Helicobacter pyloriに対する抗菌薬のMICをCO
2培養を行わずに測定可能な半流動培地による測定法を考案し, 正確性について詳細な検討を行った。従来から用いられている寒天平板希釈法は
H. pyloriの発育性の問題から, CO
2 (10~15%) 培養を必要とした。しかしそのCO
2によって寒天培地中のpHが低下し, マクロライド系抗菌薬の
H. pyloriに対するMIC値は, 中性での結果と比較して8~16倍高い値を示した。したがって, 本菌の発育条件を考慮し, CO, を用いない半流動培地での微好気条件による測定法を考案した。半流動培地は本菌が十分に発育し, 日本化学療法学会標準法に準じたMueller Hinton broth (Difco) に0.2% agarを加えたものを測定培地とした。約10
7CFU/mlとなるように試験菌を接種し, 35℃, 48時間好気培養を行い培地中層部での発育を判定した。その結果, 用いた抗菌薬amoxicillin, clarithromycin, azithromycinおよびciprofloxacinのMIC測定における日差再現性は良好で, いずれの薬剤も2倍以内と安定な成績が得られた。NCCLS精度管理基準に従い管理用菌株として
Staphylococcus aureus ATCC 29213および
Escherichia coli ATCC 25922を用い同条件で前記4薬剤のMICを測定した結果, ciprofloxacinの後者に対するMICが0.03μg/mlと1管 (2倍) 範囲を外れた以外はすべて基準内であった。このことから本測定法は
H. pyloriのMIC測定に適しNCCLSの精度管理基準を同時に満たすものと考えられた。
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