CHEMOTHERAPY
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40 巻, 9 号
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  • 吉田 博明
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1097-1105
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    キノロン薬のジャイレース阻害作用機作を解明するために, DNAジャイレースのキノロン耐性変異部位を明らかにし, 各種ジャイレース蛋白を精製して, ジャイレース活性およびジャイレース-DNA複合体とエノキサシンとの結合を調べた。大腸菌KL16株由来キノロン耐性gyzA変異株 (10株) のgyrA遺伝子上の点変異は耐性度の高いものから順に, Ser-83→Leu (4株), Ser→83→Trp, Asp-87→Asn, Gly-81→Cys, Ala-84→Pro, Ala-67→SerおよびGln-106→Hisであった。これらの変異部位はGyrA蛋白のN末端付近に局在し, DNAとの共有結合部位Tyr-122に近かった。KL16株由来キノロン耐性gyrB変異株 (13株) は, 耐性パターンから2つのタイプに分類された。第1タイプは調べたすべてのキノロンに耐性を示し, Asp-426→Asn (9株) の変異であった。第2タイプは酸性キノロンには耐性であるが両性キノロンには高感受性を示し, Lys-447→Glu (4株) の変異を有していた。gyrA, gyrBいずれの変異もコードする蛋白の表層構造の変化を惹起すると推定された。野生型および変異型GyrA, GyrB蛋白の大腸菌大量発現系を構築し, 精製した蛋白から再構成したジャイレースのスーパーコイリング活性を調べたところ, GyrA変異ジャイレース (ALe-83+Bwlld-type) および第1タイプGyrB変異ジャイレース (Awlld-type+BAsn-426) は調べたすべてのキノロンに耐性を示したのに対し, 第2タイプGyrB変異ジャイレース (Awlld-type+BGlu-447) は酸性キノロンには耐性を示したが, 両性キノロンには高感受性を示した。各ジャイレースのキノロン感受性は対応する変異株のキノロン感受性とよく相関していた。ジャイレース-DNA複合体と3H-エノキサシンとの結合をゲル濾過法により測定したところ, GyrA変異ジャイレースでは野生株に比べ結合量は変わらないが結合親和性は約1/10に低下し, 第1タイプGyrB変異ジャイレースでは結合量は約1/7に低下し, 第2タイプGyrB変異ジャイレースでは結合量はほとんど変わらないが結合親和性は約5倍高くなっていた。この結果は各ジャイレースの感受性の変化を矛盾なく説明している。キノロンはジャイレース-DNA複合体への結合によりジャイレース活性を阻害し, キノロンの結合量および結合親和性はGyrAおよびGyrB蛋白により支配されていると考えられる。
  • 杉田 久美子, 三村 嘉寿男, 田吹 和雄, 西村 忠史
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1106-1113
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌に対するペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン感受性の推移を調べ, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) の実態を把握するため1976年より1991年3月までに分離された黄色ブドウ球菌983株の検討を行った。ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン耐性は年次的に増加し, 1990年より1991年ではmethicillin (DMPPC), oxacillin (MPIPC) の80%最小発育阻止濃度 (MIC80) はともに100μg/ml以上で, cloxacillin (MCIPC), dicloxacillin (MDIPC) のMIC80はそれぞれ50μg/ml, 25μg/mlであった。またMRSAの分離頻度は1976年から1980年では1.2%であったが, 1990年から1991年3月では43.9%となりβ-lactam剤を含む多くの薬剤での耐性株が急速に増加していた。MIC80が12.5μg/ml以下であったのはamikacin (AMK), minocycline (MINO), vancomycin (VCM) のみであったが, MINOの耐性株も増加傾向にあった。MRSAのコアグラーゼ型では1976年から1988年ではIV型が50.7%, II型が16.4%であったが, 1989年から1991年3月ではII型が増加し46.3%, IV型は23.9%となっていた。
  • 浅田 高広
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1114-1121
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗生物質であるlatamoxef (LMOX), aztreonam (AZT) (終濃度500, 1.000, 3,000μg/ml) と感染症や炎症時に増加する急性期蛋白の一種であるC-reactive protein (CRP) (終濃度0.5, 5.0mg/dl) のヒト血管内皮細胞におよぼす影響を, 内皮細胞のprostacyclin (PGI2) 産生量およびcyclic AMP (cAMP) 濃度, 細胞内遊離Ca2+今濃度 ([Ca2+] i) を測定することにより検討した。内皮細胞はヒト臍帯静脈より分離培養し, confluentを形成したものを用いた。PGI2産生量は培養上清液からその安定代謝産物の6Keto-PGF1aとしてradioimmunoassay (RIA) 法にて測定し, LMOX, AZTの存在下ではcontrolと比較して有意な変化はなかったが, CRP5.0mg/dlの存在下で有意に増加した。cAMP濃度も培養上清液を用いてRIA法にて測定したが, LMOX, AZT, CRPのいずれも影響をおよぼさなかった。[Ca2+] iは内皮細胞浮遊液にCa2+感受性蛍光色素であるfura2/AMを加えてhistamineで刺激して蛍光測定した。LMOX, AZTの存在下では [Ca2+] iはcontrolと比較して有意な変化はなかったが, CRP5.0mg/dlの存在下ではhistamineで刺激する前後とも有意に増加し, 刺激前後での [Ca2+] i差も有意に増加した。また, 内皮細胞浮遊液をCa2+freeとした場合のCRP5.0mg/dl存在下による [Ca2+] iは, histamineの刺激前後ともcontrolと差は認められず, histamineの代わりにCRP5.0mg/dlによる直接刺激ではCa2+存在下で [Ca2+] iは増加したが, Ca2+ free solutionの状態では増加しなかった。このことからCRPが内皮細胞の [Ca2+] iを増加させるには細胞外Ca2+が必須であると考えられた。以上の結果から, LMOX, AZTは血管内皮細胞のPGI2産生には影響をおよぼさないが, CRPはcAMP濃度を減少させることなく細胞外のCa2+の細胞内への流入, あるいはこれに伴う細胞内Ca2+壱貯蔵部位からのCa2+の遊離により内皮細胞の [Ca2+] iを増加させてPGI2の生産を促進すると考えられた。
  • 宍戸 春美, 永井 英明, 三宅 修司, 内田 和仁, 吉良 枝郎, 松井 泰夫, 折津 愈, 秋山 修, 宮原 隆成, 石川 智久
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1122-1127
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    塩化リゾチームの慢性呼吸器感染症患者における喀痰中への抗菌薬移行を高める効果を臨床薬理学的に検討した。Cefuzonam (CZON) 単独投与時の喀痰中CZON濃度平均値とCZON+塩化リゾチーム併用時の喀痰中CZON濃度平均値について, t-検定を行った結果, 7例中2例において統計学的有意差が認められ, この2例を含む6例で塩化リゾチムの併用によりCZON点滴静注後の喀痰中CZON濃度が上昇した。また, 7例全体の平均値について2元配置分散分析を行った結果では, CZON単独投与に比較して, CZON+塩化リゾチーム併用投与では, 統計学的有意にCZONの喀痰中濃度が上昇した。今回のCZONと併用した塩化リゾチームの臨床薬理学的検討と文献的考察から, 呼吸器感染症において, 抗菌薬と塩化リゾチームの併用は臨床的に有用であると結論される。
  • 吸収・排泄におよぼす制酸剤, プロベネシドの影響
    柴 孝也, 吉田 正樹, 酒井 紀
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1128-1140
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Y-26611経口使用時の体内動態におよぼす制酸剤 (乾燥水酸化アルミニウムゲル) および腎排泄機序を知る目的でprobenecidの影響を, 6名の健康成人男子志願者を対象に検討した。Y-26611200mg単独使用時の最高血漿中濃度は1.090μg/ml, 最高血漿中濃度到達時間は1.1時間, 血漿中消失半減期は5.1時間, 血漿中濃度曲線下面積は3, 821μg・h/mlであった。制酸剤1.0g併用時ではそれぞれ0.082μg/ml, 1.8時間, 5.9時間, 0.629μg・h/ml, probenecid 1.5g併用時ではそれぞれ1.090μg/ml, 1.7時間, 4.4時間, 7, 033μg・h/mlであった。内服24時間後までの尿中回収率は単独使用時, 制酸剤およびprobenecid併用時において, それぞれ40.8%, 5.3%および22.5%であった。内服後2時間以降の唾液中濃度はいずれの使用方法においても, 血漿中濃度の1/10の値を示した。制酸剤併用時においてY-26611は制酸剤の影響をうけ, 最高血漿中濃度で92.5%, 血漿中濃度曲線下面積で83.5%低下し, 吸収低下が認められた。Probenecid併用時のY-26611体内動態の変化から, 腎排泄機序として尿細管分泌の関与が示唆された。
  • 各種抗潰瘍剤の影響
    嶋田 甚五郎, 堀 誠治
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1141-1147
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Norfloxacin (NFLX) の吸収におよぼすaluminumを含有する制酸剤 (乾燥水酸化アルミニウムゲル), 防御系抗潰瘍剤 (troxipide), H2受容体拮抗剤 (famotidine) の影響を健常成人6名を用いて検討した。NFLX200mg空腹時投与に比較し, 乾燥水酸化アルミニウムゲル同時併用した場合, 最高血中濃度, AUC, 尿中回収率が有意に低下した。Troxipideを併用した場合, 吸収阻害はみられなかった。FamotidineをNFLX投与8時間前に前投与した場合, 最高血中濃度が有意に低下したが, AUC, 尿中回収率には有意な低下は認められなかった。以上の結果よりNFLXの適正使用には制酸剤, 抗潰瘍剤の併用に際しては臨床的に投与法を十分に配慮すべきであることが明らかにされた。
  • 室木 俊美, 斎木 康正, 岡部 孝一, 山本 悦秀
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1148-1155
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    歯性上顎洞炎患者6名と術後性上顎嚢胞患者28名の膿汁からの検出菌およびcefuzonam (以下CZONと略) 投与後の組織内濃度の検討を行い, 以下の結果を得た。対象とした上顎洞はすべて1側性であり34名34洞である。
    1) CZON 1gを静脈注射の後, 組織内移行濃度測定のため上顎洞粘膜および上顎嚢胞を摘出した。組織は1時間後, 血中濃度は30分, 1時間後にそれぞれを0.5~1g, 3ml採取した。その結果, 上顎洞粘膜は8.4±3.2μg/g, 上顎嚢胞壁組織は12.0±8.1μg/gで30分値の血中濃度は30.2±11.0μg/g, 1時間値で14.3±9.0μg/gであった。one compartment open modelより求めた薬動力学的パラメーターは, Cmax: 54.2μg/g, T (1/2): 30分, AUC: 40.2μg・h/mlで, 血中に比べ組織への移行が良好と思われた。
    2) 細菌学的検討では, 分離菌として歯性上顎洞炎から12株, 術後性上顎嚢胞からは30株が分離され高頻度分離菌はStreptococcusPeptostreptococcusでありOral streptococcusが中心であった。総菌数42株のうち30株についてCZONに対するMICを測定した。その結果は0.05~0.2μg/mlおよび0.025~0.05μg/mlであり, 耐性菌は1株もなくきわめて感受性が高かった。
    3) 両疾患における菌種別では, 好気性菌63% (26株), 嫌気性菌37% (16株) であった。
    4) 歯性上顎洞炎, 術後性上顎嚢胞において, 特に検出菌の差はなかった。
  • 影山 慎一, 片山 直之, 塚田 哲也, 和田 英夫, 西川 政勝, 小林 透, 南 信行, 出口 克己, 白川 茂
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1156-1161
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    血液疾患33例に合併した45回の真菌感染症エピソード (深在性真菌症6回, 真菌症疑い39回) に対しfluconazole (FLCZ) の投与を行い, その臨床的検討を行った。 深在性真菌症はCandida albicans肺炎3例, Candida parapsilosis肺炎1例, Aspergillus fumigatus肺炎1例, Aspergillus niger腎膿瘍1例であった。 真菌症疑いは真菌血症疑いが32例, 肺炎が7例であった。臨床効果はC. albicans肺炎, C. parapsilosis肺炎の4例は全例有効以上で, A. fumigatus肺炎1例は無効, A. niger腎膿瘍1例はやや有効であり, 真菌症確定例の有効率は66.7%であった。真菌症疑い例では, 真菌血症疑いは62.5% (20例/32例), 肺炎では57.1% (4例/7例) の有効率であった。副作用は肝機能異常と皮疹の2例 (4.4%) でいずれも一過性であった。 以上よりFLCZはCandida感染症にきわめて有効であり, また安全性も高く, 血液疾患に合併する深在性真菌症に対する治療として有用であった。 またAspergillus感染症に対する臨床効果はさらに検討すべきと考えられた。
  • 渡辺 彰
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1162-1168
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    我が国の呼吸器感染症における抗菌性薬剤のbreak pointを検討する目的で, 最近の治験薬剤32剤が投与された呼吸器感染症例の中で起炎菌が判明し, 臨床効果と細菌学的効果の判定可能な1, 372例を対象に解析を加えた。肺炎や気管支炎等の急性型よりも, 慢性気管支炎や気管支拡張症等の慢性型の方がbreakpointを見出しやすかった。β-ラクタム系薬剤ではsusceptible break pointからresistant breakpointへの移行領域が狭いため, break pointを見出し易いが, 新キノロン系薬剤では移行領域が広くやや見出しにくかった。抗菌性薬剤の喀痰内濃度は呼吸器感染症におけるbreak pointを規定する最大の要因と考えられた。今回の成績は米国NCCLSの規準にきわめて近似していたが, 精密なbreak pointを設定するためには我が国の成績はいまだ少なく, 今後さらに症例を集積することが必要である。
  • 古賀 宏延, 吉富 祐子, 河野 茂, 賀来 満夫, 原 耕平
    1992 年 40 巻 9 号 p. 1169-1176
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    最近の10年間に経験した194例の細菌性肺炎症例に関して, 10種類の経口抗菌剤の臨床試験の成績をもとに, 臨床効果に影響をおよぼした種々の要因についての解析を行い, 次の結果を得た。臨床効果に影響を与えた治療前の要因として, 年齢, 体重, 基礎疾患の重症度, 喀痰の性状, 胸部ラ音の強さ, 肺炎スコアー, 血沈値, CRP, 起炎菌の種類が重要であった。この中で外来診察時に迅速な評価が可能なものとして, 年齢, 体重, 基礎疾患, 喀痰性状, ラ音, 肺炎スコアーの6項目を選択し, 各項目を点数化して肺炎の重症度を算出した。その結果, 8点以上の症例では有効率が有意に低下し, 経口抗菌剤では無効の症例が多くみられた。またその時の予測臨床効果と実際の予後との的中率は88%であり, 本方式が経口抗菌剤の適応基準として有用であることが示唆された。
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