日本化学療法学会雑誌
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49 巻 , 5 号
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  • 山中 昇, 保富 宗城
    2001 年 49 巻 5 号 p. 297-308
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    感染症は抗菌薬の開発と進歩に伴いその多くが制圧されたかに思われた。しかし近年, 従来は抗菌薬治療により良好な経過をとっていた感染症に難治例が増加するなど, 感染症の臨床像に大きな変化がおこっている。耳鼻咽喉科領域の代表的な感染症である急性中耳炎においても, 従来までは経口抗菌薬の投与にて容易に治癒していたものが, 近年では経口抗菌薬の治療にもかかわらず急性中耳炎が改善しない遷延例や, 感染を繰り返す反復例などの難治例が増加している。急性中耳炎の難治化の要因としては, ペニシリン耐性肺炎球菌 (penicillin resistant Streptococcus pneumoniae, PRSP) やβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌 (β-lactamase negative ampicillin resistant: BLNAR) などの薬剤耐性菌の急増に加えて, 集団保育の普及と低年齢化や母乳栄養の短期化などの社会生活の変化により, 薬剤耐性菌が容易に伝播し頻回に感染を繰り返すことが考えられる。また宿主の感染防御能の面から, 起炎菌に対する宿主の免疫能の低下も注目されている。このような急性中耳炎の難治化の問題から, 変貌する急性上気道感染症に対しては, いままでの感染症研究に見られたような病原微生物の各論的研究に片寄り, 個々の感染に伴う現象として経験的にとらえる研究では, もはや感染症の克服は困難な時期にきている。感染症が病原微生物と生体の免疫能とのバランスの上に成り立つものであり, 宿主と病原微生物の相互作用として分子レベルで解明するとともに, 環境条件や集団における伝播形式などを含めた総合的な研究が必要であり, 感染症研究のパラダイム・シフトが進行している。これらの変貌する急性上気道感染症への対策としては, 本邦においても明確な治療ガイドラインを早急に設ける必要があるとともに, さらに今後, 抗菌薬の開発と薬剤耐性菌のイタチゴッコから抜け出すためには, 宿主の免疫に目を向けたより効果的な予防法, すなわちワクチンの開発が早急に望まれる。
  • 速見 浩士, 川原 元司, 北川 敏博, 江川 晋一, 松下 貞治, 内田 洋介, 常盤 光弘, 川畑 史朗, 西園 敏幸, 後藤 俊弘, ...
    2001 年 49 巻 5 号 p. 309-316
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1999年に鹿児島大学医学部附属病院泌尿器科において複雑性尿路感染症患者から分離されたMRSA 15株を含むStaphylococcus aureus 21株, Enterococcus faecalis 34株, Escherichia coli 43株, Pseudomonas aeruginosa 21株, 計119株に対する13抗菌薬の最小発育阻止濃度 (MIC) を寒天平板希釈法で測定した。S.aureusに対してはvancomycin (VCM) とarbekacin (ABK) が強い抗菌力を示し, MIC90はいずれも1.56μg/mLであった。E.faecalisに対してはVCMの抗菌力がもっとも強く (MIC90, 1.56μg/mL), カルバペネム系薬の3抗菌薬がこれに続いた。E.coliに対してはclindamycin (CLDM), piperacillin (PIPC) を除き, 検討したいずれの薬剤も比較的強い抗菌力を示した。なかでもmeropenem (MEPM) のMIC90は0.025μg/mL以下でありもっとも強い抗菌力を示した。P.aeruginosaにはMEPMがもっとも強い抗菌力を示し (MIC90, 3.13μg/mL), imipenem (IPM), arbekacin (ABK) がこれに続いた。各菌種ごとにカルバペネム系薬間の各菌株に対するMICを回帰分析を用いて検討した結果, 各薬剤間には正の相関が認められた。また, すでに報告した成績との比較から, この2年間でカルバペネム系薬に対する尿路分離菌の明らかな耐性化は認められなかった。
  • 嶋田 甚五郎, 竹村 弘
    2001 年 49 巻 5 号 p. 317-326
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1998年より2000年にかけて, 毎年2月から3月に一次医療機関を中心とした日本各地の382施設において, 呼吸器および尿路感染症の訴えをもって来院した外来初診患者より採取された検体からの分離菌について, faropenem (FRPM) を含む各種抗菌薬の抗菌力を測定した。各種耐性菌の比率の経年的変化をみると, Staphylococcus aureusに対するmethicillin-resistant S.aureus (MRSA) の比率は約7%, Staphylococcus epidermidisに対するmethicillin-resistant S.epidermidis (MRSE) の比率は25~30%とほぼ一定であったのに対して, Streptococcus pneumoniaeに対するpenicillin-resistant S.pneumoniae (PRSP) の比率は2.7%から12.1%へ, penicillin-intermediate S.pneumoniae (PISP) の比率は24.5%から33.6%へ増加傾向を示した。methicillin-susceptible S.aureus (MSSA), methicillin-susceptible S.epidermidis (MSSE), PISP, PRSPに対して優れた抗菌力を示したのはimipenem (IPM) とFRPMであった。Streptococcus pyogenesに対してはほとんどのβ-ラクタム薬が優れた抗菌力を示した。Enterococcus faecalisに対して優れた抗菌力を示したのはclavulanic acid/amoxicillin (CVA/AMPC) であった。グラム陰性菌ではBrankamella catarrkalis, Esckerichia coliにはlevofloxacin (LVFX), IPMが, Klebsiella属, Enterobacter属にはLVFXが優れた抗菌力を示した。Haemophilus influenzaeはampicillin (ABPC) 耐性株が30.4~37.1%認められた。これらのABPC耐性株はすべてのβ-ラクタム薬に対して感受性菌と比較して若干の感受性の低下を認めたが, LVFXは優れた抗菌力を示した。一方, Haemophilus parainfluenzaeは経年的に分離株数が明らかな増加傾向を示した (1998年84株, 1999年401株, 2000年435株)。H.parainfluenzaeの経年的な薬剤感受性の変化をみると, β-ラクタム薬に対しては特に変化はなかったが。LVFXに対してやや感受性の低下が認められた。FRPMはMRSA, MRSEを除いた菌に対して優れた抗菌活性を示し, これらの菌については, 3年間で特にFRPMに対する経年的な薬剤感受性の低下は認められなかった。
  • 中尾 光成, 上田 享司, 赤野 由美子, 野村 憲一, 藤田 寧子, 岡本 朋美, 小林 都, 岩井 俊樹, 笹井 ゆり, 中澤 直三, ...
    2001 年 49 巻 5 号 p. 327-330
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    血液疾患に併発した感染症51例に対しsulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) とaztreonam (AZT) の併用療法を試みその有用性と安全性を検討した。評価対象症例は41例で, 平均年齢は56.5歳であった。内訳は急性白血病が15例 (36.6%), 悪性リンパ腫が18例 (439%), 多発性骨髄腫が6例 (14.6%), MDSが1例 (2.4%), 慢性リンパ性白血病が1例 (2.4%) であった。全体の有効率は61.0%(25/41例) で, 感染症別の有効率は敗血症疑いで64.3%(18/28例), 肺炎で60.0%(3/5例) であった。急性白血病での有効率は66.7%(10/15例) と高く, 悪性リンパ腫は58.8%(10/18例) であった。年齢別では高齢になるほど有効率が低下する傾向を認めた。投与前後の好中球数が500/μL未満の症例では57.1%(4/7例) と低い有効率となった。評価症例において重篤な副作用は認めなかった。内訳は肝機能障害が4例, 嘔気が1例, 皮疹が1例であった。SBT/ABPCとAZTの併用療法は血液疾患に併発した感染症に対し, 安全かつ有用な抗菌療法であると考えられた。
  • 鈴木 博子, 河野 仁, 酒井 正史, 小山 義之, 風早 知之, 横田 正幸
    2001 年 49 巻 5 号 p. 331-339
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口セフェム系抗生物質であるcefditoren pivoxil (販売名: メイアクト ® 錠100) を妊娠時に投与された妊婦および出生児に対する安全性について, レトロスペクティブな使用実態調査により検討した。調査内容は本剤投与時の患者背景 (年齢, 妊娠歴など), 投与方法 (投与量, 投与期間など), 併用薬剤および併用療法, 副作用および有害事象, 臨床検査, 出産時情報 (妊娠経過, 分娩時の母親に関する情報), 出生児情報 (新生児, 出生後1か月および可能な場合は出生1年後まで追跡調査を実施) である。臨床医より, 妊婦に本剤を投与したと報告された症例は148例で, 除外・脱落症例 (12例) を除いた136例を解析対象症例とした。そのうち, 出生後1か月まで追跡できた症例は127例, 出生1年後まで追跡できた症例は35例であった。解析対象症例の内訳は,(1) 妊娠4~7週 (絶対危険期) 投与症例は1例 (妊娠5週),(2) 妊娠8~15週 (相対危険期) 投与症例は17例,(3) 妊娠16週以降投与症例は118例 (最長は妊娠41週) で, これらの症例では妊婦に本剤投与時の副作用および有害事象は認められなかった。出生児に関しても本剤投与に起因すると考えられる異常所見は認められなかった。
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