日本化学療法学会雑誌
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43 巻, Supplement5 号
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  • 中根 たみ子, 中島 千秋, 三橋 進
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 1-9
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいキノロン系抗菌薬balofloxacin (BLFX) のin vitro抗菌活性をtosunoxacin (TFLX), ciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX), sparfloxacin (SPFX) およびnorfloxacin (NFLX) と比較し次の結果を得た。
    1.BLFXはグラム陽性菌からグラム陰性菌にわたる幅広い抗菌スペクトラムを有しており, その抗菌力はグラム陽性菌に対してTFLX, SPFXと同程度かまたは若干弱いが, CPFX, OFLXより優れた活性を示した。グラム陰性菌に対してBLFXは, OFLXより2~8倍程度弱い活性を示した。しかしながら, Citrobacter freundii, Serratia marescens, Providencia rettgeriを除く腸内細菌やHaemophilus influenzae, Neisseria gonorrhoea, Moraxella catarrhalisに対するMIC90は3.13μg/mlであった。
    2.BLFXはmethicillin耐性Staphylococcus aureusに対してもTFLXおよびSPFXと同程度の優れた抗菌力を示した。
    3.BLFXに対する自然耐性菌の出現頻度は対照薬剤と同様に低かった。
    4.BLFXはS. aureus, Escherichia coli, Pseudomonas aeruginosa由来のDNA gyraseの活性を対照薬剤と同様に強く阻害した。
  • 横田 健, 桑原 京子
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 10-16
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Balofloxacin (BLFX) のStaphylococcus aureus 66株, methicillin耐性S.aurens 64株, coagulasenegative staphylococci 41株, Streptococcus pneumoniae 23株, Streptococcus pyogenes 48株, Enterococcus faecalis 37株, Enterococcus faecium 42株, Escherichia coli CS2 (R+) 50株, Klebsiellapneumoniae 47株, Proteus vulgaris 54株, Proteus mirabilis 48株, Morganella morganii 50株, Providencia rettgeri 51株, Citrobacter freundii 50株, Enterobacter cloacae 50株, Serratia marcescens 50株, Pseudomonas aentginosa 33株, Pseudomoms cepacia 33株, Xanthomonas maltophilia 47株, Acinetobacter calcoaceticus 49株, ampicillin耐性Haemophilus influenzae 18株, Campylobacter coli 25株, Campylobacter jejuni 29株およびBacteroides fragilis 38株に対するMIC90は, それぞれ3.13, 6.25, 0.39, 0.39, 0.39, 0.78, 3.13, 1.56, 1.56, 1.56, 1.56, 3.13, 25, 6.25, 12.5, 6.25, 100, 25, 6.25, 3.13, 0.025, 0.78, 1.56および1.56μg/mlであった。
    BLFXは, 血清補体との協力的殺菌作用が認められると共に, マウス培養マクロファージ (Mφ) と協力的に殺菌作用を示し, E.coli NIHJ JC-2の生細胞は1/8 MIC以上のBLFX共存下で, Mφ によく食菌, 消化された。
    BLFXは, 血清補体との協力的殺菌作用が認められると共に, マウス培養マクロファージ (Mφ) と協力的に殺菌作用を示し, E. coli NIHJ JC-2の生細胞は1/8 MIC以上のBLFX共存下で, Mφ によく食菌, 消化された。
    BLFXは, HeLaおよびCHO-K1の培養細胞に対し, 10μg/mlまで増殖抑制作用を示さず, 細胞毒性が比較的弱いニューキノロン薬であった。
  • 岩崎 容明, 宮崎 修一, 辻 明良, 金子 康子, 山口 惠三, 五島 瑳智子
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 17-26
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    フルオロキノロン系広域抗菌薬balofloxacin (BLFX) のin vitroおよびいin vivo抗菌作用を, ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), tosunoxacin (TFLX), sparfloxacin (SPFX) およびlomefloxacin (LFLX) を対照薬に用いて評価した。BLFXはin vitro薬剤感受性試験においてグラム陰性菌からグラム陽性菌まで幅広い抗菌作用を示した。特にBLFXの臨床分離MRSAに対するMIC90値は8.0μg/mlと良好で, この値はSPFXのMIC90値の1/2倍であった。BLFXの臨床分離メチシリン感受性Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesに対するMIC90値は各々0.25, ≦0.063, ≦0.063および0, 125μg/mlであった。これらの値はCPFXおよびLFLX各値の1/2以下で, SPFXおよびTFLXの各値と同等であった。他のグラム陰性菌に対するBLFXのMIC値は比較キノロン薬の2倍から4倍であった。
    マウス全身感染モデルにおいてBLFXはin vitroの抗菌作用を反映した良好な治療効果を示した。BLFXはS. pneumoniae TMS-3を用いたマウス呼吸器感染 (肺炎モデル) 実験においてSPFXおよびTFLXと同等の優れた治療効果を示した。また, BLFXはEscherichia coli TMS-3を用いたマウス上行性尿路感染 (腎炎モデル) 実験において, OFLXと同等の治療効果を示した。BLFXをマウスに50mg/kg経口投与した場合の血清中, 肺内および腎内最高濃度は, 各々3.35±0.95μg/ml (投与15分後), 9.57±2.67μg/g (15分後) および11.64±2.43μg/g (30分後) であった。
  • 田中 香お里, 加藤 直樹, 加藤 はる, 渡邉 邦友, 上野 一恵
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 27-33
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の化学構造をもつニューキノロン系抗菌薬balofloxacin (BLFX) の嫌気性菌に対するinvitro抗菌力を寒天平板希釈法により検討した。また, マウス盲腸内でのClostridium difficile異常増殖誘導能についても検討した。
    参考菌株62菌種66株を用いた検討ではBLFXは幅広い抗菌力を示し, 検討した全ての菌種の発育を6.25μg/ml以下で抑制した。Bacteroides fragilis groupとLactobacillus spp.の一部, Fusobacterium variumを除く他の菌種に対するMIC値は0.1~1.56μg/mlで良好な抗菌作用を示した。これらの参考菌株に対して, BLFXは概ねofloxacin (OFLX), fleroxacin (FLRX) よりも優れていた。
    BLFXの臨床分離株に対する抗菌力はB. fragilis groupではOFLX, FLRXより強く, tosufloxacin, sparfloxacinに比べると弱かったが, Prevotella bivia, Prevotella intermedia, Porphyromonasgingivalis, Peptostreptococcus magnus, Peptostreptococcus asaccharolyticus, Peptostreptococcus anaerobius, Clostridium difficile, Gardnerella vaginalisに対しては最も優れていた。また, BLFXはβ-ラクタム剤耐性B. fragilisの発育を0.78~12.5μg/mlで抑制した。
    接種菌量の増加および感受性測定用培地のpH低下により, BLFXのMIC値はやや高くなった。
    BLFXの5日間連続投与はマウス盲腸内でのC. difficileの異常増殖をほとんど誘発しなかった。
  • 西野 武志, 伊藤 達也, 大槻 雅子
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 34-52
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく合成されたニューキノロン系経口合成抗菌薬balofloxacin (BLFX) のin vitroおよびin vivo抗菌力を, ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), tosunoxacin (TFLX), lomenoxacin (LFLX) およびsparfloxacin (SPFX) を比較薬として検討し, 以下の成績を得た。
    BLFXは, グラム陽性菌, 陰性菌および嫌気性菌に対し, 広範囲な抗菌スペクトルを有していた。BLFXの臨床分離株に対する抗菌力は, メチシリン感受性Staphylococcns aureus (MSSA), メチシリン耐性S. aureus (MRSA), Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pneumomiaeおよびStreptococcus pyogenesにおいてMIC90がそれぞれ0.2, 6.25, 0.2, 0.39および0.39μg/mlで, OFLX, CPFXおよびLFLXより4~16倍強く, TFLXおよびSPFXと同程度であった。キノロン耐性のStaphylococcus臨床分離株に対しては, BLFXがもっとも優れた抗菌力を示した。一方, グラム陰性菌に対する抗菌力は, OFLXよりやや劣り, LFLXと同程度であった。また, 嫌気性菌に対する抗菌力は, OFLX, CPFXおよびLFLXより優れていた。
    BLFXの抗菌力は, 比較薬と同様に, 培地の種類, 血清添加および接種菌量の影響を受けないが, 培地pHが酸性では低下した。増殖曲線に及ぼす影響では, MIC以上の濃度で殺菌的に作用した。薬剤作用時の菌の形態変化を微分干渉顕微鏡で観察したところ, BLFXのsub-MIC濃度でEscherichia coliでは顕著な伸長化が, Pseudomonas aeruginosaでは若干の伸長化が, そしてS. aureusでは膨化を認めた。またMIC以上の濃度ではそれに加えて溶菌像も観察された。
    BLFXの標的酵素DNA gyraseに対する阻害作用は, E. coliおよびP. aeruginosaでは他剤と同レベルであったが, S. aureusでは比較薬中最も強かった。
    マウス実験的全身感染症に対するBLFXの治療効果を検討したところ, グラム陰性菌では他剤より劣るものの, グラム陽性菌ではOFLX, CPFXおよびLFLXより優れた効果を示した。キノロン耐性MRSAによるマウス皮下膿瘍に対するBLFXの治療効果は, 比較薬中最も優れていた。
  • 中塩 哲士, 岩沢 博子, 須左 千尋, 金光 敬二, 嶋田 甚五郎
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 53-59
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規キノロン薬balofloxacin (BLFX) の臨床材料からの新鮮分離菌に対するin vitro抗菌力を対照キノロン薬 (norfloxacin, ofloxacin, levofloxacin, ciprofloxacin, tosunoxacin, fleroxacin, sparfloxacin) と比較した。使用菌株はグラム陽性球菌270株, 腸内細菌科菌群297株, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌148株, および嫌気性菌54株である。BLFXは対照薬に比べてグラム陽性球菌に対する抗菌力に優れ, Streptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenesおよびStreptococcus agalactiaeに対するBLFXのMIC90は0.39μg/mlで, Enterococcus faeciumに対するMIC90は3.13μg/mlであった。Methicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA) を含むStaphylococciに対するBLFXのMIC90はいずれも6.25μg/ml以下であった。BLFXは腸内細菌科菌群に対して対照薬と同等あるいは菌種によってはより優れた抗菌力を示した。Pseudomonas aeruginosaに対するBLFXのMIC90は3.13μg/mlであった。S. aureus, E. faecalisおよびEscherichia coliの各1株を用い10代にわたってBLFXの薬剤増量継代培養を実施したところ, 本薬のMICの上昇はいずれも4倍以下であったことから耐性化しにくいことが示唆された。
  • 小嶋 佳奈, 伊藤 達也, 宗村 和子, 近藤 晶子, 松本 雅彦, 永野 洋幸, 松原 秀三
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 60-76
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    balofloxacin (BLFX) は, キノロン骨格の8位にメトキシ基を導入したニューキノロン系経口抗菌薬である。BLFXのin vitro抗菌力を, ofloxacin (OFLX), norfloxacin (NFLX), cipronoxacin (CPFX), tosunoxacin (TFLX) およびlomefloxaciを (LFLX) と比較検討した。
    各種臨床分離株に対する感受性分布では, BLFXはメチシリン感受性Staphylococcus aureus (MSSA), Staphylococcus epidermidiS, Streptococcus属, Enterococcus属, Escherichia coli, Klebsiellapneumoniae, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia stuartii, Haemophilusinfluenzae, Xanthomonas maltophilia, Bacteroides fragilisに対して0.05~3.13μg/mlのMIC90を示した。中でもMSSA, Streptococcus属, Enterococcus属に対しては比較薬中最も優れた抗菌力を示した。また, BLFXは供試したメチシリン耐性S. aureus (MRSA) のすべての菌株の発育を6.25μg/mlの濃度で抑制し, 比較薬中最も優れた抗MRSA活性を示した。BLFXの抗菌力は, 培地, 血清添加および接種菌量の影響を受け難いが, 比較薬と同様に高濃度の金属イオン存在下や培地pHの酸性域で抗菌力が低下した。BLFXの殺菌力は強く, MICとMBCはほぼ同値を示した。さらに, BLFXは黄色ブドウ球菌および大腸菌に対して良好なpostantibiotic effect (PAE) を有していた。
  • 小嶋 佳奈, 伊藤 達也, 宗村 和子, 近藤 晶子, 松本 雅彦, 永野 洋幸, 松原 秀三
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 77-83
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口用キノロン薬balofloxacin (BLFX) のin vivo抗菌作用をnorfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), tosufloxacin (TFLX), lomefloxacin (LFLX) と比較検討した結果, 以下の成績を得た。
    1.マウス腹腔内感染モデルにおいて, BLFXはMRSAを含むStaphylococcus aureusおよびStreptococcus属感染に対して対照薬剤より優れた感染防禦効果を示した。Escherichia coli, Klebsiellapmeumoniae, Salmonella typhmurium, Pseudomonas aeruginosa感染に対しては, OFLXおよびCPFXより弱いが, NFLXと同等または優れていた。BLFXの白血球減少症マウスにおける感染防禦効果は, 正常マウスでの感染防禦効果とほぼ同等であった。
    2.マウスを用いたStreptococcus pneumoniaeの噴霧感染に対するBLFXの治療効果は, TFLXと同等で, 他の対照薬剤より優れていた。
    3, E. coliおよびEnterococcus faecalisによる混合尿路感染では, BLFXは, E. faecalisに対して, 最も優れた増殖抑制効果を示すと共に, E. coliに対しても, CPFXおよびNFLXと同等以上の増殖抑制効果を示した。
    3, E. coliおよびEnterococcus faecalisによる混合尿路感染では, BLFXは, E. faecalisに対して, 最も優れた増殖抑制効果を示すと共に, E. coliに対しても, CPFXおよびNFLXと同等以上の増殖抑制効果を示した。
    4.MRSAによる皮下膿瘍モデルでは, BLFXはTFLXと同等の感染防禦効果を示した。
    5.マウスにBLFXを経口投与した時の血清中濃度は, NFLX, CPFXより高く, OFLX, LFLXより低値であった。
  • 寺尾 公男, 宇津 恵, 西宮 智子, 湯谷 義人, 大澤 康次, 羽田 正利, 福島 政文, 蒲池 信一
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 84-89
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規のニューキノロン系合成抗菌薬であるbalofloxacin (BLFX)(±)-1-cycloProPy1-6-fluoro-1, 4-dihydro-8-methoxy-7-(3-methylaminopiperidin-1-yl)-oxoquinoline-3-carboxylic acid dehydrate: HPLCによる高感度定量法を確立した。
    BLFX未投与ヒト生体試料を100mMリン酸緩衝液 (pH7.4) を用いて希釈し, 内部標準物質を加えた後ジクロロメタンを用い有機溶媒抽出を行った後, HPLC移動相に溶解し測定に供した。検量線の作成には, 血清, 血漿および尿はBLFX未投与試料を用い, 他の試料についてはリン酸緩衝液を用いた。その結果, 検量線は0.01μg/ml~1.0μg/mlの範囲で良好な直線性が得られた。また, 再現性は各々の試料についてBLFX濃度が0.05, 0.5μg/mlの添加試料を用い検討したところ日内変動, 日間変動ともに0.61~15.48%であり良好であった。今回確立した定量法は, 正確かつ精度が良好であり, 操作が簡便であるため, ヒト生体試料中の濃度測定に有用であると考えられた。
  • 郷司 憲, 吉橋 久雄, 森 聖一, 金丸 寿美子, 久保寺 美典, 寺田 勝英, 斉藤 仁俊
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 90-93
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系合成抗菌薬balofloxacin (BLFX) のbioassay法による体液内濃度測定法について検討し, 以下の成績を得た。
    試験菌としてはBacillus subtilis ATCC 6633を用い, 操作性を考慮しペーパーディスク法にて測定を行った。尿試料を測定する場合はM/15リン酸緩衝液 (pH 8.0), 血清試料の場合はヒトプール血清を用いて標準液を調製した。本法によるBLFXの定量限界は約0.2μg/mlであり, 測定値の日内および日間変動係数 (CV%) は, それぞれ2.0~7.8%, 5.1~7.3%であった。また, 尿や血清に添加したBLFXは, -20℃ で凍結保存すれば少なくとも2ヶ月間は安定であった。
  • マウスおよびイヌにおける14C -balofloxacinの吸収および排泄
    石谷 雅樹, 中川 俊人, 奥富 常雄, 大久保 一三, 岡崎 彬
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 94-99
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規フルオロキノロン系抗菌薬balofloxacin (BLFX) のマウスおよびイヌにおける吸収および排泄について14C標識したBLFXを用いて検討した。
    1. 14C-BLFX経口投与後, 放射能は速やかに吸収された。消失半減期はイヌで比較的長く, イヌの単位投与量当たりのAUC (AUC/dose) は, マウスに比べ20倍以上高い値を示し, 14CBLFX経口投与後の放射能の動態、に動物種間で差異が認められた。
    2.尿中にはいずれの動物においてもBLFXとしての排泄量が最も多く, その他BLFXglucuronide (BLFX glu,) およびN-desmethyl BLFXが認められた。一方, 胆汁中あるいは糞中代謝物はイヌではBLFX glu.が最も多かったが, マウスでは未知代謝物が多く認められた。
    3.いずれの動物においても14C-BLFX経口投与後, 投与放射能の大部分が尿中および糞中へ排泄された。また, 静脈内投与後の放射能の排泄は, マウスでは糞中が多くイヌでは尿中および糞中でほぼ同程度であり, 動物種間で放射能の排泄経路が異なることが明らかとなった。
  • 丸谷 清, 杉山 修, 小泉 妙子, 小松 博道, 三好 昌夫, 長谷川 隆司, 田中 公一, 大谷 元
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 100-105
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    balofloxacin (BLFX) の光毒性誘導能について, BALB/c系雌性マウスの耳翼皮膚反応を指標として検討した。200あるいは800mg/kgのBLFXをマウスに単回経口投与した後に40J/cm2の長波長紫外線 (UVA) を照射したところ, いずれの投与群でも耳翼に紅斑等の肉眼的変化はみられず, また耳翼皮膚組織の変化も認められなかった。しかしながら, 比較対照として用いたオフロキサシン (OFLX) では200mg/kg群で2/6例, 800mg/kg群で5/6例にいずれもごく軽度の紅斑が観察され, ナリジクス酸 (NA) では200mg/kg以上の投与群で全例に中等度以上の紅斑が発現し, 皮膚の病理組織学的検査により好中球を主体とする炎症性細胞の浸潤および皮下織および真皮の浮腫も認められた。
    さらに, 1日1回, 7日間連続して20, 80あるいは160mg/kgのBLFXをマウスに経口投与した後に20J/cm2のUVAを照射したところ, いずれの投与群でも耳翼の紅斑および耳翼組織の変化は認められなかった。同様の処置を施したOFLX群のマウスでは, OFLXの80mg/kg投与群では2/6例に, 160mg/kg投与群では全例 (n=6) の耳翼に軽度の紅斑が出現した。また, NA群のマウスでは, 80mg/kg以上の投与群の全例に紅斑が継続的に観察され, 組織球および好中球を主体とする炎症性細胞の浸潤が用量依存的に観察された。
    これらマウスにおける単回および反復経口投与実験において観察された耳翼の紅斑を点数化し, 各投与群の光毒性の程度を溶媒群と比較した。BLFXを投与したマウスでは, 単回投与および反復投与のいずれにおいても溶媒群と同様陰性であったが, OFLXの800mg/kg, NAの200および800mg/kgを単回投与した群, またOFLXの160mg/kgおよびNAの80mg/kg以上を反復投与した群で, それぞれ有意に高いスコアが得られた。
    以上の成績から, 本実験条件下ではBLFXはマウスに対して光毒性を示さないと結論された。
  • 丸谷 清, 小田部 陽子, 永牟田 雅弘, 田中 公一, 大谷 元
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 106-110
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    balofloxacin (BLFX) の光アレルギー反応誘発性の有無について, モルモットを用いて検討した。
    BLFXのキノリン環8位フッ素置換体である8-F 1mgを, Hartley系雌性モルモットの除毛頸背部に1日1回, 連続5日間塗布すると共に, 毎回塗布後に5J/cm2の長波長紫外線 (UVA) 照射を繰り返して感作した。これら感作動物に対して8-Fを誘発抗原として経口 (1mg/kg) および皮内 (0.01~1μg/部位) の両経路の投与とUVA照射 (5J/cm2) により光アレルギー反応を惹起すると, いずれにおいても5例中3例の誘発部位に陽性反応が観察された。さらに, 8-F 10mg/kgを1日1回, 5日間連続経口投与すると共にUVA照射 (5J/cm2) を繰り返した後, 8-F 1mg/kgの経口投与およびUVA照射 (5J/cm2) により光アレルギー反応を惹起すると, 5例中2例の照射部位に発赤反応が観察された。一方, 同様の感作条件下 (ただし, 経口投与による感作では100mg/kgを週5回, 2週間に亘り総計10回実施) でBLFXを処置したモルモットに対してBLFX (経口投与, 100mg/kg;皮内投与, 0.1~10μg/部位) を誘発抗原として同一の照射条件下で光アレルギー反応を惹起したところ, いずれの系においても陽性反応は見られなかった。
    以上の成績から, 本実験条件下ではBLFXはモルモットに対して光アレルギー誘発性を示さないと結論された。
  • 堀 誠治, 嶋田 甚五郎
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 111-114
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    キノロン薬が潜在的に痙攣誘発作用を有することは良く知られている。我々は, 新しいキノロン薬であるbalofloxacin (BLFX, 開発コードQ-35) のγ-アミノ酪酸 (GABA) の受容体結合に及ぼす影響を検討した。BLFXは濃度依存的にGABA受容体結合を阻害した。その阻害の強さはenoxacinとほぼ同等であった。この阻害作用は非ステロイド薬の共存下でも増強されなかった。また, BLFXをマウス脳室内に投与することにより投与量依存的に痙攣を誘発することができた。この痙攣誘発作用は非ステロイド薬の同時投与によっても増強されなかった。以上の成績より, BLFXは中等度の痙攣誘発作用を有する可能性があるものの, 非ステロイド薬の併用によってもその痙攣誘発作用は増強されない可能性が示唆された。
  • I.単回経口投与
    中島 光好, 植松 俊彦, 福地 美保, 中野 真子, 小菅 和仁
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 115-140
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    健常成人男子にbalofloxacin (BLFX) を経口投与し, 安全性と体内薬物動態について検討した。
    空腹時単回投与は, 予備試験として各々2名の被験者を対象に10mg投与より開始し, 安全性を確認しながら20mg, 50mgと順次増量した。
    次いで, 本試験として, 100mg, 200mgおよび400mgを順次経口投与した。200mg投与では食事の影響をみるため, 1週間の休薬期間をおくクロスオーバー法により同一被験者に朝食前と朝食後の2回投与した。その結果, 200mg食後投与群のうち1例が軽度かつ一過性の頭重感を, また400mg投与群では1例に立ちくらみ様の症状 (約10分間で消失) が発現した。いずれの症状も特別の処置を施すことなく一過性に消失した。他に特に問題となる症状.所見は発現しなかった。
    BLFX投与後の血中濃度は用量に比例して増加した。Cmaxは100mg投与で約1μg/ml, 200mg投与で約2μg/mlとなった。Tmaxは1.0~1.2h, T1/2は7.0~8.3hで, 腸管吸収が速やかで, 比較的長く血中に持続した。食後投与ではTmaxが遅延し, Cmaxが低下したが, AUC0→ ∞, 累積尿中排泄率は空腹時投与とほぼ同等であったため, 吸収にはほとんど影響しないと考えられた。
    いずれの投与量においても累積尿中排泄率は70~80%であった。代謝物としてグルクロン酸抱合体が約4%, 脱メチル体が約0.4%検出された。自然排泄便中の未変化体の回収率は2.8~10.7%で, 回収率が高い被験者では尿中排泄率が低い傾向がみられた。
    以上の成績より, BLFXは安全性上特に問題なく, 体内動態に優れるため, 感染症患者を対象に臨床評価することが可能であると考えられた。
  • II. 反復経口投与
    中島 光好, 植松 俊彦, 福地 美保, 中野 真子, 小菅 和仁
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 141-159
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    健常成人男子を対象にbalofloxacin (BLFX) 200mgまたは300mgを12時間毎に反復経口投与し, 安全性, 体内薬物動態ならびに腸内菌叢におよぼす影響について検討した。
    いずれの投与群 (6名ずつ) においても軽い腹部の異和感 (ゴロゴロする, 腹が張る) が2名ずつに発現した。自覚症状は3~4日後より発現したが, その翌日または翌々日の排便と共に消失した。また, 200mg反復投与群の1例では軽度かつ一過性の便秘が発現した。これも翌日の排便と共に消失する一過性のものであった。臨床検査値ではGPTの軽度の上昇がみられたが, 投薬終了後元に復した。他の異常変動は認められなかった。
    血中濃度の実測値は初回投与に基づいたシミュレーションカーブによく一致し蓄積は認められなかった。累積尿中排泄率は200mg反復投与で71.9%, 300mg反復投与で86.3%であった。300mg反復投与中の糞便中好気性菌は測定限界以下に減じた。嫌気性菌も1/10ほど減じるものの, なお109 cfu/g以上残存した。しかし, 投薬終了10日後には元の菌数に復した。
  • 渡邉 邦友, 上野 一恵, 和田 光一, 渡部 恂子, 水谷 潤
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 160-167
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいピリドンカルボン酸系の抗菌薬であるbalofloxacin (BLFX) の1回400mg 1日2回の7日間連続投与がヒト腸内糞便内細菌叢に及ぼす影響を検討した。本剤投与によって好気性菌の総細菌数は顕著に減少した。しかし検査期間中常に嫌気性菌優位の細菌叢は変わらず, 従って総菌数に大きな影響を及ぼすことはなかった。BLFXは好気性菌の中でもEnterobacteriaceae, Streptococcus, Lactobacillusの菌数を顕著に減少させた。嫌気性菌ではBacteroidesの変動はほとんどなかったが, Bifidobacterium, Eubacterium, clostridfumの菌数は1/100程度あるいはそれ以下に減少した。本試験中下痢症は全く認めなかったが, その原因として広く認められているClostridium difficileは6例中1例に投与中止10日目に103cfu程度分離されていた。BLFXによる細菌叢の変化は投薬中止後10日目にはほぼ回復した。
  • 橋口 浩二, 中林 美枝子, 吉田 耕一郎, 宮下 修行, 中島 正光, 二木 芳人, 副島 林造
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 168-173
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口new quinolone系合成抗菌薬balofloxacin (BLFX) のtheophylline (TP) 血中濃度に及ぼす影響を5人の健康成人男子ボランティアを用いて検討した。
    あらかじめ4日間1日400mgの徐放性経口TP製剤を投与して, 4日目にコントロールの採血を行った。その後5日間BLFX1日200mgを併用し, 併用3日目, 5日目に採血し, コントロールのTP血中濃度と比較検討した。
    併用3日目では最高血中濃度 (Cmax) で6.4%, 濃度曲線下面積 (AUC0~10) で8.2%(各5人平均) のTP血中濃度の減少がみられ, 5日目では各々0.3%, 1.3%の増加, 減少であった。Total body clearanceは3日目, 5日目でそれぞれ8.2%, 0.3%の増加を示したが, 各々統計学的には有意差は認められなかった。
    臨床的副作用は認められず我々の分類ではBLFXは第III群に属し, TPへの影響は殆どないものと考えられた。
  • 齋藤 玲, 富澤 磨須美, 中山 一朗, 佐藤 清
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 174-179
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用キノロン薬balofloxacin (BLFX) のin vitro抗菌力と呼吸器感染症に対する臨床効果について検討した。臨床分離の8菌種236株に対するBLFXの抗菌力は既存キノロン薬に較べグラム陽性菌に強く, グラム陰性菌に弱い傾向を示した。呼吸器感染症患者15例に本剤100mgまたは200mgを1日2回, 6~14日間経口投与し, 著効2例, 有効13例で, 100%の有効率が得られた。起炎菌は10症例からグラム陽性球菌4株, グラム陰性菌8株の計12株が分離されたが, 全て除菌された。副作用や臨床検査値異常変動は全く発現しなかった。
    以上の成績より, 本剤はin vitro抗菌力で瞠目すべき活性は認められないものの, 臨床的には既知キノロン薬と比べても勝るとも劣らない有効性を発揮しており, また安全面で問題がみられないことから, 呼吸器感染症の治療に有用な新規キノロン薬であると考えられた。
  • 大道 光秀, 平賀 洋明
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 180-184
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新たに開発された経口用キノロン系抗菌薬balofloxacin (BLFX, 治験略号Q-35) の呼吸器感染症に対する臨床的有用性と経時的な血清中, 喀痰中濃度について検討した。
    急性肺炎4例, 急性気管支炎1例, 慢性気管支炎3例, 気管支拡張症の二次感染2例, 気管支喘息の二次感染2例および肺線維症の二次感染1例の計13例に対し, 1回100mgまたは200mgを1日2回, 7~14日間経口投与した。臨床効果は著効2例, 有効11例で, 有効率は100%であった。起炎菌としてStreptococcus pneumoniae 2株, Haemophilus influenzae 2株Haemophilus spp. 1株の計5株が分離されたが, 本剤治療によって全て消失した。副作用や臨床検査値異常変動は全く認められなかった。
    一方, びまん性汎細気管支炎の二次感染症患者に本剤200mgを1日2回反復投与し, 開始日, 3日目および5日目の血中ならびに喀痰中移行濃度を測定した。喀痰中濃度は血中とほぼ同程度に推移した。各測定時の最高喀痰中濃度は2.14, 2.39, 3.16μg/mlであり, 血清より喀痰への移行率は100~124%と良好な値を示した。
  • 丹野 恭夫, 西岡 きよ, 荻原 央子, 白土 邦男, 坂本 正寛
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 185-189
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新たに開発された経口用ピリドンカルボン酸系抗菌薬balofloxacin (BLFX) を, 13名の呼吸器感染症の患者に使用し, その臨床的有用性を検討した。さらに, 近年当科において呼吸器感染症より分離されたStreptococcus pneumoniae, Moraxella (Branhamella) catarrhalis, Haemophius influenzaeおよびPseudomonas aeruginosaに対する本剤の抗菌力を, 従来のピリドンカルボン酸系抗菌薬と比較した。
    慢性気管支炎5例, 肺炎2例, 急性気管支炎3例, 気管支喘息二次感染, 咽喉頭炎および肺化膿症各々1例に, 本剤1回100mgあるいは200mgを1日2回, 7~21日間投与した。感染症状不明確のため薬効評価対象から除外した3例を除き残り10例の臨床効果は著効2例, 有効5例, やや有効1例, 無効2例で, 有効率は70.0%であった。
    分離された起炎菌, S. pneumoniae, M.(B.) catarrhalis各々1株は除菌された。
    副作用は急性気管支炎例に軽度の下痢が出現したが, 特別の処置することなしに投与継続できた。臨床検査値異常変動は全例において認められなかった。
    本剤の上記4菌種に対する抗菌力をtosufloxacin (TFLX), ciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX) OFLXはS. pneumoniaeを除く3菌種と比較した。本剤はS. pneumoniae, およびH. influenzaeに対して対照薬と同等あるいはそれ以上の抗菌力を示した。
  • 渡辺 彰, 庄司 聡, 高橋 洋, 菊地 宏明, 徳江 豊, 貫和 敏博, 本宮 雅吉, 本間 光信, 今野 淳, 佐山 恒夫, 柏木 誠, ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 190-201
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Balofloxacin (BLFX) の抗酸菌を含む呼吸器由来10菌種計220株に対する抗菌力をofloxacin (OFLX) 等と比較検討すると共に呼吸器感染症21例に対する臨床効果, 細菌学的効果並びに安全性を検討し, 内1例で喀痰移行を検討した。本剤はMSSA, MRSA, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Haemophilus influenzae, Pseudomonas aerrginosaに対し各々2, 8, 0.25, 1, 1, ≦0.125, 8μg/mlで全株の発育を阻止し, OFLXに匹敵した。抗酸菌 (Mycobacterium tuberculosis, Mycobacterium avium, Mycobacterium intracellulare) にはOFLXの1/2の抗菌力を示したが, rifampicin耐性結核菌にOFLXの2倍の抗菌力を示した。急性気管支炎2例, 慢性気道感染症8例, 肺炎10例, マイコプラズマ肺炎1例の計21例に本剤の100mgあるいは200mgを1日1~2回, 7~21日間投与し, 判定可能の19例中著効が5例, 有効14例で有効率は100%であった。慢性気管支炎の1例に200mg投与後3時間目に最高血中濃度1.57μg/ml, 5~6時間目に最高喀痰内濃度2.29μg/mlが得られて146%の移行比であった。投与前にはH. influenzae 3株, K. pneumoniae 1株, P. aeruginosa 1株の計5株を分離し, 全株の消失を得た。好酸球増多3例とGOT/GPT上昇2例を認めたが, 投与終了後に改善した。各種病原細菌に強い抗菌力を有するBLFXは種々の呼吸器感染症に対する第一次選択薬剤の一つと考えられる。
  • 坂内 通宏, 勝 正孝, 青崎 登, 大石 明
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 202-205
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用フルオロキノロンbalofloxacinに関する基礎的・臨床的検討を行い以下の知見を得た。本剤はグラム陽性菌に対してsparfloxacinに匹敵する優れた抗菌力を示したが・グラム陰性菌に対しては他のキノロン薬よりやや劣っていた。
    呼吸器感染症13症例に対する本剤の臨床効果は, 著効2例, 有効9例およびやや有効2例で, 有効率は84.6%であった。副作用, 臨床検査値異常は全く認めなかった。
  • 坂本 光男, 中澤 靖, 進藤 奈邦子, 前澤 浩美, 吉川 晃司, 吉田 正樹, 柴 孝也, 酒井 紀, 斎藤 篤
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 206-215
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用キノロン薬であるbalofloxacin (BLFX) について基礎的ならびに臨床的検討を行い. 以下の成績を得た。
    1. 水酸化アルミニウムゲル併用の影響: BLFX 200mg単独投与時の薬動力学的パラメーターはCmax 1.95±0.39μg/ml, Tmax 1.75±0.51h, AUC 18.02±1.67μg・h/mlであった。ところが, 水酸化アルミニウムゲル1000mgを同時併用したところ, Cmax 0.41±0.05μg/ml, Tmax4.50±0.72h, AUC 6.09±0.61μg・h/mlとなり, 他のキノロン薬と同様に著明な吸収阻害がみられた。
    2. シメチジン併用の影響: 食後BLFXと同時または1時間前にシメチジン200mgを併用しても, BLFXの体内動態に大きな変化は認められなかった。しかしながら, 空腹時1時間前にシメチジンを併用すると, BLFXの吸収は顕著に阻害された。
    3. プロベネシド併用の影響: プロベネシド1000mgをBLFXの服用2時間前に投与するとBLFXの累積尿中排泄率は86±1.9%から51±4.4%と低下し, T1/2が6.0±0.5時間から9.6±1.0時間に延長した。本剤の腎排泄機序として尿細管分泌の関与が示唆された。
    4. 一般臨床試験: 急性気管支炎1例, 扁桃炎2例, 肺炎4例 (うちマイコプラズマ肺炎, クラミジア肺炎が各1例) の計7例に対してBLFX1回100mgから200mgを1日2回もしくは3回, 3から14日間経口投与した。その結果, 臨床効果は著効3例, 有効4例で全例に症状改善が認められた。副作用は認められなかった。臨床検査値異常変動としてはGOT, GPTの軽度上昇が2例に発現した。
  • 松本 文夫, 今井 健郎, 桜井 磐, 進藤 奈邦子, 嶋田 甚五郎, 柳川 明, 堀 誠治
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 216-222
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用キノロン薬balofloxacin (BLFX) の体内薬物動態ならびに臨床効果について検討し, 以下の結果を得た。
    腎機能低下感染症患者に本剤100mgまたは200mgを単回使用し, 経時的に血中および尿中濃度を測定した。本剤使用12時間後の血中濃度は腎機能が低下するにつれ高くなり, 血中半減期 (T1/2) は遅延し, 尿中排泄は減少した。
    また, 腎機能が正常な感染症患者2名の喀痰中濃度を経時的に測定したところ, 使用4~6時間後に最高濃度 (2.5~2.7μg/ml) に達し, 血中の最高濃度 (1.6~2.5μg/ml) を上回った。
    一方, 肺炎8例, マイコプラズマ肺炎3例, 急性気管支炎2例, 慢性気管支炎7例, 扁桃炎1例および胆嚢炎3例の計24例を対象に, 本剤100mgまたは200mgを1日1回または2回経口使用したところ, 基礎疾患の影響で薬効判定ができなかった2例を除いた22例における臨床効果は全てが著効または有効であった。起炎菌は4例よりStaphylococcus aureus 3株Klebsiella pneumoniae1株, Psendomonas aeruginosa 1株の計5株が分離され, S.aureusは全株消失, 残りの2株は使用後菌検査未実施のため判定不能であった。副作用および臨床検査値異常変動は認められなかった。
  • 青木 信樹, 柳沢 善計
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 223-229
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    腎機能低下の程度の異なる3名の高齢者にbalofloxacin (BLFX): 開1回7日間反復経口投与し, 初回投与1日目, 4日目および7日目につ8, 12時間後に, 2, 3, 5, 6日目については投与 時点の血清中濃度をては初回投与1日目, 4日目および7日目は0~4時間, 4~8時間, 8~5, 6日目については0~12時間, 12~24時間での蓄尿中濃度を測定らシミュレートした曲線とその後の血中濃度の推移はほぼ一致なかった。また腎機能障害が高度になるに従い, T1/2βの延長に168時間までの蓄積尿中回収率は低下した。
    臨床的検討に例, 胆嚢・胆管炎4例, 尿路感染症1例の計27例を対象に実施した1回200mgを1日1回7日間, 胆嚢・胆管炎に対しては1回100mgを1日路感染症に対しては1日1回100mgを7日間, いずれも食後に服用しった以外は26例全てが有効で, 有効率は96.3%であった。副作用, 臨床検査成績上, GOT・GPT, GPT, BUN軽度の上昇がそれぞれ1例にに認められた。
  • 小笠原 智彦他
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 230-235
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用キノロン薬, balofloxacin 100mgを気管支拡張症の高齢患者に単回経口投与したところ, 血中濃度は2時間後の0.26μg/mlから12時間後の1.54μg/mlまで経時的に上昇した。喀痰中濃度もほぼ平行して上昇した。
    一方, 呼吸器感染症患者24名に本剤200mg (分2) または400mg (分2) を5~21日間反復投与したところ, 著効9例, 有効13例と評価しうる感染症状の改善がみられた (有効率91.7%)。特にマイコプラズマ肺炎6例を含む肺炎17症例に対しては全て有効以上の成績であった。
    起炎菌として分離された5菌株のうち4菌株が除菌された。
    副作用は本剤400mg (分2) 投薬中6日目に軽度の頭痛が1例に発現した。臨床検査値異常変動は, transaminases上昇4例, 血小板増加1例および好酸球増加1例がみられたが, いずれも軽微なものであった。
    以上の成績より, 本剤は呼吸器感染症, 特に肺炎の治療に有用な新規経口用キノロン薬であると考えられた。
  • 高木 健三, 荒井 孝, 小川 清隆, 松本 浩平, 野田 康信, 権田 秀雄, 田野 正夫, 近藤 征史, 原 通廣, 進藤 丈, 堀場 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 236-241
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用キノロン薬balofloxacin (BLFX) の抗菌力を新鮮臨床分離株 (1992年11月~ 翌年3月) を用い検討した。BLFXに対するStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidisおよびStreptococcuspneumoniaeの感受性は0.1~1.56μg/mlに分布し, その活性はofloxacin (OFLX) より2~4倍, norfloxacin (NFLX) やenoxacin (ENX) より4~8倍強かった。Haemphilus influenzaeに対してもOFLXやENXより4倍強かった。Klebsiella pneumoniaeに対してはOFLXやENXより2~4倍劣ったが, NFLXと同等の抗菌活性を示した。
    一方, 呼吸器感染症14例を対象にBLFXの臨床効果について検討した結果, 著効4例, 有効7例の感染症状改善が認められた。特に, マイコプラズマ肺炎1例を含む肺炎5例と急性気管支炎2例では全て著明に改善した。起炎菌は10症例より10菌株が分離され, 細菌学的評価可能な症例7例全てで除菌された。
    安全性面では, 軽度の食欲不振とS-GPTおよびBUNの上昇が発現したが, 特に問題となる症状は発現しなかった。
    以上の成績より, 本剤は呼吸器感染症の化学療法に安全かつ有用な新規経口用キノロン薬であると考えられた。
  • 沖本 二郎, 窪田 好史, 宮下 修行, 吉田 耕一郎, 中島 正光, 二木 芳人, 副島 林造
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 242-246
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいキノロンカルボン酸系抗菌薬であるbalofloxacin (BLFX) について, 抗菌力ならびに呼吸器感染症に対する臨床的検討を行い以下の成績を得た。
    1. Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus (MSSA), Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Branhamella catarrhalis, Klebsiella pnumoniaeに対するMICは0.01~4μg/mlにあり, sparfloxacin (SPFX) やlevofloxacin (LVFX) とほぼ同等の優れた抗菌力を示した。methicillin-resistant S. aureus (MRSA) に対するMIC90は4μg/mlであり, SPFXやLVFXに比し優れた抗菌力を有していた。Pseudomonas aeruginosaに対するMIC90は64μg/mlであり, SPFXやLVFXに劣る抗菌力であった。
    2. Chlamydia pnumoniae, Chlamydia psittaci, Chlamydia trachomatisに対するMICは0.25~0.5μg/mlにあり, tosufloxacin, SPFXには劣るものの, ofloxacin, ciprofloxacinと同等の抗菌力を示した。
    3. 呼吸器感染症10例を対象にBLFXを使用した結果, 臨床効果は著効2例, 有効7例, 無効1例で, 90%の有効率であった。副作用として, 随伴症状は認めず, 臨床検査値の異常として1例に軽度の肝機能障害を認めた。
  • 栗村 統, 平本 雄彦, 中野 喜久雄, 坂本 直子, 野崎 公敏, 丸山 泰助, 古居 順, 土井 秀之, 河野 通子, 下中 秋子, 近 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 247-252
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたニューキノロン系抗菌薬であるbalofloxacin (BLFX) の抗菌力および臨床的検討を行った。抗菌力については国立呉病院に保存されている臨床分離株24菌種, 378株を対象とし, 同時にofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) の抗菌力についても測定し, 比較検討した。Staphylococcus spp., Streptococcus spp., Enterococcus faecalisを含むグラム陽性菌に対してはBLFXの抗菌力が最も優れていた。腸内細菌科ならびにその他の菌種に対する抗菌力はCPFXが最も強く, ついでOFLX, BLFXが最も弱かった。しかしMoraxella catarrhalis, Haemophilus influenzaeに対するBLFXの抗菌力は, OFLxにほぼ等しかった。
    臨床的検討は肺炎2例, 慢性気管支炎の急性増悪1例, 肺気腫への感染1例, 気管支拡張症への感染1例, 計5例について行った。分離菌中起炎菌と考えられる菌種はStreptococcus pneumniae1例, H. influenzae 1例, Staphylococcus aunus 1例の3菌種である。BLFXの投与量は1回200mg 1日2回, 経口的に9~15日間投与した。著効2例, 有効3例であった。分離された3菌種はすべて除菌された。副作用, 臨床検査値の異常化はみられなかった。
  • 澤江 義郎, 岡田 薫, 高木 宏治, 三角 博康, 下野 信行, 久保井 礼, 江口 克彦, 仁保 喜之
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 253-258
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口用キノロン系薬のbalofloxacin (BLFX) について基礎的, 臨床的検討を行った。(1) 九州大学第一内科入院患者由来の11種247株に対するBLFXの最小発育阻止濃度 (MIC) は, グラム陽性菌のStaphylococcus aureus, Enterococcus faecalisに対しては対照薬のtosufloxacinとほぼ同等で, ofloxacin, ciprofloxacinよりも2管ないしそれ以上すぐれていた。一方, Escherichiacoli, Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter spp.Proteus spp.等のグラム陰性桿菌に対しては対照薬にやや劣るものの, MIC90はすべて3.13μg/ml以下であった。しかし, Pseudomonas aeruginosaに対してはMIC50, MIC90がそれぞれ6.25, 50μg/mlとやや劣った。(2) 臨床的検討では1回100~200mg1日2回を4~21日, 10例 (うち2例は同一症例) の患者に経口投与し, 呼吸器感染症7例では著効1例, 有効5例, やや有効1例であった。また, 大腸炎1例は有効, 膀胱炎2例は著効, 有効各1例であった。本剤投与に起因すると思われる副作用, 臨床検査値の異常変動は1例も認められなかった。
  • 掛屋 弘, 澤井 豊光, 福田 美穂, 朝野 和典, 古賀 宏延, 河野 茂, 原 耕平, 餅田 親子, 伊折 文秋, 賀来 満夫, 松瀬 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 259-264
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口ニューキノロン系抗菌薬balofloxacin (BLFX) について, 基礎的ならびに臨床的検討を行い, 次の結果を得た。
    1) 抗菌活性: 臨床分離株17菌種602株に対する最小発育阻止濃度を測定し, 他5薬剤 [ciprofloxacin (CPFX), tosufloxacin (TFLX), ofloxacin (OFLX), sparfloxacin (SPFX), norfloxacin (NFLX) 1と比較検討した。その結果, 本剤はグラム陽性菌に対しては他の5薬剤に比べ優れた抗菌活性を有し, 一部のグラム陰性菌に対しても他の薬剤と同等の優れた抗菌活性を認めた。
    2) 臨床的検討: 呼吸器感染症患者8例に対して本剤を投与し, 臨床効果および副作用について検討した。総合判定では, 8例中著効2例, 有効2例, やや有効2例, 判定不能2例で, 良好な成績が得られた。副作用は, 全例で認められなかった。臨床検査値異常としては, GPT上昇が1例, ヘマトクリット低下が1例に認められた。これらの臨床検査値異常は一過性かつ軽度であり, 重篤な症状を呈したものはなく, 本剤の安全性が示唆された。
  • 外来診療, 特にStreptococcus pneumoniaeへの有用性
    真崎 宏則他
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 265-274
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Balofloxacin (BLFX) について抗菌力, 体内動態, 呼吸器感染症における臨床的有用性を検討し新知見を得た。
    呼吸器病原性が明確な菌株のBLFXのMIC50, MIC90値 (μg/ml) は, Haemophilus influenzae (33株) に対して0.025, 0.05と極めて優れ, Streptococcus pneumoniae (49株) に対しては, 0.39, 0.78と既存の新キノロン薬に比し優れていた。Moraxella (Branhamella) catarrhalis (39株) は, 0.2, 0.2, Pseudomonas aeruginosa (43株) は, 12.5, 25, Staphylococcus aureus (53株) は, 0.78, 12.5であった。
    4症例での最高喀痰中濃度は0.36~3.3μg/mlで, 既存の新キノロン系抗菌薬と同等であった。
    11症例12エピソードの臨床効果 (有効率) は, 急性呼吸器感染症; 100%, 慢性呼吸器感染症; 66.7%を示し, 全体で75%と良好であった。起炎菌9株中P. aeruginosa 1株を除く8株が消失し, 起炎菌消失率; 88.9%と極めて優れていた。投与量別有効率は, 1回100mg, 1日2回投与; 100%, 1回200mg, 1日2回投与; 62.5%であった。副作用, 臨床検査値異常は1例も認められなかった。
    BLFXは, 急性および慢性呼吸器感染症において, 1回100ないし200mg, 1日2回投与で従来の新キノロン薬と同等の優れた臨床効果を示した。特にS. pneumoniaeに対する抗菌力が強く, 喀痰中濃度が良好である点は, 従来の新キノロン薬の弱点を克服する可能性を有しており. 臨床的有用性が大いに期待される薬剤であると結論される。
  • 山崎 透, 後藤 陽一郎, 生田 真澄, 平松 和史, 時松 一成, 一宮 朋来, 永井 寛之, 那須 勝, 後藤 純, 北川 和生, 井上 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 275-280
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいキノロン薬balofloxacin (BLFX) について臨床分離菌に対する抗菌力の測定および呼吸器感染症に対する臨床効果を検討した。
    1. 抗菌力: 12菌種, 516株について日本化学療法学会の方法により最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 同時に測定したonoxacin (OFLX), lomefloxacin (LFLX) およびtosunoxacin (TFLX) と比較検討した。
    その結果, BLFXは全般的にグラム陽性菌に対してはTFLXとほぼ同等, OFLX, LFLXに比して2~5管すぐれていた。一方, グラム陰性菌に対しては対照薬に比してやや劣るものの, 臨床効果を十分期待できる成績であった。
    2. 血中ならびに喀痰中への移行濃度: 本剤100mgを経口投与した時の血中濃度は2時間後に1.22μg/mlのピーク値を示した。また喀痰中濃度は投与後3~4時間でピーク値0.84μg/mlが得られた。最高血中濃度に対する最高喀痰中濃度比は0.69であった。
    3. 臨床成績: 効果判定のできた13例 (急性気管支炎1例, 慢性気管支炎の急性増悪8例, 気管支拡張症の感染3例, 慢性呼吸器疾患の二次感染1例) の臨床効果は著効1例, 有効9例, やや有効2例, 無効1例, 有効率76.9%(10/13) であった。細菌学的効果は2/3 (Psendomonas aeruginosa1/2, Haemophilus influenzae1/1) であった。本剤を投与した15症例で頭痛および嘔気-嘔吐が各1例認められたがいずれも軽度であった。本剤投与によると思われる臨床検査値異常は1例も認められなかった。
  • 健山 正男, 普久原 浩, 伊良部 勇栄, 稲留 潤, 我謝 道弘, 中村 浩明, 兼島 洋, 斎藤 厚, 草野 展周, 仲宗根 勇
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 281-287
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新経口キノロン系抗菌薬であるbalofloxacin (BLFX) について, 基礎的, 臨床的検討を行った。
    基礎的検討: Legionella pneumophilaを含む臨床分離株15菌種, 397株およびLegionella spp. 標準株41株について, 本薬剤とofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), tosufloxacin (TFLX) およびsparfloxacin (SPFX) の抗菌力を日本化学療法学会標準法にて測定し, 比較検討した。BLFXはグラム陽性菌に対しTFLXおよびSPFXとほぼ同等の最も優れた抗菌力を示した。特にMRSAに対しては比較薬中最も優れた抗菌力を示した。グラム陰性菌ではBLFXのMIC90はおおむねOFLXと同等かやや劣る成績であった。
    臨床的検討: 呼吸器感染症10例 (細菌性肺炎3例, 感染を伴う気管支拡張症1例, COPD (慢性閉塞性肺疾患) の急性増悪4例, マイコプラズマ肺炎2例) を対象に本薬剤1日100mg~200mgを1日1回ないし2回投与した。投与期間は7~14日間であった。臨床効果は著効3例, 有効7例であり全例が有効以上であった。細菌学的効果の検討では, 10例中5例より起炎菌を検出し, 内訳はStreptococcus pneumoniae 2例, Klebsiella pmeumoniae, Enterobacter cloacae, Haemophilus influenzae各1例検出し, 治療後全例除菌できた。菌交代現象はH. influenzaeよりPseudomronasaeruginosaへの交代が1例認められた。
    臨床検査値異常は好酸球増多1例, GOT・GPT上昇が2例, GOT・GPT・ALP上昇が1例に認められたが, いずれも軽度かつ一過性で経過観察のみで正常値に復した。随伴症状は認められなかった。
    以上よりBLFXは呼吸器感染症に対して有用な経口抗菌薬であると考えられた。
  • 立木 仁, 広瀬 崇興, 熊本 悦明
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 288-293
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口用ニューキノロン薬であるbalofloxacin (BLFX) について基礎的, 臨床的検討を行った。
    基礎的検討については尿路感染症患者より分離されたmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus, methicillin-resistant S. aureus, Staphylococcus epidermidis, Enteroceccus faecalis, Enterococcus faecium, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Indole陽性Proteus spp., Enterobacter spp., Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaの12菌種581株についてBLFXのMICをofloxacin (OFLX), tosufloxacin (TFLX), ciprofloxacin (CPFX) と比較した。
    グラム陽性球菌に対するBLFXのMIC90は8~16μg/mlで他薬と比較して優れた抗菌力を示した。グラム陰性桿菌に対するMIC90は0.125~64μg/mlで他薬と同等もしくはやや劣る抗菌力を示した。
    臨床的検討については急性単純性膀胱炎10例, 複雑性尿路感染症6例, クラミジア性尿道炎が1例の計17例を対象に実施し, UTI薬効評価基準に合致した症例の総合臨床効果は急性単純性膀胱炎3例すべてが著効, 複雑性尿路感染症4例では著効2例, 無効2例, クラミジア性尿道炎1例は著効であった。
    副作用は17例中3例に認められ, 内容はそれぞれ悪心・胃部痛, 頭痛・動悸, 発疹であり, 服薬中止もしくは継続で症状は消失した。臨床検査値異常は見られなかった。以上より, BLFXは尿路感染症に有用性が高いと考えられた。
  • 清田 浩, 町田 豊平, 大石 幸彦, 小野寺 昭一, 鈴木 博雄, 後藤 博一, 高見澤 重教, 斎藤 賢一, 三谷 比呂志, 川原 元, ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 294-298
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    balofloxacin (BLFX, 治験略号Q-35) の尿路感染症に対する有用性を明らかにする目的で, 基礎的には本剤の尿中抗菌力と白血球殺菌能に及ぼす影響について, また, 臨床的には慢性複雑性尿路感染症に対し本剤を投与し, その有効性と安全性について検討した。
    1. 基礎的検討: pH, マグネシウムおよびカルシウム濃度を変化させた健常人の尿を培地として, 本剤のEscherichia coli NIHJ JC-2およびPseudomonas aeruginosa 18sに対する最殺菌濃度 (minimum bactericidal concentration; MBC) を測定したところ, 尿培地のpHが高い程, また, マグネシウム濃度が低い程被験菌2株に対するMBCは低くなった。しかし, 尿培地のカルシウム濃度は本剤の被験菌株に対するMBCに影響を及ぼさなかった。また, 好中球と単球の活性酸素産生能に及ぼす本剤の影響をchemiluminescence法により検討したところ, 好中球の活性酸素産生能は本剤10μg/ml, 100μg/ml存在下で増強された。しかし, 単球の活性酸素産生能は本剤10μg/mlで増強されたものの, 100μg/ml存在下では逆に抑制された。
    2. 臨床的検討: 急性単純性膀胱炎2例に対しては, 本剤100mgを1日2回, 3日間, 慢性複雑性尿路感染症患者5例 (慢性複雑性腎盂腎炎3例, 慢性複雑性膀胱炎2例) に対しては, 本剤100mgから400mgを1日1ないし2回, 5日間投与し, その有効性をUTI薬効評価基準および主治医により判定した。また, 本剤投与による自他覚的副作用あるいは臨床検査値異常の有無を観察し, 本剤の安全性を検討した。UTI薬効評価基準による判定では, 急性単純性膀胱炎に対しては, 2例とも著効で, 複雑性尿路感染症に対しては著効2例, 無効3例であった。本剤投与による自他覚的副作用および臨床検査値異常は認められなかった。
    以上より, 本剤は尿路感染症に対する有効性はやや低かったが, 尿をアルカリ化し, 利尿によりマグネシウム濃度を低くすることで, その有効性が高められることが期待された。
  • 小野寺 昭一, 清田 浩, 後藤 博一, 川原 元, 五十嵐 宏, 大石 幸彦, 岡崎 武二郎
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 299-303
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口用キノロン薬balofloxacinの尿道炎に対する臨床効果について検討した。対象は淋菌性尿道炎20例, 淋菌性クラミジア性尿道炎4例, クラミジア性尿道炎17例, 非淋菌性非クラミジア性尿道炎26例の計67例であった。本剤の投与方法は, 淋菌性尿道炎には1回200mg, 非淋菌性尿道炎には1回100mgをそれぞれ1日2回, 2日~14日間経口投与した。
    UTI薬効評価基準により評価可能な35例では, 淋菌性尿道炎で著効9例, 有効8例, 淋菌性クラミジア性尿道炎で有効3例, クラミジア性尿道炎で著効13例, 有効2例で, 有効率は100%であった。
    非淋菌性非クラミジア性尿道炎に対する主治医判定は, 著効24例, 有効2例で, 有効率は100%であった。投与前に分離された淋菌21株に対する本剤の抗菌力は, ofloxacin, norfloxacinおよびcipronoxacinと同等か, やや優れた活性を示した。副作用は全例に認められなかった。
    以上の成績より, 本剤は淋菌性およびクラミジア性尿道炎に対して安全で有用な新規経口用キノロン薬であると考えられた。
  • 斉藤 功, 西古 靖
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 304-309
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたキノロン系抗菌薬であるbalofloxacin (BLFX) の尿路・性器感染症に対する有用性を明らかにする目的で, 本薬の基礎的・臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    淋菌性尿道炎5例, クラミジア性尿道炎7例, 非淋菌・非クラミジア性尿道炎21例, 前立腺炎2例, 精巣上体炎2例に対し, 本薬1回100~200mgを1日2回を原則として3~14日間投与した。その結果, 効果判定が可能であった尿道炎29例のうち淋菌性, クラミジア性尿道炎については, 全例著効または有効であった。非淋菌・非クラミジア性尿道炎については, 84.2%の有効率であった。前立腺炎2例および精巣上体炎2例については, 全例有効であった。なお, 自他覚的副作用は1例も認められなかった。
    Neisseria gonorrhoeaeに対するBLFXのMIC90は0.39μg/mlであり, 対照薬であるonoxacin (OFLX), cipronoxacin (CPFX) とほぼ同等であり, Chlamydia trachomatisに対しては0.063μg/mlのMIC90を示し, sparfloxacin (SPFX) には劣るもののOFLX, CPFXより, 優れた抗菌力を示した。
    BLFX 200mg単回投与後の前立腺組織内濃度, 組織内濃度血清比は2時間後の4例の平均値で2.68μg/g, 1.95で, 13時間後でも1.35μg/g, 1.88であった。
  • 鈴木 恵三, 堀場 優樹, 石川 清仁, 加藤 忍, 名出 頼男, 星長 清隆, 柳岡 正範, 田中 利幸, 置塩 則彦
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 310-316
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたニューキノロン系経口抗菌薬, balofloxacin (BLFX) の試験管内抗菌力, 前立腺液移行および尿路感染症 (UTI) に対する有用性について検討を行った。
    1) 尿路感染症から分離した2菌種130株に対する本剤のMICを測定した。対照にはnornoxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), sparfloxacin (SPFX), astromicin (ASTM) を用いた。Pseudomonas aeruginosaに対する抗菌活性は他剤と比べて弱かった。しかしEnterococcus faecalisに対しては, SPFXと同様に最も優れていた。
    2) BLFX 200mg単回投与後, 1時間目の前立腺液中濃度は035μg/ml (n=7) で, 2~3時間内では, 平均0.38μg/ml (n=3) であり, 対血清比はそれぞれ0, 35, 0.35であった。
    3) UTI症例38例に対する主治医評価は, 急性単純性UTI14例に92.8%, 複雑性UTI23例に69.6%, 前立腺炎1例に100%の有効率であった。また, UTI薬効評価基準に合致した急性単純性UTI12例, 複雑性UTI21例に対する有効率はそれぞれ100%, 71.4%で, 細菌学的効果では菌消失率がそれぞれ, 92.9%, 73.9%であった。
    自他覚的副作用は, 頭痛, 倦怠感, 胃部不快感が1例, 頭重感, 下痢が各1例ずつに認められたが, 投与中止あるいは終了にて自然消失した。臨床検査値の異常は1例も認められなかった。
  • 石原 哲, 原田 吉将, 小出 卓也, 米田 尚生, 岩田 英樹, 岡野 学, 伊藤 康久, 斉藤 昭弘, 坂 義人, 河田 幸道, 尾関 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 317-323
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口用キノロン系抗菌薬balofloxacinの尿路感染症に対する有用性を検討する目的で, 臨床分離株に対する抗菌力および臨床効果の検討を行ない以下の結論を得た。
    (1) 抗菌力: 教室保存の尿路由来の臨床分離株について, 本剤と対照薬としてnorfloxacin (NFLX), ofioxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) のMICを本学会標準法にて測定した。Methicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA), methicillin-resistant S. aureus (MRSA), Staphylococcus eptdermidis, Enterococcus faecalisに対する本剤のMIC90は順に1.56, 6.25, 1.56, 12.5μg/mlであり, いずれも他3剤より優れていた。グラム陰性桿菌に対してはNFLX, OFLXと概ね同程度で, CPFXに次ぐ成績であった。
    (2) 臨床的検討: 急性単純性膀胱炎4例に対しては本剤1回100または200mgを1日2回3日間, 複雑性尿路感染症19例に対しては本剤1回100, 200または300mgを1日2回, 5日から7日間, 経口投与し, 臨床効果ならびに副作用の検討を行なった。UTI薬効評価基準に従った効果判定によると, 急性単純性膀胱炎に対しては4例全例が著効, 複雑性尿路感染症に対しては判定可能であった17例中, 著効13例, 有効1例, 無効3例であった。また, 本剤による副作用が3例, 臨床検査値異常が3例発現した。副作用の内訳は, 上腹部不快感, 呼吸困難・発赤, 冷汗・不眠で, このうち発赤が中等度, この他は軽度であった。また, 臨床検査値異常の内訳は, 好酸球増多, リンパ球減少, 単球減少の各1例であった。
    以上より, 本剤は尿路感染症に対し, 有効な薬剤と考えられた。
  • 竹中 皇, 藤田 竜二, 渡辺 豊彦, 門田 晃一, 桜本 耕司, 林 俊秀, 畠 和宏, 小野 憲昭, 那須 良次, 公文 裕巳, 大森 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 324-329
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規ニューキノロン系薬剤balofloxacinの尿路感染症由来菌に対する抗菌力ならびにその臨床効果を検討した。
    1) 抗菌力: 尿路感染症由来教室保存株14菌種210株に対する本剤のMICを測定し, 同系薬剤であるofloxacin (OFLX) およびnorfloxacin (NFLX) の抗菌力と比較検討した。
    本剤のグラム陽性菌に対する抗菌力は比較対照薬剤に比し優れており, グラム陰性菌に対しては, 全体として, OFLXには若干劣るものの, NFLXとほぼ同等の抗菌力を示した。
    2) 臨床効果: 急性単純性膀胱炎4例, 複雑性尿路感染症6例および急性細菌性前立腺炎1例に対し, 本剤を1回量100ないし200mg, 1日1ないし2回, 3から8日間投与し, UTI薬効評価基準に準じて臨床的検討を行った。急性単純性膀胱炎症例では判定可能であった3例のうち2例が著効, 1例が有効であった。複雑性尿路感染症に対しては著効3例, 有効1例, 無効1例であった。急性細菌性前立腺炎の1例に対しては有効であった。複雑性UTIにおける細菌学的効果では12株中11株が消失し, 除菌率は91.7%であった。
    3) 副作用: 自・他覚的副作用は, 1例も認めず, 臨床検査値の異常変動も認められなかった。
    以上の成績より, 本剤は尿路感染症に対する有用性が示唆された。
  • 後藤 俊弘, 江田 晋一, 北川 敏博, 牧之瀬 信一, 山内 大司, 水間 良裕, 川原 和也, 川原 元司, 大井 好忠
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 330-335
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたキノロン系抗菌薬であるbalofloxacinの尿路感染症 (UTI) 分離菌11菌種 (各30株) に対する抗菌力, 200mg単回経口投与後の髄液中移行, ならびにUTIに対する有効性・安全性を検討した。
    本剤のMIC90 (μg/ml) は, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), coagulase-negative staphylococci (CNS), Entemmus faecalisで各6.25, 6.25, 3.13であり, 対照薬のofloxacin (OFLX), tosufloxacin (TFLX) よりも強い抗菌力を示した。グラム陰性菌に対する本剤の抗菌力は対照薬のそれとほぼ同等であったが, Sernatia marcescms, Pseudomonas aeruginosaのMIC90はいずれも100μg/ml以上であった。本剤200mg単回投与2時間後の髄液中濃度は, 4名の平均で0.10μg/mlであり, 対血清比は0.05であった。
    UTI薬効評価基準に合致した6例の急性単純性膀胱炎に対する本剤の総合臨床効果は, 著効4例, 有効2例であり, 投与前分離菌9株は全て除菌された。UTI薬効評価基準に合致した複雑性UTI7例に対する総合臨床効果は, 著効3例, 無効4例であった。細菌学的には7株中4株が除菌されたが, P. aeruginosa 2株とS. marcescens 1株が存続した。自他覚的副作用は1例も認められなかったが, 臨床検査値の異常変動としてALPの上昇 (8.1→11.3) が1例に認められた。
  • 澤田 康夫, 樟本 賢首, 橋本 伊久雄
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 336-340
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口キノロン薬であるbalofloxacin (BLFX) について, 外科領域感染症での体内動態と臨床的検討を行った。
    体内動態の検討は, 胆石症5例, 総胆管結石症2例および急性壊疽性虫垂炎1例, 急性虫垂炎に由来した汎発性腹膜炎2例を対象とした。術前にBLFX 200mgを単回経口投与し, 術中に体液・組織を採取した。胆嚢胆汁濃度の対血漿中濃度比は0.15~33.4, 総胆管胆汁濃度のそれは11.71~31.11, 胆嚢壁内濃度のそれは0.93~2.10であり, 胆汁への移行が良好なことが示された。また, 腹腔内滲出液中濃度は0.86, 2.73μg/ml, 虫垂組織内濃度の対血漿中濃度比は1.32~1.96であった。
    臨床的検討では感染性粉瘤7例, 皮下膿瘍1例, 乳腺炎1例, 手術創の二次感染1例の10症例に対して本薬を使用した。その結果, 著効6例, 有効4例で有効率100%であった。副作用はいずれの症例でも認められなかった。臨床検査値の異常変動では, GPTの軽度上昇を示した例が1例にみられたが, その他の検査値で異常値を示した例は認められなかった。
  • 国松 正彦, 岩井 重富, 古畑 久, 大塚 一秀, 中川 良英, 裴 正徳, 佐藤 毅, 加藤 高明, 新井 尚之, 村中 博, 加沢 玉 ...
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 341-345
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    胆石摘出術施行患者に新規経口キノロン薬balofloxacin (BLFX) 200mgを経口単回投与し経時的に濃度測定した。血清中濃度は1時間後 (1.11μg/ml), 3時間後 (1.27μg/ml), 5.5時間後 (1.11μg/ml), 胆汁中濃度は3時間後 (16.52μg/ml), 5.5時間後 (20.07μg/ml) で血中より13~18倍高い移行を示した。胆嚢組織内濃度は3時間後 (1.92μg/ml) であった。
    臨床分離株を用い抗菌力を検討した結果, BLFXはcefaclor, tosufloxacin, ofloxacinと同等か優れた抗菌力を示した。
    外科感染症7例 (肛門周囲膿瘍4例, 胆管炎1例, 乳腺炎1例, 下腹部節1例) に本剤1回200mg, 1日2回投与したところ, 臨床効果は, 著効2例, 有効5例であった。4例からPeptostreptococcus anaerobius 2株, Escherichia coli 2株, Clostridium sp. 1株, Bacteroides sp. 1株が検出され, 投与後全株が除菌された。
    副作用は1例に腹部膨満感, 1例に心窩部痛がみられたが, 臨床検査値の異常変動は認められなかった。
  • 中山 一誠, 秋枝 洋三, 山地 恵美子, 平田 浩子, 川口 広, 渡辺 哲弥
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 346-352
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規経口用キノロン薬balofloxacin (BLFX) について, 外科感染症, 特に皮膚・軟部組織感染症に対して臨床検討を行った。対象疾患は, 乳腺炎, 創感染, 皮下膿瘍, 肛門周囲膿瘍, 蜂巣炎, 化膿性汗腺炎, および毛髪洞炎の13症例である。感染症の重症度は軽症8例, 中等症5例であった。投与量は, BLFX 100mgまたは200mgを1日1回または2回, 7日~12日間投与し, 臨床的有用性について検討した。
    主治医判定による臨床効果は, 著効5例, 有効4例, やや有効2例, および無効2例であり, 有効率69.2%であった。起炎菌別の臨床効果では, 著効5例, 有効4例, 無効1例で, 有効率90.0%であった。
    細菌学的検討は, 10症例から16株が分離された。分離菌別細菌学的効果は, 10例中, 消失9例, 部分消失1例であり, 消失率90%であった。
    副作用は軽度の下痢・頭痛が1例に発現したが, 1日用量 (分2) を400mgから200mgに減量することにより, 治療を継続しながら症状は消失した。
  • 岡部 紀正, 吉田 和彦, 松本 文夫, 高橋 孝行
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 353-358
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    胆道疾患患者24名にbalofloxacin 200mgを単回経口投与し, 経時的に血中, 胆汁中ならびに胆嚢組織内濃度を測定した。最高血中濃度は投与1~4時間後に1μg/ml以上となり, 高い例では2.6~3.0μg/mlに達した。これに比し, 総胆管胆汁中濃度は投与6~8時間後に4~18μg/mlのplateauに達し, 12時間後までほぼその濃度を持続した。胆嚢壁組織内濃度は血中濃度と同等かやや高い濃度が測定された。胆嚢胆汁中にはグルクロン酸抱合代謝物が3.8~90.0%存在し, 腸肝循環の可能性が示唆された。
  • 由良 二郎他
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 359-368
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたキノロン系経口抗菌薬であるbalofloxacinについて外科領域における基礎的, 臨床的検討を行い以下の成績を得た。
    1) 胆道系疾患の3例に手術前本剤100mgを経口投与し, 2時間後の組織内, および体液内移行を検討した。測定し得た2例の濃度はそれぞれ血清中0.05, 0.98μg/ml, 胆嚢壁中0.05, 1.52μg/g, 胆嚢胆汁中0.06, 8.74μg/ml, 胆管胆汁中0.66, 17.34μg/ml, 皮下脂肪中0, 0.31μg/g, 腹水中0.07, 1.16μg/mlであった。
    2) 本剤の外科領域感染症に対する臨床効果は21例中著効3例, 有効13例, やや有効4例, 無効1例で全体の有効率は76.2%(16/21) であった。副作用および臨床検査値の異常変動は1例も認められなかった。
    以上の成績から本剤は外科領域感染症に対して有用な薬剤であると思われる。
  • 森本 健, 木下 博明, 中谷 守一, 上田 隆美, 藤本 幹夫, 大森 国雄
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 369-382
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Balofloxacin (BLFX) のヒト胆汁移行と臨床使用成績について検討した。
    胆汁ドレナージ中の5例にBLFX 200mg内服させたところ, 血漿では4~6時間で1.01~1.54μg/ml, 胆汁では2-4~4-6時間で4.61~23.13μg/mlのピークをみとめた。
    臨床効果判定が行われた51例では著効18例, 有効24例, やや有効6例, 無効3例, 有効率82%であった。細菌学的効果は分離菌毎と宿主毎に判定し, 分離菌別の細菌学的効果判定が行われた50株では消失47株, 不変3株, 消失率94%であった。起炎菌の分離状態別の細菌学的効果判定が行われた33例では消失29例, 減少1例, 菌交代2例, 不変1例, 消失率94%であった。分離菌別のMIC測定が行われた54株では0.39μg/ml以上の28株, 消失状況の判定が行われた42株では39株 (93%), MIC 0.20μg/ml以下の株はすべて消失した。
    下痢2例, 皮疹1例を認めたが, 本剤と関係を示唆する臨床検査値異常はなかった。
    以上, BLFXは皮膚軟部組織感染症さらに体内動態データをも含め経口可能例での胆道感染に使用して極めて安全で高い有効率が期待できる薬剤である。
  • 谷村 弘, 岩橋 誠, 有井 一雄
    1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 383-386
    発行日: 1995/11/27
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口用キノロン薬balofloxacin (BLFX) の胆汁中および胆嚢組織内移行について検討した。
    胆嚢摘出術予定3例にBLFX 100mgを術前3時間に単回経口投与したところ, 胆嚢組織内濃度は0.97~3.67μg/gと血中濃度0.40~1.23μg/mlの1.8~5.5倍高く, また, 胆嚢胆汁中濃度は12.0~54.0μg/mlと数十倍高かった。T-tubeまたはPTCD-tube挿入各1例についてBLFX 200mg単回投与後, 経時的に採取した胆管胆汁中でも, T-tubeの症例では4時間で15.6μg/ml, 12時間で5.3μg/ml, PTCDの症例では6時間で5.84μg/ml, 24時間で3.61μg/mlと高濃度が持続した。また, 代謝物として胆汁中にはグルクロン酸抱合体が検出されたが, 血中や胆嚢組織からは検出されなかった。
    本剤は高濃度に胆汁中へ移行することから, 胆道感染症の治療に有用なキノロン薬の1つであると考える。
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