消化器外科の手術成績と患者の予後を左右する術後感染症の予防対策として周術期に抗菌薬が投与されるが, 我が国にはそのような際に使用する抗菌薬の選択や投与期間に関するガイドラインはない。今回, 我々は, 胃癌手術について, β-lactamase阻害剤であるsulbactamとampicillinの配合剤sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) の術後感染発症阻止効果について, cefotiam (CTM) と比較試験を行い, 我々の新しく作成したファジィ理論を用いた術後感染症早期診断システムの臨床評価を行った。その結果, SBT/ABPC投与では感染率が低い傾向が見られたが, 有意差は認めなかった。術後感染症の検出菌を比較すると, SBT/ABPCでは
Klebsiellaや
Pseudomonas aeruginosaが分離され, CTMではグラム陽性球菌が5/83例みられた。しかし, 両群ともmethicillin resistance
Staphylococcus aureus (MRSA) が2例ずつ検出された。さらに, ファジィ理論を用いた術後感染症早期診断システムを術中出血量と合併切除臓器, 術後2日目から4日目までの熱型, 術後4日目の白血球数, CRPと白血球分画, 術後1日目から4日目への白血球分画の変化の6項目を用いて検証した結果, この方法の早期診断は感度86%, 特異度90%であり, このシステムを用いれば, 術後4日目の時点で使用の「いわゆる予防的」抗菌薬の変更もしくは中止の判定が下せることがわかった。
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