日本化学療法学会雑誌
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47 巻, 6 号
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  • 後藤 直正
    1999 年 47 巻 6 号 p. 319-328
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) のキノロン耐性の研究は, その作用標的の変異や外膜透過経路の消失では説明できなかった耐性機構を明らかにした。その機構とは, 本菌染色体上にコードされ, 染色体上のnalB, nfxBおよびnfxC遺伝子座の変異により, 染色体上にコードされた3種類の薬剤排出システム (MexAB-OprM, MexCD-OprJ, MexEF-OprN) の高発現によるものである。このそれぞれのシステムは, 内膜蛋白質 (MexB, MexD, MexF) と外膜蛋白質 (OprM, OprJ, OprN), さらにそれらをリンクするペリプラスム蛋白質 (MexA, MexC, MexE) によって構成され, 細胞内に透過した抗菌薬を細胞外に能動的に排出することにより。抗菌薬の細胞内濃度を減少させる。さらに, 緑膿菌の種々の抗菌薬に対する自然耐性が, 野生株でもわずかに発現したMexAB-OprMに起因することがわかった。緑膿菌感染症の抗菌化学療法を円滑に進めるためにも本排出システムの機構のさらなる解明が望まれる。
  • 金山 明子, 島津 光伸, 長谷川 美幸, 雑賀 威, 小林 寅哲
    1999 年 47 巻 6 号 p. 329-334
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Neisseria gonorrhoeaeのニューキノロン薬耐性機構は主にgyrAおよびparCの変異で, 本菌感染症においてgyrAの変異はキノロン系抗菌薬の治療に大きく影響する。今回われわれは患者試料から直接N.gonorrhoeaeおよびそのgyrA変異を検出することを目的として基礎的および臨床的検討を行った。試験菌として, N.gonorrhoeaegyrA変異を認めないwild株1株およびcodon 91のアミノ酸がserine (TCC) からphenylalanine (TTC) に変異が認められている臨床分離5株を用いα-hemolytic Strrptococcus, Coagulase (-) StaphylococcusおよびEscherichia coliとの混合菌液中のN.gonorrhoeae gyrA codon 91の直接検出を行った。この検出にはPCR法および酵素抗体法を用いたPin-Point Sequence (PPS) 法により行った。その結果, 各試験菌液 (単独, 混合液) からN.gonorrhoeaeのwild株および変異株のgyrA codon 91の分離検出が可能であった。さらに臨床材料における検討では, N.gomrrhoeae感染症が疑われた患者より採取した56検体において, N.gonorrhoeaeの陽性例は培養法で36検体に対しPPS法は38検体となった。培養法でN.gonorrhoeaeを検出した例はPPS法ですべて陽性となった。PPS法陽性38例中gyrA codon 91のアミノ酸が変異していた例は20例で, 1例を除き培養法で得られた分離株でのアミノ酸変異の結果とすべて一致した。またその変異とnorqoxacin (NFLX) のMICとは相関していた。以上の結果からPPS法はN.gonrrhoeae感染症患者にキノロン系抗菌薬の治療を行う場合, その有効性を予測する上できわめて有用な方法であることが示唆された。
  • 志関 雅幸, 松井 由香, 菊池 賢, 戸塚 恭一
    1999 年 47 巻 6 号 p. 335-338
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Vancomycin (VCM) は, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 感染症に有効な数少ない抗菌薬として重要であるが, 近年. 臨床分離MRSA菌株中にVCM hetero resistant MRSAの存在が示され, その臨床上の意義が論じられている。そこで, 当院入院患者から分離されたMRSAのVCM感受性について, MIC測定およびpopulation解析による検討を行った。使用した菌株は1996年8月から97年5月の10か月間に分離されたMRSA 80菌株 (MRSA-A群), MRSA感染症に対してVCMの点滴静注による全身投与が可能となる以前の1990年の1年間に分離されたMRSA 16菌株 (MRSA-B群), および1996年8月から97年5月の10か月間に分離されたmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) 20菌株 (MSSA群) の合計116菌株である。MRSA 96菌株に対するVCMのMICは, 全菌株で4μg/ml未満であった。MRSA-A群の菌株はMRSA-B群の菌株に比べてMICが高い値に分布する傾向を認め, VCMに対する感受性低下の可能性が示唆された。VCM感受性に関するpopulation解析では, 4ないし8μg/mlの濃度のVCMを含有するMueller-Hinton寒天培地上に, MRSA-A群では, 80菌株中それぞれ71菌株 (88.8%) および12菌株 (15%), MRSA-B群では, 16菌株中それぞれ15菌株 (93.8%) および4菌株 (25%), MSSA群では, 20菌株中それぞれ, 19菌株 (95%) および6菌株 (30%) でコロニー形成を認めた。3群ともMIC以上の濃度のVCM存在下で発育しうるサブクローンを含む菌株が存在することが示されたが.MRSA-A群では形成されるコロニー数がより多い傾向があり, VCMに対する感受性低下の可能性が示唆された。
  • 稲葉 陽子, 花木 秀明, 高橋 順子, 杉本 奈扶美, 桑原 京子, 崔 龍沫, 平松 啓一
    1999 年 47 巻 6 号 p. 339-344
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Vancomycin (VCM) 感性Staphylococcus aureus ATCC 6538P株, 臨床分離VCM感性Methicillinresistant S.aureus (MRSA) H-1株, heterogeneously vancomycin-resistant S.aureus (Hetero-VRSA) Mu 3株, vancomycin-resistant S.aureus (VRSA) Mu 50株のVCMに対する感受性をMIC, population analysisを用いて解析した結果, VCMに対するMIC値はそれぞれ0.5, 0.5, 1, 8μg/mlであった。またpopulation analysisで107CFUの細胞増殖を完全に阻止するVCM濃度はそれぞれ3, 4, 10, 13μg/mlであった。またMu3株の14C-N-acetylglucosamine (14C-GluNAc) の細胞壁取り込みを, ATCC6538P株, H-1株およびMu50株と比較した結果, hetero-VRSA Mu 3株の取り込み量はVRSA Mu 50株の取り込み量の80%で, VCM感性株と比較した場合, 2.6~14.4倍増加していた。さらにMu 3株に対するVCMとaminobenzylpenicillin, ceftizoxime (CZX), cefpiromeおよびsulbactam/aminobenzylpenicillinの併用効果は, すべて拮抗を示した。さらに, Mu 3株が生育できないVCM 5μg/ml含有のBHIBに段階希釈したCZXを添加するとCZXの0.0078~0.125μg/ml共存下でMu 3株の生育が認められた。このVCMとβ-ラクタム薬の拮抗現象を利用してhetero-VRSAの簡易検出法を検討したところ, Mu 3株が生育できないVCM4μg/ml含有寒天平板上のβ-ラクタム薬含有paper disk周囲にのみ生育円が観察された。この方法を用いて全国の臨床分離MRSA1673株のスクリーニングを行ったところ, 6.5%(108株) が検出された。
  • 眞島 利匡, 三笠 桂一, 坂本 正洋, 古西 満, 前田 光一, 濱田 薫, 善本 英一郎, 村川 幸一, 植田 勝廣, 喜多 英二, 成 ...
    1999 年 47 巻 6 号 p. 345-348
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    切除不能非小細胞肺癌患者15例を対象に14員環マクロライド系抗菌薬clarithromycin (CAM) を400mg/日投与し, サイトカインmRNAの変動を検討した。投与後にIL-12, IFN-γm RNAは有意に増強し, IL-10は抑制される傾向であった。CAMはBiological response modifier (BRM) 作用を有し, 非小細胞肺癌患者をTh1優位な状態へ誘導していることが示唆された。しかし一部の症例ではCAM投与でサイトカインm RNAの変動はみられず, それらは病期がIV期の症例が多く, CAMのBRM作用は宿主状態に影響されることも示唆された。
  • 丸山 博英, 福永 睦, 門田 卓士, 小牟田 清
    1999 年 47 巻 6 号 p. 349-352
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    42歳, 男。1990年12月13日より間欠的に右下腹痛を繰り返していた。注腸検査, 小腸造影では上行結腸狭窄, 回腸に全周性の狭窄と中心部のniche, 小腸の多発性狭窄が認められ, 腸結核が疑われた。腹痛が増強するため, 1991年2月14日手術を施行した。小腸はTreitz靱帯より肛門側210cmから590cmの範囲で11か所の輪状狭窄および上行結腸にも狭窄が認められた。9か所の狭窄の著明な部位を含めて小腸分節的切除術を施行した。切除小腸, リンパ節の迅速病理検査では腸結核 (チールネルゼン染色: 肉芽結節に抗酸菌を認める) の診断であった。回盲部狭窄に対しては回腸末端と横行結腸を側側で吻合した。術後より92年5月まで抗結核薬を投与した。現在, 再燃なく健在である。今日, 結核はいろいろな形で臨床の現場に再登場してきている。狭窄症状があった場合, 鑑別診断として腸結核を疑うことはきわめて重要であることを強調したい。
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