日本化学療法学会雑誌
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50 巻, 8 号
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  • 二口 直子, 久田 晴美, 高畑 正裕, 南 新三郎
    2002 年 50 巻 8 号 p. 487-493
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatis D/UW-3/Cx株に対するtosufloxacin (TFLX) のin vitro抗クラミジア活性についてクラミジアの生活環の各時期における抗菌作用を, 封入体数, 封人体内のクラミジア粒子密度および感染性粒子数を指標に検討した。HeLa229細胞にC. trachomatis D/UW-3/Cx株を感染させ, 感染後0~6時間, 6~12時間, 24~30時間にTFLXあるいはofloxacin (OFLX) を1および3μg/mL作用させた。なお, TFLXおよびOFLXのC. trachomatis D/UW-3/Cxに対するMICはおのおの0.125, および0.5μg/mLであった。TFLXあるいはOFLXを3μg/mL作用させた場合, 薬剤無添加群 (control) に対する封入体数の比率は, 感染後0~6時間のTFLX作用群では43.4%, OFLX作用群では936%であった。感染後6~12時間のTFLX作用群では7.0%に, OFLX作用群では33.5%に減少した。感染後24~30時間の両薬剤作用群ではいずれもcontrolとの差異は認められなかった。薬剤3μ9/mL作用時の, 封入体内クラミジア粒子密度は, 感染後0~6時間のTFLX作用群では低下したが, OFLX作用群では低下が認められなかった。感染後6~12時間および24~30時間の両薬剤作用群ではいずれも密度は低下した。薬剤3μg/mL作用時の, controlに対する感染性粒子数の比率は, 感染後0~6時間のTFLX作用群では36%に減少し, OFLX作用群では減少しなかった。感染後6~12時間のTFLX作用群では0.7%に, OFLX作用群では15.1%に減少し, 感染後24~30時間のTFLX作用群では1.1%に, OFLX作用群では92%に減少した。1μg/mL作用時の封入体数, 封入体内のクラミジア粒子密度および感染性粒子数は, 両薬剤ともに3μg/mL作用時とほぼ同等であり, 添加濃度による差は認められなかった。TFLXは感染後のいずれの時間でもOFLXより強い抗クラミジア活性を示し, その理由は明らかではないが,) 一般的にキノロン系薬剤が作用しないとされる基本小体の時期に相当する感染後0~6時間作用群においても抗クラミジア活性を示した。
  • 蔵園 瑞代, 山田 恵子, 平井 洋子, 井田 孝志, 井上 松久
    2002 年 50 巻 8 号 p. 494-499
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2000年に全国の100の施設から分離されたmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) について薬剤感受性を中心に疫学調査を行った。MRSAが検出された検体の内訳は, 喀痰48%, 膿・創部13%, 鼻腔・咽頭9%, 尿・カテーテル7%, 胸水・ドレーン排液6%, その他11%, 不明6%であった。分離株のコアグラーゼ型は, I型が1%, II型が89%, III型が9%, VII型が1%であり, IV型を含むその他の型は認められなかった。今回収集した株の88%はmethicillinに対し高度耐性 (MIC>128μg/mL) を示しており, imipenemのMIC90は64μg/mLと高かった。MRSAに抗菌活性を示す主な抗菌薬のMIC90はarbekacin (ABK) 2μg/mL, vancomycin (VCM) 1μg/mL, teicoplanin (TEIC) 2μg/mL, linezolid (LzD) 2μg/mL, quinupristin/dalfopristin (QpR/DPR) 0.5μg/mL, mupirocin 0.5μg/mL, rifampicin≦0.063μg/mLであった。さらに, MRSA5株に対し, ABK, VCM, TEIC, LZD, QpR/DPRのそれぞれ4MICにおける短時間殺菌効果を測定したところ, ABKがもっとも強い殺菌効果を示し, 1時間以内に平均99.6%の菌細胞を殺菌した。
  • 石井 良和, アルバ ヒメナ, 木村 聡一郎, 山口 惠三
    2002 年 50 巻 8 号 p. 500-506
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2000年に臨床材料から分離された菌株を川いて, cefepimeをはじめとするβ-ラクタム薬間での感受性および耐性菌の出現状況を把握する目的で, 全国レベルで疫学調査を実施した。1997年および1998年に実施したサーベイランスに参加した22施設に新たに22施設を加えた43施設 (前回の参加施設中1施設不参加) がEtestを川いて, それぞれの施設から分離された10菌種, 各10菌株に対する薬剤感受性試験を実施した。グラム陽性菌のoxacillin感性Staphylococcus aureusおよびoxacillin感性コアグラーゼ陰性staphylococciではceftazidimeを除き耐性菌の出現は認められなかった。Escherichia coliにはimipenemに対する耐性菌は認められなかったが, piperacillin, ceftazidime, cefやirome, cefoperazone/sulbactamおよびcefepimeに対する耐性菌がそれぞれ11.9%, 1.0%, 1.0%, 0.5%および0.5%存在した。Klebsiella spp.に対しては, imipenemに対する耐性株は認められなかったがその他の薬剤に対しては, piperacillinに7.2%, ceftazidimeに0.2%, cefepimeに0.2%, cefやiromeに0.7%, cefoperazone/sulbactamに1.5%の割合で耐性菌が認められた。Citrobacter spp.にはimipenemに対する耐性株は認められなかったが, その他の抗菌薬に関しては, piperacillinに18.4%, ceftazidimeに19.5%, cefepimeに0.6%, cefpiromeに1.7%, cefoperazone/sulbactamに5.8%の割合で耐性菌が認められた。Enterobacter spp.ではimipenemに対する耐性菌は認められなかったが, その他の薬剤はそれぞれcefepimeが1.3%, cefpiromeが5.3%, cefoperazone/sulbactamが8.5%, piperacillinが18.0%, ceftazidimeが22.8%の割合でそれぞれ耐性菌が認められた。インドール陽性Proteusの場合, cefpiromeおよびcefOpimeには耐性株が認められず, imipenemに対する耐性率は0.9%であった。Serratia spp.に対してはimipenemが4.5%, cefepimeが6.5%, cefpiromeおよびceftazidimeが7.7%および8.0%の割合でそれぞれ耐性株が認められ, piperacillinおよびcefoperazone/sulbactamの耐性率と比較して小さい値を示した。Pseudomonas aeruginosaでは, ceftazidimeが10.8%, cefepimeが12.5%, cefoperazone/sulbactamが13.2%およびpiperacillinが15.7%の耐性率を示したが, cefpiromeおよびimipenemに対しては20%以上の菌株が耐性を示した。Acinetobacter spp.では, cefoperazone/sulbactamが0.3%, imipenemが3.1%, ceftazidimeが4.5%, cefOpimeが5.1%, cefpiromeが5.4%, およびcefoperazone/sulbactamが5.9%の割合で耐性菌が存在した。以上の結果を総合すると, cefepimeに対する耐性菌の割合は, 今回対象としたほかのβ-ラクタム薬と比較して, 同等あるいはそれらより低いものと考えられた。
  • 高田 利彦, 清水 敦之, 小川 弘
    2002 年 50 巻 8 号 p. 507-512
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Penicillin耐性肺炎球菌 (PRSP) に対するcefditoren (CDTR) とfosfbmycin (FOM) との併用効果を抗菌力, 短時間殺菌効果, penicillin-bindingproteins (PBPs) に対する結合親和性およびin vivo有効性を指標に検討した。その結果, PRSPに対するCDTRの抗菌力はFOMの併用により2~4倍増強された。また, 併用時における短時間殺菌効果は各単独作用時に比較して優れており, 強い殺菌効果が認められた。この現象をPBPsに対するCDTRの結合親和性から検討したところ, FOMの作用によりPBPs産生が抑制された結果, CDTRの抗菌力が増強されると推察された。一方, PRSPによるマウス肺感染モデルに対する併用治療効果の検討では, 各単剤では無効である投与量での併用投与により優れた治療効果が得られた。投与順序および投与間隔の違いによる治療効果に差は認められなかった。
  • 武田 博明, 林 志文, 渡辺 慶太郎
    2002 年 50 巻 8 号 p. 513-516
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗菌薬の進歩により, 一般感染症に対する抗菌化学療法はより容易になってきている。しかしながら, 方では耐性菌の増加が報告されてきており, evidenceにもとついた適正な薬剤選択と使用方法の再確認が必要と考えられるようになってきている。今回著者らは, 薬剤の特徴をふまえた投与法の確立をめざして, levflnoxacin (LVFX) 1日400mg分2投与を中等症までの市中肺炎例に試みた。その結果, 検討した11例いずれにおいても, 臨床所見は改善し有効であった。また, 同定できた起炎菌はすべて消失した。したがって, LVFX1日400mg分2投与法は有用であり, 全身状態が保持されている, 中等症までの市中肺炎例では外来管理が十分可能であると考えられた。
  • より良いガイドラインを求めて
    守殿 貞夫, 松島 敏春, 岡本 了一, 青木 信樹, 小田切 繁樹, 荒川 創一, 相川 直樹, 岩田 敏, 坂巻 弘之, 石田 直文, ...
    2002 年 50 巻 8 号 p. 517-553
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    過去5年間に当院で入院治療を行った市中肺炎, 院内肺炎の経験をふまえて, 呼吸器感染症 (肺炎) に対する抗菌薬治験の進め方について発表し, 以下の結論を得た。80歳以上の高齢者および重症感染症に対する抗菌薬の治験はまったく実施されていないといえるが, もっとも抗菌薬が必要とされる対象であり, 有効性安全性の検討が第III相までにある程度なされるべきであろう。市中肺炎のみの臨床治験の実施で薬剤が製造承認され, 院内肺炎に対して使用されている。院内肺炎に対する臨床治験も今後必要となろう。内服βラクタム薬の投与量は体内動態, ブレイクポイントMICなどを考慮し再考を要する。
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