現在深在性真菌症の治療に使用できる抗真菌薬は少数しかなく, しかも各薬剤の臨床的有用性に限界がある。したがって, 既存薬を上回るかまたはそれを補う特性をもつ新しい抗真菌薬 (既存薬の新規製剤を含む) の早急な開発が望まれている。目下米国, ヨーロッパ諸国または日本において, 開発段階はことなるものの, 次のカテゴリーの薬剤が臨床試験に入っている。(i) ポリエン系 (特にamphotericin B) の種々の脂質担体製剤, (ii) itraconazoleのヒドロキシ-β-シクロデキストリン可溶化製剤, (iii) トリアゾール系新規薬剤, (iv) カンジン系薬剤。前2者のカテゴリーの製剤は, いずれも新しい薬物送達システムを用いることによって従来製剤よりも薬物動態が著しく改善され, 有用性が高まった。新規トリアゾール系化合物のなかで臨床開発が先行しているvoriconazole, posaconazoleおよびravuconazoleは, fluconazoleと比較していずれも抗菌活性の増強とスペクトルの拡大が図られており, 一般に良好な薬物動態と低毒性を示す。カンジン系は, 真菌細胞壁生合成のkeyenzymeとなる (1→3)-β泣Jン合成酵素を阻害することによって抗真菌活性を発揮する新規クラスの薬剤である。このクラスの3種の化合物, VER-002, MK-0991およびFK 463については, いずれも殺菌的に働くこと, 種々の真菌や
Pneumocystis cariniiに対する活性をもつこと, アゾール系と交叉耐性を示さないこと, 薬物動態と安全性にすぐれていること, など共通の特性がみられる。近い将来, これらの有望な抗真菌薬の開発が成功し, 深在性真菌症のマネジメントに有用な治療薬の選択肢が増えるものと期待される。
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