昭和大学藤が丘病院における臨床分離株 (1992年4月~1993年11月, 188株) に対する0抗原血清型別と抗緑膿菌β-lactam系薬剤のMIC分布を疫学的に解析し, 以下の成績を得た。
1. 全分離株中79株 (42%) は呼吸器由来検体, 55株 (29%) は尿由来検体, 38株 (20%) は膿由来検体であった。これらのほとんどは, 救命救急センター, 泌尿器, 外科, 消化器および呼吸器内科の病棟で分離された。
2. 全分離株中55株 (29%) はE型で, 34株 (18%) はG型, 19株 (10%) はA型であった。これらの値は, 分離された他の血清型よりも高かった。なお, 血清型JとLはまったく分離されなかった。
3. Carbapenem系薬剤のimipenem, panipenem, meropenem, biapenemのMIC
50は0.39から1.56μg/mlであった。cefclidinのMIC
50とMIC
90はそれぞれ0.39と25μg/ml, ceftazidimeのそれは1.56と12.5μg/mlであった。これらの抗菌剤は, 検討した分離株に対してcefotaxime, latamoxef, cefoperazone, cefsulodin, aztreonam, piperacillin, ticarcillinの値よりもより高い抗菌活性を示していた。
4. 全分離株中, 10株 (5%) のみがcarbapenem系薬剤耐性で, そのうち6株 (60%) は呼吸器由来検体から分離された。
5. CefcLidin耐性の28株 (全体の14%) 中18株 (64%) は尿由来検体, 3株 (11%) は呼吸器由来検体から分離された。
6. Carbapenemまたはcefclidin耐性の37株中, 交差耐性はわずか1株 (3%) であった。
7. Cefclidin耐性株はE型 (21株, 38%) で, carbapenem系薬剤耐性株はA型 (2株, 11%) でもっとも多く分離された。
8. 分離頻度が2番目に高いG型では, cefclidin耐性株はまったく分離されなかった。
9. CefclidinとceftazidimeのMIC相関図でcefclidin耐性群は回帰直線上から解離していた。したがってcefclidin耐性株とceftazidime耐性株では, 緑膿菌の耐性機構が異なることが示唆された。
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