新規のフルオロキノロン系抗菌薬gatifloxacin (GFLX) の骨盤内性器組織移行性の検討および, 産婦人科領域感染症に対する有用性を検討した。
1) 骨盤内性器組織濃度: GFLXの200mg経口投与後1~3時間の肘静脈血中濃度, 子宮動脈血中濃度はそれぞれ0.08~1.85μg/ml, 0,08~1.91μg/mlであり, ほぼ一致した。各組織のGFLX濃度は, 子宮筋層で測定限界値以下~1.69μg/g, 子宮内膜では0.20~2.28μg/g, 子宮膣部では0.15~1.47μg/g, 子宮頸部では0.19~1.44μg/g, 卵管では0.13~1.42μg/gおよび卵巣では0.99~1.49μg/gであった。
2) 臨床効果: 解析対象は69例で, 投与量は100mgx2回/日が37例, 200mg×1回/日が8例および200mg×2/日が24例であった。解析対象69例での有効率は89.9%(62/69) であった。69例中. クラミジア感染症23例に対する有効率は, 95.7%(22/23) で, 有効以上の症例で再燃は認められなかった。
3) 細菌学的効果: 起炎菌が検出され, その消長が明らかであった27例中23例が陰性化し, 陰性化率は85.2%であった。また, 菌消失率は92.5%(49/53) であった。
4) 安全性: 副作用は1例において軽度の立ちくらみが発現し, 発現率は13%(1/75) であった。臨床検査値異常変動は, 白血球の減少が1例で認められ, 発現率は16%(1/61) であった。どちらも, 重篤なものではなかった。
5) 有用性: 解析対象69例において, 有用以上が61例であり, 有用率は88.4%(61/69) であった。
以上の成績より, GFILXは良好な骨盤内性器組織移行を示し, またクラミジア感染症を含めた産婦人科領域感染症に対し, 有用な薬剤であると考えられた。
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