Topoisomerase I 阻害剤という新しい作用標的, 作用機序を有する抗癌剤, 塩酸イリノテカン (以下CPT-11) と塩酸トポテカン (以下TPT) に関し, 卵巣癌と子宮頸癌を中心に, 両薬剤の臨床開発の経緯と臨床研究の現況について述べる。CPT-11は, 中国原産の喜樹に含まれる抗腫瘍性アルカロイトのカンプトテシンの半合成誘導体である。CPT-11の代謝産物であるSN-38が強力な細胞増殖阻害効果を示すことから, CPT-11は一種のプロドラッグであると考えられている。一方, TPTは, 水溶性のカンプトテシン誘導体であり, CPT-11とは異なり未変化体が活性を示すとされている。CPT-11およびTPTの作用機序は, ともにI型DNA topoisomeraseの作用を選択的に阻害し, 細胞増殖抑制による抗腫瘍効果を示すとされている。両薬剤とも広範な抗腫瘍スペクトラムを有し, 卵巣癌および子宮頸癌に対する強力な抗腫瘍効果が,
in vitroおよび
in vivoでの実験にて確認されている。CPT-11のDose Limiting Factor (DLF) は下痢または白血球減少, TPTは白血球減少, 特に好中球減少である。CPT-11の卵巣癌および子宮頸癌に対する至適投与方法としては, A法: 100mg/m
2/day/week毎週投与およびB法: 150mg/m
2/day2週ごと繰り返す投与方法が推奨されている。TPTについては, 第一相臨床試験にて, さまざまな投与法が検討され, 海外では1.5mg/m
2, 国内では1.2mg/m
2 5日間連日投与が推奨投与法とされている。この投与法におけるCPT-11およびTPTの栄剤による臨床試験成績および他の抗癌剤との併用療法の効果についてまとめた。さらに, 最近発表されたTPTとpaclitaxel (PLT) の大規模な無作為比較による臨床試験の成績を述べた。
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