Gatifloxacin (GFLX) の外科系領域感染症 (外科, 皮膚科, 耳鼻咽喉科, 産婦人科, 眼科, 歯科・口腔外科) に対する臨床試験は1993年11月から1997年2月まで実施され, それらの成績はすでに公表された。その後, 製造承認申請に伴う規制当局による実地調査でGCP不適合症例が指摘されたため, 治験依頼者は原資料との照合調査を実施した。その結果, 一部の症例に実施計画書違反が新たに判明したため, 症例の採否を再検討し再度の解析を行ったので, これらの成績全体をまとめて報告する。
1. 体内動態
胆嚢壁, 皮膚, 中耳粘膜, 副鼻腔粘膜, 扁桃, 耳下腺, 骨盤内性器組織, 結膜, 瞼板腺, 歯肉, 目蓋粘膜など組織中のGFLX濃度は血清中濃度の1.24~4.64倍, また, 胆汁, 皮膚滲出液, 口腔外科手術創滲出液中の濃度は1.24~9.47倍で, GFLXは良好な組織移行性を示した。
2. 臨床効果
各科領域感染症に対する有効率は, 外科88.3%(113/128), 皮膚科86.9%(139/160), 耳鼻咽喉科83.5%(162/194), 産婦人科93.8%(137/146), 眼科94.2%(114/121), 歯科・口腔外科90.5%(153/169) であった。
3. 細菌学的効果
各科領域感染症での菌陰性化率は, 外科88.9%(96/108), 皮膚科88.5%(85/96), 耳鼻咽喉科87.1%(142/163), 産婦人科87.0%(60/69), 眼科96.0%(72/75), 歯科・口腔外科99.1%(109/110) であった。各領域の起炎菌を総合的にみた菌消失率は, グラム陽性菌93.0%(572/615), グラム陰性菌94.2%(195/207), 嫌気性グラム陽性菌96.5%(223/231), 嫌気性グラム陰性菌99.5%(198/199) であった。
4. 安全性
各領域での副作用発現率, 臨床検査値異常発現率とも従来のフルオロキノロン系抗菌薬に比べ同程度であることが確認され, 特に重篤なものはみられなかった, 以上より, 再解析の結果はすでに公表された成績と大差は認められず, 外科系領域感染症の治療においてGFLXは有用性の高い抗菌薬と考えられた。
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