日本化学療法学会雑誌
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48 巻, 4 号
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  • 福田 秀行
    2000 年 48 巻 4 号 p. 243-250
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Streptococcus pneumoniaeにおけるキノロン系薬の作用機序の解析を目的とし, 種々のキノロン系薬を用いて耐性変異株を段階的に作製し, それら変異株におけるキノロン系薬のターゲットをコードする遺伝子の変異を検索した。Trovafloxacin (TVEX), levofloxacin (LVFX), norfloxacin (NFLX), およびciprofloxacin (CPFX) によって選択された第1段階の変異株は, parC遺伝子に単一の点変異を有していた。一方, sparfloxacin (SPFX) およびgatifloxacin (GFLX) によって選択された変異株は, gyrA遺伝子に単一の点変異を有していた。野生株と比較してparC変異株はその選択薬剤であるTVFX, LVFX, NFLXおよびCPFXに対してのみ感受性の低下が認められ, gyrA変異株はその選択薬剤であるGFLXおよびSPFXに対してのみ感受性の低下が認められた。第2段階の変異株においては, 使用するキノロン系薬にかかわらずgyrA変異株からはparC変異株が, parC変異株からはgyrA変異株が選択され, 結果としてすべての第2段階の変異株は, gyrA+parCの二重変異を有していた。これら第2段階の変異株は, 第1段階の変異株と比較して, すべてのキノロン系薬に対して感受性が低下していた。これらの結果は, 野生株におけるTVFX, LVFX, NFLXおよびCPFXの主たるターゲットはトポイソメレースIVであり, GFLXおよびSPFXの主たるターゲットはDNAジャイレースであることを示唆している。また, 第1段階のgyrA変異株およびparC変異株におけるキノロン系薬の主たるターゲットは, それぞれトポイソメレースIVおよびDNAジャイレースであることを示唆している。これら第1段階および第2段階の変異株の選択に際して, 使用するキノロン系薬によって変異株の選択の難易に違いが認められた。さらには, 変異株を選択し難いキノロン系薬は, 得られた変異株に対する抗菌活性の低下の小さい傾向が認められた。これらの結果から, in vitroにおいて耐性変異株を選択し難いキノロン系薬は, 菌体内においてDNAジャイレースとトポイソメレースIVを近いレベルで阻害する“Dual Target Quinolone”であることが考えられる。臨床より近年分離されたS. pneumoniae 99株について, キノロン系薬に対する感受性とそのターゲットの遺伝子変異を検討したところ, 93株 (94%) がキノロン感受性株, 残る6株 (6%) がキノロン耐性株 (CPFXのMIC≧6.25μg/ml) であり, これらの耐性株のうち5株でキノロン系薬のターゲットをコードする遺伝子に変異が認められた。これらの結果は, 臨床より近年分離されるS. pneumoniaeにおいて, キノロン系薬に対する耐性化率がまだ低いことを示している。今後, S. pneumoniae感染症に対するキノロン系薬の臨床での使用に際しては, 抗菌活性, 体内動態および安全性を考慮に入れることはもちろん, その有効性を持続させるために, 起因菌を容易に耐性化させないことが重要であり, 薬剤による耐性菌選択の難易も考慮していく必要があるものと考えられる。
  • 紺野 昌俊, 荒川 宜親
    2000 年 48 巻 4 号 p. 251-277
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    平成11年度厚生科学研究費補助金 (医薬安全総合研究事業) による研究課題「院内感染等の原因となる薬剤耐性菌の評価とその対策に関する研究」を実施するにあたって, 研究担当者として「国内外の薬剤耐性菌の動向とそれに起因する感染症」をいかなる視点からとらえ, どのように評価しているかというスタンスを明確にしておくことが必要と考えた。そのため, 最初に, 抗菌化学療法が創始された時代に遡って, 抗菌化学療法に求められていた意義を再認識すると共に, 当時における伝染性感染症が抗菌薬療法やワクチンあるいは環境の整備といった感染症防止対策といかなる関係にあったのかを論じた。次いで, 抗菌薬の開発と共に出現してきたサルファ耐性赤痢菌, 多剤耐性赤痢菌, 多剤耐性ブドウ球菌, 緑膿菌を含む多剤耐性グラム陰性桿菌, MRSA, ペニシリン耐性肺炎球菌やβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌, さらにはバンコマイシン耐性腸球菌や多剤耐性結核菌等々に至る感染症出現の背景を考察した。3番目に, 現状におけるβ-ラクタム系薬, アミノグリコシド系薬, マクロライド系薬, ニューキノロン系薬, バンコマイシン, リファンピシンならびに抗真菌薬などが抱える耐性菌の問題について論述した。最後に, 上述した3つの視点から現在ならびに将来における医療としての抗菌薬療法の在り方について言及した。
  • 速見 浩士, 川原 元司, 北川 敏博, 江田 晋一, 常盤 光弘, 後藤 俊弘
    2000 年 48 巻 4 号 p. 278-284
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1997年1月から1998年12月までの2年間に鹿児島大学泌尿器科において複雑性尿路感染症患者から分離されたメチシリン耐性Staphylococcus aureus (MRSA) 34株, Enterococcus faecalis 43株, Escherichia coli 59株, Pseudomonas aeruginosa 36株, 計172株に対する13抗菌薬の最小発育阻止濃度 (MIC) を寒天平板希釈法で測定した。MRSAに対してはvancomycin (VCM), arbekacin (ABK) が強い抗菌力を示し, それぞれのMIC90は0.78μg/mL, 3.13μg/mLであった。E. faecalisに対してはVCMの抗菌力がもっとも強く (MIC90, 3.13μg/mL), カルバペネム系の3抗菌薬がこれに続いた。E. coliに対してはclindamycin (CLDM), piperacillin (PIPC) を除き, 検討したいずれの薬剤も比較的強い抗菌力を示した。なかでもmeropenem (MEPM) のMIC90は0.025μg/mL以下でありもっとも強い抗菌力を示した。P. aeruginosaにはtobramycin (TOB) がもっとも強い抗菌力を示し (MIC90 1.56μg/mL), MEPM, imipenem (IPM), ceftazidime (CAZ) がこれに続いた。各菌種ごとにカルバペネム系抗菌薬間の各菌株に対するMICを回帰分析を用いて検討した結果, 各薬剤問には比較的強い相関関係が認められた。また, 過去の成績との比較から, カルバペネム系抗菌薬に対する尿路分離菌の耐性化傾向が認められた。
  • 小原 要, 松本 悟, 渡辺 二朗, 樋口 貞夫
    2000 年 48 巻 4 号 p. 285-294
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用第3世代セフェム剤が有する抗菌活性に加え, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) にも抗菌活性を高めた新規セフェム系注射剤のcefbselis (CFSL, 販売名: ウィンセフ®) は, 易感染性または難治性の要因を有する患者にも有用な薬剤として1998年9月に発売された。しかし, 発売直後の4か月間に本剤が使用された患者約4万人 (販売量より推定) のうち64例に痙攣, 意識障害などの中枢神経症状が発現した。これらの中枢神経症状は本剤の承認時までに得られた非臨床試験および臨床試験の成績からは予測し得なかったものであるが, これらの患者背景をみると, 透析患者をはじめとする高度腎障害患者および高齢者 (特に, 75歳以上の後期高齢者) など腎機能低下を伴う患者に集中して発現していた。また, 中枢神経症状を発現した症例のなかには腎機能が正常なものも少数例みられたが, これらの患者は脳梗塞, 脳出血, 脳腫瘍, 痙攣および髄膜炎などの中枢神経障害の既往または痙攣の素因を有していた。ウィンセフの通常用法・用量は1回0.5~1g, 1日2回点滴静注であるが, 中枢神経症状が報告された患者での1日投与量は, 透析患者では1回1g, 1日1回, その他の患者では1回1g, 1日2回が大半を占めた。また, 症状発現時期は, 投与開始後4~5日目がもっとも多く, ほとんどが1週間以内に発現している。本剤は多くの既存セフェム剤と同様, 腎排泄型の薬剤であり, 腎機能障害患者に本剤を投与すると腎機能の障害の程度に応じて血中濃度半減期が延長することが知られている。今回の副作用発現例では, ほとんどが腎機能低下を示す患者であったことから, 本剤の連続投与により高い血中濃度が持続し, この結果, 薬物が血液脳関門blood brain barrier (BBB) あるいは血液髄液関門blood liquor barrier (BLB) などを通過して, 脳内に移行することで中枢神経症状を発現した可能性が高いと推察される。なお, 脳内における作用機作としては, γ-aminobutyric acid (GABA) 受容体あるいはN-methyl-D-aspartate (NMDA) 受容体の関与をうかがわせる報告もあるが詳細は不明である。本剤の適正使用をより推進するためには, 中枢神経症状発現のリスクファクターを明らかにすることが求められるが. それには薬物の脳内移行性および作用機作の解明が必要と思われる。
  • 草野 展周, 津川 昌也, 神谷 晃
    2000 年 48 巻 4 号 p. 295-307
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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