日本化学療法学会雑誌
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47 巻 , 1 号
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  • 藤村 茂, 徳江 豊, 高橋 洋, 貫和 敏博, 渡辺 彰
    1999 年 47 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Arbekacin (ABK) 耐性を示す臨床分離のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 4株, および試験管内継代培養によりABK耐性を獲得させた1株, 対照としてABK感受性MRSA1株を, またPCRのコントロールとしてABK修飾酵素として知られているaminoglycoside acetyltransferase {AAC (6')}-aminoglycoside phosphotransferase {AP且 (2'')} 保有ABK耐性MRSA1株を用いてABK耐性の機序を分析学的酵素学的に検討した。被検菌株より分離した酵素活性画分にacetylCoA, ATP, ABKを添加し37℃24時間反応させた。この反応液から精製分離されたABK修飾体の修飾部位を1H, 13C-NMRで, 修飾様式を質量分析法と赤外分光法で解析した。ABK感受性MRSA由来の粗酵素液と反応させたABKにおいては化学構造に変化がみられなかったが今回使用したABK耐性株では, すべて (S)-4-amino-2-hydroxy-butyryl (AHB) 基の4''位のアミノ基のアセチル化による修飾が確認された。酵素による不活化の検討においても, 既報告のABK耐性株で見られるリン酸化はみられず, アセチル化のみが確認された。Bioassayとsodium dodecyl sulfatepolyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE) を行ったところ, 耐性株ではAAC (4'') 活性を有する28kDaの酵素が確認されたが, 感受性株では確認されなかった。この酵素のN末端のアミノ酸配列は, AAC (6')-APH (2'')(bifunctional enzyme) のN末端アミノ酸30残基とほぼ完全なhomologyを示した。以上の結果から, 今回確認された新たな修飾様式を示す28kDaの酵素は, 何らかの要因によるAAC (6')-APH (2'') の変異体, あるいは分解産物であることが示唆された。
  • 長田 久美子, 和田 恭直, 田村 俊秀, 小川 淳子, 平井 圭一
    1999 年 47 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1. フラノナフトキノン (FNQ) 誘導体は, 黄色ブドウ球菌や連鎖球菌など10種のグラム陽性菌に対して抗菌活性を示し, そのMICは1.56~25μgmlであった。
    2. グラム陽性菌のなかで, methicillin耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) は, 感受性菌 (MSSA) より低いMICを示した。
    3. 低濃度のFNQ (0.5μgml) は, MRSAのampicillinなどの抗生物質に対するMICを12~14に下げた。 4. FNQは, 大腸菌や肺炎桿菌など11種のグラム陰性菌には, 100μg/mlでも抗菌活性は示さなかったが, Haemophilus influenzae, Campylobacter jejuni, Helicobacter pylori, Helicobacter felisはFNQに対して感受性があった。H. pyloriに対しては, MICは低く (0.1μg/ml), その値は酸性 (pH5.5) の培地でも同じであった。
    5. FNQは, Candida, Aspergillus属に含まれる11種の真菌の増殖を阻害し, そのMICはamphotericin Bなどとほぼ同じ値を示した。
    6. FNQは, Aspergillus fumigatus感染動物モデルの実験で延命効果を示した。これらの結果より, FNQは, MRSA, H. pyloriおよび真菌に対して有用な化学療法剤になる可能性があることが示唆された。
  • Postantibotic phaseにおける抗菌効果
    長谷川 裕美, 乙黒 一彦, 清水 喜八郎
    1999 年 47 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症に対するarbekacin (ABK) とβ-lactam薬のより有効な併用投与方法を検討するための一手段としてABKflomoxef (FMOX) を用い, 一方の薬剤を前作用することによってpostantibiotic phase (PA期) に誘導されたMRSAに対する他方の薬剤のsub-MICおよびabove-MICの抗菌効果について検討し, 血中濃度動態での薬剤作用時の抗菌効果との関連性について検討した. MRSA臨床分離K1株に対するABKの抗菌効果は, FMOX前処理を行うことにより, sub-MICではpostantibiotic sub-MICeffect (PASME), 殺菌作用の増強を, above-MICでは殺菌作用の増強を認めた. また, この増強効果はFMOXの前処理濃度および時間に依存して強く認められた. 一方, FMOXの抗菌効果はABK前処理を行うことによりsub-MICでは, PASMEおよび殺菌作用の増強を認めたが, above-MICでは, 無処理時にみられた強力な殺菌作用が認められなくなった. また, in vitro auto-simuration systemを用いて, ABKとFMOXを常用量投与時の血中濃度動態で投与順序を変えて併用投与した場合, ABK先行併用時が, FMOX先行併用, 同時併用時に比べやや劣る結果となった. 以上の結果より, MRSA感染症に対するABKとβ-lactam薬の併用効果の一因子として, 一方の薬剤によりPA期に誘導された菌に対する他方の薬剤の殺菌作用ならびに増殖抑制作用への影響が関与し, 投与順序による併用効果の差に影響をおよぼすことが示唆された.
  • 渡邉 信介, 二木 芳人, 吉田 耕一郎, 玉田 貞雄, 橋口 浩二, 中島 正光, 松島 敏春
    1999 年 47 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1995年12月から1996年12月までに川崎医科大学附属病院中央検査部で分離されたStreptococcus pneumoniae71株の各種薬剤感受性および血清型を測定し, その臨床的背景を比較検討するとともに, 病原性が明らかであった50株については第1次選択薬の治療効果についても検討した. 今回検討した 71株におけるbenzylpenicillin (PCG) に対する耐性率は, 中等度耐性菌 (penicillin intermediately resistant S. pneumoniae, PISP), 耐性菌 (penicillin resistant S. pneumoniae, PRSP) 合わせて31株 (43.7%) であった。疾患別耐性率は耳鼻科疾患分離株が75%と高率であった。また年齢別では, 6歳未満児での耐性率が75%と高く特に2歳未満の乳児でその傾向がより顕著であった。血清型は, 耐性菌では19型の占める割合が74.2%と高く, 次いで23型 (9.7%) であった。病原性を有した50症例について, その第1次選択薬の有効性を検討した結果, 経口剤使用例では評価不能11症例を除外した9症例中全例が, また注射剤使用例では30症例中20症例が有効と判断され全体の有効率は74.4%であった。死亡例, 無効例が10症例に認められ, その多くは宿主側因子の関与が大きいと考えられた。しかし敗血症, 髄膜炎症例では耐性菌による治療困難例も認められ, このような疾患における治療法の確立が急務と考えられる。
  • 1994~1997年, ペニシリン耐性肺炎球菌感染の増加
    遠藤 廣子, 末武 光子, 入間田 美保子
    1999 年 47 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    本邦におけるペニシリン耐性肺炎球菌感染症については, 1988年以来報告が相次いでいるが, 劇症型化膿性髄膜炎以外には臨床家の関心はまだ十分でない。近年われわれは入院治療を必要とする急性下気道炎 (pneumonia bronchitis, P/B), 急性中耳炎 (acute otitis media, AOM), さらには両疾患の合併例の増加を経験するようになった。そこで1994年1月より1997年12月までの4年間に当院小児科および耳鼻咽喉科に入院した0~5歳の上記疾患862人について臨床的および細菌学的に検討した。患者数は1994年150人 (P B 92, AOM14, P B+AOM 44), 1995年184人 (P B 103, AOM 26, PB+AOM 55), 1996年286人 (P B 151, AOM 49, P B+AOM 86) と増加し, 1997年は242人 (PB 143, AOM 25, P B+AOM 74) とやや減少した。年齢別では0歳児174人, 1歳児274人, 2歳児141人と, 3歳未満児が全体の68%を占めており, PBにAOMが合併していた症例は0歳児35%, 1歳児51%, 2歳児39%であった。しかも, AOM罹患児では鼓膜切開率が1994年60%より1996年83%と増加し, 経静脈性抗菌薬投与期間の延長がみられ, AOMの重症, 難治化を認めた。AOM起炎菌として分離された細菌117株の内訳は, Streptococcus pneumoniae70株 (60%), Haemophilus influenzae 16株, Moraxella catarrhalis9株, MRSA3株, その他19株であった. S. pneumoniae染中, ペニシリン耐性株は83%(5870) を占めており, ペニシリン中等度耐性肺炎球菌 (PISP) は1994年から年ごとに4, 6, 10, 10株と増加, ペニシリン高度耐性肺炎球菌 (PRSP) は1995年に出現し, 2, 20, 6株と1996年に急増した。乳幼児においては, 肺炎に合併する中耳炎の存在にも留意し, 耐性菌感染を考慮に入れて対応することが必要である。
  • 長谷川 稔他
    1999 年 47 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    造血器疾患に合併した重症感染症173例を対象とし, panipenem betamipron (PAPMBP) の有効性と安全性を検討した。
    1. 有効性評価対象137例での臨床効果は, 著効35例, 有効51例, やや有効7例, 無効44例で有効率62.8%であった。
    2. 先行抗菌薬投与のない症例での有効率は71.9%, 先行抗菌薬が無効もしくは効果不十分の症例での有効率は41.5%であった。
    3. PAPMBP投与前好中球数が100mm3以下の症例での有効率は52.5%, 投与後100mm3以下での症例の有効率は50.0%であった。
    4. 安全性評価対象173例中副作用は19例にみられ, 副作用発現症例率は11.0%であった。主な副作用は肝, 胆管系障害で重篤なものはなかった。
    以上からPAPM BPは造血器腫瘍に合併する重症感染症に対し優れた有効性を有することが確認された。
  • 千葉県がんセンターの5年間の臨床疫学的検討
    酒井 力, 熊谷 匡也, 高木 敏之
    1999 年 47 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に合併したClostridium difficile関連下痢症 (CDAD) の臨床疫学的検討を行った。1993年1月から1997年12月の5年間に千葉県がんセンター (316床を持つ) において61件のCDADが発生した。15件の固形癌に伴うCDADは散発的で病棟に偏りなく発生していた。しかし44件 (72.1%) のCDADが1つの病棟 (E4) で発生しており, 院内感染の関与が疑われた。興味深いことにE4 (48床を有し造血器腫瘍と肺癌の患者を収容する) には常に10~13例の肺癌患者がいるにもかかわらず44件中43件は造血器腫瘍に伴い. 肺癌に伴うCDADは1件のみであった。CDAD発症前の治療は造血器腫瘍45例中35例 (77.8%) に抗菌薬が, 37例 (82.2%) に抗癌剤が投与されておりそのうちの10例では抗菌薬は使用されず抗癌剤だけが投与されていた。しかも造血器腫瘍例にはanthracyclinesとvinca alkaloids (しばしばcolonic stasisを招く) が高率に使用されていた。E4で最初にCDADが多発したのは1992年10月であり, 一度CDADのoutbreakが起きるとClostridium difficileの芽胞 (spore) を環境から根絶させることは困難である。おそらく院内感染, 頻繁な抗菌薬の使用, 癌化学療法があいまってE4の造血器腫瘍患者の間にCDADの持続的多発が生じているものと考えられる。
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