1999年6~9月に小児の伝染性膿痂疹 (とびひ) から分離された黄色ブドウ球菌88株の生物学的性状および薬剤感受性を検討した。さらにcefdinir (CFDN) と外用薬として使用される各種抗菌薬との
in vitro併用効果を検討した。
1) 黄色ブドウ球菌88株中メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) は28株 (32%) であった。コアグラーゼ型はIII型 (37株, 42%) がもっとも多く, 次いで1型 (10株, 11%), n型 (9株, 10%) であった。エンテロトキシン産生株は17株で, MRSAの6株はすべてエンテロトキシンCを産生し, コアグラーゼH型でエンテロトキシンCを産生した株はすべてTSST-1を高力価に産生した。
2) 黄色ブドウ球菌88株の各種経口抗菌薬に対する感受性は, minocycline (MINO) およびfusidic acid (FA) に対し全株が6.25μg/mL以下であった以外は感性から耐性まで広い分布を示した。88株に対する各種抗菌薬のMIC80は, CFDN (3.13μg/mL), cefeapene (12.5μg/mL).cefpodoxime (25μg/mL), cefditoren (6.25μg/ml), cefteram (25μg/mL), cefhclor (50μg/mL), amoxiciUin (25μg/mL), oxacillin (3.13μg/mL), faropenem (0.39μg/mL), MINO (0.1μg/mL), clarithromycin (100μg/mL), erythromycin (EM)(100μg/mL), oxytetracycline (OTC)(1.56μg/mL), gentamicin (GM)(25μg/mL) およびFIA (0.1μg/mL) であった。
3) MRSA28株に対し, cefdinirとEM, OTCまたはFAとの併用は93~100%の株に相乗ないし相加作用を示した。すなわち, CF-DNはこれらの薬剤との併用によりMRSAに対しより低濃度で抗菌活性を示した。一方, GMとの併用は主として相加作用にとどまったが拮抗作用は認められなかった。MSSA60株に対しても同様の結果であった。
細胞壁合成阻害作用を有するCFDNと蛋白合成阻害作用を有するEM, OTC, GMまたはFAとの併用効果は作用機作の異なるもの同士の協力作用によると考えられた。したがって, 黄色ブドウ球菌を主要起炎菌とする小児伝染性膿痂疹は近年MRSAの分離頻度が増加傾向にあるため, 抗菌力の増強が期待できるCFDNとこれら蛋白合成阻害薬との併用療法は有用な治療手段と考えられた。
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