エステル型新経口セフェム系薬剤であるS-1108の皮膚感染症に対する至適臨床用量を知るための多施設共同による二重盲検比較試験を行った。S-1108 75mg 1日3回 (S225群), S-1108 150mg1日3回 (S450群), cefaclor (CCL) 250mg 1日3回 (CCL群) を比較検討した。対象疾患は, II群 (痴, 痴腫症, よう), IV群 (丹毒, 蜂巣炎 (蜂窩織炎), リンパ管 (節) 炎) とした。内服期間は7日間とし, 3日後, 5日後, 7日後に評価した。
1.総症例数は51例 (S225群17例, S450群17例, CCL群17例) であり, 有効性は43例 (それぞれ13例, 14例, 16例) で, 安全性は47例 (それぞれ14例, 16例, 17例) で, 有用性は44例 (それぞれ13例, 15例, 16例) で解析した。
2.最終全般改善度: 有効率はS225群92.3%, S450群92.9%, CCL群93.8%であった。著効率はそれぞれ53.8%, 50.0%, 31.3%であった。これらに有意差はなかった。
3.概括安全度: 安全率はS225群92.9%, S450群87.5%, CCL群94.1%で, 3薬剤群間に有意差はなかった。
4.有用性: 満足率はS225群で92.3%, S450群86.7%, CCL群93.8%で3薬剤群間に有意差はなかった。
5.評価日別全般改善度: 治癒率は3日後でS225群7.7%, S450群16.7%, CCL群0%, 5日後でそれぞれ15.4%, 28.6%, 0%, 7日後でそれぞれ53.8%, 57.1%, 18.8%であった。5日後治癒率でS450群がCCL群に比し高い傾向にあった (P=0.079)。
6.
Staphylococcus aureus単独分離例の細菌学的効果: S 225群2/2, S 450群6/7, CCL群4/7が消失した。CCL群に存統例が多いようにみえるが有意差はない。
7.副作用: S450群に2例 (下痢1例, 軟便1例), CCL群に1例 (悪心・嘔吐) があった。
8.臨床検査値: 異常変動例はなかった。
以上より.S225, S450, CCLは同等の効果, 安全性を示すと考えられた。各観察日における治癒率の推移を考慮し, 実際に臨床的に応用された場合の量症度のばらつきも考えて, S-1108 150mg1日3回内服が妥当な臨床用量であると結論した。
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