日本化学療法学会雑誌
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44 巻, 4 号
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  • 南 新三郎, 赤間 美穂, 伊予部 志津子, 三橋 進
    1996 年 44 巻 4 号 p. 199-212
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1988年10月から1992年1月の約3年の間にimipeneln (IPM) 分解性β-lactamase産生緑膿菌9株が, 富山市民病院の脳外科病棟に入院中の異なる9名の患者から分離された。9株中6株が分離された1991年に, この脳外科病棟における抗緑膿菌性β-lactam剤 (特にIPM) の使用量が急増していた。IPM分解性β-lactamase産生株はIPMに低度 (MIC=6.25μg/ml) から高度耐性 (MIC=100μg/ml) で, ceftazidime, cefbulodin等の抗緑膿菌性セフェムにはすべて高度耐性であった。また, 9株中4株はpiperacillin (PIPC) に, また5株はaztreonam (AZT) に感受性であった。IPM分解性β-lactamaseは分子量28,000, 等電点9.5, 亜鉛要求性でいわゆるclass Bに属する基質特異性の広い酵素であった。β-lactamase産生遺伝子は伝達性のプラスミド上にコードされており, 産生様式は構成型であった。緑膿菌への伝達株ではIPM低度耐性, およびセフェム高度耐性は発現したが, IPM高度耐性, PIPCおよびAZT耐性は発現しなかった。また, IPM分解性β-lactamase産生遺伝子を大腸菌にクローニングした結果, 大腸菌においても緑膿菌伝達株の場合と同様の耐性が発現した。実験的変異株, 耐性伝達試験, β-lactamase産生および外膜蛋白を調べた結果, IPM高度耐性は外膜蛋白D2欠損にIPM分解性β-lactamase産生が加わったことにもとつくこと, PIPCおよびAZT耐性はIPM分解性β-lactamase産生とは関連せず, 染色体性cephalosporinaseの脱抑制型産生にもとつくことが明らかとなった。IPM分解性β-lactamase産生緑膿菌の血清型はすべてB型であったが, 9株中3株のみ血清型, ピオシン型およびファージ型が一致した。以上, IPM分解性β-lactamaseを産生する特殊な緑膿菌の同一病棟における継続的な分離は, 抗緑膿菌性β-lactam剤 (特にIPM) の使用量に関連している可能性が示唆された。
  • 波多野 和男, 若井 芳美, 東 廉之, 渡辺 裕二
    1996 年 44 巻 4 号 p. 213-219
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ヒト血漿中薬剤濃度推移をマウスの血漿中濃度に再現するin vivo pharmacokinetic modelを用いて, methicillin耐性Staphylococeus aureus (MRSA) 呼吸器感染に対するvancomycin (VCM) とcefoselis (CFSL) の併用治療効果を検討し, 本併用の臨床での有用性を予測した。CFSLの1gまたはVCMの250mg単独での治療効果に対してこれらの同時併用では明らかに治療効果の増強が認められ, CFSLを4時間先行後VCMで治療するとさらに高い治療効果が認められた。一方, CFSL, の1gとVCMの125mgを同時併用した場合の治療効果はVCMの500mg単独時の治療効果と同等で, 併用時のVCMを250mgとしたときの治療効果はVCMの500mg単独時のそれより優れた。また, CFSLとVCMの併用効果をflomoxef (FMOX) とVCMの併用時のそれと比較すると, 同時投与およびβ-lactam先行後VCM併用投与のいずれの場合においてもCFSLとVCMの併用による治療効果の方が優れた。以上の結果はMRSAの臨床治療におけるVCMとCFSLの併用の有用性が高いことを示唆した。
  • 高島 勝典, 飯沢 祐史, 中尾 雅文
    1996 年 44 巻 4 号 p. 220-226
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    好中球減少マウスにStaphylococcus amus TY5312とPseudomonas aeruginosa P9をそれぞれ104と10 CFU (1,000: 1) の組み合わせで点鼻接種することにより混合肺感染モデルを作製した。菌接種直後から両菌は肺内で対数的に増殖し, 20時間後の肺内生菌数はともに107 CFUに達した。電子顕微鏡により感染マウスの肺を観察すると, 画菌が肺胞ごとに, あるいは同一肺胞内でも様み分けている像が多数認められた。このS. aureus TY 5312とP. aeruginosa P9の混合肺感染に対してoefozopran (CZOP) を投与すると, 肺内生菌数は両菌とも顕著に減少し, 感染マウスの肺の電顕像ではS. aureus TY5312の膨大化, P. aeruginosa P9の伸長化, さらには両菌が溶菌へと移行する様子が観察された。マウス生存率をもとにCZOPの治療効果をcefepime, cefpirome, ceftazidimeを対照薬として調べると, 50%のマウスを生残させるのに必要な薬剤量は対照薬の15~22mg/kgと比べてCZOPは3.11mg/kgと低く, CZOPの治療効果は対照薬より明らかに優れていた。以上の結果から, 免疫力が低下した患者におけるS. aureusP. aeruginosaの混合肺感染に対してCZOPが有効に働くことが示唆された。
  • 古西 満, 森 啓, 山中 貴世, 前田 光一, 三笠 桂一, 澤木 政好, 成田 亘啓, 吉岡 章, 藤村 吉博
    1996 年 44 巻 4 号 p. 227-230
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫不全ウイルス (Human immunode6ciency virus: HIV) 感染症に発症する呼吸器感染症ではカリニ肺炎がもっとも重要である。ペンタミジンはカリニ肺炎の予防・治療薬の1つであるが, 注射投与では全身性副作用が多いため, 吸入療法が試みられ, その有用性が報告されている。しかし吸入療法が呼吸機能におよぼす影響についての報告は少ないので, 我々はHIV感染者にペンタミジン吸入療法を施行し, 吸入療法前後にスパイロメーター, 吸入療法中にパルスオキシメーターを用いて呼吸機能の評価を試みる。対象はHIV感染を証明した症例12例 (平均年齢は33.2±9.4歳, 基礎疾患は全例血友病) で, ペンタミジン吸入療法の方法は超音波ネブライザーを使用し, 塩酸プロカテロール80μgを約5分間で吸入後, 蒸留水10mlで溶解したイセチオン酸ペンタミジン300mgを15~30分間で吸入させる。吸入療法前後の肺活量 (VC) は前が4,226.7±577.5ml, 後が4, 171.7±608.0ml, 1秒量 (FEV1.0) は前が3,233.3±699.1ml, 後が3,253.3±741.8ml, V25/Htは前が0.80±0.32l/sec/m, 後が0.79±0.351/sec/mで, いずれも統計学的に有意差は認めない。吸入療法中の酸素飽和度 (SpO2) は2症例で低下したが, 他の症例では変化はない。吸入療法中の脈拍数は全体に頻脈傾向を認めたが, 統計学的に有意な変化はない。副作用は吸入液の苦しみによる咽頭不快がもっとも多く, 重篤なものはない。したがってHIV感染者でのペンタミジン吸入療法は呼吸機能におよぼす影響は少なく, 比較的に安全に行えることが明らかになったが, 吸入中酸素飽和度をモニタリングすることが望ましいと考える。
  • 島田 馨他
    1996 年 44 巻 4 号 p. 231-247
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規ニューキノロン系抗菌薬pazufloxacin (PZFX) の呼吸器感染症に対する用量を検討する目的で, 慢性気道感染症 (慢性気管支炎と気管支拡張症) を対象に, tosufloxacin (TFLX) を対照薬として無作為割付けによる3群間比較試験を行った。PZFXは1日300mg (PZFX-300群) または600mg (PZFX-600群) を, TFLXは450mg (TFLX群) を, 1日3回に分割し, 原則として14日間服用した。
    1) 解析対象症例数: 総投与例数は104例 (PZEX-300群36例, PZFX-600群34例, TFILX群34例) で, 解析対象例数は臨床効果が94例 (PZFX-300群33例, PZEX-600群32例, TFLX群29例), 副作用が100例 (PZFX-300群34例, PZEX-600群33例, TFLX群33例), 臨床検査値異常が89例 (PZFX-300群31例, PZFX-600群29例, TFLX群29例), 有用性が95例 (PZEX-300群33例, PZFX-600群32例, TFLX群30例) であった。
    2) 臨床効果: 有効率はPZFX-300群76%(25/33例), PZFX-600群91%(29/32例), TFLX群83%(24/29例) であった。基礎疾患・合併症ありの症例での有効率は, PZEX-300群74%(17/23例), PZFX-600群95%(20/21例), TFLX群79%(15/19例) であった。
    3) 細菌学的効果: 菌消失率はPZFX-300群59%(13/22株), PZFX-600群82%(14/17株), TFLX群83%(19/23株) であった。
    4) 安全性: 副作用の発現率はPZFX-300群6%(2/34例), PZFX-600群3%(y33例), TFLX群6%(2/33例) で, いずれの群にも重篤な症状, 所見は認められなかった。臨床検査値異常の発現率はPZFX-300群6%(2/31例), PZFX-600群7%(2/29例), TFLX群7%(2/29例) で, いずれの変動値も軽度であった。
    5) 有用性: 有用率はPZFX-300群70%(23/33例), PZFX-600群88%(28/32例), TFLX群79%(23/29例) であった。
    以上の結果から慢性気道感染症に対するPZFXの適応用量幅は1日300mg~600mg (分3) と考えられた。
  • 永井 章夫, 長沢 峰子, 河村 泰仁, 児玉 卓也, 前花 淳子, 南 新三郎, 渡辺 泰雄, 成田 弘和, 清水 喜八郎
    1996 年 44 巻 4 号 p. 248-250
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    我々はvancomycin (VCM) とarbekacin (ABK) 誘発性のラット腎毒性に対してpiperacillin (PIPC) が軽減作用を示すことを報告したが, その後, 高橋・菅野は逆に増悪作用を示すという相反する結果を報告している。この原因を調べた結果, 高橋らの実験条件ではラット血液中で薬剤が析出し, 急性腎障害を起こすため, PIPCの腎毒性に対する作用を正しく評価できないものと考えられた。
  • 1996 年 44 巻 4 号 p. 258
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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