, 使用した12株による腹腔内感染すべてにおいてIPMと同等以上の治療効果を示した。
    白血球減少マウスにおける全身感染に対しPAPMは良好な治療成績を示した。
    S. aureus, Escherichia coli, P. aeruginosaによるラットCMCパウチ内感染に対し, PAPMはIPMと同等の治療効果を示した。
    S. aureusによるラットtissue cage内感染に対し, PAPM/BPはIPM/CSと同等以上の治療効果を示した。
    P. aeruginosaによるラット感染性心内膜炎に対しPAPM/BPはIPM/CSと同等の治療効果を示した。
  • (第4報) panipenemの抗緑膿菌活性
    大屋 哲, 福岡 隆, 矢島 努, 竹之内 俊, 安食 洋子, 関根 奈穂子, 安田 紘, 桑原 章吾
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 124-131
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    緑膿菌に対するpanipenem (PAPM) のMICは同じカルバペネム系薬のimipenem (IPM) より約4倍大きな値を示すがマウス全身感染系での治療効果はIPMと同等またはやや優れている。この理由を解明するためにこのような挙動を示す代表的な臨床分離株Pseudomonas aemginosa No.1872株を用いて検討を行った。本株に対するMICはPAPM, IPMそれぞれ0.78, 0.20μg/mlであり, in vitroでの短時間殺菌作用はMICを反映してIPMの方が強力であった。しかし, 本株をマウス腹腔内に感染させ, 3mg/kg薬剤の皮下投与後の血中および腹腔内の生菌数はいずれもPAPM投与の方が低かった。血漿中および腹腔内の薬剤濃度下面積 (AUC) はPAPMがIPMより20%以上大きかった。本株に対するpostantibiotic effect (PAE) は検討したどの濃度でもPAPMの方がIPMより長かった。マウス血清との協力的殺菌作用はPAPMの方がIPMより強かった。薬剤濃度シミよレータで生体内濃度をin vitroでシミュレートしてPAPMとIPMの殺菌力を比較検討したところ, 腹腔内濃度をシミュレートした時PAPMはIPMと同等の殺菌作用を示し, この系に50%マウス血清を添加した場合にはPAPMの殺菌力はIPMのそれを上回った。以上より, 体内動態の優位性, 緑膿菌でのPAEが長い点, 血清との協力的殺菌作用が強い点などがPAPMのin vivoでの優れた効果に関与しているものと思われた。
  • 大屋 哲, 福岡 隆, 増田 修久, 竹之内 俊, 関根 奈穂子, 飯島 政子, 安田 紘, 桑原 章吾
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 132-139
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem (PAPM) に対する緑膿菌の感受性は培地中の塩基性アミノ酸濃度を低下させることによって4~32倍高まった。塩基性以外のアミノ酸によってはPAPMに対する感受性の変化は見られなかった。この現象はimipenemでも見られたが, ceftazidime, cefsulodin, cefpirome, piperacillin, norfloxacin, ofloxacin, ciprofloxacin, gentamicinなどでは見られず, カルバペネムに特異的な現象であった。また, この現象は菌の増殖速度, β-lactamase, penicillin-binding proteins, PAPMの培地中での安定性などとは無関係であった。塩基性アミノ酸の透過孔を形成していると考えられている緑膿菌外膜のD2蛋白を欠損する株をPseudomonas aeruginosa PAO1から分離して親株と比較することにより, この現象はカルバペネムのD2透過孔からの透過性の変化によるものであることが明らかになった。培地中の塩基性アミノ酸濃度の低下に伴う緑膿菌のカルバペネムに対する感受性の上昇はD2透過孔を介する外膜透過における両者の競合が減少するためと考えられた。ヒト血漿中の塩基性アミノ酸濃度はMIC測定用培地Mueller-Hintonagar (MHA) 中濃度の1/40以下であるので, 生体内ではPAPMと塩基性アミノ酸の競合は少ないと推定され, PAPMは生体内ではMHAを用いて測定したMICの値から予想される以上の強い抗緑膿菌活性を示すものと考えられた。
  • ラットに対する単回静脈内投与による毒性試験
    木村 邦男, 戸塚 繁夫, 斉藤 有司, 森 昌弘
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 140-143
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規carbapenem系抗生物質であるpanipenem (PAPM) および腎毒性発現部位へのβ-ラクタム剤取り込み抑制作用を有する有機イオン輸送抑制剤であるbetamipron (BP)(N-benzoyl-β-alanine) を1:1の割合 (重量比) で配合した注射用抗生物質panipenem/betamipron (PAPM/BP) について, ラットに対する単回静脈内投与による毒性試験を実施した。PAPM, BPそれぞれ単独の単回静脈内投与試験も合わせて行い, それらの結果を以下に示した
    1) PAPM/BPのLD50値は, 雄が1629mg/kg, 雌が1759mg/kgであった。
    2) 投与後に認められた主な一般状態の変化は, 呼吸不整, チアノーゼ, 歩行不能, ふらつき歩行であった。
    3) PAPM単独の概略のLD50値は, 雄が1700~2200mg/kg, 雌が1300~1700mg/kgの間であった。また, BP単独のLD50値は, 雄が3496mg/kg, 雌が3666mg/kgであった。
    4) PAPM/BPのラットに対する急性毒性は, 一般状態および致死用量から判断して, 配合成分中の主としてPAPMの毒性によるものと考えられた。
  • 真鍋 淳, 木村 邦男, 戸塚 繁夫, 松本 悦嗣, 松沼 尚史, 増田 裕
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 144-156
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生物質であるpanipenem (PAPM) の90日間連続静脈内投与によるラットに対する亜急性毒性試験を実施した。また, 同時に90日間投与の後28日間休薬して変化の回復性を検索した。
    7週齢の雌雄F344ラットに900,300,100および30mg/kgのPAPMを投与し, 溶媒対照群 (生理食塩液投与群) と比較した。
    試験期間中の死亡例は900mg/kg群の雌1例 (投与開始後5日目) のみであった。生存例では雌雄900mg/kg群で発赤, 呼吸不整, 動作緩慢および振戦などの症状がみられ, 体重増加の抑制が認められた。90日間投与終了後の検査では100mg/kg以上の雌の投与群で赤血球指数の一部に増加傾向, 300mg/kg以上の雌の投与群でアルカリホスファターゼ活性値の減少傾向が軽度に認められたが, 検索したすべての臓器に病理組織学的異常はなかった。
    一方, 28日間の休薬終了時には諸検査に異常は認められず, 900mg/kg群の体重も回復傾向を示した。
    以上の結果, 死亡例は, 発現したものの特定の臓器を標的としたPAPMの特異的な毒性は検出されなかった。
  • 真鍋 淳, 木村 邦男, 松本 悦嗣, 矢本 敬, 松沼 尚史, 増田 裕
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 157-165
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生物質であるpanipenem (PAPM) と有機イオン輸送の抑制作用を有するbetamipron (BP) の等量配合剤であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) の90日間連続静脈内投与によるラットに対する亜急性毒性試験を実施した。
    7週齢の雌雄F344ラットにPAPM/BPの400,200,100mg/kg/day (以下同様にそれぞれPAPM/BP400/400,200/200,100/100mg/kg/dayを意味する) およびBPの400,200mg/kg/dayを投与し, 溶媒対照群 (生理食塩液投与群) と比較した。
    投与初期に対照群を含む各群の数例に軟便の排泄が散見された以外, 一般状態に変化はなく, 試験期間を通じて死亡はなかった。体重はPAPM/BP400mg/kg群の雄で軽度な増加抑制を認めたが, 摂餌量推移に変化はなく, 尿検査および眼科的検査にも異常は認められなかった。
    90日間投与終了後の検査では, PAPM/BP100および400mg/kg群の雄で赤血球数の減少, 平均赤血球ヘモグロビン量の増加, 400mg/kg群の雄でヘマトクリット値の減少, 200,400mg/kg群の雌でナトリウムの減少など, またBP400mg/kg群の雄で赤血球, ヘマトクリット値の減少, 200,400mg/kg群の雌でナトリウムの減少など, いずれも軽度な変化が認められた。しかし, 病理組織学的には検索したすべての臓器に異常はみられなかった。
    以上, 本試験ではPAPM/BPあるいはBPの毒性を示唆する特異的な変化は検出されなかった。
  • 腎組織輸送との関連
    長沼 英夫, 常盤 弘, 広内 康邦, 川原 幸則, 福重 潤一郎, 深見 征治, 広田 孝司, 村松 重基, 高萩 英邦, 乾 賢一, 谷 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 166-177
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規カルバペネム系抗生物質, panipenem/betamipron (PAPM/BP) に配合したbetamipron (BP) の腎毒性抑制効果とその作用機構について家兎を用いて検討し, 以下の成績を得た。
    1) Panipenem (PAPM) の単独静注では150mg/kg以上の投与量で, 近位尿細管変性壊死が観察されたが, BP (0.5~2倍量) の併用によってこれらの所見は著明に抑制された。
    2) BPの併用効果は, 抗家兎GBM血清の処置によって急性糸球体腎炎を誘発したモデル動物においても正常動物と同様に認められた。
    3) PAPM投与後30分における腎皮質への取り込み量は, BPの併用投与量に依存して減少し, それに伴って近位尿細管変性壊死が抑制されるものと推察された。
    4) 正常家兎より調製した単離腎尿細管への [14C] PAPMの取り込み速度は, BPの濃度に依存して抑制された。BPによる取り込み阻害様式は非拮抗型であり, その阻害定数は40μMであった。
    5) BPは, cilastatin (CS) のような腎デヒド・ロペプチダーゼ-I (DHPI) 阻害作用を示さなかった。
  • 腎排泄挙動との関連
    長沼 英夫, 広内 康邦, 川原 幸則, 乾 賢一, 谷川原 祐介, 安原 真人, 堀 了平, 桑原 章吾
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 178-189
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規カルバペネム系抗生物質, panipenem/betamipronの家兎における腎排泄機序について, 定型的, 非定型的腎クリアランス試験およびstop-flow試験により検討し以下の成績を得た。
    1) Panipenem (PAPM) を点滴投与したときの腎クリアランス (CLr) は, 糸球体濾過量 (GFR) の1~1.5倍を示した。PAPMのCLrは, 高用量のbetamipron (BP) の点滴により低下したが, probenecidやiodopyracetを併用した時と比較して小さかった。
    2) 代表的な有機カチオンのN1-methylnicotinamide (NMN) やtetraethylammonium (TEA) は, PAPMのCLrにほとんど影響しなかった。
    3) 定常状態におけるBPのCLrはGFRの約2~3倍を示し, probenecidの併用投与によって著明に低下した。また, probenecidのCLrもBPによって低下した。
    4) Stop-flow試験によると, PAPMは近位尿細管付近にイヌリンに対するクリアランス比で約2~2-5の極大をもつ分泌性のフローパターンを示し, BPの前処置 (50mg/kgi.v,) によってほぼ完全に抑制された。
    5) PAPMおよびβ-ラクタム系抗生剤を家兎に単回静注 (50mg/kg) したときの血中動態と尿中排泄を薬物速度論モデルにより同時解析した。同量のBPを併用投与しても, PAPMのいずれの薬物動態パラメータに対しても変化はみられなかった。一方, cephaloridine (CER) やcephalexin (CEX) では, BPの併用によって腎排泄速度定数 (kex) だけが有意な低下を示した。
  • 久岡 正史, 市川 正人, 寺尾 俊雄
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 190-196
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規carbapenem系抗生剤panipenem (PAPM) の体液および組織内濃度測定のため, 微生物学的定量法の検討を行った。
    検定菌としてBacillus subtilis SANK 76959, 測定培地としてheart infusion agarを用いることにより, カップ法およびペーパーディスク法のいずれの方法でもPAPMの測定が可能であったが, 通常はサンプル量が少なくて済むペーパーディスク法 (接種菌量1.7×105CFU/ml) を用いることにした。その測定限界は, 血漿, 尿などの体液試料で約0.02μg (力価)/ml, 組織試料で約0.08μg (力価)/gであった。
    PAPMの標準曲線に及ぼす影響は血漿で軽度に認められ, 尿, 胆汁および乳汁では認められなかった。したがって, 血漿試料測定用の標準液系列は1MMOPS液 [3-(N-morpholino) propanesulfonic acid, pH7.0] とcontrol血漿を1:1に混合した液で調整し, その他の体液試料測定用の標準液系列は0.5MMOPS液で調整した。
    血漿および尿を1M MOPS液と1:1の割合で混合した試料液中のPAPMは,-80℃で凍結保存で2週間以上安定であることが認められた。
  • 久岡 正史, 長沼 英夫, 山崎 泰志, 高萩 英邦, 川原 幸則
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 197-205
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規carbapenem系抗生剤panipenem/betamipron (PAPM/BP) およびpanipenem (PAPM) の主代謝物であるR976-2の体液・組織内濃度について, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法による定量法を確立し, さらに体液と1MMOPS液 [3-(N-morpholino)-propanesulfonicacid, pH7-0] を1:1に混合した試料液中のPAPMおよびbetamipron (BP) の安定性について検討した。
    1) PAPMのヒト血漿および尿中濃度測定は, 試料を希釈してHPLC装置に注入する簡便な方法を採用したもので, 回収率は97%以上, また, 定量値の変動率 (C.V.値) は5.3%以内と良好な定量精度を示した。本定量法により, 血漿試料は約0.3μg/mlまで, 尿試料は約1.0μg/mlまで測定可能である。
    2) R976-2の測定は, カラムスイッチング法によるHPLC法を用いた。すなわち, 血漿試料は除蛋白抽出し, 尿試料は希釈してHPLC装置に注入し, 前処理カラムで溶出したR976-2分画を分析用カラムに導入して分離定量を行った。回収率は96%以上, C. V値は4.7%以内と良好な定量精度を示した。本定量法により, 血漿試料は約1μg/mlまで, 尿試料は約5μg/mlまで測定可能であった。
    3) BPの測定では, 血漿試料は除蛋白抽出し, 尿試料は希釈してHPLC装置に注入する方法を用いた。回収率はほぼ95%以上と良好で, C. V. 値は1.7%以内と良好な定量精度を示した。本定量法により, 血漿試料は約0.2μg/mlまで, 尿試料は約0.5μg/mlまで, また組織試料は約0.4μg/mlまで測定可能であった。
    4) PAPMの試料中での安定性を検討した結果, 血漿中では-20℃で5日間,-80℃で28日間安定であり, また, 尿中では-20℃で7日間,-80℃で42日間安定であることが認められた。BPは, 血漿, 尿試料中共に-20℃,-80℃いずれの保存でも42日間安定であることが認められた。
  • 高萩 英邦, 松下 洋子, 広田 孝司, 重田 明美, 村松 重基, 中島 栄一, 川原 幸則
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 206-226
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) の実験動物における体内動態を14C標識化合物を用いることによって検討した。PAPM/BPはpanipenem (PAPM) とbetamipron (BP) の等量混合物であるので, 14Cで標識した [14C] PAPMと [14C] BPに, それぞれ非標識のBPとPAPMを併用したPAPM/BPを用いて実験を行った。
    ラットおよびイヌにこれらの化合物を静脈内投与を行ったときの血中放射能の消失はラットで速く, 両化合物間では両動物ともBPの消失が速いことが示された。また, 両化合物共主排泄経路は腎であった。
    PAPMの血中, 尿中の主代謝物はラクタム環が開裂したR976-2であった。BPの場合はほとんどが未変化体として存在し, 代謝物として少量の馬尿酸が検出された。
    PAPMのラットにおける体内分布は, 投与直後, 腎, 血液, 肝等に高く, 時間の経過とともに消失したが, 腎では投与24時間後にもわずかな放射能が検出された。BP投与後の放射能の消失は速く, 残留は認められなかった。
  • 齋藤 玲
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 227-235
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) は新しいカルバペネム系抗生剤のpanipenem (PAPM>)と有機イオン輸送抑制剤のbetamipron (BP) の合剤である。本剤の体内動態をimipenem/cilastatin sodium (IPM/CS) と比較検討した。
    6名の健常成人男子に両剤共に500mg/500mgの30分点滴静注し, クロスオーバー法で各薬剤の血中濃度および尿中排泄を測定した。
    PAPMとimipenem (IPM) の血中濃度推移を比較した結果, 点滴終了時の血中濃度 (Cmax) はPAPMが45.6μg/ml, IPMが34.6μg/mlを示し, PAPMの方が高値となったが, 消失相の血中半減期 (T1/2β) は共に約1時間となり, 差は認められなかった。一方, 投与6時間後までの累積尿中回収率は未変化体としてPAPMが37.3%, IPMが65.6%を示し, IPMの回収率の方が高値であった。
    BPとcilastatin (CS) の血中濃度推移におけるCmaxはBPが19.6μg/ml, CSが54.6μg/mlを示し, T1/2βにおいてもBPが0.59時間, CSが0.86時間となり, 両薬剤の体内動態に明らかな差が認められた。6時間後までの累積尿中回収率はBPが100%の回収率を示したのに対しCSは52.2%となり, BPの1/2の回収率であった。
    本試験において, 薬剤投与に起因すると考えられる副作用, 臨床検査値の異常は認められなかった。
  • 高萩 英邦, 広田 孝司, 松下 洋子, 村松 重基, 田中 実, 松尾 英一
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 236-241
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem (PAPM) を静脈内投与したときの代謝におけるデヒドロペプチダーゼ-1 (DHP-1) の関与を調べるため, 各種動物の主要臓器におけるDHP-IおよびPAPM分解活性を測定した。
    Glycyldehydrophenylalanine (GDPA) を基質としたDHP-I活性を較べると, マウス, ウサギ, イヌ, サルおよびヒトにおいては腎の活性が最も高かったが, ラットにおいては肺で最も高い活性を示した。DHPI活性の高い臓器では概ねPAPMの分解活性も高く, DHP-IがPAPMの分解に深く関わっていることが示されたが, 高いDHP-I活性を有するヒト腎でのPAPMの分解活性は比較的弱く, 基質特異性に種差があることもわかった。
    ラットにPAPMを静脈内投与した後の血中濃度は, 他の動物に比し著しく速く消失した。この時加水分解代謝物の生成率は高く, 肺においてDHP-IがPAPMをよく分解することによるものと考えられた。
  • 第1報単回投与試験
    中島 光好, 植松 俊彦, 金丸 光隆, 田島 政三, 長沼 英夫, 久岡 正史, 川原 幸則, 高萩 英邦
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 242-264
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) はカルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) と有機アニオン輸送抑制剤betamipron (BP) との配合剤である。PAPM/BPの薬物動態と耐容性を検討する目的で健康成人男子31名を対象とし, BP250mg, 500mg, 1000mgおよびPAPM/BP125mg/125mg, 250mg/250mg, 500mg/500mg, 1000mg/1000mgについての単回投与試験を行った。BPを静注したときの最高血漿中濃度および血中濃度時間曲線下面積 (AUC) は投与量に比例して増加した。尿中には投与後12時間までに投与されたBPのほぼ全量が未変化体として回収された。PAPM/BPを1時間で点滴静注したときPAPMの最高血漿中濃度およびAUCは投与量に比例して増加した。PAPM/BP500mg/500mg投与終了時の血漿濃度はPAPMとして27.5μg/ml, BPとして15.6μg/mlであった。PAPMおよびBPの消失半減期は投与量にかかわらず, それぞれ約70分と約40分であった。24時間までの尿中には, 概ねPAPMとして30%およびβ-ラクタム環が開裂した代謝物R976-2として50%が回収された。
    本試験において, BPおよびPAPM/BPに起因すると考えられる副作用は認められなかった。
  • 第2報連続投与試験
    中島 光好, 植松 俊彦, 金丸 光隆, 田島 政三, 長沼 英夫, 市川 正人, 久岡 正史, 川原 幸則
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 265-288
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) はカルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) と有機アニオン輸送抑制剤betamipron (BP) との配合剤である。本報では健康成人男子9名を対象とし, PAPM/BP5日間連続投与 (60分点滴静注, 12時間間隔) 時の耐容性と薬物動態を検討した。PAPM/BPを5名の被験者に500mg/500mg点滴投与した時, 終了時の平均血漿中濃度は, PAPMが23.3~26.9μg/ml, BPが11.5~16.2μg/mlであった。PAPM/BPを4名の被験者に1000mg/1000mg点滴投与した時, 終了時の平均血漿中濃度は, PAPMが43.2~55.9μg/ml, BPが24.3~33.2μg/mlであった。また, PAPMとBPの血清蛋白結合率 (点滴終了時) は, それぞれ5.6%, 73.1%であり, 500mg/500mg投与終了時とほぼ同等の値であった。朝に投与されたPAPM/BPは12時間までの尿中に, PAPMとして約25~35%, BPとしてほぼ100%が回収された。PAPMの生物学的半減期 (β相) は投与量に依存せず約70分であった。初回投与時と最終回投与時の薬物速度論パラメータ, 尿中排泄の推移に大きな変化はみられず, 蓄積性は認められなかった。
    試験期間を通じて本剤に起因すると思われる副作用は認められなかった。低用量群の1例に一過性の軽度のGPT上昇 (投与前18IU→投与終了22時間後40IU) を認めたが, 13日後には正常に復していた。
  • 第3報 乳酸塩含有輸液
    中島 光好, 植松 俊彦, 長嶋 悟, 稲葉 宏, 小菅 和仁, 平野 恵子, 田島 政三, 栗原 厚, 市川 正人, 寺尾 俊雄, 久岡 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 289-309
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) を乳酸塩含有輸液に溶解し, 点滴投与した時の薬物動態と耐容性を検討する目的で健康成人男子5名を対象とし, 1日2回, 5日間連続投与を行った。PAPM/BP 1000mg/1000mgをソリタT3号液®に溶解し, 60分点滴静注した。
    点滴終了時のpanipenem (PAPM) およびbetamipron (BP) の血漿中濃度は, それぞれ40.6~46.7μg/mlおよび19.8~22.3μg/ml, またPAPMおよびBPの12時間尿中回収率は, それぞれ19.6~25.5%および87.3~95.6%であった。β-ラクタム環が開裂した代謝物R976-2が約70%尿中に回収された。PAPM, BPおよびR976-2の蓄積性は認められなかった。治験薬に起因すると思われる副作用は認められなかった。臨床検査値異常として本剤に起因すると思われる変動を認めなかった。
  • 大屋 哲, 土門 春樹, 勝田 光大, 矢島 努, 宇津井 幸男, 竹之内 俊, 福岡 隆, 安食 洋子, 関根 奈穂子, 笠原 真由美, ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 310-317
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    健康成人男性志願者5名にpanipenem/betamipron (PAPM/BP) を1回500mg/500mg, 1日2回, 4.5日点滴静注した時の腸内細菌叢に及ぼす影響を糞便中の構成細菌を検索することにより検討した。この連続投与により一部の菌種において菌数の減少あるいは消失を見たが, 総好気性菌数, 総嫌気性菌数総菌数には大きな変動はなかった。Clostridium difficileはどの検体からも検出されなかった。また, C. diffcile D-1 antigenやβ-lactamase活性も検出されなかった。健康成人男性志願者2名によるPAPM/BP1回1000mg/1000mg, 1日2回, 4.5日点滴静注投与においてもほぼ同様の結果であった。これらのPAPM/BP連続投与による腸内細菌叢に及ぼす影響は大きくないものと考えられた。
  • 齋藤 玲, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 佐藤 清
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 318-323
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい抗生剤であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) の抗菌力, 臨床効果について検討した。
    臨床分離7菌種179株について, 106cells/mlでMICを測定した。MIC90Staphylococcus aureus 1.56μg/ml, Escherichia coli 0.10μg/ml, Klebsiella spp. 0.20μg/ml, Proteus mirabilis 0.78μg/ml, Morganella morganii 1.56μg/ml, Serratia marcescens 1.56μg/ml, Pseudomonas aeruginosa 25μg/mlであった。これらは比較したimipenem (IPM) とほぼ同等で, ceftazidime (CAZ) より優れていた。
    19名の感染症患者 (敗血症2例, 呼吸器感染症5例, 尿路感染症12例) に対して, 主として1日0.5g/0.5g×2回投与し, 臨床効果の検討を行った。有効率は94.7%で, 著効9例, 有効9例であった。副作用は認められなかったが, 臨床検査値の異常は1例に赤血球数ヘモグロビン, ヘマトクリットの低下が認められた。
  • 渡辺 彰, 青沼 清一, 本田 芳宏, 徳江 豊, 北村 直人, 庄司 聡, 菊地 宏明, 本宮 雅吉
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 324-332
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバペネム系抗生物質panipenem/betamipron (PAPM/BP) の呼吸器分離7菌種 (計160株) に対する抗菌力をimipenem (IPM) およびceftazidime (CAZ) と比較検討するとともに, 呼吸器感染症8例に投与して臨床効果, 細菌学的効果および安全性を検討した。
    Staphylococcus aureus (methicillin-sensitive, MSSAおよびmethicillin-resistant, MRSA) に対するPAPM/BPの抗菌力はIPMとほぼ同等でCAZより約8段階優れ, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacaeおよびSermtia marcescensに対するPAPM/BPの抗菌力はIPMとほぼ伺等か若干優れるが, CAZとほぼ同等か若干劣っていた。Pseudomonas aeruginosaに対するPAPM/BPの抗菌力はIPMとCAZより若干劣っていた。
    急性肺炎5例, 肺化膿症2例, 肺癌二次感染1例の計8例に本剤の1回0.5g/0.5gを1日2回, 点滴静注で7~22日間投与して著効1例, 有効7例の成績を収め, 100%の有効率を得た。4例からStreptococcus pneumoniaeH.influenzaeの各々2株を分離し, 内3株の菌消失が得られた。GOT・GPTの上昇を1例に認めたが軽度であり, 本剤の投与終了後に正常化した。
    以上より, 呼吸器感染症に対してPAPM/BPは有用な新カルバペネム系抗生物質と考えられる。
  • 林 泉, 大沼 菊夫, 蓮池 美樹
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 333-338
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1989年4月から6月, いわき市立総合磐城共立病院中央検査室で分離した, 臨床材料由来Staphylococcus aureusを, 分離順に100株集積したが, 61株 (61%) がmethicillin-resistant S. aureus (MRSA) であった。これら100株のS.aureusに対するpanipenem (PAPM), imipenem (IPM), cefmetazole (CMZ), norfloxacin (NFLX), tobramycin (TOB) のMIC分布を調べたところPAPMは50%MIC 0.78μg/ml, 90%MIC50μg/ml (range: ≦0.25~>100μg/ml) であり, MRSA61株では50% MIC 25μg/ml, 90% MIC 50μg/ml (range: ≦0.25~>100μg/ml) であった。これはIPMのそれとほぼ同等であり, カルバペネム剤間に交叉耐性が見られた。また, CMZ, NFLX, TOBにもさらに高いMIC値を示した。
    呼吸器感染症8例にpanipenem/betamipron (PAPM/BP) を投与し次の成績を得た。
    64歳から82歳まで, 男性6例, 女性2例, 計8例の呼吸器感染症患者で, 肺炎5例, 気管支拡張症の感染, 慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎各1例である。PAPM/BPO.5g/0.5g1日2回を4例に, 0.75g/0.75g1日2回を4例に生理食塩液100mlまたは5%ブドウ糖液250mlに溶解し60分間で点滴静注した。
    細菌学的効果: S. aureus 1株, Pseudomonas aemginosa 2株が治療前に喀痰から分離された。S. aureusP. aeruginosaの1株は消失したが, P. aeruginosaの1株は不変であった。また, 投与後出現菌としてS. aureusが1株検出されたが感染症には至らなかった。
    臨床的効果: 著効1例, 有効7例で, 全例有効以上であった。
    副作用: 本剤によると思われる副作用は認められなかった。また, 本剤投与中に一過性にGOT, GPTの軽度上昇がみられたものが2例あったが軽微なもので, 臨床上問題になるものではなかった。
  • 大石 明, 滝田 光之, 鈴木 英史, 中村 秀俊, 石井 昌俊, 坂内 通宏, 井上 享, 福井 俊夫, 奥井 津二, 勝 正孝, 榎本 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 339-349
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipronの基礎的および臨床的検討を行い以下の知見を得た。
    基礎的検討での本剤の抗菌力はグラム陽性菌 (Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis) およびグラム陰性菌 (Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia rettgeri, Bacteroides fragilis, Branhamella catarrhalis) に対してimipenemと同等またはそれ以上の抗菌力を示した。
    臨床的検討では呼吸器感染症14例, 敗血症1例および尿路感染症1例に本剤を1日1.0g/1.0g~1.5g/1.5gで5~20日間投与し, 著効9例, 有効5例, やや有効1例, 無効1例で有効率87.5%であった。副作用および臨床検査値の異常変動は軽度の肝機能および腎機能検査値の上昇が4例で認められたのみであった。
  • 斧 康雄, 青木 ますみ, 福島 弘樹, 大谷津 功, 宮下 琢, 野末 則夫, 芳賀 敏昭, 宮司 厚子, 山口 守道, 徳村 保昌, 西 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 350-354
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) は, カルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) とbetamipron (BP; N-ベンゾイルーβ-アラニン) を1:1で配合した新しい注射用抗生物質である。本剤の臨床分離株に対する抗菌力と臨床的効果について検討した。
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するPAPMのMICは6.25~≧100μg/mlに分布し, imipenem (IPM) よりは1管, ceftazidime (CAZ) よりは数管優れた抗菌力を示したが, vancomycin のMIC 1.56~3.13μg/mlに比較して数管劣っていた。Pseudomonas aeruginosa に対する本剤のMICは, 1.56~50μg/mlに分布し, IPM, CAZより1~2管劣っていた。Acinetobacter calcoaceticus に対する本剤のMICは, 0.1~6.25μg/mlに分布し, IPMと同等で, CAZより数管優れていた。
    臨床的には, 高齢者肺炎5例に対して, PAPM/BPを1回0.5g/0.5g, 1日2~3回点滴静注した。投与期間は9~11日間であった。臨床結果は, 著効1例, 有効3例, 無効1例であった。細菌学的効果は, methicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) とCitrobacter 検出例は除菌, Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzae 検出例も除菌された。MRSA検出例では細菌学的には不変であったが, 臨床的には有効であった。また, 2例が起炎菌不明であった。
    副作用は全例認めず, 臨床検査値異常は1例で軽度のBUNの上昇を認めた。
    以上の結果よりPAPM/BPは院内発症の高齢者肺炎に対して有用性の高い薬剤であると思われる。
  • 特に尿の着色反応について
    稲松 孝思, 深山 牧子, 増田 義重, 小平 誠, 巨島 文子, 安達 桂子, 畠山 勤, 田中 章子, 島田 馨, 川原 幸則
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 355-361
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生剤panipenem/betamipronの血液由来腸球菌に対する最小発育阻止濃度 (MIC), 高齢者感染症16例に対する臨床効果, 副作用について検討した。血液から分離された腸球菌43株のMICはEnterococcus faecalis 28株, Enterococcus casseliflavus 3株, Enterococcus durans 2株ではすべて≦0.05~6.3μg/mlであった。Enterococcus faecium5株のMICはいずれも>100μg/mlであり, Enterococcus avium 5株中3株は>100μg/mlであった。これらの成績はimipenem (IPM) と同様であった。
    臨床効果は敗血症3例中著効2例, 有効1例, 呼吸器感染症9例中著効2例, 有効5例, やや有効2例, 腎孟腎炎1例は著効, 感染性粉瘤1例は有効で有効率は85.7%であった。自他覚的副作用は, Clostridium difficile腸炎が2例にみられた。検査値異常変動としてはGOT, GPTの軽度上昇と, Na, Clの一過性の低下が各1例にみられた。経過中, 尿中ウロビリノーゲンの異常高値, 蓄尿の着色がみられたが, 本剤の体外における着色崩壊物が, ウロビリノーゲン測定の呈色反応に影響したための偽陽性であることが判明した。同様の呈色反応はIPMでも観察されており, 両者の崩壊産物によると推定された。
  • 柴 孝也, 斎藤 篤, 嶋田 甚五郎, 加地 正伸, 堀 誠治, 吉田 正樹, 酒井 紀, 松本 文夫, 今井 健郎, 上田 泰
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 362-371
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたカルバペネム系抗生剤であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) の基礎的・臨床的検討を行い, その成績を得た。
    1) 健康成人男性6名にPAPM/BPO.5g/0.5gを30分点滴投与した際の点滴終了時の血中濃度はpanipenem (PAPM) で31.88μg/ml, betamipron (BP) で18.30μg/mlとなり, 以後速やかに血中から消失し, 血中半減期 (T1/2, β) はそれぞれ1.03時間, 0.75時間となった。点滴終了6時間後までの尿中回収率はPAPMが未変化体として21.5%, その代謝物であるR976-2として69.4%となり, BPは91.5%が尿中に回収された。
    PAPM/BPとprobenecid併用投与におけるPAPMの血中濃度はPAPM/BP単独投与時と同等の推移を示した。一方, BPについてはBP単独投与時, PAPM/BP投与時およびprobenecid併用投与時のPAPM/BP投与において同等の血中濃度推移を示し, 尿中排泄についてもprobenecidによる影響は認められなかった。
    Piperacillin (PIPC) 1.0g/1.0g 30分点滴静注時の体内動態は, PIPC単独投与時とBP併用投与時に差は認められなかった。
    2) 臨床検討は肺炎6例, 慢性気道感染症1例, 不明熱1例の計8例に1日1g/1g~2g/2gを5~28H問使用して行った。臨床効果は著効1例, 有効4例, やや有効2例, 無効1例であった。細菌学的効果は単独菌感染のPsuedomonas aeruginosaの2例が消失と減少, Klebsiella pneumoniaeの1例と複数菌感染1例は不変であった。副作凧臨床検査値異常は認められなかった。
  • 青木 信樹, 薄田 芳丸, 甲田 豊, 高沢 哲也, 若林 伸人, 林 静一, 新田 功, 本間 千鶴子, 渡辺 京子
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 372-384
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    各種腎機能障害患者16例にpanipenem/betamipron (PAPM/BP) 0.5g/0.5gを60分間で点滴静注した際のpanipenem (PAPM) とbetamipron (BP) の血中濃度と尿中回収率を測定し, 腎機能障害の程度を軽度 (I群) 5例, 中等度 (II群) 5例, 高度 (III群) 6例に分類し検討した。最高血中濃度はPAPM, BPいずれも点滴終了直後に得られ, 血中半減期 (T1/2β) の平均値はPAPMで1群1.42時間, II群1.78時間, III群3.94時間, BPは各々0.71, 1.31, 5.77時間と腎機能低下が高度になるに従い延長し, 血漿濃度曲線下面積値 (AUC) もPAPMで1群53.46, II群61.47, I II群126.05μg・h/ml, BPはそれぞれ20.40, 37.61,194.67μg・h/mlと腎機能低下に伴い高値となった。24時間までの尿中回収率は腎機能低下が高度になるにつれ減少する傾向であったが, 特にPAPMで著明であった。
    呼吸器感染症33例に使用し, 著効1例, 有効28例, やや有効1例, 無効3例, 有効率87.9%の結果を得た。副作用は1例で下痢がみられ, 検査成績上8例で肝機能検査値異常を認めたがいずれも軽度のものであった。
  • 米津 精文, 安永 幸二郎, 上田 良弘
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 385-393
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたカルバペネム系抗生物質であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) につき基礎的・臨床的検討を行った。
    1.基礎的検討
    1) 抗菌力: 臨床分離の各種保存菌株に対する本剤のMICを測定するとともに, imipenem (IPM), cefmenoxime (CMX), ceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON) のそれをも測定し, 比較検討した。その結果, methicillin-susceptible Staphylococcus aureus 33株に対するMIC50, MIC90は各々0.025μg/ml, 0.1μg/mlで, IPMと同じであり, 他の3つの対照薬剤に比して4~8管優れていた。Methicillin-resistant Stapnylococcus aureus 13株に対するMIC90は6.25μg/mlで, IPMより1管優れていた。Escherichia coli 52株, Klebsiella pneumoniae 40株, Proteus mirabilis 51株, Providencia rettgeri 13株に対しては, 本剤はIPMよりわずかに優れるものの対照のcephem系の3薬剤1こは劣っていた。Serratia marcescens 53株に対してはIPMと同等で, 他の3剤よりその分布は狭かった。Pseudomonas aeruginosa 46株に対しては, IPM, CAZに次いで優れていた。
    2) 体内動態: 肺化膿症 (78歳・男性) を対象として本剤0.5g/0.5g1時間点滴静注時のpanipenem (PAPM) の血中および膿瘍内濃度を測定した。その結果, 血中濃度は投与終了時に27.95μg/mlと最高濃度を示し, 以後徐々に減衰し, 投与開始後10時間目では0.56μg/mlであった。膿瘍内濃度は投与開始後2時間目に最高濃度の0.38μg/mlを示したが, 4~10時間目の濃度は0.03~0.05μg/mlであった。
    2.臨床的検討
    呼吸器感染症10例, 消化器感染症1例, 敗血症1例, 敗血症の疑い1例の計13例に, 本剤を1日1.0g/1.0g, 5~28日間投与した。効果判定可能対象11例のうち10例が有効, 1例が無効の成績を得た。副作用として1例に発熱・下痢・関節痛を認めた。臨床検査値異常として好中球数減少を1例に, 血清クレアチニン・尿中NAGの増加を1例に認めた。
  • 角 優, 日野 二郎, 橋口 浩二, 沖本 二郎, 矢木 晋, 二木 芳人, 副島 林造
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 394-399
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用カルバペネム系抗生物質panipenem/betamipron (PAPM/BP) について基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1) 抗菌力: 臨床分離の10菌種に対する抗菌力を測定しimipenem (IPM), ceftazidime (CAZ), cefmenoxime (CMX), cefuzonam (CZON) と比較検討した。その結果, methicillinsensitiveStaphylococcus aureus (MSSA), methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), Acinetobacter calcoaceticus, Enterobacter cloacae に対してはIPMとほぼ同等でCAZ, CMX, CZONに比べ明らかに優れた抗菌力を示した。また, Escherichia coli, Klebsiellapneumoniae などその他のグラム陰性菌に対してもIPMとほぼ同等の優れた成績を示した。
    2) 臨床的検討: 13症例に本剤の投与を行った結果, 著効1例, 有効8例, 無効4例で有効率は69.2%であった。副作用では嘔気・嘔吐・下痢1例, 薬剤性発熱1例, 臨床検査値異常では肝機能異常5例, 白血球減少2例, AL-P上昇1例が認められた。
  • 澤江 義郎, 岡田 薫, 石丸 敏之, 高木 宏治, 下野 信行, 三角 博康, 青柳 和彦, 仁保 喜之
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 400-406
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたcarbapenem系抗生物質のpanipenem (PAPM) とbetamipron (BP) の1:1配合注射剤であるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) について基礎的, 臨床的検討を行った。
    九州大学第一内科入院患者由来の臨床分離株に対するPAPMのMIC80は, Staphylococcusaureus 0.10, Enterococcus faecalis 3.13, Escherichia coli 0.20, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter spp., Serratia marcescens 0.78, Proteus mirabilis 3.13, Proteus vulgaris 1.56, Citrobacter freundii 0.39, Pseudomonas aeruginosa 50μg/mlであり, imipenem (IPM) とほぼ同等の抗菌力であった。また, piperacillin (PIPC), cefoperazone (CPZ), ceftazidime (CAZ) の抗菌力と比較すると, グラム陽性球菌ではPAPMがはるかに優れていたが, グラム陰性菌ではほぼ同等であり, Proteus spp.でCPZ, CAZよりもPAPMが劣っていた。
    九州大学第一内科入院患者の肺炎3例 (うち1例は脳膿瘍合併), 気管支炎1例, 膀胱炎2例, 敗血症1例の計7例にPAPM/BPを1日1.0g/1.0g~2.0g/2.0g, 3~23日間使用したところ, 臨床効果は著効1例, 有効5例, 判定不能1例であった。起炎菌のHaemopilusinfluenzae, Branhamella catarrhalis, K. pneumoniae, P. aeruginosa, Xanthomonas maltophiliaはいずれも消失したが, うち2例で菌交代がみられた。副作用としては何ら認められず, 臨床検査値異常も認められなかった。
  • 高本 正祇, 原田 泰子, 原田 進, 北原 義也, 石橋 凡雄, 篠田 厚
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 407-416
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症7例に対してpanipenem/betamipron (PAPM/BP) 0.5g/0.5gを30分で点滴静注し経時的に血漿中濃度を測定した。Panipenem (PAPM) の最高血漿中濃度 (Cmax) は点滴終了直後で, 36.79±3.04μg/ml, 血漿中濃度曲線下面積 (AUC) は57.88±5.30μg・hr/ml, 血漿中濃度半減期 (T1/2) は0.9時間, betamipron (BP) のCmaxは24.58±2.76μg/ml, AUCは24.11±2.83μg・hr/ml, T1/2は0.4時間であった。PAPMとBPの体内からの消失挙動は類似していた。
    呼吸器感染症18例に本剤を使用した。全体の成績は有効率68.8%であった。気管支炎と肺炎との間に有効率に差はみられなかった。有効率は重症度によって異なった。
    起炎菌別に見ると, Streptococcus Pneumoniae, Branhamella catarrhalis, Haemophilus spp. は100%除菌されたが, Pseudomonas aeruginosaの除菌率はよくなかった。副作用は4例にみられ, 2例は投与中止した。アレルギーと思われるものが2例みられた。
    本剤と関係のある臨床検査値異常は3例にみられた。GOT, GPTの軽度上昇, LDHの軽度上昇とGPTの軽度上昇をみたが投与中止後直ちに正常に復していた。
    以上より本剤は呼吸器感染症に有用な薬剤であると思われた。また, PAPMとBP両者の体内挙動は, 臨床効果を発現する上で効果的なものであった。
  • 松田 治子他
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 417-427
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) について, 基礎的ならびに臨床的検討を行い, 次の結果を得た。
    1.抗菌力: 臨床分離株15菌種480株に対するpanipenem (PAPM) の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 他の7薬剤 [imipenem (IPM), ceftizoxime (CZX), latamoxef (LMOX), ceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON), piperacillin (PIPC), cefaclor (CCL)] と比較検討した。その結果, 本剤はmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) を含むグラム陽性菌やグラム陰性菌に良好な抗菌活性を示し, 緑膿菌を除いてIPMとほぼ同等あるいはそれ以上の成績であった。
    2.体液内濃度: 慢性気管支炎患者1例において, 本剤1g/1gを点滴静注した時の血中および喀痰中濃度を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) にて測定した。本剤点滴静注後のPAPM血中濃度は160μg/ml, 6時間後では6.2μg/mlであった。また最高喀痰中濃度は2~3時間後に8.40μg/mlに達し, 本剤の速やかな肺内移行性が示唆された。
    3.臨床的検討: 呼吸器感染症32例に対し本剤を投与し, 臨床効果および副作用について検討した。32例中, 著効6例, 有効15例, やや有効4例, 無効4例, 判定不能3例で, 有効率は72.4%と良好な成績を示した。副作用は1例に全身灼熱感と下痢を認め, 臨床検査値異常はGOTあるいはGPTの上昇が6例, 好酸球増多が7例, 血小板減少, 貧血, amylase上昇が各1例に認められた。いずれも軽度の異常で, 本剤投与終了後速やかに改善し, 本剤の安全性が確認された。
  • 高橋 淳他
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 428-440
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用新carbapenem系抗生剤panipenem/betamipronの呼吸器感染症における基礎的・臨床的研究を行った。
    呼吸器病原性が明確な菌株に対するpanipenem (PAPM) の抗菌力をMIC50, MIC90値 (μg/ml) で示すとHaemophilus influenzae (43株) に対して0.78, 1.56, Streptococcus pneumoniae (50株) に対しては<0.003, 0.025と極めて優れ, Branhamella catarrhalis (49株) に対しても0.025, 0.025と優れた抗菌力を示した。Staphylococcus aureus (47株) に対しては0.1, 50, Pseudomonas aerugiinosa (42株) に対しては12.5,>100であった。
    5人の患者における本剤投与中の喀痰中濃度は0.166μg/ml~3.75μg/ml, 喀痰中濃度/血清中濃度比は0.5%~14.6%と他のβ-lactam剤とほぼ同等であった。また病巣局所分泌物中濃度は3.26, 2.58, 1.88μg/ml, 同時採取喀痰中濃度は0.32μg/mlであった。
    5人の患者における本剤投与中の喀痰中濃度は0.166μg/ml~3.75μg/ml, 喀痰中濃度/血清中濃度比は0.5%~14.6%と他のβ-lactam剤とほぼ同等であった。また病巣局所分泌物中濃度は3.26, 2.58, 1.88μg/ml, 同時採取喀痰中濃度は0.32μg/mlであった。
    21例の呼吸器感染症の患者に本剤を投与し臨床効果を検討した結果, 細菌学的菌消失率は75%, 臨床的有効率は85.7%と優れた成績であった。副作用は1例に皮疹が認められたのみであった。
    本剤は呼吸器感染症に優れた効果を期待し得る薬剤と結論されるが, 抗菌力・喀痰中濃度, 起炎菌消失に至るまでの期間, 臨床的改善の速やかさから考えて本剤の呼吸器感染症における基本的投与量はPAPM/BP1回0.75g/0.75g, 1日2回投与であると考えられた。
  • 後藤 陽一郎, 一宮 朋来, 生田 真澄, 仲間 薫, 山崎 透, 長岡 博志, 永井 寛之, 重野 秀明, 後藤 純, 田代 隆良, 那須 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 441-448
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用カルバペネム系抗生物質panipenem/betamipron [panipenem (PAPM) とbetamipron (BP) の合剤 (1:1に配合)] について, 臨床分離菌に対する抗菌力ならびに呼吸器感染症に対する臨床的検討を行い次の結果を得た。
    1) 抗菌力: 臨床材料から分離した27菌種927株 (グラム陽性球菌193株, Branhamella catarrhalis26株, 腸内細菌453株, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌232株, Bacteroides fragilis 23株) について, 日本化学療法学会規定の方法により最小発育阻止濃度を測定し, imipenem (IPM), carumonam (CRMN), ceftazidime (CAZ) の抗菌力と比較した0PAPM/BPはStaphylococcus aureusを含むグラム陽性菌, グラム陰性菌に対して幅広い抗菌力をもち, IPMとほぼ同等の強い抗菌活性を示した。
    2) 喀痰内移行濃度: 4例にPAPM/BPO.5g/0.5gを30分間かけて点滴静注し, 喀痰内移行濃度を測定した。喀痰移行濃度は投与開始後1~2時間ないし3~4時間目の喀痰中に最高値で0.56~1.44μg/mlの値であった。
    3) 臨床成績: 呼吸器感染症5例 (肺炎4例, 気管支拡張症1例) を対象に, 1日2回点滴静注し, 臨床効果を検討した。1日投与量はPAPM/BPO.5g/0.5gを1例, 1.0g/1.0gを3例, 1.5g/1-5gを1例に使用し, 6~15日間投与した。総合効果は有効3例, やや有効2例と判定された。本剤投与による自・他覚的副作用は認めなかった。臨床検査値で1例にGOTの軽度異常を認めたが, 本剤投与終了後速やかに正常値に復した。また1例にクレアチニンクリアランスの低下がみられた。
    3) 外科領域の感染症10症例 (術後腹腔内膿瘍3例, 汎発性腹膜炎2例, 急性胆嚢炎2例, 急性胆管炎, 肛門周囲膿瘍および術後肺炎各々1例) に本剤を1回0.5g/0.5g, 1日2回投与を行った。10症例全例に有効であった。本剤に起因すると思われる自他覚的副作用および臨床検査値の異常出現は認めなかった。
  • 比嘉 太他
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 449-454
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用カルバペネムであるpanipenem/betamipron (PAPM/BP) の細菌学的検討と呼吸器感染症, 尿路感染症に対する臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    14菌種346株について, PAPM/BPの活性体であるpanipenem (PAPM) とimipenem (IPM), ceftazidime (CAZ), cefuzonam (CZON), ceftizoxime (CZX) との抗菌力を比較した。PAPMはmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) を除いたすべての菌種に対し強力な抗菌力を示し, IPMとほぼ同等であった。ただし, Enterobacter cloacaeに対してはPAPMのMIC値が低く, Pseudomonas aemginosaに対してはIPMのMIC値が低かった。
    呼吸器感染症5例, 尿路感染症2例に対して, PAPM/BPの臨床的検討を行った。その内訳は, 細菌性肺炎4例, 急性気管支炎1例, 急性腎孟腎炎2例であった。7例における臨床効果は著効4例, 有効1例, やや有効1例, 判定不能1例であった。細菌学的効果については, 7例のうち3例が判定可能であった。Streptococcus pneumoniae, Staphylococcus aureus, Serratia odoriferaの各1株はそれぞれ消失した。1症例において本薬剤によると考えられる発熱が認められた。臨床検査値においては有意な変化はみられなかった。腎機能障害は認められなかった。
  • 恒川 琢司, 廣瀬 崇興, 熊本 悦明
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 455-463
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生剤panipenem/betamipron (PAPM/BP) について基礎的, 臨床的検討を行った。
    基礎的検討として, 教室保存の尿路感染症からの分離菌に対するpanipenem (PAPM), imipenem (IPM), ceftazidime (CAZ), latamoxef (LMOX), cefmetazole (CMZ) の抗菌力をMIC-2000システムを用いて測定した。PAPMの90%最小発育阻止濃度値 (MIC90値) はStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidemidis, Enterococcns faecalis, Escherichia coli, indole陽性Proteus spp., Enterobacter spp. に対しては3.13μg/ml以下の優れた抗菌力を示した。一方, Entmcoccus faecium, Proteus mirabilis, Sermtia marcescens, Psendomonas aeruginosaに対しては6.25μg/ml以上を示し, 特にE. faecinm, P. aernginosaに対しては≧100μg/mlであった。しかし, これらの菌種に対するPAPMのMIC50値は, E. faeciumの100μg/mlおよびP. aemginosaの25μg/mlを除いてすべて3.13μg/ml以下であった。他剤と比較すると, IPMとほぼ同程度の抗菌力で, CAZ, LMOX, CMZより優れていた。
    臨床的検討は複雑性腎孟腎炎3例および複雑性膀胱炎3例の合計6例を対象として行った。効果判定はUTI薬効評価基準 (第3版) に準拠して行い, 判定可能症例は5例であった。複雑性腎孟腎炎3例における臨床効果は5日目で著効1例, 有効1例, 無効1例であり, 細菌学的効果では2例が消失, 1例が菌交代であった。複雑性膀胱炎2例における臨床効果は有効であり, 細菌学的効果は2例とも消失であった。副作用, 臨床検査値の異常はGPTの上昇, LDH, カリウムの上昇が各1例に認められた。
  • 押 正也, 阿曽 佳郎, 河村 毅, 金子 裕憲, 西村 洋司, 佐々木 幸弘, 岸 洋一, 仁藤 博, 原 慎
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 464-468
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用カルバペネム系抗生剤panipenem/betamipron (PAPM/BP) の基礎的および臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1) 抗菌力: 尿路感染症患者より分離したStaphylococcus aurms, Enterococcus faecalis, Eschenchia coli, semtia marcescens, Klebsiella pneumoniae, Pmdomoms aeruginosaに対するpanipenem (PAPM) ならびにimipenem (IPM) のMICを測定した。PAPMはグラム陽性菌ならびにグラム陰性菌でIPMとほぼ同等の優れた抗菌力を示した。
    2) 臨床成績: 急性単純性腎孟腎炎5例, 複雑性尿路感染症12例および前立腺炎3例に1回0.5g/0.5g~0.75g/0.75g, 1日2回, 3~5日間投与し臨床効果を検討した。主治医判定では急性単純性腎孟腎炎で全例著効, 複雑性尿路感染症で10例中7例が有効以上, 前立腺炎で2例が有効, 1例が無効であった。UTI薬効評価基準による判定では複雑性尿路感染症の8例中著効2例, 有効4例, 無効2例と優れた臨床効果を示した。自他覚的副作用は全20例中1例も認めなかった。臨床検査値の異常変動は2例に軽度の変化 (GOT・GPT上昇・LDH上昇) を認めた。
  • 稲土 博右, 増田 愛一郎, 在原 和夫, 石田 俊哉, 田中 元章, 勝岡 洋治, 木下 英親, 河村 信夫, 谷川 克巳, 松下 一男, ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 469-475
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipronは好気性ならびに嫌気性のグラム陽性菌, 陰性菌に対して広範囲なスペクトルを有する新しいカルバペネム系抗生剤である。本薬剤を臨床応用するに先立ち, 家兎を用い脱水および溢水状態の2群における経時的血漿中濃度を測定した。その結果各群間に差は見られなかった。
    また, 本薬剤を尿路・性器感染症25例に対し使用し, その有用性・安全性につき検討した。複雑性尿路感染症17例, 急性単純性腎孟腎炎2例, 急性副睾丸炎6例に投与し, UTI薬効評価基準にしたがって効果判定を行った。UTI薬効評価基準に適合した10例はすべて複雑性尿路感染症で, 著効6例, 有効3例, 無効1例であった。
    自・他覚的副作用は、1例に皮内テストでshock状態になり, ステロイドを用い軽快した以外には認められなかった。また, 臨床検査値異常は2例に肝機能の軽度障害, 1例にリンパ球の増加がみられた。また, 本剤との関係は明らかでないが, 1例に貧血, 1例に血小板の低下をみた。
  • 山田 伸一郎, 小林 覚, 林 秀治, 武田 明久, 伊藤 康久, 藤広 茂, 兼松 稔, 坂 義人, 河田 幸道, 小口 健一, 土井 達 ...
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 476-483
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたカルバペネム系抗生剤である panipenem/betamipron (PAPM/BP) の尿路感染症に対する有用性を基礎的, 臨床的に検討した。
    1) 各種標準株に対する本剤の主薬panipenamの抗菌力は, グラム陽性菌, 陰性菌全般に優れ, imipenem (IPM) と同様広い抗菌スペクトラムを示した。
    2) UTI患者由来のStaphylococcus aureus 9株, Staphylococcus epidermidis 10株, Enterococcus faecalis 41株, Escherichia coli 75株, Citrobacter freundii 5株, Klebsiella pneumoniae16株, Enterobacter cloacae 10株, Serratia marcescens 7株, Proteus mirabilis 22株, Proteus vulgaris 8株, Morganella morganii 7株, Pseudomonas aeruginosa 30株に対する本剤の抗菌力をIPM, piperacillin (PIPC), cefmetazole (CMZ), ceftazidime (CAZ) を対照薬として比較したところ, グラム陽性球菌に対してはIPMとほぼ同等であり, 他の対照薬よりは優れていた。E. coil, C.freundii, K. pneumoniae, E. cloacae に対しては対照薬と同等ないしそれ以上であった。S. marcescens, P. aeraginosa ではIPMにやや劣るものの他剤より優れていた。Proteus属ではCAZが最も優れ, 他はほぼ同様であった。
    3) 複雑性尿路感染症を対象に本剤1回0.25g/0.25g, 0.5g/0.5g, または0.75g/0.75gを1日2回, 5日間投与しその有効性と安全性を検討した。UTI薬効評価基準に合致する15例の総合臨床効果は著効3例, 有効6例で有効率は60%であった。
    4) 本剤投与によると思われる副作用としては, 下痢, 嘔吐が各々1例みられ, 臨床検査値の異常変動は, 好酸球の増加, GPTの上昇, LAPの上昇が各々1例であった。
    5) 本剤は尿路由来の各種細菌に広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力を示し, 複雑性尿路感染症に対して有用性の高い薬剤と考えられた。
  • 高木 伸介他
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 484-493
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用カルバペネム系抗生剤panipenem/betamipron (PAPM/BP) につき, 基礎的および臨床的検討を行い, 以下の知見を得た。
    1) 抗菌力: 臨床分離の9菌種グラム陽性・陰性菌全250株につき, panipenem (PAPM) のMICを測定し, 同様にimipenem (IPM), ceftazidime (CAZ), cefoperazone (CPZ) およびpiperacillin (PIPC) についても測定した。PAPMは上記菌種に対し, IPMと同等または1管劣った抗菌力を示した。
    2) 体内動態: 健常成人男子5名にcross over法で本剤0.5g/0.5gおよび0.75g/0.75gを30分点滴静注し, 血中および尿中濃度を測定した。
    PAPMの最高血中濃度は0.5g, 0.75gとも投与後30分で, それぞれ37.2±1.8μg/ml, 61.4±4.9μg/mlで以後漸減したが, 本剤は投与後6時間で0.23±0.03μg/ml, 0.43±0.08μg/mlの濃度を示した。6時間までの尿中回収率は0.5g投与で21.1±3.4%, 0.75g投与では19.5±3.6%であった。
    Betamipron (BP) の最高平均血中濃度は0.5g投与および0.75g投与とも投与後30分で, それぞれ23.8±1.4μg/ml, 39.1±3.1μg/mlを示し, 以後速やかに減衰した。6時間までの尿中回収率は0.5g投与で91.9±5.4%, 0.75g投与では97.9±1.4%であった。
    3) 腎組織移行: 4例のヒト腎組織への移行は, 本剤0.5g/0.5gの30分点滴静注で, 終了直後から105分までのPAPMの腎孟粘膜部組織内濃度が3.8~8.7μg/g, 腎髄質内濃度が1.0~14.4μg/g, 腎皮質内濃度が2, 1~18.9μg/gであった。またBPはそれぞれ8.9~26.2μg/g, 29.0~113.7μg/g, 25.7~208.5μg/gであった。
    4) 複雑性尿路感染症47例に本剤0.5g/0.5gあるいは0.75g/0.75gを, 1日2回, 朝夕, 5日間点滴静注した。UTI薬効評価基準による判定では, 有効率74.4%, 除菌率91.1%であった。副作用としては, 胸痛+咽頭不快感1例, 下痢1例および発疹1例を認めたが, 休薬により症状の改善をみた。また, 臨床検査値の異常変動としてはGOT, GPTの上昇1例, GOT, 総ビリルビンの上昇1例, 好酸球の増多2例, 好酸球, 好塩基球の増多1例および骨髄球の出現1例を認めたが, いずれも軽度であり, 特別の問題にはならなかった。
    以上より, PAPM/BPは尿路感染症の治療に有用な注射用抗生剤と考えられた。
  • 宇埜 智, 西谷 嘉夫, 山田 大介, 津川 昌也, 公文 裕己, 大森 弘之, 近藤 捷嘉, 難波 克一, 片山 泰弘, 赤枝 輝明
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 494-502
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipronの抗菌力ならびに尿路感染症に対する有用性について検討を行った。
    1) 尿路感染症分離株14菌種209株に対するpanipenem (PAPM) のMICを測定し, imipenem (IPM), ceftazidime (CAZ) およびcefoperazone (CPZ) と比較した。全体的にみると本剤の抗菌力は, IPMとほぼ同等, CAZ, CPZより3~4管程度優れていた。
    2) 複雑性尿路感染症21例を対象に, 本剤を1回0.5g/0.5gまたは0.75g/0.75gで, 1日2回, 5日間連続点滴静注し臨床的有用性を検討した。
    UTI薬効評価基準により評価可能であった17例の総合臨床効果は著効3例, 有効6例, 無効8例で, 有効率は52.9%であった。細菌学的効果では26株中, 消失20株, 存続6株で消失率76.9%であった。
    自・他覚的副作用は1例も認めなかった。臨床検査値異常として肝機能異常 (GOT, γ-GTPの上昇) を1例に, 好酸球増多を1例に, 白血球減少および好酸球増多を1例に認めたが, いずれも投与終了後軽快した。
    以上の成績により, 本剤の尿路感染症に対する有用性が示唆された。
  • 松本 哲朗他
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 504-511
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Panipenem/betamipron (PAPM/BP) を複雑性尿路感染症59例および急性前立腺炎1例に投与し, 以下の結果を得た。
    1) 投与前に検出できた細菌に対するMICをpanipenem (PAPM), imipenem (IPM) およびceftazidime (CAZ) について検討した結果, PAPMは多くの細菌に対してIPMと同等で, CAZより優っていた。
    2) 複雑性尿路感染症例のうち, UTI薬効評価基準に合致した例は51例で, 著効20例, 有効25例, 無効6例で, 総合臨床効果は88.2%であった。
    3) 細菌学的にはグラム陽性球菌の消失率は100%で, グラム陰性桿菌の消失率は94.0%であった。
    4) 副作用は投与60例中2例に認められ, ショックの1例と嘔気・嘔吐の1例であった。臨床検査値異常は3例6件みられ, 肝機能障害が主であった。
  • 後藤 俊弘他
    1991 年 39 巻 Supplement3 号 p. 512-520
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたカルバペネム系抗生物質panipenem (PAPM) の尿路分離菌に対する抗菌力, 尿路性器感染症に対するpanipenem/betamipron (PAPM/BP) の臨床効果と安全性を検討し, 以下の成績を得た。
    1) 抗菌力: 尿路感染症 (UTI) 患者から分離されたStaphylococcus spp. Enterococcusfaecalis, Escherichia coli, Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Pseudomonas aeruginosa 各30株, 合計300株に対するPAPMのMIC5。はそれぞれ≦0.10, 0.78, ≦0.10, 0.20, 0.20, 0.20, 1.56, 1.56, 0.78, 3.13μg/mlであり, MIC90はそれぞれ25, 3.13, ≦0.10, 0.39, 0.39, 0.39, 1.56, 3.13, 1.56, 12.5μg/mlであった。いずれの菌種に対してもimipenemとほぼ同等, グラム陽性球菌に対してはceftazidimeより明らかに強い抗菌力を示した
    2) 臨床的検討
    尿路性器感染症34例を対象にPAPM/BPを1回0.25g/0.25gから0.75g/0.75g, 1日2回, 5から7日間投与し, 有効性と安全性を検討した。UTI薬効評価基準に合致した複雑性尿路感染症23例, 急性前立腺炎5例に対する総合有効率はそれぞれ73.9%, 100%であった。急性精巣上体炎3例に対する効果は主治医判定でいずれも著効であった。自他覚的副作用は認められず, 臨床検査値異常としていずれも軽度の好酸球増多1例, GOT上昇2例, GOT・GPT上昇1例を認めた。
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