日本化学療法学会雑誌
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48 巻 , 1 号
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  • 田中 一志, 藤澤 正人, 荒川 創一, 守殿 貞夫
    2000 年 48 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    敗血症のような重症全身感染, あるいは髄膜炎および尿路感染の感染局所で, 炎症性サイトカインは感染防御に深く関係している。精巣上体炎は, 精巣上体の腫脹をきたす生殖器局所感染ではあるが, 高熱を呈することも多く, 何らかの生体防御機構の関与が考えられる。そこでラット精巣上体炎モデルおよび培養上皮細胞を用い, 生殖器感染時における局所でのinterleukin-6 (IL-6) をはじめとする炎症性サイトカインの発現とその動態に関する検討を行った。まずラット精管よりEscherichia coliを逆行性に注入し精巣上体炎を作成し, 感染前および感染後6, 12, 24, 48, 72時間後に精巣上体を無菌的に摘出した。その精巣上体からtotal RNAを抽出した後, Northern blotting法にてIL-6mRNAの発現を, ならびにRT-PCR法にて各種炎症性サイトカインの発現を検討した。さらに, 精巣上体の経時的な病理組織学的変化と免疫組織染色法によるIL-6の局在を検討した。また, ラット精巣上体の上皮細胞を分離培養し, lipopolysaccharide (LPS) で刺激し, 上皮細胞における炎症性サイトカインmRNAの発現を検討した。結果, 精巣上体炎局所においてもIL-6mRNAが発現しており, またその発現は感染後6時間でピークに達し, 以後時間の経過とともに減少していることが確認された。さらに他の炎症性サイトカイン (IL-1β, TNF-α) mRNAも精巣上体炎局所で発現していた。病理組織学的検討では, 感染後6時間では炎症細胞の浸潤を認めなかったが, 72時間後に炎症細胞の著明な浸潤を認めた。免疫組織染色による検討では, 精巣上体の上皮細胞において, 感染後6時間でもっとも強くIL-6が発現していることが確認された。培養細胞を用いた検討では, LPS刺激後6時間で炎症性サイトカインmRNAの発現が確認された。以上より, 精巣上体炎においても, 感染局所で生体防御機構としてサイトカイン産生系が賦括されていることが明らかになった。また, 上皮細胞はサイトカイン産生細胞として従来考えられていた以上に重要な役割を担っていることが示唆された。
  • 伊藤 輝代, 花木 秀明, 平松 啓一
    2000 年 48 巻 1 号 p. 7-23
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1996年にわれわれがvancomycin耐性MRSA, Mu50を報告して以降, 世界各地からvancomycinによる治療の失敗例からvancomycin-resistant Staphylococcus aureus (VRSA) が相次いで分離報告されている。VRSAのvancomycinに対するMICは, vancomycin耐性腸球菌の場合と比べた場合, 相対的に低く, 8μg/mLであり, NCCLS (National Committee for Clinical Laboratory Standards) の基準では, 耐性 (32μg/mL以上) と感受性 (4μg/mL以下) の中間 (8および16μg/mL) であるため, Vancomycin intermediate S. aureus (VISA) あるいはglycopeptide intermediate S. aurues (GISA) とも呼ばれている。ヘテロVRSAのMICは4μg/mL以下でMICの上では感受性を示す。しかしvancomycinに対する耐性度が細胞集団のなかで不均一 (heterogeneous) であるため, 106~107の菌のなかにはvancomycin 4μg/mLを含む平板上に生育する菌細胞が存在する。このvancomycin 4μg/mL平板上に生育した菌はポピュレーション解析でVRSA, Mu 50と同程度の耐性を示す。そのため, 患者背景によりヘテロVRSAも, VRSA同様にvancomycinによる治療が困難となる場合がある。これら, VRSAおよびヘテロVRSAの出現は, MRSAの化学療法および院内感染対策上の大きな問題を提起する。
  • 金澤 勝則, 外山 圭助
    2000 年 48 巻 1 号 p. 24-33
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    造血器疾患患者から敗血症の起炎菌として分離された各種臨床分離株19菌株に対するmeropenem (MEPM), imipenem (IPM), amikacin (AMK) およびsulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) のin vitro抗菌活性および殺菌活性を調べるために各薬剤のMICおよび薬剤処理後6時間あるいは24時間でのMBC (6h-MBCおよび24h-MBC) を測定した。その結果, すべての被験菌株はこれら薬剤のいずれかに比較的高い感受性 (MIC≦1.56μg/mL) を示した。Escherichia coliおよびKlebsiella pneumoniaeに対しては, MEPM (MIC≦0.05μg/mL), IPM (MIC≦0.39μg/mL) およびAMK (MIC≦6.25μg/mL) が優れた抗菌活性を示したが, SBT/ABPCの抗菌活性 (12.5≦MIC≦50μg/mL) は低かった。Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌) においては, MEPMおよびIPMに耐性 (MIC=12.5μg/mL) を示す株が2株, AMKに耐性 (MIC=12.5μg/mL) を示す株が1株認められたが, 他の3菌株はこれらの薬剤に比較的高い感受性を示した。Staphylococcus epidermidis, その他のcoagulase-negative staphylococci (CNS) およびstreptococciに対してはMEPM (MIC≦1.56μg/mL), IPM (MIC≦0.39μg/mL) およびSBT/ABPC (MIC≦3.13μg/mL) が優れた抗菌活性を示した。また各薬剤の24h-MBCの多くは, MICとほぼ同等の値を示したことから, これらの薬剤はMIC濃度, 24時間の作用により十分な殺菌効果を示すと考えられた。一方, 被験薬剤の6h-MBCの一部はMICを大きく上回る値を示したことから, これら薬剤が実際の臨床の場で十分な殺菌効果を示すためにはMICより高い作用濃度が必要となるケースもあることが示唆された。次に, 同じく敗血症患者由来の臨床分離株30菌株に対するカルバペネム薬とAMKあるいはSBT/ABPCの併用効果をチェッカーボード法により検討した。その結果, E. coliおよびK. pneumoniaeに対してはMEPMとSBT/ABPCの併用 (8株中, 相加: 7株, 不関: 1株), S. epidermidisおよびその他のCNSに対してはMEPMとAMKの併用 (9株中, 相乗: 5株, 相加: 4株), Enterococcus faecalisおよび streptococciに対してはMEPMあるいはIPMとSBT/ABPCの併用 (5株中, 相乗: 1株, 相加: 4株) がもっとも優れた併用効果を示した。また, 興味深い結果として緑膿菌に対するAMKとの併用においてはMEPM (8株中, 相乗: 7株, 相加: 1株) がIPM (8株中. 相加: 5株, 不関: 3株) よりも優れた併用効果を示した。本検討の結果から考察する限り, 敗血症の治療においてE. coliおよびK. pneumoniaeが起炎菌であるケースにはカルバペネム薬, 特にMEPMの単独投与, またはカルバペネム薬とAMKあるいはSBT/ABPCの併用療法は有用と考えられた。また, 緑膿菌による感染症例にはMEPMとAMKの併用が効果的と考えられ, CNSあるいはstreptococciが起炎菌である場合にはカルバペネム薬あるいはSBT/ABPCの単独またはカルバペネム薬とAMKあるいはSBT/ABPCの併用療法が優れた効果を期待できると考えられた。
  • 松本 文夫他
    2000 年 48 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用カルバペネム系抗菌薬biapenem (BIPM) の慢性気管支炎の急性増悪に対する治療効果と臨床用量を検討する目的で, imipenem/cilastatin (IPM/CS) を対照薬として電話登録法による3群比較試験を実施した。投与薬剤群はBIPM150mg×2/日 (L群), BIPM300mg×2/日 (H群), IPM/CS500mg/500mg×2/日 (C群) とし, 投与期間は14日間以内とした。総症例35例中, 有効性の解析対象例数は32例 (L群10例, H群10例, C群12例) であった。
    1) 臨床効果: 有効率はL群100%(10/10), H群90.0%(9/10) およびC群91.7%(11/12) であった。また, 早期の治療効果を評価する3日後における臨床効果の有効率はL群60.0%(6/10), H群90.0%(9/10) およびC群58.3%(7/12) であり, H群がもっとも高かった。
    2) 細菌学的効果: 菌消失率はL群100%(6/6), H群100%(3/3) およびC群100%(9/9) であった。
    3) 副作用: C群の1例 (8.3%) にのみ, 中等度の薬熱・薬疹が認められた。
    4) 臨床検査値異常: 発現率はL群20%(2/10), H群33.3%(4/12) およびC群20%(2/10) であり, いずれも軽度のものであった。
    5) 有用性: 有用率はL群100%(10/10), H群90%(9/10) およびC群83.3%(10/12) であった。
    以上, いずれの評価においても3群間に有意差は認めなかったが, 薬剤の早期の治療効果を反映する3日後の臨床効果における有効率が300mg×2/日投与群でもっとも高い成績であり, BIPMの300mg×2/日投与は早期に効果が得られると推察され, 本薬の慢性気管支炎に対する臨床用量は300mg×2/日と考えられた。
  • 松本 文夫他
    2000 年 48 巻 1 号 p. 45-67
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用カルバペネム系抗菌薬biapenem (BIPM) の下部呼吸器感染症に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に評価する目的でimipenem/cilastatin (IPM/CS) を対照薬とした比較試験を実施した。用法・用量は, BIPMは1回300mgを1日2回, IPM/CSは1回500mg/500mgを1日2回いずれも点滴静注し, 投与期間は14日間以内とした。
    1) 総症例数はBIPM群103例, IPM/CS群111例の計214例であった。有効性解析対象例数はBIPM群88例, IPM/CS群93例, 概括安全度解析対象例数はBIPM群101例, IPM/CS群110例, 有用性解析対象例数はBIPM群89例, IPM/CS群101例であった。
    2) 総合臨床効果の有効率はBIPM群93.2%(82/88), IPM/CS群91.4%(85/93) であった。有効率の差の90%信頼区間は-5.8%~9.4%であり, IPM/CSに対するBIPMの非劣性が検証された。また, 早期の治療効果を評価する3日後における臨床効果の有効率はBIPM群84.1%(74/88), IPM/CS群76.3%(71/93) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    3) 細菌学的効果 (菌消失率) はBIPM群89.1%(41/46), IPM/CS群97.5%(39/40) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    4) 副作用の発現率はBIPM群1.9%(2/103), IPM/CS群6.3%(7/111) であり, 両群間に有意差は認められなかった。また, 臨床検査値異常変動の発現率はBIPM群26.2%(27/103), IPM/CS群43.2%(48/111) であり, 両群間に有意差が認められた (P=0.010)。概括安全度 (安全率) はBIPM群98.0%(99/101), IPM/CS群96.4%(106/110) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    5) 有用性 (有用率) はBIPM群88.8%(79/89), IPM/CS群81.2%(82/101) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績より, BIPMは下部呼吸器感染症に対して, 有用な薬剤であると判断された。
  • Levofloxacin投与による尿中分離菌の感受性の変化, および再発の検討
    藤田 和彦他
    2000 年 48 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Levofloxacin (LVEX) 300mgまたは600mgを複雑性尿路感染症患者に1週間投与し, UTI薬効評価基準 (第4版暫定案) に準じ有用性を検討した。600mg投与は比較的重症と思われる症例に行った。薬効評価基準に合致した71例における有効率は77.5%であった。そのうち, 有症状例 (36例) と無症状例 (35例) に対する有効率はそれぞれ72.2%と82.9%であった。ただし, 無症状例では, 著効例より有効例の方が多かった。投薬終了後2週目において, 臨床効果の判定を行った。microbiological outcomeがfailureとなるのは有症状例と無症状例において, それぞれ46.9%, 72.0%で, clinical outcomeがfailureとなるのはそれぞれ38.2%, 19.4%であった。投薬前分離菌はEnterococcus faecalis, Escherichia coliが多かった。全分離菌 (125株) の消失率は89.6%で, MIC80は1.56μg/mLであった。投薬終了時にEnterococcus faecalis6株, Staphylococeus epidermidis1株, coagulase-negative Staphylococcus (CNS) 2株, Citrobacter freundii 1株, Pseudomonas aeruginosa 3株が存続した。投薬終了時の出現細菌はStaphylococcus spp., Candida spp. が多かった。投薬終了後2週目には, Enterococcus spp., Staphylococcus spp. などの球菌が分離される頻度が高かった。投薬終了時とその2週間後に分離されたStaphylococcus spp. のMICは, 投与前に比べ高いことが多かったが, 他の菌では変化が見られなかった。以上より, LVFXは複雑性尿路感染症に対し有用であると判定した。ただし, 投薬終了後2週目に症状が見られなくても, 菌が分離されることが多い点に注意する必要があると思われた。
  • 遠藤 一博, 川井 信孝, 伊東 克郎, 富永 一則, 楠本 修也, 福田 正高, 室橋 郁生, 別所 正美, 山崎 勉, 平嶋 邦猛, 宇 ...
    2000 年 48 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    49歳女性。1996年7月, 非ポジキンリンパ腫 (IBIrlike T cell) と診断。CHOP療法 (cyclophosphamide/doxorubicine/vincristine/predonisolone) を施行した。その後再燃し多剤併用療法を施行したが皮疹は増悪しリンパ節も増大した。quality of life (QOL) を考慮し97年8月よりetoposide (ETP) 経口少量投与を開始した。98年7月2日より肛門部に帯状疱疹を認め, アシクロビル4g/日を7日間経口投与にて開始し水疱は残存するも疼痛は軽減した。同年7月20日より全身に水疱が播種し汎発性帯状疱疹と診断, ビダラビン600mg/日を6日間点滴静注するも電撃的な経過をとり呼吸不全で死亡した。剖検組織にて抗Varicella Zoster抗体を使用し, 免疫組織化学的に検討したところ肺を含め検索し得たすべての臓器で陽性像を呈していた。死因はvaricella zoster virus (VZV) の肺浸潤による呼吸不全と考えられた。全身に播種を起こした誘因は, 原疾患, 放射線照射, 抗腫瘍剤投与による細胞性免疫の低下であり, 特に抗腫瘍剤投与時には注意が必要であると考えられた。
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