日本化学療法学会雑誌
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49 巻, 3 号
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  • 荒田 次郎
    2001 年 49 巻 3 号 p. 147-156
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌は皮膚から分離される細菌のなかで, 感染病巣, 非感染性炎症病変を問わずもっとも分離頻度が高い。直接的侵襲だけでなく遠隔病巣で産生される毒素によっても疾患に関与する。接着常在する状態でも炎症性病変の修飾・誘発に重要な役割をもっている。この総説ではわれわれの教室での研究をふまえ黄色ブドウ球菌と皮膚とのかかわりについて論じた。
  • 宮崎 修一, 藤川 利彦, 山口 惠三
    2001 年 49 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    最近分離されたアンピシリン感性, β-ラクタマーゼ産生およびβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性 (BLNAR) Haemophilus influenzaeに対するmeropenem (MEPM) と比較抗菌薬であるampicillin (ABPC), cefotaxime (CTX), panipenem, imipenem (IPM), biapenem (BIPM) の抗菌力を調べた結果, 特にBLNAR菌においてIPM耐性菌 (MIC:≧8μg/mL) が50%であった。また, BLNAR菌に対するMEPMとCTXの抗菌活性 (MIC90) はアンピシリン感性菌に対する抗菌活性のそれぞれ1/4と1/64であった。アンピシリン感性およびBLNAR H.influenzaeによる気管支肺炎マウスに, meropenem/cilastatin (MEPM/CS) および比較抗菌薬を1日2回3日間20mg/kg (ABPC, CTXでは40mg/kg) を連続投与し治療効果を比較評価した。アンピシリン感性菌を用いた場合, CTX投与群が有意差 (p<0.05) をもってもっとも優れた治療効果を示し, 次いでBIPM, ABPC, MEPM/CS投与群の順であった。一方, BLNAR菌を感染した群では, MEPM/CS, imipenem/cilastatin (IPM/CS) およびCTX投与群のみ無治療群に比べ有意差 (p<0.05) をもって感染組織の生菌数が減少していた。
  • 唐木田 一成, 太田 嘉英, 青木 隆幸, 渡辺 大介, 山崎 浩史, 金子 明寛, 佐々木 次郎, 槻木 忠一
    2001 年 49 巻 3 号 p. 162-165
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    CaffeineはDNA修復阻害作用を有し, 抗癌薬との併用で抗腫瘍効果が増強することが知られている。われわれは口腔扁平上皮癌のneoadjuvant chemotherapyとしてcisplatin (CDDP), etoposide (VP-16), bleomycin (BLM) およびcaffeineの静脈内投与を施行し, 臨床効果および副作用について検討した。投与はCDDP (25mg/body) を2時間, VP-16 (100mg/body) を1時間およびBLM (20mg/body) を16時間かけて点滴静注し, その後, caffbine 1,000mg/bodyを18時間かけて点滴静注した。これを1週間に1回とし2クール行った。口腔扁平上皮癌症例17例に行い検討した結果, 評価可能14例中, completeresponse (CR) 0例, partial response (PR) 8例で奏効率は57.1%であった。副作用は食欲不振 (52.9%), 骨髄抑制 (47.0%), 悪心 (29.4%) で不眠を訴える症例はなかった。その他, 発熱, 顔面蒼白, 口唇ビラン, 皮疹が少数例に見られた。以上より, neoadjuvant chemotherapyとして有用性を認めたが, 今後, さらに至適投与量の検討が必要と思われた。
  • 大澤 浩, 相羽 恵介, 宇野 真二, 水沼 信之, 堀越 昇
    2001 年 49 巻 3 号 p. 166-169
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cisplatin (CDDP) を中心とした併用化学療法施行後の進行・再発 (CDDP耐性) 食道癌の後療法として有用な薬剤は, きわめて少ない。われわれは, CDDP耐性進行・再発食道癌19症例に対し, 新白金錯体cis-diammineglycolatoplatinum (nedaplatin;CDGP) の単独投与を行った。投与方法: CDGPは100mg/m2を4週間ごとに投与した。結果: 19例を評価対象とした。抗腫瘍効果の評価可能症例14例のうち, 著効 (CR) および有効 (PR) は認められず, 不変 (NC) 13例, 進行 (PD) 1例であった。主たる副作用は, 白血球減少と血小板減少であった。非血液毒性では, 2例にCDGPが原因と考えられるアナフィラキシー症状が認められた。病勢進行までの期間の中央値は90日, 全生存期間の中央値は105日であった。考案: 今回の結果からは, CDGPはCDDPと臨床的に交叉耐性を有する可能性が示唆された。今後は効果・副作用の相対的観点より, 進行・再発食道癌において。両者の比較検討が必要と考えられた。
  • 五十嵐 正博, 中谷 龍王, 林 昌洋, 中田 紘一郎, 粕谷 泰次
    2001 年 49 巻 3 号 p. 170-178
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1995年4月から2000年7月までの問にMoelleringのノモグラムにもとついてvancomycin (VCM) の投与を行った30症例を対象に, 臨床評価を行った。その結果, 投与量は160~2,000mg/day (5.0~42.9mg/kg/day) となり, 体重あたりの投与量で8倍以上の開きがあった。定常状態でのトラフ濃度は30症例中25症例 (83.3%) が5~15μg/mLの有効域内にあった。4症例 (13.3%) では有効域下限の5μg/mLを下回ったが, 有効域上限の15μg/mLを超え中毒域濃度に達したのは1症例のみであった。ピーク濃度については, 測定した26症例のうち20~40μg/mLの有効域内に達したのは8症例 (31%) のみで, 他の18症例 (69%) では有効域下限の20μg/mLを下回った。全症例の平均血中濃度は, 14.5μg/mLとノモグラムの目標濃度15μg/mLとほぼ一致した。9例においてはノモグラムによる投与開始後の血中濃度からBayesian法を用いて投与量を変更した。最終的にVCMの有効率は85.7%であり, 腎障害の副作用が認められたのは過量投与となった1症例のみであった。過量投与の再発を防ぐ留意点を明らかにするために, 患者個々の平均血中濃度とcreatinine clearance (Ccr), 体重, 年齢およびBody mass index (BMI) との相関性を検討した。その結果, 血中濃度とBMIとの間に負の相関が認められた。したがって, BMIが14kg/m2以上の患者に対しては, Cockcroft式とノモグラムを用いることでVCMの初期投与設計が適切に行えるが, BMIが14kg/m2未満の患者に対しては, 24時間Ccrの実測値を用いるか, 1/(15-BMI) をかけて補正した体重とCockcroft式で算出したCcrを用いて初期投与設計を行うべきであると考えられた。
  • 寺久保 繁美, 金光 敬二, 竹村 弘, 岡村 二如, 國島 広之, 池島 秀明, 山本 啓之, 嶋田 甚五郎
    2001 年 49 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1998年8月より1999年11月までに呼吸器系臨床検体から分離された菌株よりmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus: MSSA 32株, methicillin-resistant S.aureus: MRSA 30株, penicillinsusceptibleStreptococcus pneumoniae: PSSP 30株, penicillin-intermediate S.pneumoniae: PISP 16株, penicillin-resistant S.pneumoniae: PRSP 20株, Streptococcus pyogems 30株, Streptococcus agalactiae 30株, β-lactamase negative ampicillin susceptible Haemophilus influenzae 23株, β-lactamase positive H.influenzae: 17株, β-lactamase negative ampicillin resistant H.influenzae: BLNAR 16株, Klebsiella pneumoniae 30株の274株を選択して, 呼吸器感染症に汎用されているβ-ラクタム系薬 (ampicillin: ABPC, cefazolin: CEZ, cefotiam: CTM, ceftriaxone: CTRX, meropenem: MEPM) に対する感受性を検討した。MRSAに対しては, すべての試験薬のMIC90が64μg/mL以上であったが, MSSAに対してMEPMはMIC90が≦0.06μg/mLともっともよい値を示した。S.pyogenes, S.agalactiaeに対しては, すべての試験薬でMIC90が0.5μg/mL以下を示した。PRSPを含めたS.pneumoniaeに対するCTRXとMEPMのMIC rangeはそれぞれ≦0.06-1, ≦0.06-0.5μg/mLと優れた抗菌活性を示した。H.influenzaeに対してはABPC感性, 耐性にかかわらずMEPM, CTRXは優れた抗菌力を示した。
  • PRSP, BLNAR感染症との関連について
    須藤 梢, 岸部 和也, 藤川 弘之, 酒井 正史, 小山 義之, 横田 正幸, 真山 武志, 生方 公子, 紺野 昌俊
    2001 年 49 巻 3 号 p. 185-204
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    本邦におけるペニシリン耐性肺炎球菌, β-lactamase非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌 (BLNAR) の実態を把握し, それらの菌に対するcefditren pivoxil (CDTR-PI, 販売名: メイアクト®錠100, メイアクト®小児用細粒) の感受性と使用実態を市販後特別調査として実施した。本報においてはその感染像と, CDTR-PI投与時に主治医が判断した臨床的手応えと, 安全性について解析した。(1) 本調査の年齢構成は, 生後4か月の乳児を含む1歳を頂点とする6歳以下の小児が92.6%を占めるという特徴が見られた。(2) 肺炎球菌検出例が188例, インフルエンザ菌検出例が157例で, 両菌の同時検出例が99例であった。(3) PCR法によって, 肺炎球菌の1~2つの薬剤耐性遺伝子に変異が生じている株 (PISP) は81株 (43.1%), 3つの薬剤耐性遺伝子に変異が生じている株 (PRSP) は89株 (47.3%) であった。インフルエンザ菌ではペニシリン結合蛋白3 (PBP3) に変化がみられるBLNARが62株 (39.5%), β-lactamase産生株は7株 (4.5%) であった。また, BLNARにβ-lactamaseを産生する株が5株 (3.2%) 認められた。(4) これらの症例のうち, 前化学療法「あり」の群におけるPSSP検出率は「なし」の群に比して有意に低く (4.0%: 11.5%), PRSP検出率は逆に高い (60.0%: 40.5%) という結果が示された。(5) これらの症例には38℃ 台の高熱が持続する例が多く, 膿性の鼻汁の有無が難治の指標となること, 中耳炎が合併するなどの実態が示された。(6) 主治医の臨床的手応えもまた発熱や膿性鼻汁に重点がおかれ, 難治となった中耳炎が示す臨床症状の改善も判断根拠となっていた。(2) 主治医の臨床的手応えをもとにCDTR-PIの有効率を算出すると85.1%(211/248) となり, 肺炎球菌検出例で81.9%(154/188), インフルエンザ菌検出例で87.3%(137/157) となった。(8) 副作用発現率は5.60%(15/269) で, 承認時の発現率とほぼ同等であった。消化管障害が主で重篤症例はなく, 副作用・感染症報告に該当する症例はなかった。
  • 嶋田 甚五郎, 佐藤 昇志, 清野 宏, 高橋 洋, 岡村 登, 堤 裕幸
    2001 年 49 巻 3 号 p. 205-217
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    小児ウイルス性呼吸器感染症における粘膜免疫について, 小児にとって最重要と考えられるrespiratory syncytial virus (RSウイルス) 感染症を例にとって, 特にその感染急性期における非特異的な粘膜面の免疫応答について検討した。呼吸器ウイルス感染における生体の防御機構, 免疫応答の第一段階は, 感染気道上皮における, ウイルス感染に呼応した種々の変化・反応といえる。このことは, 遺伝子レベルでは, 感染上皮細胞内の, 種々の機能を有している遺伝子群の転写の過程の変化と言い替えることもできる。そのような観点から, 主にin vitroの系を用いた解析で, RSウイルス感染細胞において, IL-1β, IL-6, TNF-α などの炎症性サイトカイン.IL-8, RANTESなどのケモカインの産生が, その転写レベルで速やかに行われることが示された。また, アポトーシスに至るcaspase経路のいくつかの遺伝子群が活性化されること, また, 強いNO産生作用のあるII型 (誘導型) 一酸化窒素合成酵素 (inducible nitric oxide synthase: iNOS) 遺伝子の転写活性尤進もやはりin vitroの系であるが確認された。これらの反応には, IRF-1, NF-KBなどの核内転写因子の活性亢進がおきることも示された。これらのことよりin vivoにおいても, これらサイトカイン, ケモカインが相互に影響し合って, 各種炎症細胞を局所へ誘導・活性化し, さらに血管内皮, 粘膜下腺などの気道の細胞に働いて気道炎症の全体像を形成するとともに, 生体の防御機構である粘膜免疫の第一歩を進める可能性が考えられる。
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