日本化学療法学会雑誌
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46 巻, 12 号
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  • 井田 孝志, 蔵園 瑞代, 平野 文也, 井上 松久
    1998 年 46 巻 12 号 p. 479-483
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepime (CFPM) をはじめとした双極イオン構造を有するセフェム系薬 (cefpirome; CPR, cefo-zopran; CZOP) の抗緑膿菌活性をclassC型β-ラクタマーゼとの相互作用から, ceftazidime (CAZ) と比較検討した。classC型β-ラクタマーゼ非産生株や低度産生株に対する抗菌力はCZOPとCAZがやや優れ, 次いでCFPM, CPRの順であった。一方, classC型β-ラクタマーゼ高度産生株に対しては, いずれの薬剤も酵素産生量が高い株ほどMICの上昇が認められたが, その上昇率はCFPMでもっとも低かった。classC型β-ラクタマーゼ高度産生株から抽出・精製した酵素を用いて各薬剤の阻害定数 (Ki値) を測定したところ, CFPMがもっとも大きく, 次いでCZOP, CPR, CAZの順であった。各薬剤のclassC型β-ラクタマーゼ誘導能を測定したところ, 薬剤による大きな差は認められず, いずれの薬剤も10μg/ml以上の作用濃度で産生誘導が認められた。また, 耐性変異株の選択頻度はCFPMでもっとも低く, さきのKi値が小さな薬剤ほど耐性株が選択される頻度が高くなる傾向にあった。
  • 中崎 信彦, 内田 一弘, 平田 泰良, 井上 松久
    1998 年 46 巻 12 号 p. 484-490
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    われわれは当院の血液由来黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 130株の生物学的性状を調べ, そこから検出されたmethicillin resistant S. aureus (MRSA) についてvancomycin (VCM) とimipenem (IPM), meropenem (MEPM) による併用効果について検討を行った。また, アミノ配糖体系薬arbekacin (ABK) とIPMにつていも併用を検討した。MRSA102株 (78.5%) のコアグラーゼ型別はII型が95株 (93.1%) ともっとも多く, 次いでVII型が3株 (2.9%) であり, MSSA28株は, III型7株 (25%), VII型7株 (25%), II型6株 (21.4%), IV型4株 (14.3%) で型別不能が2株, IとV型が1株ずつであった。MRSAの40%がSEC型でありコアグラーゼII型-SEC型-TSST-1毒素陽性株が増加傾向にあった。VCMとIPMの併用では, 56%の株に対し優れた相乗効果を示し, 相加効果は43%であった。VCMとMEPMの併用では, 30%の株に対し相乗効果を示したもののVCMとIPMの併用より劣る結果であった。IPMとABKの併用では, 相乗効果や拮抗は認められず, 33%の株に対し相加効果を示した。以上の結果より, MRSAの多くが複数菌の1つとして分離されることを考えると, VCMとIPM, MEPMの併用はMRSAに対して有用と考えた。また, ABKとIPMの併用は, MRSAに対して併用効果を期待するのではなくMRSAと緑膿菌などのグラム陰性桿菌との複数菌感染の原因菌に対しての点にその意義が認められると考えられた。
  • 高橋 悟, 長山 義明, 斎藤 宣彦, 高尾 良洋, 山崎 顕, 佐古 兼一, 小林 輝明, 篠崎 公一
    1998 年 46 巻 12 号 p. 491-497
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対し抗菌力の強い塩酸バンコマイシン (VCM) を有効かつ安全に投与するため, ベイジアン法にもとつく投与設計を行い, その臨床評価を行った。1993年9月から1997年9月まで, 当院第3内科に入院中のVCM適応患者23例 (24コース) を対象とした。初回VCM, 500~1,000mg/doseを1~1.5時間かけて静注し, 12~48時間ごとの投与で開始した。原則として, 投与開始後96時間以内に投与前および投与終了後1時間に血中濃度を測定し, 投与法の検討を行った。Two compartment modelにもとづくRodvoldらの母集団パラメータ報告値を用いたベイジアン法により, 血中濃度が有効治療域となるように投与設計を行った。2点のみの測定値を用いたベイジアン法により解析した場合の投与前値の予測値は実測値より若干低値を示したが, 投与終了後1時間値の予測値は実測値と良く一致し, 良好な血中濃度の予測性が得られた。初期投与時の投与量は9.09~27.03 (16.03±5.46, mean±SD) mg/kg/doseで, 投与前値は9コース (37.5%) が, 投与終了後1時間値は8コース (33.3%) が有効治療域に位置した。一方, 投与設計後の最終投与量は9.73~31.58 (21.28±6.49, mean±SD) mg/kg/doseで, 投与前値は18コース (75%) が, 投与終了後1時間値は18コース (75%) が有効治療域に位置した。細菌学的検討では24コースから得られた30検体中18検体からMRSAが消失した。重症感染症患者を対象としており, 17コースで他の抗菌薬を併用しているが, 58.3%に臨床効果が得られ, 腎不全に陥った症例はみられなかった。VCMを有効かつ安全に投与するためには, 患者の病態によりパラメータが変動するため, 血中濃度を測定し, ベイジアン法にもとつく投与設計を行うことの重要性が示唆された。
  • 1. 急性上気道感染症群
    渡辺 彰, 三木 文雄, 大泉 耕太郎, 力富 直人, 古賀 宏延, 二木 芳人, 草野 展周, 齋藤 厚
    1998 年 46 巻 12 号 p. 498-505
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は, 日本化学療法学会の抗菌薬臨床評価法制定委員会の呼吸器系委員会 (以下, 本委員会) が本誌 (vol.45: 762~778, 1997) に報告した「呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法 (案)」で設定した診断基準, 重症度判定基準および有効性判定基準の策定根拠を, 急性上気道炎群の例において示すことである。新基準では, 臨床評価の対象となる急性上気道炎群として急性咽頭炎, 急性扁桃腺および急性気管支炎の3疾患をあげたが, 基準設定に今回用いたのは抗菌薬の開発治験時に集積された2,257例である。この群の治験症例のほとんどは担当医の判断によって選択された症例であり, 本委員会の設定した新診断基準に合致する率は67% (1,518/2,257) と低かった。しかし, 本委員会が評価すべき項目とした起炎微生物の検索, 白血球数, 杆状核球, CRP, 体温をすべて測定した1,172例における合致率は81% (947/1,172) と高かった。担当医の重症度判定では, 経口薬群と注射薬群に乖離が見られると共に中等症がもっとも多かったが, 新基準による判定では軽症例がもっとも多かった。すなわち, 新診断基準に合致した1,518例では, 担当医判定による軽症/中等症/重症の分布は41%/50%/9%であり, 新基準による判定では同様に50%/39%/10%であった。臨床効果判定に関しては, 新基準が主要評価目とした7日後に評価項目を測定し得た例は少なくなかったが, 解析に用いることができた234例では, 担当医判定と新基準による判定の合致率が85~93%と高かった。以上より, 急性ヒ気道炎群における新規抗微生物薬の臨床評価法としての新しい基準はいずれも妥当であり, 今後, 有効に使われるべきであるが, 医療技術の進歩と抗微生物薬の新たな開発によって起炎菌と治療効果の変化が予想されるので, 見直しを絶えず行うことが必要と考える。
  • 1998 年 46 巻 12 号 p. 506
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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