日本化学療法学会雑誌
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50 巻 , 11 号
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  • 土井 教生
    2002 年 50 巻 11 号 p. 767-776
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    結核の化学療法における新しい抗菌薬の開発と導入は, 結核化学療法の治療期間の短縮や多剤耐性結核の治療, 薬剤耐性菌の発生防止, 治療完了率の向上, 総医療費の削減をはじめ結核対策において多くの効果が期待できる。しかし, 遺憾なことに過去30年間, 新規の化学構造と新たな作用機序を有する強力な新薬は1剤も開発されることなく現在に至っている。慢性の呼吸器感染症である結核に対する新しい抗結核薬は, 細胞内移行性と肺内移行性にすぐれ, 対数増殖期と分裂休止期いずれの感染菌に対しても殺菌的な活性を示す新規系統の化合物が望ましく, できれば抗酸菌に対してのみ特異的な抗菌活性を示す「狭域の抗菌スペクトル」をもった候補化合物が理想である。新しい抗結核薬として世界的に注目を浴びているもっとも有望な新薬は, 現在臨床治験phase Iの開発段階にあるnitroimidazopyran (代表化合物PA-824) である。PA-824は脂質の生合成阻害とタンパク質の合成阻害という2種類の作川機序を有する新しい系統化合物で, 分裂増殖期・発育休止期の結核菌に対してともに滅菌的な活性を示し, 多剤耐性結核菌に対しても有効性を示す。新しいリファマイシン誘導体のなかでは, 目下臨床治験phase Iを継続中のrifalazil (KRM-1648) が, 強力な抗菌活性とlong-lastingな活性を示す候補化合物として有望視されている。ニューキノロン系抗菌薬の8-methoxy-fluoroquinolone系抗菌薬も新たな抗結核薬として注目を集めており, なかでもgatifloxacin (GFLX) とmoxifloxacin (MXFX) が有望視されている, 新世代マクロライド系抗菌薬の各種ketolide化合物 (ABT-773, HMR-3647など) はすぐれた抗MAC活性を示すが, マクロライド耐性のMAC菌株には無効である。Caprazamycin-B (CPZ-B) は近年わが国で開発された候補化合物で, 抗酸菌の細胞壁合成を阻害する作用機序をもつ。CPZ-Bは抗酸菌に対してのみ特異的な抗菌活性を示す新規の系統化合物であり, 抗酸菌治療薬としてのCPZ-Bの今後の研究開発に期待がもたれる。WHOの指揮下で“The Global Alliance for TB Drug Development (GATB)”という組織が発足し, 新抗結核薬開発のための民間への資金援助活動が開始されている。GATBは最近“Aerosolized new drug in DDS”という新しいプロジェクトを発足させており, これが今後の抗酸菌治療薬の開発と結核の化学療法に新たな展開をもたらす可能性がある。
  • 中村 竜也, 松尾 信昭, 高橋 伯夫
    2002 年 50 巻 11 号 p. 777-786
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1991年から2000年の10年間に血液培養から検出された腸内細菌科329株について, β-ラクタム薬耐性機序に関する解析を行った。薬剤感受性試験の結果はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniaeでは第3世代以降のセフェム系薬剤やカルバペネム系薬剤のMIC90が0.5μg/mL以下と良好な感受性を示した。Enterobacter cloacae, Citrobacter freundii, Serratia marcescensでは第3世代セフェムはやや劣るものの, 第4世代薬やカルバペネム系薬は比較的良好であった。腸内細菌すべてではmeropenemのMIC90がもっとも低値で0.12μg/mL以下であった。菌種別の耐性率ではceftazidimeで比較するとE.cloacaeがもっとも高く50.5%であった。Double-disk synergy test (DDST) 試験陽性は19株, 2-mercapto propionic acid test (2-MP) 陽性は5株存在し, 耐性遺伝子はextended spectrum β-lactamase (ESBL) 産生遺伝子CTX-M1/3型が19株中18株検出され, metallo-β-lactamase (MBL) 産生菌は5株すべてIMP-1型であった。また, 1991年に検出されたK.pneumoniaeではSHV型ESBL産生菌の存在が確認された。臨床背景調査では基礎疾患として悪性腫瘍や脳血管障害などの比較的重症例が多く, 全例でIVHカテーテルが挿入されていた。ESBL産生菌検出患者ではカルバペネム系やアミノ配糖体薬の投与で, MBL産生菌検出患者ではaztreonamの投与で臨床症状が改善され, 治療効果が期待される結果であった。
  • 黒川 博史, 若松 篤, 山田 大輔, 永田 明義, 勝又 一成
    2002 年 50 巻 11 号 p. 787-793
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    われわれは, 血液培養から検出されたβ-ラクタム薬耐性の, Escherichia coli 9株, Proteus mirabilis 10株, Prouideneia stuartii 3株, Enterobacter aerogenes 3株, Enterobacter cloacae 9株, Serratia marcescens 10株, Pseudomonas aeruginosa 3株, Klebsiella oxytoca, Morganella morganii, Citrobacter freundiiがそれぞれ1株ずつの計50株を対象として, isepamicin (ISP) をはじめとしたアミノグリコシド薬およびβ-ラクタム薬のMICを測定した。ISPのMIC rangeは1~≧256μg/mLであり, MIC50, MIC90はそれぞれ4μg/mL, 16μg/mLであり, 血液培養由来の各種β-ラクタム薬耐性菌に対する有川性が示唆された。
  • 肺炎球菌等による市中感染症研究会収集株のまとめ
    生方 公子, 千葉 菜穂子, 小林 玲子, 長谷川 恵子, 紺野 昌俊
    2002 年 50 巻 11 号 p. 794-804
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    日本において1998年から2000年の3年間に, 「市中感染症研究会」に参加した187施設より当研究室へ送られてきた総計6,692検査材料が本研究の対象とされた。前複例を除く4, 030例のなかで多かった疾患は, 急性中耳炎 (n=1, 425), 急性上気道炎 (n=961), 急性気管支炎 (n=390) であった。肺炎例も175例認められた。これらの症例からのインフルエンザ菌の分離率は30%台であった。患者からのインフルエンザ菌分離率のピークは1歳にあり, 学童期に至るまで暫時減少した。それに対し, 成人におけるインフルエンザ菌の分離率は平均10%程度であった。臨床分離の1,408株に対する分子解析にもとづく疫学研究は, われわれによるインフルエンザ菌における耐性遺伝子解析によって構築されたPCR法によって実施された。使用された4セットのprimerは次の通りである。すなわち,(i) P6膜タンパクの遺伝子,(ii) TEM-1 typeβ-lactamase遺伝子 (bla),(iii) 感性菌に見いだされるPBP3遺伝子 (ftsI),(iv) β-lactamase非産生ampicillin (ABPC) 耐性インフルエンザ菌 (BLNAR) に見出されるftsI遺伝子である。インフルエンザ菌はPCR解析の結果にもとづき, 次の6typeに識別された。(1) いずれの耐性遺伝子をももたないβ-lactamase非産生ABPC感性菌 (BLNAS, n=826),(2) TEM-1 typeβ-lactamase産生ABPC耐性菌 (BLPAR, n=81),(3) ftsI遺伝子にLys-526変異をもつβ-lactamase非産生で低レベルのABPC耐性菌 (Low-BLNAR, n=352),(4) Lys-526とさらに保存性アミノ酸配列のSer-Ser-Asn周囲に3つのアミノ酸変異をもつBLNAR (n=109),(5) TEM-1とLow-BLNAR耐性遺伝子を保持するβ-lactamase産生でamoxicillin/clavulanate耐性菌 (BLPACR-I, n=36),(6) TEM-1とBLNARの耐性遺伝子を保持するβ-lactamase産生でamoxicillin/clavulanate耐性菌 (BLPACR-II, n=4) である。Low-BLNARとBLNARに対するABPCのMIC90はそれぞれ2μg/mLと4μg/mLであった。これら耐性株ではABPCやmeropenemのそれよりも, 経口および注射用セフェム系薬の感受性が明らかに低下していた。経口セフェム系薬のなかではcefditorenのMIC90がBLNARに対して1μg/mL以下と優れていた。BLNAR株朱は1998年に3.2%, 1999年に6.6%, 2000年に13.5%へと有意に増加していた。免疫学的に未熟な小児例に対する経口セフェム系薬投与後の不十分な薬剤濃度はBLNAR株の増加の大きな要因であろうと推察された。迅速で正確な細菌検査にもとついた適切な抗菌薬の選択とインフルエンザ菌に対するHibワクチン接種が耐性菌の増加防止の上で必須である。
  • 坂田 宏
    2002 年 50 巻 11 号 p. 805-808
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1998年9月から2001年12月までに当院で診療した生後7か月から9歳までのYersinia enterocolitica感染症22名について臨床症状や治療方法を後方視的に検討した。臨床症状として3歳未満の13名では発熱92%, 下痢が69%, 3歳以上の9名では腹痛が89%, 下痢が78%に認められた。抗菌薬治療は9名にfosfbmycin内服, 5名にcefotaxime静注, 2名にcefoitoren-pivoxil内服, 1名にnorfloxacin内服を行った。fbsfomycinを投与した2名を除いて投与後3日以内に主要症状の改善が認められた。抗菌薬を投与しなかった5名のうち, 2歳未満の3名は改善までに14から20日間を要した。患者から分離された22株についてampicillin, cefditoren, foslbmycin, clarithromycin, norfloxacin, piperacillin, gentamicin, ceftazidime, imipenem, sulbactam/cefoperazoneにおける薬剤感受性を検討した。経口薬ではnorfloxacinがすべての株のMICが0.1μg/mL以下, 注射薬ではimipenemはすべての株のMICが0.5μg/mL, 以下で優れた抗菌力を有していた。
  • 窪田 博明, 提 重子, 引田 篤, 船橋 一照, 駒野 直子, 久保田 幸雄, 梶浦 泰一
    2002 年 50 巻 11 号 p. 809-825
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ペネム系抗小土物質製剤ファロム (R) 錠 (faropenem, FRPM) の使用成績調査は, 1997年の発売時から2000年の4年間にわたり実施した。2,826施設の医療機関から19,375例の調査表を収集し, 調査期間外などの理由により不適格症例となった例を除いて安全性解析対象症例17,303例, 有効性解析対象症例16,342例について安全性, 有効性の検討を行い, 以下の結果が得られた。
    1.FRPMの副作用発現率 (臨床検査値異常を含む) は2.96%(512例) で, 承認時の発現率5.75%(127例/2,207例) に比し, 低値であった。主な副作用は, 下痢・軟便 (2.1%) などの消化管障害2.38%(412例) がもっとも多く, 発疹などの皮膚・皮膚付属器障害0.24%(42例) などであった。もっとも多くみられた副作用の下痢・軟便について, 副作用発現率は, 承認時の成績に比し低値で, いずれも症状は軽微であり本剤の中止等により回復した。今回得られた成績において副作用発現率が高かった患者背景は, 過敏性素因のある患者および1日投与量が900mgを超える患者であった。また, 下痢・軟便は投与開始3日以内に多く発現した。
    2.適応疾患別の有効率は85.0%以上であり, 承認時の成績とほぼ同等の成績であった。
  • 五十嵐 正博, 中谷 龍王, 林 昌洋, 中田 紘一郎, 粕谷 泰次
    2002 年 50 巻 11 号 p. 826-829
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Moelleringのノモグラム (ノモグラム) によるvancomycin (VCM) の初期投与設計は, 目標平均血中濃度が約15μg/mLとなるため, ピーク濃度が中毒濃度に達することはほとんどない。本研究では, ピーク濃度とトラフ濃度の2点およびトラフ濃度1点だけの測定値を用いたBayesian法の予測精度を比較し, 日常診療でのVCM血中濃度測定をトラフ濃度のみにすることが可能であるかを検討した。対象としたのは, 1995年4月から2000年7月までtherapeutic drug monitoring業務を行った30症例のデータである。トラフ濃度1点だけによる予測精度は, トラフ濃度 (n=12) においてmean prediction error (ME)=-4.08μg/mL, mean absolute prediction error (MAE)=4.44μg/mL, root mean squared prediction error (RMSE)=5.42μg/mL, ピーク濃度 (n=11) においてME=2.87μg/mL, MAE=7.04μg/mL, RMSE=8.89μg/mLであり, ピーク濃度とトラフ濃度の2点による予測精度は, トラフ濃度 (n=12) においてME=-3.30μg/mL, MAE=3.90μg/mL, RMSE=4.93μg/mL, ピーク濃度 (n=10) においてME=0.57μg/mL, MAE=5.03μg/mL, RMSE=6.74μg/mLとなった。この両者における予測精度の差はトラフ濃度で1μg/mL未満, ピーク濃度で3μg/mL未満とわずかで, 有意差はなかった。したがって, VCMの最大投与量が要求される重篤なMRSA感染症などの症例を除けば, 日常診療におけるVCMのTDMはトラフ濃度だけの測定により適切に実施できることが明らかとなった。
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