CHEMOTHERAPY
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41 巻, 12 号
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  • 長岐 為一郎, 森田 健, 田口 邦夫, 田村 忍, 富田 晃代, 伊藤 香織, 荻野 久美子, 福田 一郎
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1255-1261
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    MRSAと緑膿菌の混合感染におけるvancomycin (VCM) とceftazidime (CAZ) の併用治療効果をin vitroおよびin vivoの両面から検討した。In vitroではchecker board法によりFIC indexを求めた。その結果, 両剤の併用では拮抗作用は認められず, いずれの場合にも相加効果が認められた。In vivoでは腹腔内感染マウスに対する治療効果を検討した。全マウスが死亡する量のMRSAと少量の緑膿菌を混合感染させ, VCM単独で治療した場合にMRSAから緑膿菌への菌交代現象が観察された。この菌交代モデルに対する併用治療効果を検討した結果, 緑膿菌NG91003株では単独感染におけるCAZのED50が0.07mg/mouseであったのに対し, 混合感染において0.3mg/mouseのVCMと併用した場合にそのED50は0.02mg/mouselこ低下した。緑膿菌NG91012株では単独感染に対するCAZ単独のED50と, 混合感染に対して同量のVCMと併用した時のED50にほとんど差はなくそれぞれ0.04および0.05mg/mouseであった。また, 菌交代モデルにおける血中菌数の推移も測定したが, VCMあるいはCAZの単独治療ではそれぞれ緑膿菌あるいはMRSAの増殖が確認され, 両剤の併用ではMRSAおよび緑膿菌ともに減少または消失した。以上のように, MRSAと緑膿菌の混合感染に対してVCMとCAZの併用はin vitroおよびin vivoにおいて相加効果が認められ, 臨床で頻繁に認められるこの混合感染に対して有効な併用療法の1つであると考えられた。
  • 荒木 春美, 大懸 直子, 南 新三郎, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 萩野 茂, 広野 禎介
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1262-1267
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Penicillinaseを構成的に産生するEscherichia coil TK-3, Klebsiella pneumoniae Y-4, oxyiminocephalosporinaseを誘導的に産生するProteus vulgaris T-178, cephalosporinase (CEPase) を構成的に産生するPmdomoms aeruginosa GN918, およびCEPaseを誘導的に産生するEnterobacter cloacae H-27を培養し, その菌体内・外β-lactamase活性を調べた。構成型β-lactamase産生菌3株では, 培養1日後に菌体外β-lactarnase活性は菌体内活性の15~26%, 2日後に30~56%を示した。一方, 誘導型β-lactamase産生菌2株では, 薬剤無添加時の菌体外β-lactamase活性は低値 (≦1mU/ml)であったが, インデューサーとしてcefmetazoleを作用させた時には菌体内・外の活性は上昇し, 菌体外活性は培養2日後に菌体内活性の36~229%まで上昇した。これら5株由来のβ-lactamaseのヒト各種体液 (血清・尿・胆汁.腹水.胸水) 中安定性を検討した結果, いずれのβ-lactamaseも胆汁中において速やかに失活したが, 他の体液中においては安定で8日後でも60%以上の活性が残存していた。
  • 三鴨 廣繁, 和泉 孝治, 伊藤 邦彦, 玉舎 輝彦
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1268-1271
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefodizime (CDZM) の産褥期における乳汁移行を検討した。産褥期における授乳婦で, 乳汁分泌が良好な26例中の13例にCDZM 1gを, 残りの13例にCDZM 2gをそれぞれ静注投与した。CDZMの乳汁中濃度を測定し, シミュレーションカーブから, 以下の結果を得た。CDZMの乳汁中濃度は, 1g投与群, 2g投与群で, それぞれ2.94時間, 2.83時間にピークを持ち, 以後ゆるやかに漸減した。乳汁中濃度のピーク値は, 1g投与群では0.41μg/ml, 2g投与群では1.08μg/mlであった。以上より, CDZMの乳汁中への移行は他の同系統の薬剤に比してきわめて良好であった。
  • 森田 昌良, 鈴木 麒一
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1272-1276
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症にて経尿道的前立腺切除術 (Transurethral resection of the prostate: TURP) を受けた180症例 (51~87歳, 70.6±7.7) において, ニューキノロン剤 (NQLs) であるnorfloxacin, ofloxacin (OFLX), enoxacin (ENX), ciprofloxacin (CPFX) およびlomenoxacin (LFLX) のいずれかをTUR-P施行前に1回200mg 1日3回3日間経口投与し, 最終投与後5.5時間目もしくは約17時間目のNQLsの血中濃度と年齢および腎機能 (24時間クレアチニンクリアランス: CCT) との関係を検討した。その結果。腎機能は加齢と共に低下する。これに反して, NQLsの血中濃度は, 加齢と共に上昇すると考えられた。検討した5剤のうちでも, 尿中排泄率が高いOFLXとLFLXおよびENXにおいて, この傾向が顕著であった。高齢者にこれら3剤を投与するに当たっては, 副作用の発現予防のために血中濃度のモニタリングや投与量の注意深い補正が必要と考えられる。
  • 中島 光好, 植松 俊彦, 吉長 孝二, 末吉 俊幸, 菊地 康博, 平林 隆, 和田 徹, 杉田 修
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1277-1292
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規ペネム系経口抗生物質SY5555の臨床第I相試験として, 健常成人男子24名を対象に, 単回投与試験 (空腹時150mg, 空腹時・食後300mg, 空腹時600mg) および反復投与試験 (1回400mg1日3回7日間) を実施し, その忍容性ならびに体内動態について検討した。
    1.安全性
    1) 単回投与においては, 600mg投与の1例でGPTの軽度上昇を認めたが, それ以外は臨床症状, 理学的所見および臨床検査所見のいずれにおいても異常を認めなかった。
    2) 反復投与では, 投与期間中に全例で便の性状変化を認めた。その内訳は軟便傾向1例, 軟便3例および泥状便2例であったが, いずれも投与終了時には回復していた。また, 1例で好酸球比の上昇を認めた。その他の臨床症状, 理学的所見および臨床検査所見には異常を認めなかった。
    2. 体内動態
    1) 空腹時150, 300, 600mg単回投与の体内動態では, 最高血漿中濃度に到達するまでの時間 (Tmax) は1~1.4時間, 最高血漿中濃度 Cmaxは各々2.36, 6.24, 7.37μg/ml, 血漿中濃度一時間曲線下面積 (AUC) は各々3.95, 11.73, 19.59μgh/ml, 半減期 (T1/2) は約0.9時間であり, CmaxとAUCには用量依存性が認められた。また, 投与後24時間までの未変化体の累積尿中排泄率は3.12, 6.78, 5.26%であった。
    2) 食後300mgの単回投与では, 空腹時投与に比較してTmaxが約1時間遅延したが, Cmax AUCならびに投与後24時間までの未変化体の累積尿中排泄率には差を認めなかった。
    3) 反復投与における1, 4, 7日目 (1, 10, 19回目) 投与後のCmaxは各々5.51, 425, 4.83μg/ml, AUCは12.54, 10.11, 12.19μg・h/mlであり, 蓄積性は認めなかった。
    3. 腸内細菌叢におよぼす影響
    反復投与時の腸内細菌叢におよぼす影響の検討では嫌気性菌が減少したが, 投与終了6日目には投与前の菌数に回復した。
  • 中島 光好, 大西 明弘, 吉長 孝二, 大村 和伸, 菊地 康博
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1293-1299
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    さきに行ったペネム系抗生物質SY 5555の第I相臨床試験の結果400mg1日3回食後経口投与において6名全例に軟便など便性状の変化を認めたため, 今回その半量の1回200mg1日3回7日間19回経口投与試験を, 健常成人男子6名を対象に実施し, その体内動態および忍容性について検討した。6例中1例で便性状の変化を認めたが, その他の自他覚症状, 理学的所見および臨床検査所見では問題を認めなかった。腸内細菌叢は嫌気性菌の減少が全例で認められたが, 投与後7日目には投与前の菌数に回復していた。体内動態は投与1, 10および19回目のCmaxが各々1.90, 2.02および1.89μg/mlで, 未変化体の累積尿中排泄率は3.81~4.49%を示しており, 体内蓄積傾向は認められなかった。
  • Piperacillin, aztreonam 2剤併用とamikacinを加えた3剤併用療法の比較
    吉田 稔, 鈴木 俊之, 倉田 寛一, 角田 純一, 室井 一男, 畠 清彦, 坂本 忍, 三浦 恭定
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1300-1304
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    血液疾患に合併した感染症42例に対する経験主義的抗生物質療法 (empiric therapy) としてpiperacillin/aztreonam療法 (PA群) とpiperacillin/aztreonam/amikacin療法 (PAA群) を無作為封筒法によって比較検討した。性別は男性23例, 女性19例, 年齢は17歳から84歳に分布し, その中央値は56歳。基礎疾患は急性骨髄性白血病23例, 急性リンパ性白血病3例, 非ホジキンリンパ腫8例, 骨髄異型性症候群1例, 多発性骨髄腫3例, 再生不良性貧血2例, その他2例である。全体での有効率は54.8%(23/42) であり, 感染症別の内訳は敗血症2/4, 敗血症の疑い14/26, 急性上気道炎4/5, 肺炎2/4, その他1/3であった。治療法別の有効率はPA群55.0%(11/20), PAA群は54.5%(12/22) で両者の間に差はなかった。発症時の顆粒球数が500/μl以下の症例での有効率はPA群が72.7%(8/11), PAA群が46.7%(7/15) で, 全体では57.7%(15/26) であった。副作用は両群とも特に重篤なものは観察されなかった。PA群は血液疾患に伴う細菌感染症として頻度の高いブドウ球菌と緑膿菌をその有効菌種としてカバーしており, empiric therapyとしてamikacinをさらに加える意義は認められなかった。
  • 河田 幸道他
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1305-1324
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口セフェム剤S-1108の。複雑性尿路感染症に対する有用性を客観的に評価する目的で, cefteram pivoxil (CFTM-PI) を射照薬とした二重盲検比較試験を行った。S-1108, CFTM。PIとも1回100mgを1日3回, 7日間投薬した後, UTI薬効評価基準に従って臨床効果を判定したが, 両群の背景因子には有意差を認めなかった。総合有効率はS-1108投与群の112例で77.7%, CFTM-PI投与群の110例で67.3%と, S-1108投与群において高い傾向にあった。細菌消失率はS-1108投与群で167株中83.8%. CFTM-PI投与群で171株中79.5%と両群間に有憲差を認めなかったが, グラム陰性菌の消失率はS-1108投与群において有意に高かった。副作用はS-1108投与群では140例中4例 (2.9%), CFTM-PI投与群では138例中5例 (3.6%), また臨床検査値の異常変動はそれぞれ7.6%, 7.4%に認められたが, いずれも両群間に有意差を認めず, 概括安全度, 有用性に関しても両群間に有意差を認めなかった。これらの成績から, S-1108は尿路感染症の治療において有用な薬剤であり, 複雑性尿路感染症においては腸球菌属, 緑膿菌以外の細菌が原因となったカテーテル非留置症例など, 軽症ないし中等症の尿路感染症を対象とした場合に, 本剤の特徴がもっともよく発揮されると考えられた。
  • 花谷 勇治, 浅越 辰男, 三吉 博, 蓮見 直彦, 長岡 信彦, 小平 進
    1993 年 41 巻 12 号 p. 1325-1330
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    アゾール系抗真菌薬が奏効した腹腔内膿瘍の3例を経験したので報告する。症例1は残胃の進行癌に対し残胃全摘術を行った65歳の男性, 症例2は穿孔性胃潰瘍に対し保存的治療を行った65歳の男性, 症例3は穿孔性十二指腸潰瘍に対し穿孔部単純閉鎖術を行った60歳の男性である。診断にはCTスキャンと血中β-D-グルカン定量が有用であった。Fluconazole (症例1および2) あるいはmiconazole (症例3) の投与により, 3例とも速やかに解熱し, 全身状態の改善を得た。アゾール系抗真菌薬投与に起因すると思われる副作用は経験しなかった。
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