1998年より2000年にかけて, 毎年2月から3月に一次医療機関を中心とした日本各地の382施設において, 呼吸器および尿路感染症の訴えをもって来院した外来初診患者より採取された検体からの分離菌について, faropenem (FRPM) を含む各種抗菌薬の抗菌力を測定した。各種耐性菌の比率の経年的変化をみると,
Staphylococcus aureusに対するmethicillin-resistant
S.aureus (MRSA) の比率は約7%,
Staphylococcus epidermidisに対するmethicillin-resistant
S.epidermidis (MRSE) の比率は25~30%とほぼ一定であったのに対して,
Streptococcus pneumoniaeに対するpenicillin-resistant
S.pneumoniae (PRSP) の比率は2.7%から12.1%へ, penicillin-intermediate
S.pneumoniae (PISP) の比率は24.5%から33.6%へ増加傾向を示した。methicillin-susceptible
S.aureus (MSSA), methicillin-susceptible
S.epidermidis (MSSE), PISP, PRSPに対して優れた抗菌力を示したのはimipenem (IPM) とFRPMであった。
Streptococcus pyogenesに対してはほとんどのβ-ラクタム薬が優れた抗菌力を示した。
Enterococcus faecalisに対して優れた抗菌力を示したのはclavulanic acid/amoxicillin (CVA/AMPC) であった。グラム陰性菌では
Brankamella catarrkalis, Esckerichia coliにはlevofloxacin (LVFX), IPMが,
Klebsiella属,
Enterobacter属にはLVFXが優れた抗菌力を示した。
Haemophilus influenzaeはampicillin (ABPC) 耐性株が30.4~37.1%認められた。これらのABPC耐性株はすべてのβ-ラクタム薬に対して感受性菌と比較して若干の感受性の低下を認めたが, LVFXは優れた抗菌力を示した。一方,
Haemophilus parainfluenzaeは経年的に分離株数が明らかな増加傾向を示した (1998年84株, 1999年401株, 2000年435株)。
H.parainfluenzaeの経年的な薬剤感受性の変化をみると, β-ラクタム薬に対しては特に変化はなかったが。LVFXに対してやや感受性の低下が認められた。FRPMはMRSA, MRSEを除いた菌に対して優れた抗菌活性を示し, これらの菌については, 3年間で特にFRPMに対する経年的な薬剤感受性の低下は認められなかった。
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