日本化学療法学会雑誌
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46 巻, 8 号
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  • 肺癌領域
    新海 哲
    1998 年 46 巻 8 号 p. 283-291
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Irinotecan hydrochloride, topotecan hydrochlorideはcamptothecinの誘導体でI型DNA topoisomeraseを標的とした新規抗癌剤である。Irinotecan hydrochlorideは, 抗腫瘍スペクトラムが広く, 既存の抗悪性腫瘍薬と交叉耐性を示さないことより新しい化学療法レジメンの開発に有用な薬剤である。他剤との併用療法において, cisplatinと相乗効果が示されている。本稿では, 日本における肺癌に対するirinotecan hydrochlorideの研究の現況を概説する。第1相試験はいくつかのスケジュールで検討され, 固形癌では週1回100mg/m290分点滴静注が採用された。前化学療法のない進行非小細胞肺癌を対象とした第II相試験では, 奏効率32%, cisplatinとの併用では奏効率49~54%であった。irinotecan hydrochlorideは小細胞肺癌にも有効な薬剤であり, 再発あるいは初回治療無効例を対象とした試験で奏効率47%, cisplatinとの併用では前治療のない症例を対象に奏効率86%であった。現在, わが国においてirinotecan hydrochlorideとcisplatinの併用化学療法が標準的あるいは汎用されている化学療法レジメンより優れているかどうかの第III相試験が進行非小細胞肺癌または進展型小細胞肺癌を対象に進行している。DNA topoisomerase Iとtopoisomerase IIを標的とした併用化学療法は興味あるレジメンである。3日間同時あるいは交代で分割投与するirinotecan hydrochlorideとtopoisomerase II阻害剤のetoposide併用療法の試験が行われていたが, G-CSFの支持療法を必要とし奏効率は現在広く施行されているcisplatinを含む併用化学療法を上回るものではなかった。前臨床試験において, irinotecan hydrochlorideは時間依存性, 用量依存性があることが示されている。フランスの研究グループは, 通常量のirinotecan hydrochlorideで効かない結腸・直腸癌で高量irinotecan hydrochloride (3~4週ごと, 1回500mg/m2) で有効例があり, 用量依存性があることを報告している。彼らは, irinotecan hydrochlorideの用量制限毒性である下痢に対し大量のloperamideを使用しているが白血球減少に対しG-CSFあるいはGM-CSFを使用していない。今後, 肺癌化学療法の発展のため, 他剤との併用におけるirinotecan hydrochlorideの最適の用法・用量をさらに研究する必要がある。
  • 胃癌・大腸癌領域
    西山 正彦
    1998 年 46 巻 8 号 p. 292-296
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    消化器癌における塩酸イリノテカン (CPT-11) について現況を概説し, 至適投与, 併用について提言した。CPT-11は, 喜樹から抽出・単離されたカンプトテシンの水溶性誘導体で, 活性代謝物SN-38がDNAトポイソメラーゼ (Topo) I型と安定な複合体を形成しDNA合成を阻害するという特徴的な作用機序を有する。前臨床研究にて母化合物よりも低い毒性, 高い効果, 広い抗腫瘍スペクトルが確認され, 内外で臨床試験が行われた。胃癌, 大腸癌に対してはそれぞれ20~25%, 21~32%の奏効率が示され, ことに大腸癌ではきわめて有用な抗癌剤と評価されている。投与量規制因子である白血球 (好中球) 減少と激しい下痢により本邦では関連死亡例も認められたが, いずれも現在では管理可能な副作用ととらえられている。臨床研究は多剤併用へと進み, 胃癌におけるシスプラチン (CDDP) 併用で42%, 大腸癌における5-フルオロウラシル (5-FU) 併用で14から67%の高い奏効率が報告されている。しかしながらいまだ検討段階で, 至適投与 (併用) 法を求めて基礎, 臨床両面から研究が進められている。耐性機序の解析もその1つであるが, 標的であるTopo Iの量・活性, 膜糖蛋白などの既存の耐性因子は必ずしも効果 (耐性) 規定因子とはならないと考えられている。われわれは, あらたにCPT-11耐性が薬剤の生体内荷電と細胞の膜電位差によって規定され, CPT-11と同様に陽性荷電するドキソルビシンなどの薬剤を同時併用すると一部の腫瘍細胞では効果が相殺されることを明らかにした。一方で, CPT-11投与後にTopo IIの発現増加がみられることから, CPT-11先行Topo II阻害剤24~48時間後投与は高い抗腫瘍効果を示すことも明らかとなった。その効果はCDDP/CPT-11よりも高く, 今後こうした知見を臨床に還元していくことでさらなる展開が期待できると考えている。
  • 卵巣癌・子宮頸癌領城
    藤原 恵一
    1998 年 46 巻 8 号 p. 297-302
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Topoisomerase I 阻害剤という新しい作用標的, 作用機序を有する抗癌剤, 塩酸イリノテカン (以下CPT-11) と塩酸トポテカン (以下TPT) に関し, 卵巣癌と子宮頸癌を中心に, 両薬剤の臨床開発の経緯と臨床研究の現況について述べる。CPT-11は, 中国原産の喜樹に含まれる抗腫瘍性アルカロイトのカンプトテシンの半合成誘導体である。CPT-11の代謝産物であるSN-38が強力な細胞増殖阻害効果を示すことから, CPT-11は一種のプロドラッグであると考えられている。一方, TPTは, 水溶性のカンプトテシン誘導体であり, CPT-11とは異なり未変化体が活性を示すとされている。CPT-11およびTPTの作用機序は, ともにI型DNA topoisomeraseの作用を選択的に阻害し, 細胞増殖抑制による抗腫瘍効果を示すとされている。両薬剤とも広範な抗腫瘍スペクトラムを有し, 卵巣癌および子宮頸癌に対する強力な抗腫瘍効果が, in vitroおよびin vivoでの実験にて確認されている。CPT-11のDose Limiting Factor (DLF) は下痢または白血球減少, TPTは白血球減少, 特に好中球減少である。CPT-11の卵巣癌および子宮頸癌に対する至適投与方法としては, A法: 100mg/m2/day/week毎週投与およびB法: 150mg/m2/day2週ごと繰り返す投与方法が推奨されている。TPTについては, 第一相臨床試験にて, さまざまな投与法が検討され, 海外では1.5mg/m2, 国内では1.2mg/m2 5日間連日投与が推奨投与法とされている。この投与法におけるCPT-11およびTPTの栄剤による臨床試験成績および他の抗癌剤との併用療法の効果についてまとめた。さらに, 最近発表されたTPTとpaclitaxel (PLT) の大規模な無作為比較による臨床試験の成績を述べた。
  • 高本 正祇, 原田 進, 原田 泰子, 北原 義也, 加治木 章, 石橋 凡雄
    1998 年 46 巻 8 号 p. 303-307
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Pazufloxacin, cefteram pivoxil, faropenem, cefditoren pivoxil, sparfloxacin 各薬剤について63歳以上の高齢者の血中濃度を測定し, pharmacokinetic parameterを計算し健康人の成績と比較し以下の成績を得た。
    1) 健常人の成績と比較し, T1/2, Tmaxは延長したがCmaxは不変, AUCは薬剤によってばらつきがみられた。
    2) 抗菌剤を腎排泄型と胆汁排泄型に分類し, 腎排泄型は腎機能によってAUCは規定されるが潜在的腎機能不全の存在も考えられるのでCcrの検査が重要である。
    3) 一方胆汁排泄型 (1剤のみであった) では肝機能の成績との関係が考えられたが相関は得られなかった。しかしAUCは健常人の1.5倍であった。投与量は健常人の2/3程度が妥当と思われる。
    4) 高齢者の投与量は各種検査および体重を参考にして慎重に決定すべきと考える。
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