好中球は殺菌能, 遊走能そして貪食能に代表される機能を備えている。その好中球各機能に対する各種ニューキノロン薬の影響を薬剤濃度, 好中球との培養時間を変えて検討した。また, ニューキノロン薬の好中球内濃度を測定し, 好中球のもつ各機能との関係について検討を行った。健康成人の末梢血液より分離した好中球を4剤のニューキノロン薬ofloxacin (OFLX), levofloxacin (LVFX), sparfloxacin (SPFX), そしてprulifloxacin (PUFX) のそれぞれ0.625μg/ml, 2.5μg/ml, 10μg/ml濃度の存在下で, 0分, 10分, 20分, 30分間前培養した後, 好中球各機能を測定した。好中球内ニューキノロン薬濃度は,
Escherichia coli Kp株を検定菌としたPaper disk methodによるBioassay法にて測定した。それぞれの好中球機能の測定は, 好中球殺菌能は, 活性酸素産生能を指標としたchemiluminescence法を用いて, 好中球遊走能では, formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine (FMLP) を走化性因子としたBoyden chamber法を用いて, そして好中球貪食能は,
E. coli臨床株を用いてそれぞれ行った。測定した好中球機能においては, 好中球殺菌能, 好中球遊走能, 好中球貪食能のすべてにおいて, ニューキノロン薬濃度, 培養時間を増加させることにより, 好中球機能の増強が認められた。ニューキノロン薬の好中球内への移行は, 培養時間に比例して上昇がみられ, SPFX≧PUFX>LVFX≧OFLXの順であった。好中球内濃度と好中球各機能との関係を検討したところ, 好中球殺菌能・貪食能は, 高い相関を認め, 遊走能も一定の相関を認めた。検討したニューキノロン薬それぞれに, 好中球機能上昇が認められたことから, 好中球機能上昇と好中球内濃度との関連性が示唆された。
抄録全体を表示