日本化学療法学会雑誌
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43 巻, 11 号
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  • 木下 智, 尾上 孝利, 大宮 真紀, 杉原 圭子, 松本 和浩, 多々見 敏章, 栗林 信仁, 山本 憲二, 村田 雄一, 石川 英雄, ...
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1025-1030
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    歯性感染症6症例より分離した細菌を同定し, 症例ごとに各種抗菌薬の薬剤感受性, ampicillin (ABPC) 耐性菌の割合およびβ-lactamase産生性を調べた。分離された細菌のほとんどは偏性嫌気性グラム陰性桿菌であり, なかでも, Preuotella intermedia が3症例で優位菌となっていた。P.intemediaが優位な症例のうち2症例の細菌はβ-lactam薬低感受性で, ABPC耐性菌の分離割合が高く, β-lactamase産生菌の検出割合はそれぞれ59.6と29.8%であった。残り1症例の細菌はβ-lactam薬中等度感受性で, ABPC耐性菌は分離されなかった。P.interrnedia以外の偏性嫌気性グラム陰性桿菌が優位に分離された3症例の細菌では, ABPCをはじめとする供試β-lactam薬に対する感受性は高く, β-lactamase産生菌は検出されなかった。しかし, cefaclor, cefmetazole, latamoxefに対する低感受性の症例とβ-lactam薬以外のerythromycinに低感受性の症例がそれぞれ1症例ずつみられた。以上の事実は, 歯性感染症由来細菌におけるβ-lactam薬耐性に, β-lactamaseが関与する症例とβ-lactamase以外の機構が関与する症例があることを示唆している。本研究で, β-lactamase産生菌が検出された症例の割合が低下 (33%) していたのは, 使用薬剤の変化によるものと考えられる。
  • 五十嵐 厚美, 村木 智子, 生方 公子, 中野 浩美, 山根 明男, 斎藤 洪太, 紺野 昌俊
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1031-1035
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    PCR法を応用して, 検査材料中に存在する肺炎球菌を直接的に検出する方法を検討した。対象とした検査材料は, 小児の急性気道感染症からの咽頭拭い液288検体である。PCRには, 肺炎球菌に特有の自己融解酵素遺伝子 (lytA) の694bpから966bp領域を増幅することのできるブイラマーを設計した。本方法の検出感度は1.2×102CFU/ml, 結果が得られるまでの所要時間は検査材料の処理も含めて約2.5時間であった。PCRの実行と同時に菌の培養も行い, 両方法における検出率の比較を行った。培養による肺炎球菌の検出率は288例中59例 (20.5%) であったのに対し, PCRでは118例 (41.0%) が陽性と判定された。これらのうち, 103CFU/ml以上の肺炎球菌が検出された検体では, PCRでもすべて陽性であった。培養で菌が証明できなかった検体でも, PCRで明らかなDNA断片が認められたものもあった。これらのことから, 肺炎球菌の検出には, PCRによって検体から直接菌の有無が確認できる本方法は臨床的に有用であろうと考えられた。
  • 蔵園 瑞代, 川畑 敏枝, 村瀬 えるみ, 新井田 昌志, 吉田 隆, 賀来 満夫
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1036-1040
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Imipenem/cilastatin (IPM/CS) 耐性緑膿菌に対して, 抗緑膿歯活性の強いセフェム系薬剤であるcefepime (CFPM), cefpirome (CPR), ceftazidime (CAZ) の有効性をin vitroで比較検討した。Pseudomonas aeruginosaの臨床分離株50株のMICを測定したところCFPM, CPR, CAZおよびIPM/CSのMIC90はそれぞれ32,128, 64, および64μg/mlであった。50株中14株がIPM/CSに耐性 (≧16μg/ml) を示し, これら14株に対するCFPM, CPR, CAZのMIC90はそれぞれ16, 32, 32μg/mlであった。また, IPM/CS耐性株に対してもCFPMはIPM/CSと交差耐性を示さなかった。IPM/CSの耐性株14株中, 実験に用いた4株は透過孔である外膜蛋白D2の欠損がSDS-Polyacrylamide gel electrophorasisにより確認された。このうち2株を用いて殺菌作用を検討したところ, MIC, sub MIC濃度でCFPMは, CPR, CAZと同等かやや強い殺菌力を示した。一方, β-lactamaseの誘導能を比較すると, CFPM, CAZは低い誘導能を示したのに対し, CPRはやや高い誘導能を示した。また, IPM/CS耐性緑膿菌PRC316株の精製セファロスポリナーゼを用いて阻害定数 (Ki) を測定した結果, CFPMの照値は139μMで他の2剤より大きく, 緑膿菌の産生するセファロスポリナーゼに対して, もっとも結合親和性が低いことが確認された。
  • ネチルマイシン, ゲンタマイシン.イセパマイシンへの応用
    服部(若松) 浩美, 津田 良子, 吉澤 英子, 北川 恵美子, 藤本 尚
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1041-1047
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Bacillus subtilisを用いた微生物学的な方法と, チモールフタレインを呈色指示薬として用いる化学的な反応を組み合わせた, アミノ配糖体系抗生物質の簡便な測定法の開発とその確立を目的として検討を行った。アミノグリコシド系抗生物質として, ネチルマイシン (NTL), ゲンタマイシン (GM) またはイセパマイシン (ISP) を用いて, それぞれのろ紙採血法を用いた試料からの回収について検討を行った。その結果, NTL水溶液で検討した同一の条件下, NTL, GM, ISPを含むろ紙からのそれぞれの溶出も十分であり, これらを別々に含む生体試料への適用も可能であることが確認できた。チモールフタレインを含むろ紙の青色と抗生物質の量の関係を, FPLへ法とフォトダイオードアレイ検出器を備えた多波長分光光度計を用いて確認した結果, 十分な定量性を有していることが確認できた。したがって, 目視によってチモールフタレインの青色が無色 (ろ紙の白色) へと変化する度合いを以下のように観察すれば, 試料中の抗生物質の量を簡便に測定することが初めて可能となった。
    濃青色: 有効治療域濃度以上
    淡青色: 有効治療域内濃度
    無色 (白色): トラフ濃度以下, 継続投与可
  • 注射用塩酸バンコマイシン臨床評価委員会
    島田 馨, 小林 寛伊, 砂川 慶介, 稲松 孝思, 山口 恵三
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1048-1061
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用塩酸バンコマイシン (VCM) はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による重症感染症を適応症として1991年11月に発売された。その後3年聞の市販後調査の集計成績は次のとおりである。対象は全国650施設で1991年12月から1994年10月に本剤を静脈内投与された1,354例で, 安全性は全例を, 有効性は判定不能99例を除く1,255例を評価対象例とした。本剤の1日投与iは小児では40mg/kg, 成人では19または29で, 1~3週間投与が多かった。また, 経年的に1日投与iの減少傾向, 投与期間の短縮傾向がみられた。疾患別改善率は, 肺炎78.7%, 敗血症87.5%などで全体で8L7%であった。また, 先行薬なしの症例で改善率が高かったが, 1日投与量, 併用薬の有無による改善率の差はみられなかった。MRSAに対する細菌学的効果は, 肺炎64.2%, 敗血症88.5%などで全体で69-8%の菌消失率が得られた。自他覚的副作用および臨床検査値異常は191例 (14.1%) のべ271件発現した。特に腎機能検査値異常については, 成人, 高齢者ともに発現頻度は1日2g投与が1日19投与より2倍以上高かった。血中濃度モニタリングは1,354例中500例 (36.9%), 1,082件 (1例当たり2.2件) 実施された。実施率は経年`的に増加していた。薬動学的解析対象は高齢者のクレアチニンクリアランス (Ccr) 低下例が多かった。消失速度定数 (Ke), VCMクリアランスとCcrには直線関係がみられた。β相半減期 (t1/2β) はCcrの低下に伴い延長し, 腎機能軽度低下例でも健常人の3倍近く延長していた。以上の成績より、注射用VCMはMRSA感染症に対し適確な効果を示す有用性の高い薬剤であり, 起炎菌がMRSAと確認された症例に対しては速やかに投与すべきであると思われる。使用の際には年齢と腎機能を考慮し, 血中濃度モニタリングを実施して適正な用法・用量を選択すれば副作用も抑制できると考えられる。
  • 三澤 信一, 津田 昌一郎, 谷脇 雅史, 堀池 重夫, 有山 由布子, 平川 浩一, 植田 豊, 兼子 裕人, 中尾 誠, 加嶋 敬, 中 ...
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1062-1068
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    造血器腫瘍の抗癌剤使用後における穎粒球減少時に腸管殺菌と感染予防をかねてciprofloxacin (CPFX) の内服を開始し, その後に発症した感染症に対してimipenem/cilastatin sodium (IPM/CS) を単独投与する初期治療を行い, 有効性と安全性を検討した。全体の有効率は80.9%(38/47エピソード) で, 敗血症では62.5%(5/8エピソード), 敗血症の疑いでは83.3%(30/36エピソード) に有効性が認められた。本療法による治療期間中, 末梢血の顆粒球数100/μl未満が続く症例においても76.9%(10/13エピソード) に有効であった。また, G-CSF併用群と非併用群における有効率はそれぞれ74.1%(20/27エピソード) と90.0%(18/20エピソード) で, 有意差はなかった。敗血症8エピソードを含む10エピソードから10株の細菌が分離され, 6エピソードに臨床効果がみられた。副作用, 臨床検査値異常は60エピソード中11エピソード (18.3%) に出現した。悪心, 堰吐, 食欲不振などの消化器症状が7エピソード (11.7%) に, 肝機能の一時的な上昇やタンパク尿が4エピソード (6.7%) にみられた。3エピソードでIPM/CSが中止, 1エピソードで他の抗菌薬に変更された。これらの成績からCPFXを先行予防投与し, IPM/CSを追加投与する初期治療は血液疾患における著明な顆粒球減少時の感染症に有用であることが示された。
  • 荒田 次郎他
    1995 年 43 巻 11 号 p. 1069-1087
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口マクロライド系抗菌薬であるazithromycin (AZM) の浅在性化膿性疾患に対する有効性, 安全性, 有用性を検討するために, cefaclor (CCL) を対照薬として二重盲検比較試験を多施設共同で行った。AZMは500mg (力価) を1日1回3日間, CCLは250mg (力価) を1日3回7日間投与した。対象疾患は第IIa群痴, 痴腫症, 擁, 尋常性毛瘡, 急性化膿性爪囲炎), 第IIb群 (リンパ管炎, 丹毒, 蜂巣炎), 第III群 (感染性粉瘤, 化膿性汗腺炎, その他の皮下膿蕩) とした。
    1.総症例221例中, 臨床効果の解析対象症例172例における有効率 (「著効」+「有効」の割合) はAZM群の90.6%(77例/85例), CCL群80.5%(70例/87例) であった。両群間に有意差は認められなかったが、AZMのCCLに対する臨床的同等性は検証された (Δ=10%, P<0,001)。
    2.疾患群別有効率は第IIa群でAZM群94, 4%(34例136例), CCL群89, 5%(34例138例), 第IIb群でAZM群100%(18例118例), CCL群84, 2%(16例119例), 第III群でAZM群80, 6%(25例131例), CCL群66.7%(20例130例) であった。いずれの疾患群においても両群間に有意差は認められなかった。
    3.細菌学的効果における消失率 (「陰性化」+「菌交代」の割合) はAZM群87, 3%(48例155例)、CCL群82.4%(42例/51例) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    4.副作用の発現率はAZM群10.6%(11例/104例), CCL群10.2%(11例1108例) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    5.臨床検査値の異常変動の発現率はAZM群4.3%(4例/93例), CCL群3.1%(3例/96例) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    6.概括安全度の解析対象症例198例における安全率 (「問題なし」の割合) はAZM群84.7%(83例/98例), CCL群86.0%(86例1100例) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    7.有用性の解析対象例181例における有用率 (「きわめて有用」+「有用」の割合) はAZM群81.1%(73例190例), CCL群73.6%(67例/91例) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    以上, 浅在性化膿性疾患に対して, AZM 500mg1日1回3日間内服はCCL250mg 1日3回7日間内服と同様に有用性の高い薬剤であると考えられた。
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