CHEMOTHERAPY
Online ISSN : 1884-5894
Print ISSN : 0009-3165
ISSN-L : 0009-3165
39 巻, Supplement4 号
選択された号の論文の108件中1~50を表示しています
  • 小島 毅, 三橋 進, 井上 松久
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 1-12
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいキノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) のin vitroおよびin vivo抗菌作用をciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (oFLX) およびnorfloxacinと比較検討し.次の結果を得た。
    1. SPFXはグラム陽性菌に対して対照薬剤よりも強い抗菌力を有しており, 一部のキノロン耐性Staphylococcus aureusおよびメチシリン耐性Staphylococcus aureusに対しても強い抗菌力を示した。
    2. SPFXはグラム陰性菌に対してCPFXとほぼ同等の抗菌力を有していた。
    3. SPFXに対する自然耐性変異株の出現頻度は約10-9であった。
    4. SPFXはEschericgia coliのDNA gyraseのスーパーコイリング活性を強く阻害した。
    5. SPFXのマウス全身感染症モデルに対する感染防御効果は, CPFXおよびOFLXと同等以上であり, 特にStaphylococcus aureus Smithにおいては対照薬剤よりも明らかに優れていた。
    これらの結果から, SPFXは対照のキノロンと比較してより広い抗菌スペクトルと強い抗菌力を有していると思われた。
  • 五島 瑳智子, 宮崎 修一, 辻 明良, 金子 康子
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 13-29
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinのin vitro, in vivo抗菌力をciprofloxacin, enoxacin, ofloxacin, norfloxacinと比較評価し, 以下のような成績を得た。
    1. 本剤は, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) を含むStaphylococcus属やEntervcoccus faecalisなどグラム陽性球菌に対し対照薬剤より強い抗菌力を示した。また, 腸内細菌科の菌種, ブドウ糖非発酵菌, Bacteroides fragilis, Clostridium difficileに対してはciprofloxacinと同等かやや弱いが, 他の対照薬剤より強い抗菌力を有する広域スペクトルの抗菌薬であった。
    2. MRSA, Pseudomonas aeruginosaなどを用いたマウス全身感染モデル, Mebsiella pneumoniaeによる肺感染モデルおよびEscherichia coli, Serratia marcescensを感染菌とした尿路感染モデルでのsparfloxacinの治療効果は総合的にciprofloxacinやofloxacinと同等であった。
    3. 経口投与後のマウス血清中および腎内の最高濃度はofloxacin, enoxacinより低かったが, 肺内濃度はsparfloxacinが一番高く, しかも, 薬剤濃度の経時的推移パターンは他剤よりも良好でT1/2, AUCともに高い数値を示した。
  • 横田 健, 神田 佳代子, 新井 京子
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 30-36
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacin (SPFX) の Staphylococcus aureus, methicillin-resistant Staphylococcus aureus, coagulase-negative staphylococci, Streptococcus pyogenes,β-streptococci, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium, Escherichia coli CS2 (R+). Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia rettgeri, Citrobacter freundii, Serratia marcescens, Enterobacter cloacae, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas cepacia, Xanthomonas Trialtophilia, Acinetobacter calcoaceticus, ampicillin-resistant Haemophilia influenzae およびBacteroiaees fragilisの14~50臨床分離株に対するMIC90は.それぞれ0.1, 0.2, 0.2, 1.56, 0.78, 0.39, 0.78, 0.78, 0.39, 0.39, 0.39, 0.78, 1.56, 6.25, 1.56, 1.56, 1.56, 12.5, 1.56, 0.39, 0.39, 0.05および3.13μg/mlであった。
    SPFXは血清補体との協力的殺菌作用は中等度であったが, マウス培養マクロファージ (Mφ) との協力的殺菌作用は強く, Escherichia coli NIHJ JC-2の生細胞は114~118MICのSPFX共存下で, Mφ によく食菌, 消化された。
    SPFXはciprofloxacin (CPFX) やofloxacin (OFLX) より強い増殖抑制作用をHeLaおよびCHO-K1細胞に示したが, IMR-32細胞に対する作用はCPFXと同程度であった。SPFXは5μg/mlでIMR-32の神経線維の一部を短縮した。
  • 小栗 豊子, 林 康之
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 37-47
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    最近開発された新キノロン剤sparfloxacin (SPFX) の抗菌力を臨床分離の好気性菌および嫌気性菌3290株について測定し, temafloxacin (TMFX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), erythromycin (EM), cefuroxime (CXM), ceftazidime (CAZ). ampicillin (ABPC), その他の抗菌剤の抗菌力と比較検討した。
    SPFXはほとんどのグラム陽性菌, グラム陰性菌に対し, 比較に用いた他のキノロン剤よりも強い抗菌力を示した。この傾向は特にStreptococcus pneumoniae, Enterococcus属, Flavobacterium meningosepticum, Xanthomonas maltophilia, Acinetobacter anitratus, Bacteroldes属のFragilisグループにおいて顕著であった。
  • 西園寺 克
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 48-53
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinの抗菌力と殺菌力に対するヒトアルブミン及び血漿の影響を液体培地 (Muellgr Hinton broth: MHB) を用いて検討した。
    標準菌株のStaphyloccus aureus FDA 209P JC-1, Escherichia coli ATCC 25922, Pseudomonas aeruginosa NCTC 10490に対するMHBとヒトアルブミン5g/dl添加MHBにおけるMICを比較した。
    標準菌株を被検菌として, 2MIC, 1MIC, 1/2MICの薬剤を含むヒトアルブミン添加, 無添加のMHB及び新鮮ヒト血漿に, 105CFU/mlの菌量を接種し, 37℃ の培養で0h, 2h, 4h, 8h, 24hの生菌数を測定し, 増殖曲腺を作成した。Sparfloxacinの抗菌力と殺自力に対するヒトアルブミン及び血漿の明らかな影響は認められなかった。
  • 後藤 元, 後藤 美江子, 岡 慎一, 浦山 京子, 木村 哲, 島田 馨
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 54-58
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinは16時間に及ぶ長い半減期を有するため, 1日1回投与による治療の可能性が期待される。そこでcomputer-programmed in vitro pharmacokinetic systemを用い, 300mg1日1回投与モデルの抗菌力を, 150mg 1日2回投与モデルと比較した。
    1. Haemophilus influenzaeおよびEscherichia coliの生菌数は, いずれの投与モデルにおいても, sparfloxacinの添加により, 3時間後に検出限界以下に減少した。
    2. Streptococcus pneumoniaeStaphylococcus aureusにおいても, 300mg 1回モデル, 150mg 2回モデルの双方で, 生菌数は6時間迄に, 2log以上減少し, 24時間迄再増殖は抑制された。
    3. Pseudomonas aeruginosaにおいては, 300mg 1回モデルで, 生菌数は検出限界以下に減少し, かつ7時間迄再増殖が抑制され, この成績は150mg 2回モデルより優れていた。
    以上のように今回用いたin vitro pharmacokinetic systemによる検討では, sparfloxacin300mg 1日1回用法は, 150mg 1日2回用法に比し, 同等ないしは, より優れた抗菌力を示した。
  • 西野 武志, 中村 美佳, 輪野 富子, 大槻 雅子
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 59-77
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    合成抗菌剤sparfloxacin (SPFX) に関するin vitro及びin vivo抗菌力を, enoxacin (ENX), ciprofloxacin (CPFX) 及びofloxacin (OFLX) を比較薬として検討し, 以下の結果を得た。
    1. SPFXは, グラム陽性菌群, グラム陰性菌群及び嫌気性菌群に対し広範囲の抗菌スペクトラムを有しており, その抗菌力はグラム陽性菌群に対しては, ENX, CPFX, OFLXより優れており, グラム陰性菌群に対しては, CPFXとほぼ同等であった。また嫌気性菌群に対しては, ENX, CPFX, OFLXより優れていた。
    2. 臨床分離株に対する感受性分布では, SPFXはEscherichia coli及びKlebsiella pneumoniaeに対しては, CPFXとほぼ同等でOFLX, ENXより優れており, Serratia marcescens, Citrobacter freundii, Pseudomonas aeruginosa, Providencia rettgeri, Morganellamorganii, Enterobacter spp., Proteus spp.ではCPFXよりやや劣っており, OFLXとほぼ同等であった。しかし, その他のすべての菌種においては, SPFXが最も優れ, ついでCPFX, OFLX, ENXの順であった。
    3. SPFXの抗菌力に及ぼす諸因子の影響では, Stapdylocoecus aureus, Escheriehia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaともに馬血清の添加, 接種菌量では影響が見られず, pHがアルカリ性側の時に抗菌力がやや良好となる傾向を示した。
    4. Staphylococcus aureu, s, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa及びAcinetobacter calcoaceticusの増殖曲線に及ぼす影響を検討した結果, dose responseのある作用がみられ, いずれの菌株においても殺菌的に作用した。
    5. 位相差顕微鏡により, SPFXを作用させた時の形態変化を観察したところ, Stapdylococcus aureusに対しては菌体の膨化像が,Eschertchia coliに対しては菌体の伸長化像が観察された。また, Pseudemonas aeruginosaでは, 菌体の伸長化はほとんど認められず, スフェロプラスト様構造及び溶菌像が観察された。Haemophilus influenzae及びAcinetobacter calcoaceticusでは, 菌体の伸長化に伴い菌体の膨化も認められた。
    6. マウス実験的全身感染症に対するSPFXの治療効果をグラム陽性菌3株とグラム陰性菌5株について検討した結果, SPFXはこれらすべての感染症に対して優れた治療効果を示し, Serratia marcescensではCPFX, OFLXとほぼ同等であったが, その他のいずれの菌株においてもCPFX, OFLX及びENXより優れていた。
  • 中村 信一, 南 明, 中田 勝久, 黒部 暢之, 河野 薫, 阪口 雄三, 柏本 茂樹, 吉田 博明, 小島 毅, 大植 富夫, 藤本 孝 ...
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 78-92
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新キノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX),[5-amino-1-cyclopropy1-7-(cis-3, 5-dimethyl-1-piperazinyl)-6, 8-difluoro-1, 4-dihydro-4-oxoquinoline-3-carboxylic acid] のin vitroおよびin vivo抗菌作用をciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX), enoxacin (ENX) およびnorfloxacin (NFLX) と比較検討し, 下記の結果を得た。
    1) SPFXはグラム陰性菌, レジオネラにはCPFXとほぼ同程度, グラム陽性菌, ブドウ糖非発酵菌, 嫌気性菌, マイコプラズマ, クラミジア, 結核菌, 非定型抗酸菌には概してCPFX, OFLX, ENXおよびNFLXより強い抗菌作用を示した。
    2) SPFXはampicillin, cephalexin, tetracycline, chloramphenicolおよびstreptomycinと交差耐性を示さず, また殆どのnalidixic acid (NA) 高度耐性菌 (MIC: 100μg/ml以上) の増殖を低濃度 (0.025~0.78μg/ml) で阻止した。
    3) SPFXのMIC値は馬血清および胆汁の添加により殆ど影響されなかったが, 培地pHの低下および接種菌量の増加により若干高くなった。またSPFXのMIC値は二価カチオン (Mg2+, Ca2+) 添加および人尿により殆ど影響されなかった。
    4) SPFXはMIC近辺で殺菌的に作用した。
    5) SPFXに対する自然耐性変異菌の出現頻度は低かった。
    6) SPFXは種々のマウス実験的感染症 (全身, 肺, 皮膚および尿路感染症) において経口投与でCPFX, OFLX, ENXおよびNFLXより優れた感染防御効果を示した。
  • 中村 信一, 中田 勝久, 柏本 茂樹, 梶川 文恵, 岡崎 欣正, 飯田 晶敏, 大西 久美雄, 橋本 昌久
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 93-100
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    尿道炎患者から分離されたChlamydia trachomatisに対するsparfloxacin (SPFX) の抗菌作用をofloxacin (OFLX) およびminocycline (MINO) と比較検討すると共に, 培養細胞を用いて, SPFXおよびMINO作用時の本菌の発育環に及ぼす影響について, 透過型電子顕微鏡観察を行ない, 下記の結果を得た。
    1. 臨床分離株37株に対するSPFXのMIC90は0.063μg/mlであり, OFLX (MIC90: 1μg/ml) の1/16, MINO (MIC90: 0.031μg/ml) の2倍であった。
    2. Chlamydia trachomatis D/UW-3/Cxに対するSPFX最小致死濃度 (MLC) はMICの2倍の0.125μg/mlであり, OFLX (MLC: 2μg/ml) の1/16, MINO (MLC: 0.25μg/ml) の1/2であった。
    3. 透過型電子顕微鏡による観察ではHeLa細胞にクラミジア接種直後よりSPFX2MICを作用させた場合, 封入体の形成は完全に阻害された。これに対して, 既に形成された封入体 (接種後48時間) にSPFX2MICを24時間作用させた場合, 封入体内の原始体は変性あるいは崩壊したが, 基本小体はほとんど変化しなかった。MINOの2MICを作用させた場合もSPFXとほぼ同様の結果が得られたが, 一部の原始体は正常なままであった。従って, SPFXおよびMINOはいずれも基本小体には作用せず, 原始体に作用してクラミジアの増殖を阻害すると考えられる。また, 原始体に対する作用は2MICではSPFXの方がMINOより強かった。
    これらの結果よりSPFXはMINOに匹敵する優れた抗クラミジア剤であると思われる。
  • 加藤 元一, 久世 文幸
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 101-106
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系薬物sparfloxacin (SPFX) について, 4種の抗酸菌臨床分離株Mycobacterium tuberculosis20株 (耐性菌4株を含む), Mycobacterium avium complox20株, Mycobacterium kansasii20株, Mycobarteriurri fortuitum15株に対する試験管内抗菌力をof1oxacin (OFLX), ciproflaxacin (CPFX), rifampicin (RFP) と比較検討した。
    SPFXは, Mycobacterium tuberculosisについては, OFLX, CPFXに比べより良好なMICを示し, またRFPとほぼ同等のMICを示した。また, RFP耐性株についても有効であった。Mycobacterium avium complex, Mycobacterium kansasiiについても, 前記3薬物に比べ良好なMICを示した。Mycobacterium fortuitumについては, RFPは試験管内抗菌力をほとんど示さなかったが, ニューキノロン系薬物は全て有効なMICを示し, SPFXはその中でも最も良好な累積MICを示した。
    以上の結果より, SPFXが抗酸菌感染症の治療薬として期待され得る可能性が示唆された。
  • 渡辺 邦友, 加藤 直樹, 武藤 吉徳, 板東 香お里, 田中 保知, 上野 一恵
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 107-115
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新キノロン系薬剤であるsparfloxacin (SPFX) の嫌気性菌 (偏性嫌気性菌および一部の通性嫌気性菌) に対するin vitro抗菌作用を検討した。
    SPFXは, Bacteroides fragilis, Bacteroides vulgatus, Bacteroides distasonis, Bacteroides ovatus, Bacteroides thetaiotaomicron, Bacteroides aniformis, Prevotella oris, Prevotella oralis, Prevotella intermedia, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum, Veillonella parvula, Peptostreptococcus anaerobius, Peptostreptococcus asaccharolyticus, Peptostreptococcus magnus, Propionibacterium acnes, Eubacterium lentumなどの嫌気性菌の参考菌株の発育を1.56μg/mlで阻止した。SPFX 1.56μg/mlで発育阻止を受けなかった菌種は, 試験した33菌種中Bacterioides eggerthii, Prevotella biuia, Fusobacterium varium, Clostridium sordelliiおよびClostridium difficileの5菌種のみであった。Mobiluncus spp.およびGardnerella vaginalisを含む臨床分離株に対しても優れた抗菌作用を示した。またSPFXのB. fragilisに対する作用は, 殺菌的であった。SPFXの抗菌作用は, tosufloxacinに匹敵し, ofloxacin (OFLX) やnorfloxacinよりも優れた。
    本薬剤の参考菌株を含むC. difficileに対するMIC90は6.25μg/mlであり, また本薬剤の100mg/kg, 1日1回経口7日間投与におけるマウス盲腸内C. difficile異常増殖惹起能は低く, OFLXと同程度であった。
  • 黒部 暢之, 大植 富夫, 山口 俊和, 中村 信一
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 116-122
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacin (SPFX) のbioassay法による体液内濃度測定法と体液中での安定性を検討し, 以下の成績を得た。
    SPFXの濃度測定はEscherichia coli Kpを検定菌とするアガーウェル (AW) 法が感度・精度ともに良好であった。標準液は1/15Mリン酸緩衝渡pH7.0 (尿中濃度の測定など) またはヒト血清 (血中濃度の測定など) で調製した。但し, 血清 (漿) 試料を3倍以上希釈して測定する場合には, リン酸緩衝液の標準曲線を用いることが可能であった。AW法によるSPFXの定量限界は約0.01μg/mlであり, 測定値の日内および日間変動係数 (CV%) は16%以下であった。標準原液およびヒト血清や尿に添加したSPFXは,-20℃ で凍結保存すれば少なくとも2週間は安定であった。
  • 中村 信一, 黒部 暢之, 大植 富夫, 橋本 昌久, 清水 當尚
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 123-130
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacin (SPFX) の各種動物における吸収, 分布および排泄を5mg/kg経口1回投与により検討した。
    SPFXのマウス, ラット, イヌおよびサルにおけるピーク血漿中濃度は, それぞれ0, 25, 0.50, 1.14および0.49μg/mlで, 消失相の半減期は, 5.0, 3.8, 8.0および11.7hであった。SPFXの経口吸収率 (AUC po/AUC iv比) はイヌでは77%であり, ciprofloxacinの44%より約2倍高かった。SPFXのマウスおよびラット組織中濃度は血漿中濃度の2~11倍を示し, マウスではciprofloxacinの組織中濃度より4~9倍高かった。SPFXのラットにおける胆汁中排泄率 (0~24h) は5.6%であったが, β-glucuronidaseで処理した場合, 21.3%と高くなった。SPFXのマウス, ラット.イヌおよびサルにおける尿中排泄率 (0~48h) は, それぞれ6.7, 12.9, 8.6および12.7%を示し, β-glucuronidaseで処理すると, 7.8, 16.3, 8.9および18.9%になった。
    以上の結果から, SPFXは経口吸収が良く, その一部はグルクロン酸抱合を受けるが, 組織移行性が良好で, かつ持続的な薬物と考えられる。
  • 14C-sparfloxacinの分布について
    佐藤 田鶴子, 菊池 典久, 井下 万也, 岩重 洋介, 田中 正司, 園山 昇, 宮崎 亀, 松永 義正
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 131-137
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    New Zealand White種ウサギを用いて下顎骨に感染モデルを作製し, これに対してsparfloxacinを投与し, 血中および下顎骨移行を確認した。その後, 同様に作製した感染モデルに [14C] sparfloxacin 20mg/kgを単回・経口投与し, 投与3時間後 (感染モデルの血中ピーク時間) および24時間後に屠殺し, 下顎骨への移行をオートラジオグラフィーにより検討した。
    1. 薬動力学的検討では, 感染モデルの血清中移行はTmax 3.1時間, Cmax0.82μg/ml, AUC8.79μg・h/ml, 下顎骨ではTmax3.4時間, Cmax0.48μg/g, AUC5.00μg・h/gであった。
    2. オートラジオグラフィーによる検討では, 健常対照群では下顎骨の [14C] sparfloxacinの皮質骨への取り込みは少ないが, 骨髄および下顎の歯および歯髄, 歯根膜への分布は高かった。
    3. 感染モデル群では, とくに感染巣の周辺部にきわめて高い [14C] sparfloxacinの分布がみられた。
    4. 上記の結果から, 本抗菌剤は感染の中心よりむしろ炎症の活発な周辺部へ分布することがわかり, 抗菌剤として有用性のあることを期待された。
  • 竹内 敏視, 山本 直樹, 高橋 義人, 篠田 育男, 伊藤 康久, 兼松 稔, 坂 義人, 河田 幸道
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 138-144
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいピリドンカルボン酸系抗菌剤であるsparfloxacln (SPFX) 200mgを前立腺肥大症38例に対し, 術前2時間から24時間の6群の投与時間を設け, 1回経口投与を行い, 前立腺摘出時の血清内濃度と前立腺組織内濃度をbioassay法により測定した。またprogram MULTIを用い, one compartment modelおよびwell-stirred modelにより, 血清および前立腺組織の濃度推移を薬動力学的に解析した。
    1. 本剤200mg投与2, 4, 6, 8, 12, 24時間後の平均血清内濃度 (μg/ml) は, 0.79, 0.73, 1, 10, 0.90, 0.78, 0.43であった。
    2. 平均前立腺組織内濃度 (μg/g) はそれぞれ0.81, 0.92.1.35, 0.94, 1.15, 0.53であった。
    3. 本剤の前立腺組織/血清濃度 (P/S) 比は1.03より1, 54であった。
    4. One compartment modelにおける本剤の血清中の薬動力学的パラメーターはT1/2 14.1h, Tmax5.6h, Cmax0.96μg/ml, Cmax0.44μg/ml, AUC0-24h 16.76μg・h/mlであった。
    5. Well-stirred modelによる前立腺組織の薬動力学的パラメーターはT1/2 13.6h, Tmax6.7h, Cmax1.14μg/g, C24h0.55μg/g, AUCo-24h 21.36μg・h/gであった。
    以上, 本剤は優れた前立腺組織内移行を示す薬剤と考えられた。
  • 秋山 尚範, 鳥越 利加子, 山田 琢, 阿部 能子, 金本 昭紀子, 下江 敬生, 神崎 寛子, 荒田 次郎
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 145-148
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口用ビリドンカルボン酸系抗菌薬であるsparfloxacinを皮膚科的に検討した。
    1) 皮膚感染病巣より分離した黄色ブドウ球菌に対するsparfloxacin (SPFX), ofloxacin (OFLX), norfloxacin (NFLX) のMICを106cells/mlにて測定した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 28株に対する各薬剤のピークは, SPFXでは0.1μg/ml (7株), 0.2μg/ml (7株) に, OFLXでは3.13μg/ml (10株) に見られたが, NFLXではピークを示さず分散する傾向を示した。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) 82株に対する各薬剤のピークは, SPFXでは0.1μg/ml (42株), OFLXでは0.39μg/ml (52株), NFLXでは0.78μg/ml (38株) に見られた。
    2) ラットにSPFX 20mg/kgを内服させた場合の30分, 1, 2, 4, 6, 12, 24時間後の血清内, 皮膚内濃度は各々1.27, 2.31, 1.49, 0.97, 1.30, 0.21, 0.25μg/ml, 1.25, 2.04, 2.32, 2.35, 2.85.0.69, 0.66μg/g (湿重量) であった。
    3) ヒトにSPFXを200mg内服させた場合の血清に対する皮膚濃度の比は1.44 (N=12) であった。
  • 他ニュー・キノロン5剤との比較において
    川原 和也, 川原 元司, 後藤 俊弘, 大井 好忠
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 149-157
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニュー・キノロン系合成抗菌剤であるsparnoxacin (SPFX) のヒト髄液中移行について検討するとともに, 他ニュー・キノロン5剤と移行性を統計学的に比較検討した。
    腰椎麻酔を必要とした手術症例で中枢神経系 (CNS) の疾患の無い81例を対象とし, SPFX投与後の血清と髄液を採取しその濃度をbioassay法で測定した。
    本剤200mg単回投与後3時間の髄液中濃度は0.155±0.039μg/mlであり, flemxacin (FLRX), ofloxacin (OFLX) に比し低値であるが, enoxacin (ENX), ciprofloxacin (CPFX), norfloxacin (NFLX) よりは高値を示した。Duncanの多重比較検定により, FLRX, OFLXと本剤との髄液中濃度には有意差が認められた (p<0.01)。
    本剤200mgを1日1回, 3日間連続投与した群の髄液中濃度は0.403±0.053μg/mlであった。他ニュー・キノロン5剤との比較では, 単回投与群と同様にFLRX, OFLXの2剤に比し低値であった (p<0.01)。髄液・血清濃度比は本剤が0.346±0.029と最も高値を示したが, 統計上有意差は認められなかった。
    本剤300mgを単回・連続投与して移行性を検討した結果, 髄液中濃度は投与量に依存して高値を示したが, 髄液・血清濃度比は殆ど差を認めなかった。
    本剤200mgを31例に, 300mgを27例に単回投与し, 投与24時間後までの血清中ならびに髄液中での体内動態を薬動力学的に解析した。髄液中濃度は投与後約8時間でピークに達し, その後緩徐に減衰した。
  • 沖本 二郎, 二木 芳人, 角 優, 中川 義久, 副島 林造
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 158-160
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinが血中テオフィリン濃度に影響を及ぼすか否かについて検討を行った。
    対象は健康成人男子6名で, 1日400mg5日間のテオフィリン投与を行い, 次いでsparfloxacin 1日300mgの併用を7日間行った。
    その結果テオフィリンのCmaxは, テオフィリン単独投与時9.63±1.91μg/ml, sparfloxacin併用時9.67±1.14μg/mlで, 両群間に有意差を認めなかった。
    以上よりsparfloxacinは血中テオフィリン濃度に影響を与えないことが示唆された。
  • 堀 誠治, 嶋田 甚五郎, 柴 孝也, 吉田 正樹, 斎藤 篤, 酒井 紀
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 161-166
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年多くのキノロン系抗菌薬が開発され, 臨床の用に供されている。キノロン系抗菌薬はその副作用の一つとして痙撃誘発作用を有することが知られている。さらに, enoxacin (ENX) と非ステロイド系消炎薬の一つであるfenbufenとの併用時に痙攣が誘発されたという報告がある。そこで, sparfloxacin (SPFX) をはじめとする新キノロン系抗菌薬のγ-アミノ酪酸 (GABA) 受容体結合におよぼす影響を, 非ステロイド系消炎薬の存在, 非存在下に検討した。
    SPFXのGABA受容体結合阻害効果は弱いものであり, 非ステロイド系消炎薬の共存によってもその阻害効果は増強されなかった。さらに, fenbufenの活性代謝産物である4-biphenylacemte (5nmol, 絶対量) とともにENXをマウス脳室内に投与すると痙攣が誘発されたが, SPFX (絶対量10nmolまで) では痙攣の誘発を認めなかった。
    以上の結果より, SPFXは非ステロイド系消炎薬の共存下でも痙撃誘発作用の弱い薬剤である可能性が示唆された。
  • 野崎 正勝, 田中 和彦, 武田 憲明, 丹羽 雅之, 河野 健一, 小林 基博, 鶴見 介登
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 167-174
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規に開発された新キノロン (NQ) であるsparfloxacin (SPFx) について, マウスを用い, 単独投与による中枢興奮作用と非ステロイド系抗炎症薬併用による痙攣誘発をfenbufenの活性代謝産物である4-ビフェニル酢酸 (BPAA), ketoprofenあるいはnaproxenにて既存のNQと比較検討し, さらにBPAA共存下におけるGABAA受容体結合阻害作用を試験した。
    Norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), enoxacin (ENX), ciprofloxacin (CPFX), lomefloxacin (LFLX) を腹腔内に急性毒性量と考えられる500~5000mg/kgを投与すると, 発現時間に差はあるものの, 振戦およびミオクローヌスを前駆する間代性痙撃ののち死亡した。SPFX投与では明瞭な痙攣は認められなかったが, 3000mg/kg以上の投与において振戦およびミオクローヌズを呈する個体が認められた。ここでBPAAを併用すると, 試験したNQは投与量に大差はあるが, すべて痙攣を誘発した。しかし, SPFXは極めて大量投与を必要とした。したがって, SPFXは急性毒性も低く, BPAAの影響を受け難いと考えられた。BPAAを併用同時経口投与した場合, BPAA 200mg/kg併用では, LFLXの50mg/kg, ENXの75mg/kg, NFLXの200mg/kg, CPFXの400mg/kgそしてOFLXの1500mg/kg投与で全例に間代性痙攣が出現した。他方, SPFXおよびtosufloxacin (TFLX) では1500mg/kg投与でも痙攣は全く誘発されなかった。しかし, TFLXの1500mg/kgはBPAA 400mg/kg併用にて10%の動物に間代性および強直性痙攣が, そして他の個体にも中枢興奮症状が認められたが, SPFXは全く痙攣は発現させず, また中枢興奮作用も全動物に認められなかった。Ketoprofenあるいはnaproxenの併用でもSPFXは試験した用量では中枢興奮作用, 痙攣誘発ともに全く認あられなかった。ラット脳粗シナプス膜標本に対する3H-muscimolの特異的結合を10μMのBPAA共存の有無にかかわらず, SPFXは有意な阻害を示さなかった。
    以上の成績から, SPFXはNQが持つ固有の活性に起因していると考えられる中枢作用をなお残存しているが, 従来より指摘されるNQの中枢毒性が改良されていることは確実であると考えられた。
  • 飯田 晶敏, 矢寺 成次, 大西 久美雄
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 175-179
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinの急性毒性をマウスおよびラットでは経口, 皮下および腹腔内投与.ビーグル犬では経口投与により検討した。
    マウス, ラットおよびビーグル犬の各投与経路とも投与可能な最大量を投与したが, 死亡動物はみられず, LD50値はマウスおよびラットでは雌雄とも経口投与で5000mg/kg以上, 皮下および腹腔内投与で2000mg/kg以上, ビーグル犬の経口投与では雌雄とも600mg/kg以上と推定された。
    症状観察ではマウス, ラットの経口および腹腔内投与で下痢・軟便あるいは行動減少, 皮下投与で投与部位に痂皮形成などの変化, ビーグル犬の経口投与で元気消失, 嘔吐, 流涎および振顫がみられた。
    体重については, マウスの経口, 皮下および腹腔内投与, ラットの皮下および腹腔内投与でいずれも観察期間の前半に減少がみられた。摂餌量についてはラットにおいて体重の変化と同様に観察期間の前半に抑制がみられた。
    剖検ではマウスおよびラットの皮下投与で投与部位の皮下に被験物質様物を被包化した嚢胞, 腹腔内投与で腹腔内臓器の癒着と腹腔内臓器の漿膜面に被験物質様物を被包化した嚢胞がみられた。
  • 安場 正子, 山添 浩史, 糀谷 高敏, 松岡 信男, 飯田 晶敏, 大西 久美雄
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 180-194
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinを1群雌雄各18例のJcl: SD系ラットに12, 5.50,200,800mg/kgの投与量で4週間にわたり経口投与してその亜急性毒性を検討するとともに, 2週間の回復性試験を行い.毒性の回複性を検討した。
    一般状態の観察では雄の200mg/kg以上の群と雌の800mg/kg群で軟便, 雌雄の800mg/kg群で肛門粘膜における血様物の付着がみられた。体重増加は雄の800mg/kg群で抑制され, 摂餌量は雄の800mg/kg群と雌の200mg/kg以上の群で一過性に減少した。また, 摂水量は雌雄の200mg/kg以上の群で増加した。尿検査では雌雄の800mg/kg群でNa+の減少とNa+/K+比の低下, 雄の800mg/kg群で尿量, 蛋白, C1-の減少がみられた。血液学的検査では雌雄の800mg/kg群で白血球数の増加がみられた。臓器重量では雄の50mg/kg以上の群と雌の200mg/kg以上の群で盲腸の増加がみられた。病理解剖学的検査では雌雄の800mg/kg群で回腸と腸間膜リンパ節の黄色化がみられ, 病理組織学的検査ではそれに対応して大食細胞の集簇がみられた。休薬により, 上述の全ての変化は回復あるいは回復傾向を示した。
    以上の成績より, 本試験におけるsparfloxacinの最大無影響量は50mg/kgと結論される。
  • 飯田 晶敏, 安場 正子, 中島 文博, 前田 敏宏, 松岡 信男, 大西 久美雄
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 195-202
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinの5, 15および45mg/kgを雌雄のビーグル犬に1日1回, 4週間にわたり強制経口投与してその亜急性毒性を検討した。また, 45mg/kg投与の一部の動物については投薬期間終了後2週間の休薬期間を設け, 回復性を検討した (回復性試験)。
    症状観察により軽度の嘔吐が45mg/kg群でみられた。軽度の摂餌量抑制が15, 45mg/kg群でみられた。心電図検査では, Q-T間隔の延長が45mg/kg群でみられた。血液生化学的検査では, 尿素窒素とクレアチニンの増加が15, 45mg/kg群でみられた。病理解剖学的検査により関節軟骨の糜燗が45mg/kg群で少数例にみられた。
    回復性試験では, 上記の変化はすべて回復性を示した。
    以上の結果から, 本試験における無影響量は5mg/kg/日と判断される。また, 15mg/kg/日以上は中毒量と判断されたが, その毒性所見はいずれも回復性を示す変化であった。
  • 齋藤 玲, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 佐藤 清
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 203-212
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    sparfloxacin (SPFX) は新しいピリドンカルボン酸系抗菌剤である。臨床分離の7菌種209株について, 106cells/mlでMICを測定した。MIC90は, Staphylococcus aureus 3. 13μg/ml, Escherichia coli 0.09μg/ml, Klebsiella pneumoniae 0.19μg/ml, Proteus mirabilis 0.19μg/ml, Morganella morganii 0.39μg/ml, Serratia marcescens 25μg/ml, Pseadomonas aeruginosa 1.56μg/ml であった。ほとんどの菌種で同系統のnorfloxacin (NFLX), enoxacin (ENX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), to8ufloxacin (TFLX), lomefloxacin (LFLX) より強い抗菌力を示した。
    健康成人男子6名に, 空腹時に本剤200mgを経口投与し, 血中濃度と尿中排泄をbioassayとHPLCの両測定法で検討した。Tmaxは4.7時間, Cmaxは0.65μg/ml, T1/2は18.2~19.2時間, 尿中排泄率は72時間までで11.4~12.3%であった。
    18例の内科領域感染症の患者 (慢性気管支炎9例, 急性気管支炎5例, 急性扁桃腺炎4例) に, 本剤1日200~300mgを2分割経口投与し, 臨床効果の検討を行った。有効率は94%であった。細菌学的効果は菌検出の15例全例で菌消失をみた。副作用, 臨床検査値異常は認められなかった。本剤の優れた有効性, 安全性が確認された。
  • 大野 勲, 西岡 きよ, 丹野 恭夫, 荻原 央子, 滝島 任
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 213-218
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新たに開発された経口用ピリドンカルボン酸系抗菌剤sparfloxacinを, 6名の呼吸器感染症の患者に使用し, その臨床的有用性を検討した。さらに, 近年当科において気道感染症より分離されたStreptococcus pneumoniae, Branhamella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Pseudomonas aeruginosa に対する本剤の抗菌力を, 従来のピリドンカルボン酸系抗菌剤と比較した。
    二次感染をきたした5名の慢性呼吸器疾患患者 (陳旧性肺結核2例, 慢性肺気腫2例, 気管支拡張症1例) と急性気管支炎1名に, 本剤1回100mg~300mgを1日1~2回, 5~15日間投与した。その結果, 細菌学的効果では, 起炎菌4株 (Branhamella catarrhalis 1株, Staphylococcus aureus 2株, Pseudomonas aeraginosa 1株) 中, 2株 (Branhamella catarrhalis, Staphylococcus aureus 各1株) が消失, 残りは不変であった。また, 臨床効果については症状の改善, 検査所見の変化から, 有効以上と判定された症例は6例中4例であった。
    本剤の上記4菌種に対する抗菌力を. enoxacin (ENX), norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) と比較した。本剤はStreptococcus pneumoniae に対して最も優れた抗菌力を示し, Branhamella catarrhalis, Haemophilus influenzae およびPseudomonas aeruginosa に対して対照薬と同等あるいはそれ以上の抗菌力を示した。
  • 渡辺 彰, 青沼 清一, 北村 直人, 庄司 聡, 菊地 宏明, 徳江 豊, 本田 芳宏, 本宮 雅吉
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 219-226
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新キノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) の臨床分離株に対する抗菌力を ciprofloxacin (CPFX) およびonoxacin (OFLX) と比較検討し, 呼吸器感染症7例で本剤の有用性を検討した。Staphylococcus aureus に対するSPFXの抗菌力はCPFX, OFLXより3段階優れ, Escherichia coliEnterobacter cloacaeに対する抗菌力はCPFXより1段階, OFLXより2段階優れていた。Klebsiea pneumoniae, Serratia marcescensおよびPseudomoas aeruginosaに対するSPFXの抗菌力はCPFXより1段階劣るが, OFLXより2段階優れていた。急性気管支炎1, 慢性気道感染症2, 急性肺炎4の計7例にSPFXを200mg/日 (2例) あるいは300mg1日 (5例), いずれも分2で3~17日間投与した。臨床効果判定可能の6例中著効1, 有効3, 無効2で有効率は66.7%であった。喀痰から3株のHaemophilus influenzaeeを分離し, いずれも本剤の投与により消失を得た。副作用として発疹とGPTの上昇を各1例に認めたが, いずれも投与終了後に正常化した。以上より, SPFXは最も有用な新キノロン系抗菌剤の1つと考えられる。
  • 広瀬 寛, 大石 明, 仲村 秀俊, 勝 正孝, 河合 健
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 227-233
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用ピリドンカルボン酸系抗菌剤であるsparfloxacinに関する基礎的・臨床的検討を行った。基礎的検討では, 当院における臨床分離保存株23菌種を用いて本剤のMICをbioassay法により測定し, 他の抗菌剤と比較検討した。対照薬は, ciprofloxacin, ofloxacin, norfloxacin, enoxacin, cefteram pivoxilであり, Mycoplasma pneumoniaeに対してはerythromycinであった。また臨床的検討では.呼吸器感染症患者を対象として, 本剤の臨床的有効性および安全性を検討した。
    その結果, 本剤はグラム陽性菌 (特にStaphylococcus aureus, methicillin-resistant Stapdylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae) に対して, 比較したピリドンカルボン酸系抗菌剤の中で最も優れた抗菌力を示した。また, グラム陰性菌や嫌気性菌に対しては, 他の薬剤とほぼ同等の抗菌力を示した。
    臨床的検討では, 呼吸器感染症19例を対象として, 本剤1日200~300mg (1日1~2回) を投与した。結果は, 著効1例, 有効12例, やや有効4例, 無効及び判定不能各1例 (有効以上72.2%) であった。副作用は認められず, 臨床検査値異常は2例に好酸球増多, 1例にGOT, GPTの上昇, 1例にGPTの上昇を認めたがいずれも軽度の異常であった。以上より, 本剤は呼吸器感染症に対して安全かつ有用な抗菌剤であると考えられた。
  • 嶋田 甚五郎, 斎藤 篤, 柴 孝也, 北条 敏夫, 加地 正伸, 堀 誠治, 吉田 正樹, 酒井 紀, 今井 健郎, 松本 文夫
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 234-244
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された合成抗菌剤のsparfloxacinについて基礎的ならびに臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1. Sparfloxacinの胃腸管吸収に及ぼす制酸剤 (乾燥水酸化アルミニウムゲル) およびprobenecidの影響を, 6名の健常成人男子志願者を対象にcross-over法により検討した。Sparfloxacin 200mg単独服用時の最高血中濃度は0.865μg/ml, 最高血中濃度到達時間は5.3時間, 血中消失半減期は14.7時間, 血中濃度曲線下面積は21.1μg・h/mlであり.制酸剤1.0g同時併用時では各々0.683μg/ml, 4.0時間, 14.0時間, 13.7μg・h/ml, probenecid 1.5g併用時では各々0.810μg/ml, 3.5時間, 15.7時間, 20.1μg・h/mlであった。制酸剤併用時においてsparfloxacinの吸収阻害が認められたが, その程度は最高血中濃度で22%, 血中濃度曲線下面積で35%の低下であり, 既存のキノロン系抗菌剤と比較して弱かった。
    2. 呼吸器感染症23例, 尿路感染症5例, 乳腺炎1例の計29例に対して, sparfloxacinを1日100~300mg, 3~14日間経口投与した。臨床効果は著効8例, 有効16例, 無効5例で, 有効率82.8%の成績を得た。副作用として眩量+嘔気+心窩部痛, 発熱+好酸球増多を各1例に認めたが投与中止例はなく, かつ治療終了後はいずれも消退した。
  • 中谷 龍王, 坪井 永保, 成井 浩司, 蝶名林 直彦, 中森 祥隆, 中田 紘一郎, 杉 裕子, 谷本 普一
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 245-249
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    9例の気道感染症患者にsparfloxacinを投与し, その臨床効果と安全性を検討した。基礎疾患は気管支拡張症6例およびびまん性汎細気管支炎3例であり, 投与量は1日200mgまたは300mgを1ないし2回に分割して投与した。また, 常時大量の痰を喀出している2症例において, 300mg1日1回投与後の血清および喀痰中濃度を経時的に測定し, 薬動力学的解析を行った。
    臨床効果は評価可能な8例中, 著効2例, 有効5例, やや有効1例で有効率は88%であった。分離菌別の臨床効果はHaemopnilas influenzae 2例は著効, Branhamella catarrhatis 2例は有効, Pseudomonas aeruginosa, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌各1例は有効, Streptococeus pneumoniae 1例はやや有効であった。副作用は無く, 1例に軽度の好酸球増多を認めた。
    300mg 1回投与後のsparfloxacin濃度のピークは2例ともに, 血清と喀痰で同時刻に見られた。喀痰中濃度のピーク値はそれぞれ5.09μg/ml, 3, 55μg/mlであり, 血清中濃度に対する比率は172%, 204%であった。300mgを連続投与した1例の3日目, 9日目の投与直前および4時間後の喀痰中濃度は, 投与前後でそれぞれ平均0.97μg/ml, 4, 68μg/mlであり, 血清中ではそれぞれ平均0.88μg/ml, 3.01μg/mlであった。
    Sparfloxacinの良好な喀痰中移行は, 呼吸器感染症における本剤の高い治療効果を示唆するものであった。
  • 青木 ますみ, 斧 康雄, 野末 則夫, 芳賀 敏昭, 大谷津 功, 宮司 厚子, 宮下 琢, 山口 守道, 西谷 肇, 国井 乙彦, 宮下 ...
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 250-254
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたニューキノロン系抗生物質sparfloxacin (SPFX) の臨床分離株に対する抗菌力をnorflomcin (NFLX), ciprofloxacin (CPFX) と比較し, また呼吸器感染症に対する臨床的有用性について検討した。
    臨床分離株methicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) 10株に対しては全株0.4μg/ml以下で阻止され他の2剤より優れていた。Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 10株についてのMIC90は6.25μg/mlで3剤中最も優れていた。Escherichia coli 10株のMIC90は≦0.1μg/mlで他の2剤より優れていた。Klebsiella pneumoniae 10株に対する抗菌力はCPFXと同等でNFLXよりも優れていた。Pseudomonas aeruginosa 20株ではCPFXより劣りNFLXとほぼ同等であった。Acinetobacter sp. 9株に対してはCPFXと同等以上, NFLXより明らかに優れた抗菌力を示した。
    臨床的には, 気管支炎3例, 肺炎2例, 気管支拡張症の二次感染1例の計6例に本剤を1回150~300mg, 1日1回7~12日間経口投与した。臨床成績は著効1例, 有効3例, やや有効1例で, 細菌感染症の明らかでなかった気管支炎1例は判定不能とした。細菌学的に効果を判定し得たのは2例で, Haemophilus influenzaeの1例は消失, MRSAの1例は残存した。副作用は一過性に軽度の頭痛が1例にみられたが, 減量により消失した。本剤との因果関係は否定できないと思われる。臨床検査値の異常はいずれの症例にも認められなかった。
  • 片平 潤一, 春木 宏介, 柴田 雄介, 長谷川 裕美, 菊池 賢, 戸塚 恭一, 清水 喜八郎
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 255-260
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacin (SPFX) は新しく開発された経口用ピリドンカルボン酸系抗菌剤である。既存の同系薬剤の中でも最も強い抗菌力と幅広い抗菌スペクトルを有し, かなり長い時間血中濃度が維持され, 組織移行性が良いことが本剤の優れた点である。
    (1) In vitroでの本剤のpostantibiotic effect (PAE) は2~4MICで1~2時間接触させた場合, 大腸菌で0.8~2.1時間, 肺炎桿菌で2.2~3.2時間, 緑膿菌で1.9~2.6時間であった。In vivoにおける本剤のeffective regrowth time (ERT) はofloxacin (OFLX), enoxacin (ENX) よりもかなり長かった。白血球減少肺炎桿菌感染モデルにおいては, 2mg/kg1日2回と4mg/kg1日1回投与での生菌数の変化は24時間後でほぼ同等であった。
    (2) 主に呼吸器感染症12例に本剤を投与したところ, 有効率83%で細菌消失率も優れていた。300mg 1日1回投与では150mg 1日2回投与よりも著効率と忍容性で優れていた。
  • 青木 信樹, 薄田 芳丸, 甲田 豊, 高沢 哲也, 若林 伸人, 林 静一, 新田 功, 本間 千鶴子, 渡辺 京子
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 261-271
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    慢性気道感染症例2例と各種腎機能障害患者12例にsparfloxacin 200mgを朝食後30分に経口投与し, 前者で血中・喀痰中濃度, 後者では血中・尿中濃度を測定した。喀痰中濃度のピーク値は各々2.05, 1.28μg/ml, 最高血中濃度がそれぞれ1.42, 1.71μg/mlであり血清から喀痰中への薬剤の移行は144.4%, 74.9%と高いものであった。腎機能障害12例は軽度 (I), 中等度 (II), 高度 (III) の3群に分類した。薬動力学的パラメーターは3群間で大差がみられず, 最高血中濃度は1群7.2, II群5.0, III群4.7時間で得られ, それぞれ1.50, 1.63, 1.54μg/mlでT1/2βも各々17.5, 20.2, 17.3時間, AUCは39.4, 44.7, 39.5μg・h/mlであった。尿中排泄率は72時間までで1群7.86, II群7.15, III群2, 91%と高度障害例で低値を示した。呼吸器感染症34例, 尿路感染症1例に使用し, 有効32, やや有効1, 無効2例, 有効率91.4%の結果を得た。副作用は臨床的には特にみられず, 検査成績上GOT・GPTの上昇, 好酸球増多を各々1例で認めたが軽度のものであった。
  • 佐藤 篤彦, 岡野 昌彦, 千田 金吾, 岩田 政敏, 岡野 博一, 谷口 正実, 白井 敏博, 岸本 肇, 白井 正浩
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 272-279
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) を呼吸器感染症患者に投与し, 経時的な血清中・喀痰中移行およびその臨床的有用性について検討した。
    本剤1回300mg経口投与後の血清中濃度は2~6時間後に0.209~1.97μg/mlのピークを示し, 喀痰中濃度もほぼ同時期に0.219~2.81μg/mlのピークを示した。喀痰中への移行率は63.8~212%と良好であった。
    本剤1日1回300mgを7~15日間経口投与した際の呼吸器感染症27例の臨床効果は著効10例, 有効14例, やや有効2例, 無効1例で有効率は88.9%であった。特に, びまん性汎細気管支炎の有効率は87.5%(著効4例, 有効3例, 無効1例) と良好な成績を示した。
    有意病原細菌 (21株) のうち, 細菌学的効果が判定可能であった19株 (15例) 中Pseudomonas aeruginosa 1株を除きすべてが消失し, その除菌率は94.7%であった。
    臨床的に問題となる副作用ならびに臨床検査値異常は認められなかった。
    以上より, SPFXは良好な喀痰中移行を示すとともに, 1日1回投与で十分な臨床効果が得られ, 安全性にも問題がないことより, 呼吸器感染症に対して有用な薬剤であることが示唆された。
  • 山木 健市, 宮武 博之, 滝 文男, 鈴木 隆二郎, 高木 健三, 佐竹 辰夫, 野田 康信, 権田 秀雄, 鈴木 道生
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 280-285
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacin (SPFX) の気道感染症に対する臨床的検討およびテオフィリンの体内動態におよぼす影響を検討した。
    当病院および関連の病院を受診した気道感染症患者に対してSPFX (300mg/day) を, 同意を得た後, 投与した。咽喉頭炎1症例, 肺炎4症例, 慢性気管支炎の急性増悪4症例および気管支拡張症など慢性気道疾患の感染3症例の計12症例に使用した。臨床効果は12症例で判定し, 著効1, 有効10, やや有効1, 有効率91.7%であった。細菌学的効果は7症例, 9菌株 (Haemopnilus influenzae 5株, Streptococcus pneumoniae 2株, Haemophilus parainfluenzae 1株, Branhamella catarrhalis 1株) で判定し, すべての症例で消失した。副作用および臨床検査値の異常はみられなかった。
    徐放性テオフィリン剤 (400~600mg/day) を長期にわたり服用し, かつ寛解期の, 気管支喘息患者6名に対しSPFX (200mg/day) を服用させ, 前後でテオフィリンの血中濃度の推移と尿中への代謝産物の排泄を検討した。SPFXは, テオフィリンの総クリアランスを若干低下させたが, 統計学的に有意ではなかった。また, 血中濃度も有意な上昇はみられなかった。
    以上より, SPFXは, テオフィリン製剤服用中の, 気道感染症患者の治療にも極めて有用な薬剤であると考えられた。
  • 松浦 徹, 足立 曉, 鈴木 幹三, 山本 俊幸
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 286-291
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新経口用ピリドンカルボン酸系抗菌剤であるsparfloxacin (SPFX) について, 高齢者における基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1) 体内動態: 高齢者3例に, SPFX 150mgを朝食後30分に経口投与した時の最高血中濃度 (Cmax) は平均1.72μg/ml, 血中半減期 (T1/2) は平均26.3時間であり, 本剤投与後72時間までの未変化体の尿中回収率は平均9.7%であった。
    2) 臨床的検討: 高齢者 (平均80.4歳) の呼吸器感染症10例 (肺炎8例, 下気遭感染症2例) にSPFX150mgを1日1回朝食後30分に投与した。臨床効果は, 有効8例, やや有効2例で有効率80%であった。細菌学的効果は, 6例で菌消失し, 2例で菌交代, 2例は不明であった。本剤によると思われる副作用は認められず, 臨床検査値の異常は総ピリルビン値, GPTの軽度上昇が各1例に認められたが投与終了後正常化した。
  • 三木 文雄, 生野 善康, 村田 哲人, 谷澤 伸一, 坂元 一夫, 蛭間 正人, 山岸 広幸, 成子 隆彦
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 292-305
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいキノロン系合成抗菌薬sparfloxacin (SPFX) について, 体内動態と有効性・安全性の検討を実施し, 以下の成績を得た。
    1) 6名の健康成人志願者に, 1日1回300mgのSPFXを朝食後に7日間反復経口投与した場合の平均最高血漿中濃度は, 初回投与後1.15μg/mlを示し, 2回目以後徐々に上昇し, 5回目以後は1.40~1.48μg/mlを示した (いずれも投与4時間後)。2回投与以後の最低血漿中濃度は0.61~0.67μg/mlが維持された。尿中回収率は, 初回投与24時間内に6.03%を示し. 以後徐々に増加して, 6日目以後は9~10%/24時間を維持した。
    2) 慢性気管支炎2例, 感染を伴った気管支拡張症2例, 感染を伴った気管支喘息2例, びまん性汎細気管支炎2例, 細菌性肺炎4例, マイコプラズマ肺炎2例, 器質化肺炎を伴った閉塞性細気管支炎 (BOOP) 1例, 腎盂腎炎1例, 急性単純性膀胱炎1例, 計17例に対して, SPFXを1回50~150mg宛1日2回, または300mg宛1日1回, 6.5~16日間経口投与し, BOOPを除く14例の呼吸器感染症では, 著効1例, 有効10例, やや有効1例, 無効2例, 尿路感染症2例では有効の臨床効果が認められた。Staphylococcus aureus 3株, Streptoeoccus pneumoniae 3株, Enterococcus faecalis 1株, Branhamella catarrhalis 2株, Haemophilus influenzae 5株, Escherichia coli 1株は全て, Pseudomonas aeruginosa 3株中1株がSPFX投与によって除菌された。1例に於てALPの軽度一過性上昇が認められた以外, SPFX投与に伴う自他覚的異常反応, 臨床検査値の異常化は認められなかった。
  • 沖本 二郎, 中浜 力, 岸本 寿男, 木村 雅司, 中川 義久, 二木 芳人, 副島 林造
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 306-312
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系合成抗菌剤であるsparfloxacinについて, 効菌力ならびに呼吸器感染症に対する臨床的検討を行い以下の成績を得た。
    1. SparfloxacinのStreptococcus pneumoniae, Stapdylococcus aureus, Branharnella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Klebsiella pneumonize, Serratia marcescens, Enterobacter cloacae, Acinetobacter calcoaceticus, Escherichia coliに対するMICは, ほとんどの株が, 0.1μg/ml以下に分布しており, いずれもciprofloxacin, ofloxacinやcefteram pivoxilに勝る成績であった。またmethicillin-resistant Stapdylococcus aureusに対してもciprofloxacin, ofloxacin, cefteram pivoxilに勝る抗菌力を有しており, Pseuadomonas aeruginosaに対するMICはofloxacinとほぼ同等であった。
    2. Mycobacterium tuberculosis, Mycobacterium kansasii, Mycobacterium fortuitumに対するMICは0.1~0.5μg/mlにあり, 優れた抗菌力を有していた。
    3. Chlamydia pneumoniae, Chlamydia psittaci, Chlamydia trachomatisに対するMICは0.06μg/mlであり, tosufloxacin, ofloxacinなど既存のニューキノロン剤に勝る成績であった。
    4. 呼吸器感染症10例を対象にsparfloxacinを使用した結果, 臨床効果は著効1例, 有効7例, やや有効1例, 判定不能1例であった。
    副作用は, 発疹, 発熱が2例, 不眠が1例に, 臨床検査値異常は, 好酸球増多, 血小板減少, GOT, LDH上昇などが認められた。
  • 栗村 統, 佐々木 英夫, 福原 弘文, 甲田 徹三, 野崎 公敏, 丸山 泰助, 古居 順, 土井 秀之, 河野 通子, 下中 秋子, 近 ...
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 313-321
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新たに開発されたpyridone carboxylic acid系抗菌剤であるsparfloxacin (SPFX) の抗菌力および臨床効果について検討した。
    抗菌力は国立呉病院に保存されている臨床分離株のなかからグラム陰性菌としてEscherichia coli以下10菌種, 282株, グラム陽性菌としてStaphylococcus aureus以下5菌種, 155株を選び, SPFX, norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) の抗菌力を測定し, 比較検討した。グラム陰性菌に対してSPFXの抗菌力は強く, CPFXとほぼ同等であった。グラム陽性菌に対しては, SPFXの抗菌力が最も強かった。
    臨床効果を肺炎15例, マイコプラズマ肺炎2例, びまん性汎細気管支炎1例, 慢性気管支炎急性増悪2例, 気管支拡張症1例, 急性気管支炎1例について検討した。さらに, Stalmonella hadar保菌者1例にも投与した。肺炎13例, マイコプラズマ肺炎2例, 慢性気管支炎急性増悪1例, 気管支拡張症例, 急性気管支炎例で有効以上の成績が得られた。細菌学的効果としては, Staphylococcus aureus, Haemophilus influenzaeの全株, Haemophilus parainfluenzae, Salmonella hadarは除菌されたが, Pseudomonas aeruginosaは存続した。
    副作用としては悪心, 発疹, 口渇感がそれぞれ1例にみられた。検査値異常は好酸球増加を伴う腎機能異常と貧血の増強がそれぞれ1例にみられた。
  • 松本 行雄, 杉本 勇二, 阪田 拓哉, 寺本 英已, 千酌 浩樹, 山本 光信, 櫃田 豊, 佐々木 孝夫
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 322-327
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口用ピリドンカルボン酸系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) の呼吸器病原菌に対する抗菌力と. 呼吸器感染症に対する臨床的効果ならびに有用性について検討し。下記の結果を得た。
    呼吸器感染症の臨床分離株に対する本剤のMIC90は, Haemophilus injluenzae 0.013μg/ml以下, Streptococcus pneumoniae 0.39μg/ml, Branhamella catarrhalis 0.1μg/ml, Staphylococcus aureus 0.2μg/ml, Pseuadomonas aeruginosa 6.25μg/mlであった。
    呼吸器感染症7例 (気管支拡張症1例, 慢性気管支炎6例) における本剤の臨床効果は著効2例,有効4例, 不明1例で有効率は100%であった。起炎菌が判明した症例は6例でHaemophilus influenzae 3例, Klebsiella pneumoniae 1例, Pseudomonas aeruginosa 1例, Haemophilus influenzaeKlebsiella pneumoniaeの混合感染1例で本剤によりすべて除菌できた。
    副作用は全例に認められず, 本剤は呼吸器感染症に対して有用な薬剤と考えられた。
  • 澤江 義郎, 岡田 薫, 石丸 敏之, 高木 宏治, 下野 信行, 三角 博康, 江口 克彦, 仁保 喜之
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 328-336
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用ピリドンカルボン酸系抗菌薬であるsparfloxacin (SPFX) について基礎的, 臨床的検討を行った。九州大学第一内科入院患者の臨床材料から分離された各種菌株について, SPFXと対照薬としてのgnoxacin (ENX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) の最小発育阻止濃度を測定した。SPFXのMIC90Staphylococcus aureus 0.39, Enterococcus faecalis 0.78, Escherichia coli ≦0.05, Citrobacter freundii 1.56, Klebsiella pneumoniae 0.39, Enterobacter cloacae 0.10, Enterobacter aerogenes 0.78, Serratia marcescens 12.5, Proteus vulgaris 0.39, Proteus mirabilis 3.13, Pseudomonas aeruginosa 100, Acinetobacter calcoaceticus 0.20μg/mlであった。この抗菌力はグラム陽性球菌及びAcinetobacter calcoaceticusでは他の3剤より優れていたものの, Proteus spp.では劣っていた。しかし, その他のグラム陰性桿菌ではCPFXと同等かやや劣るもので, 他の2剤よりも優れるものが多かった。
    肺炎4例, 気管支炎6例 (急性4例, 慢性2例), 気管支炎と膀胱炎の重複例1例 (急性), 咽頭炎3例, リンパ節炎 (疑) 2例, 感染性粉瘤1例, 膀胱炎6例 (急性4例, 慢性2例), 細菌性赤痢2例ののべ26例にSPFXを使用した。症例は20~92歳の男子5例, 女子20例で, 基礁疾患を有するものが多かった。起炎菌の明らかであったものは呼吸器感染症ではHaemophilus influenzae, 尿路感染症ではEscherichia coliが多かった。SPFXを1回50~300mg, 1日1~2回, 2~25日間の使用により, 著効15例, 有効9例, 無効1例, 判定不能1例で, 有効率は96.0%であった。副作用として3例に軟便, 食欲不振, 下痢・頭痛・発汗が認められたほか, 臨床検査値異常として好酸球増加が2例に認められた。
  • 高本 正祇, 北原 義也, 石橋 凡雄, 篠田 厚
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 337-341
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたニューキノロン系合成抗菌剤sparfloxacinを8名の呼吸器感染症の患者に使用し, その臨床的有用性を検討した。さらに, 比較的高齢者における本剤の血中濃度を測定した。
    対象とした呼吸器感染症は26~80歳, 男性4例, 女性4例の計8例である。その内訳は肺炎3例, 慢性気管支炎3例, 気管支拡張症2例であり, 本剤1回200mgを1日1回, 7~28日間服用させた。
    その結果, 臨床効果は著効1例, 有効5例, やや有効1例, 無効1例で有効率は75.0%であうた。起炎菌としてStaphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa各1株が検出されたが, いずれも本剤投与により除菌された。1例にAl-Pの軽度上昇が認められた他は, 本剤によると思われる副作用は認められなかった。
    高齢者における血中濃度については, 66~84歳の慢性呼吸器疾患6例に本剤200mgを食後内服時に経時的に測定した。その結果, Cmaxは0.90±0.25μg/ml, Tmaxは6.0±1.3時間, T1/2は17.8±5.1h, AUC0→∞ は23.6±6.1μg・h/mlであった。
  • 後藤 陽一郎, 一宮 朋来, 山崎 透, 永井 寛之, 重野 秀明, 後藤 純, 田代 隆良, 那須 勝, 宮子 博
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 342-349
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたキノロン系抗菌剤sparfloxacinについて, in vitro抗菌力を測定し.呼吸器感染症に対する臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1. 抗菌力: 臨床材料から分離した27菌種925株 (グラム陽性球菌192株, Branhamella eatarrhalis 26株. 腸内細菌452株, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌232株, Bacteroides fragilis 23株) について, 日本化学療法学会規定の方法により最小発育阻止濃度を測定し, norfloxacin (NFLX), enoxacin (ENX), ofloxacin (OFILX), cipronoxacin (CPFX) の抗菌力と比較した。Sparfloxacinはmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), Streptococcus pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaにも優れた抗菌力をもち.一部の菌種を除き最も強い抗菌力を示した。
    2. 臨床成績: 呼吸器感染症6例を対象に1日量200mgから300mgを1ないし2回に分けて7~10日間投与した。臨床効果は著効1例, 有効3例, やや有効2例と判定された。本剤投与剤よる自, 他覚的副作用および臨床検査値異常は認められなかった。
  • 山田 穂積, 加藤 収, 日浦 研哉, 青木 洋介, 黒木 茂高, 中田 晴雄, 末岡 尚子
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 350-356
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    我々は呼吸器感染症を対象に, 新しい広域スペクトラムのキノロン剤であるsparfloxacinの臨床的検討と喀痰内移行について検討し, 以下の成績を得た。
    1. 呼吸器感染症8例に300mgのsparfloxacinを1日1回投与で連日投与した。7日目の本剤投与後4時間におけるsparfloxacinの喀痰内濃度は2.39±1.26μg/mlであり, 血中濃度は1.81±1.35μg/mlであった。なお, 本剤の喀痰内移行率は1.49±0.45であった。
    2. 薬剤投与前分離菌20株中18株についてsparfloxacinのMIC値を測定した。MIC値はHaemophilus influenzae 9株0.013~0.78μg/ml, Streptococcus pneumoniae 5株0.39~1.56μg/ml, Branhamella catarrhalis 2株0.10μg/ml, Pseudomonas aeruginosa 1株0.78μg/ml, Pasteurella multocida 1株0.39μg/mlであった。また, 本剤投与後に分離されたHaemophilus influenzae 2株のMIC値はそれぞれ0.05→1.56μg/ml, 0.78→3.13μg/mlと感受性の低下が認められた。
    3. 呼吸器感染症24例 (急性気管支炎6例, 肺炎4例, 気管支拡張症7例, びまん性汎細気管支炎4例, 慢性気管支炎3例) に対するsparfloxacinの有効率は91.7%であり, 細菌学的効果は分離菌20株中17株が消失し, 除菌率85%であった。なお, 本剤による重篤な副作用は見られず, 1例に口内炎と舌炎が認められたが, 投薬中止のみで速やかに消失した。
  • 吉富 祐子他
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 357-365
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新キノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) について, 基礎的ならびに臨床的検討を行い, 次の結果を得た。
    1. 抗菌力: 臨床分離株7菌種225株に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 他4薬剤 [ciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX), enoxacin (ENX), norfloxacin (NFLX)] と比較検討した。その結果, 本剤はmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) を含むグラム陽性球菌に対しては, 5薬剤中最も優れた抗菌活性を示し, グラム陰性桿菌に対してもCPFXとほぼ同等で, 他の3剤より良好な成績を示した。また, Mycoplasma pneumoniaeに対してもOFLXより良好な成績であった。
    2. 体液内濃度: 慢性気道感染症患者5例において, 本剤200mgまたは300mg経口投与後の血中及び喀痰中濃度を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) またはbioassay法にて測定した。本剤は, 喀痰中において血清より高い薬剤濃度を示し, 最高血中濃度はMRSAを除く7菌種のMIC90値を上回った。
    3. 臨床的検討: 呼吸器感染症35例に対し本剤を投与し, 臨床効果および副作用について検討した。35例中, 著効8例, 有効22例, やや有効3例, 無効2例で, 有効率は85.7%と良好な成績が示された。副作用は胸やけが1例にみられ, 臨床検査値異常は好酸球増多が3例, GOTおよびGPTの上昇が2例, GPTおよびLDHの上昇が1例, amylaseの上昇が1例に認められた。いずれも軽度の異常で, 本剤の安全性が確認された。
  • 大石 和徳, 松本 慶蔵, 渡辺 貴和雄, 隆杉 正和, 宇都宮 嘉明, 苑田 文成, 永武 毅, 田中 宏史, 山内 壮一郎
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 366-377
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症を場に経口新キノロン系抗菌剤であるsparfloxacinの臨床的有用性について検討した。
    SparfloxacinのMIC90Streptococcus pneumoniae 0.39μg/ml, methicillin-sensitive Staphylococcus aureus 3.13μg/ml, methicillin-resistant Stapdylococcus aureus 12.5μg/ml, Haemophilus influenzae 0.025μg/ml, Branhamella catarrhatis 0.025μg/ml, Klebsiella pneumoniae 0.39μg/ml, PseudoMonas aeruginosa 6.25μg/mlであった。慢性下気道感染症の5例で本剤の体内動態について検討した結果. 1日1回300mg投与時 (n=4) の血中ピーク値は1.50±0.52μg/mlで, 喀痰中ピーク値は1.29±0.37μg/ml, 喀痰中移行率は99±55%であった。1日1回200mg投与時 (n=1) の血中, 喀痰中ピーク値はそれぞれ0.66.1.60μg/mlであり.24時間尿中回収率は4.55%であった。3例における血中半減期は10.8~13.4時間と長かった。
    Sparfloxacinの呼吸器感染症17症例に対する有効率は88.2%と高い成績であった。細菌学的効果では, Pseuadomonas aeruginosa (3株) が除菌できなかったものの, 他のStreptococcus pneumoniae (5株) を含む14株はすべて除菌され, 全体の菌消失率は82.4%と高率であった。副作用は1例もみられず, 安全性が確認された
    好中球減少マウスに惹起した致死的緑膿菌性肺炎においてsparfloxacin (10mg/kg) の1日2回, 3日間の経口投与により100%のマウスが生存した。また. 本実験モデルにおいて, sparfloxacinの5mg/kg経口投与時のマウス血漿中および肺内ピーク値は0.9±0.1, 3.3±0.2μg/mlであり, 血漿中より3.59倍高い肺内移行が認められた。
    以上の検討結果より. sparfloxacinはStreptococcus pneumoniaeを含む細菌性呼吸器感染症に対して, 1日1回の経口投与で高い有効性を期待できる, 優れた新キノロン系抗菌剤と結論する。
  • 伊良部 勇栄, 普久原 浩, 中村 浩明, 兼島 洋, 下地 克佳, 橘川 桂三, 重野 芳輝, 斎藤 厚, 古堅 興子, 仲宗根 勇, 平 ...
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 378-384
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口ニューキノロン系抗菌薬であるsparfloxacinの細菌学的検討と呼吸器感染症に対する臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    1. 基礎的検討
    Sparfloxacin (SPFX) の抗菌力を14菌種309株について.tosufloxacin (TFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) と比較した。SPFXの抗菌力はOFLX, CPFXより優れており, TFLXと同等の成績であった。
    2. 臨床的検討
    呼吸器感染症6例に対して, SPFXの臨床的検討を行った。その内訳は, 細菌性肺炎1例, 慢性気管支炎の急性増悪5例であった。6例における臨床効果は著効1例, 有効5例であり, 全例が有効以上であった。
    細菌学的効果については, 1例が判定可能であり, Haemphilus influenzaeの1株は消失した。
    全症例において副作用はみられなかった。臨床検査値においても有意な変化はみられなかった。
  • 副島 林造他
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 385-404
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) の呼吸器感染症に対する至適用量を検討する目的で, 慢性気遭感染症を対象として二重盲検比較試験を実施した。投与量はsparloxacin 1日量200mg (分1). 300mg (分1) とし, 対照群としてenoxacin (ENX) 600mg (分3) 群を設けた。投与期間は原則として14日間とした。SPFXあるいはENXのいずれを投与するかは封筒法により実施したがsparfloxacin 2用量については二重盲検性が保証されるよう留意した。成績の概略は以下のとおりであった。
    集積症例は148例で, そのうち臨床効果解析対象症例は138例 (200mg群48例, 300mg群48例, ENX群42例), 副作用解析対象症例は146例 (200mg群52例. 300mg群49例, ENX群45例) であった。
    1) 背景因子: 背景因子の分布には3群間に有意な偏りは認められなかった。
    2) 臨床効果: 全症例での有効率は200mg群72.9%, 300mg群72.9%. ENX群71.4%であったが. 慢性気管支炎のみについてみると200mg群69.6%, 300mg群82.8%. ENX群77.8%であった。しかしいずれも3群間に有意差は認められなかった。
    3) 細菌学的効果: 全症例では200mg群85, 7%, 300mg群79.2%, ENX群6a7%の菌消失率で3群間に有意差は認められなかった。
    4) 安全性: 副作用は200mg群で4例7.7%, 300mg群で6例12.2%, ENX群で5例11.1%に, また, 臨床検査値の異常変動は200mg群で6例13.0%, 300mg群で5例10.6%, ENX群で5例11.9%の発現率であったが, いずれも3群間に有意差は認められなかった。
    5) 有用性: 全症例での有用率は200mg群68.2%, 300mg群69.6%, ENX群70.0%であり, 3群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績から, sparfloxacin 1日200mg (分1) と300mg (分1) およびENX600mg (分3) 投与では有効性ならびに安全性ともにほぼ同程度であることが示されたが, 慢性気管支炎に限定した場合sparfloxacin 300mg群の有効率が最も優れていた。したがって, 慢性気管支炎など難治性要素の強い慢性気道感染症に対してはsparfloxacin 1日300mg (分1) が適当と考えられた。
  • 副島 林造他
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 405-428
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacin (SPFX) の慢性気道感染症に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に評価する目的でofloxacin (OFLX) を対照薬とした二重盲検群間比較試験を実施した。用法用量はSPFXでは1日1回300mg, OFLXでは1回200mgを1日3回, 原則として14日間経口投与し, 以下の成績を得た。
    1) 総投与症例数は185例 (SPFX群97例, OFLX群88例) であり, 小委員会判定により有効性評価対象として採用された症例数は157例 (SPFX群84例, OFLX群73例), 副作用評価対象症例数は174例 (SPFX群94例, OFLX群80例), 臨床検査値評価対象症例数は162例 (SPFX群87例, OFLX群75例), 有用性評価対象症例数は163例 (SPFX群86例, OFLX群77例) であった。除外・脱落症例の割合および有効性評価対象疾患の患者背景因子には本試験前化学療法の有無別症例分布を除いて, 両薬剤群間に有意な偏りは認められなかった。
    2) 小委員会判定による有効串はSPFX群で82.1%(69/84), OFLX群で83.6%(61/73), 主治医判定の有効率はそれぞれ76.2%(64/84) と79.5%(58/73) であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    3) 細菌学的効果はSPFX群で84.2%(32/38), OFLX群で77.4%(24/31) であり, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    4) 副作用発現率はSPFX群で13.8%(13/94), OFLX群で15.0%(12/80), 臨床検査値の異常発現率はそれぞれ13.8%(12/87) と16.0%(12/75) であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    5) 小委員会判定による有用率はSPFX群で70.9%(61/86), OFLX群で77.9%(60/77), 主治医判定の有用率はそれぞれ70.9%(61/86) と72.7%(56/77) であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績より, SPFX1日300mg投与はOFLX 1回200mg1日3回投与と同様に慢性気道感染症に対して有用な薬剤であることが確認された。
  • 副島 林造他
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 429-453
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌剤sparfloxacin (SPFX) の細菌性肺炎に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に評価する目的でofloxacin (OFLX) を対照薬とする二重盲検比較試験を実施した。用法用量はSPFXは1日1回300mg, OFLXは1回200mgを1日3回, 原則として14日間経口投与し, 以下の成績を得た。
    1) 総投与症例数は173例 (SPFX群86例. OFLX群87例) であり, 小委員会判定により有効性評価対象として採用された症例数は149例 (SPFX群72例, OFLX群77例), 副作用評価対象症例数は164例 (SPFX群82例, OFLX群82例), 臨床検査値評価対象症例数 J 160例 (SPFX群78例, OFLX群82例), 有用性評価対象症例数は150例 (SPFX群72例, OFLX群78例) であった。両薬剤群間の除外・脱落症例の割合および有効性評価対象疾患の感染症重症度以外の患者背景因子には有意差は認められなかった。対象疾患の重症度分布においてSPFX群に中等症例が.OFLX群に軽症例が多く両群間に有意差がみられた。
    2) 小委員会判定による有効率はSPFX群93.1%(67/72), OFLX群90.9%(70/77) であり. 主治医判定ではそれぞれ93.1%(67/72) と92.2%(71/77) であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    3) 細菌学的効果はSPFX群100%(22/22), OFLX群96.6%(28/29) であり, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    4) 副作用発現率はSPFX群6.1%(5/82), OFLX群6.1%(5/82), 臨床検査値異常の発現率はそれぞれ19.2%(15/78) と19.5%(16/82) であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    5) 小委員会判定による有用率はSPFX群90, 3%(65/72), OFLX群88.5%(69/78), 主治医判定ではそれぞれ88.9%(64/72) と87.2%(68/78) であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績より, SPFX1日1回300mg投与はOFLX1回200mg1日3回投与と同様に細菌性肺炎に対して有用な薬剤であることが確認された。
  • 今川 八束他
    1991 年 39 巻 Supplement4 号 p. 454-465
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    細菌性赤痢を主とする急性感染性腸炎患者および保菌者に対するsparfloxacin (SPFX) の有効性, 安全性及び有用性を評価した。投与量は1日1回200mgで, 投与期間はサルモネラ腸炎では7日間, その他の感染性腸炎では5日間とした。
    投与総例数は108例であった。この内, 投与前には起炎菌が検出されていたにも拘らず本剤投与時には菌陰性となっていた細菌性赤痢23例及びサルモネラ腸炎2例と, 直前にenoxacinが投与されていたサルモネラ腸炎1例の計26例を除いた82例について有効性および有用性を評価した。
    対症状効果は解析対象43例全例が有効以上であり, 有効率は100%であった。細菌学的効果は, Shigella 43株では40株93.0%が有効以上で, Salmonella 15株では86.7%であった。Campylobaeter 7株, Vibrio parahaemolyticus 2株, enteropathogenic Escherichia coli 2株, Aeromonas dydrophila 1株Plesiomonas shigelloides 1株はすべて有効以上であった。
    総合効果では, 単独菌感染例の細菌性赤痢43例では93.0%, サルモネラ腸炎17例では88.2%の有効率であった。また, カンピロバクター腸炎5例, 病原大腸菌性腸炎2例は共に全例有効以上であった。Shigellaとの混合感染例6例も全例著効であった。また, 菌陰性の急性大腸炎9例も全例有効以上であった。
    副作用は1例に発疹, 1例に悪心・腹部膨満感および心窩部痛が見られたが, いずれも軽度であった。臨床検査値異常変動は92例中9例にみられ, その内訳は血清アミラーゼ上昇, GOT・GPT上昇, LDH上昇, 好酸球数増加及び白血球数減少であった。
    SPFXのMIC90値は, Shigellaでは0.5μg/ml, Salmenellaでは0.1μg/mlであり, ciprofloxacinとほぼ同程度の感受性を示したが, enoxacin, ofloxacin, norfloxacin, pipemidic acidおよびnalidixic acid (NA) よりは優れていた。Campbltobacterに対しては最も優れた感受性を示した。
    Shigella 43株中にNA高度耐性菌 (>100μg/ml) が7株認められ, SPFX無効症例3例はすべてこの株による感染例であった。
feedback
Top