最近10年間に当科で施行した消化器外科手術1, 843例 (男性1, 115, 女性728) を対象に, 術後感染症発生率およびMRSA検出率における性差を検討した。全体では1, 843例中608例 (33.0%) に術後感染症が発生し, 127例 (6.9%) からMRSAが検出された。汚染手術症例, 高齢者, 悪性疾患および男性の術後感染症発生率 (50.4%, 42.3%, 37.7%, 35.7%) は準無菌手術例, 若年者, 良性疾患および女性のそれ (31.7%, 29.6%, 27.3%, 28.8%) に比べ有意に高率であった。また, 汚染手術例, 高齢者, 悪性疾患および男性のMRSA検出率 (14.0%, 10.5%, 8.6%, 9.5%) は, 準無菌手術例, 若年者, 良性疾患および女性のそれ (6.4%, 5.6%, 4.8%, 2.9%) に比べ有意に高率であった。併存症の有無により術後感染症発生率およびMRSA検出率には有意差を認めなかった。臨床的背景因子別に検討した結果, 準無菌千術例, 高齢者, 良性疾患のサブグループでは, 男性は女性に比べ術後感染症発生率が有意に高率であった。併存症に関しては, その有無にかかわらず, 男性は女性に比べ術後感染症発生率が有意に高率であった。準無菌手術例, 併存症非保有例のサブグループでは, 男性は女性に比べMRSA検川率が有意に高率であった。年齢, 基礎疾患に関しては, その高低, 良悪性にかかわらず, 男性は女性に比べMRSA検出率が有意に高率であった。以上より, 性別は手術汚染度, 年齢, 基礎疾患の良・悪性別とともに, 術後感染症の発生ならびにMRSA検出に対するリスクファクターになり得ると考えられた。
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